楓が、校庭の端の方に立ち、ジリジリと間合いを見計らっている。
ある瞬間、抜刀し、空に斬りかかり、避け、飛び、回り込み――と流れるような動作を続けている。
「楓さん、真剣で練習するんですね」
ななみに聞いてみると、「ああ、あれ、幽霊的な何かと戦ってるそうよ」と事もなげに話してくれた。
「え、科学者がそんなこと言っていいんですか?」
怪訝な顔で伺うと、それほど曇った表情もせずに答える。
「神秘主義的なモノってみんな、単純に一括りにしたがるけど、科学で否定できるものと科学で判断がつかないものとを、しっかり区別しないと、タダのカルトにしかならないわよ。
全く困っちゃう。
科学で解決しない事をいいことに非科学的な連中が乗り込んでくる話は多いしね」
「例えば?」
「自己言及のパラドックスとか」
ななみの目が爛々としている。
なんか、凄く面倒くさいことに足を突っ込んだぞ? と確信したが、どうもこの話は食いつきが悪いと見たのか、ななみは続ける。
「科学で解決できない問題はある。でも、解決できる問題は科学でさっさと解決しましょう? って言うのが、私の立場よ」
科学的に解決できる筈の"幽霊的な何か"が世の中には多すぎる。幽霊の正体見たり枯れ尾花と言ったところか。有象無象の問題をススキのように刈り取ってまとめて焼いてしまえたら楽なのに。
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