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黄色の場合以降のごたごたがあったが、我々Vtuberの活動は止まらない。
というか、不死者であることが分かった所為で、真生ちゃんルイちゃん含めて三人の引き合いが凄い。
ルチルちゃんがちょっと可哀想だが、それでも学校の話が聞けると、リスナーは多い。
真栄田さんは相変わらず、好き勝手に歌を歌っているし、現役の頃からの仕事がちょこちょこ舞い込むので、こちらも安定している。
それで、私だ。
本人たっての要望から、私の営業に東条さんが立候補している。
大丈夫かなぁと思っていたが、存外まともな仕事をしている。
ある日、私に何か長期間やらせて、達成したらおめでとうと言う事で、グッズを売ろうという引き合いが来た。やってる事はステルスマーケティングだ。
その時の返事が面白い。
「確かに、貴方の商売センスとしては、そういうやり方が正しいのかも知れませんが、商売って売る相手を理解してないといけないのでは?
その作戦が成功したとしても、購買層の不興を買えば、終生そういう事をする人ってイメージがついて回りますよ。
その方がトータルで見て損なんじゃないんですかね?
勿論、貴方は、ここで売上が立てばそれで嬉しいかも知れませんが、残された私達はどうですか?」
あんなにおどおどしている子が、私となると本気になるというのも、少し怖いものがあるが、しかし、頼もしさはある。
勿論、真栄田さんから引き継いだ、あのマネージャーさん(現社長)の薫陶もあるのだと思うのだけど。
余りにも正論を言いすぎた所為だろうか、その広告代理店から出入り禁止を喰らってしまった。
落ち込む東条さんに、「でも良かったじゃないですか、そんなところなら、相手から来ない方がいいに決まってるし」と慰めた。
だが、重度のネクラなので、過去の様々な失敗がフラッシュバックしてきているようだ。
「後悔するようになったらそれが成長点ですよ」
私から言える事はそんな感じだった。
彼女は納得した風な顔をする。最近、こういう話をする時はいつもそうだ。
そのまま納得していればいいんだけど。
「今日の配信ですけど、相変わらず雑談でいきます。
正直、最近とっちらかり過ぎてるんですよ。
学校の事とか、お店の事とか、VTuberの事とかね。
こっちの方でも偶にお仕事貰うようになったから、割とお休みないんですよね」
そんな話をしたら、「さっさと寝て」とか「少しぐらい休んで」とか優しいことを言われる。
「ありがとうございますね。
体力は中学生並みにあるんで、元気にやれてるんですけどね。
少しやさぐれるようなこともあるしさ。記者会見のこととかね」
今日の記者会見は、やや突っ込みの多かった話だ。全部事前に検討された回答で良かったけれど、近頃はしっかりした記者が来るようになったので、気が抜けない。
「嫌々やってる訳じゃないけどね。特にお店は面白いし」
と、言う話をすると、「どうやったら行けるの?」なんて質問が次々に。
「職員になるか、生徒というか、不死者が必要と認めた人になるかかなぁ……他に抜け道ってあったかな?」
そんなことをぼんやりと答えると「抜け道って言わない」と怒られてしまった。その他に「そんなの無理じゃん」と苦情が入ってくる。
「学校は何かと秘密にしなくちゃいけないことが多いんだよ。研究もそうだし、政治の事もそうだし……」
そこから話はお店の事になる。
「みんなが思うほど特別なものは出ないよ。今日は豚の角煮と煮卵、もつ煮、だし巻き玉子、冷凍のメヒカリが入ったから唐揚げと南蛮漬けにしたかな。バイ貝の煮付け、蝦蛄の茹でたの、クレソンのサラダ、春キャベツとコンビーフの炒め物、金平牛蒡、肉巻きアスパラとエノキ、肉詰め椎茸、蕪と蕗とガンモの煮物、空豆の天ぷら、じゃが芋の煮っ転がしとかそんなものかな。あとは、漬物とかガリピータンみたいに自分手間が掛からないのだね」
みたいな事を言うと、「十分です」とコメントが入る。
「みんなにも食べて貰いたいけど、ウチの地区だけの治外法権みたいなものだからね……」
「お酒も凄いんでしょ?」
「確かに仕入れの人が色々と頑張って地酒とか探してくれるけど、あんまり高いのはないねぇ。基本的に入手困難なお酒は仕入れないようにしてるし、あんまり高いのばかりにしちゃうと、お金のある子だけのお店になっちゃうし。
それに、入手困難だから特別な味だとか、高いから美味しいって安直な発想でお酒呑むのはちょっと作った人に失礼かなって思うしね。
この前、レアなお酒飲んで説得力ないけどね……
そうそう、今だって、私、部屋でごく庶民的な芋焼酎を麦茶で割って飲んでるぐらいだしね」
そんな話をすると、「おっさんやん」と笑われる。
「長く生きていると、舌がおっさんになるんです」
と言う所で、お話しを締めた。
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