0214 心音によるレッスン

ページ名:0214 心音によるレッスン

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 引っ越してからというもの、暇を見つけては心音ちゃんのレッスンを受ける事が多くなった。

「ちさとちゃん、多分、"自分が歌ってもそんなに上手くならないだろうな"って思いながら歌ってるでしょ?」
 直球でグサリとくる。
「いや、怒ってないからいいんだけど、やっぱり"自分ほど上手い奴はいない"って顔で歌った方がいいよ」
 微笑みながら語りかけてくれる。
「うーん。その自信の原資がないんですよ……」
「あんなに人に言えるのに、なんでそんなところで自信ないかなぁ」
 そう言われると困る……好き放題言うのと自信は別だと思ってる。
「だって、私、歌なんて別に歌ってきた訳じゃないし」
「誰だってそうでしょう」
 そうだろうか?
「歌の上手い下手って、割と小学生の頃で分かれるじゃないですか」
「そういうのもあるけど、努力してモノにする人っているじゃない?」
 努力という話があまり好きじゃない。
「私、あんまり努力出来ないんですよね。
 努力しても成果が出ない人を指して、人は"努力が足りなかった"って言うじゃないですか。
 結局、努力を測定するのは成果であって、それなら最初から努力の話なんてしなけりゃいいんじゃないんですか?」
「うーん、そう言われちゃうとなぁ……。
 でも、ちさとちゃん、配信もお店も努力してるじゃない?」
 私にとってあれは努力じゃない。
「料理は元々好きですし、配信も言いたい事しかいってないですしね……」
「そう? それなら歌も好きになってくれると嬉しいんだけど」
「それまで続けられるかな?」
「それまでは絶対に付き合うから大丈夫」
 こうも言ってくれるけど、私はやや半信半疑だ。でも、期待されるだけはちゃんと返さないと。
 

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