0117 中貝カズマが校内で生活を始める

ページ名:0117 中貝カズマが校内で生活を始める

 俺、中貝カズマは、二年A組に配属された。
 中本の言うには、「四六時中私に監視されるのいやでしょ?」であった。
 朝は黒服の"兵舎"で朝早く叩き起こされ、登校前にジョギングと体操をみっちりさせられる。「俺は頭脳労働派なんだ」と言うと、他の男どもは「頭脳労働でもいざと言う時動けねぇと死ぬぞ。この仕事」と笑う。
 出来ないと音を上げれば強制送還なので、必死にしがみつくしかなかった。

 問題なのは他の生徒が全員女だと言う事だ。
 これは、所謂ハーレムモノになるフラグか? と思わないでもないが、存外他の生徒は俺に興味を示していない。
 変にギスギスされるよりいくらかマシなのだけど。

 御堂さんと言う子が世話焼きなのは分かったが、他はどいつもこいつもクセしかなさそうだ。
 隣の席なので声を掛けると、「色々大変かも知れないけど、頑張ってね」なんて言われた。
 何だよ、そのもやっとする言い方は! とか思ったが、この学校、触れてはいけない秘密が多そうなので黙っておく。
 そもそも、ここの生徒の素性が知れない。一応、天才学級と言う事になっているが、セキュリティの厳しさと、半面生徒に対する規律の低さが目立つ。

 日中の学校は、生徒のレベルに合わせて個別指導と言うのがこの学校の授業らしい。
 尤も、仕事のある生徒は仕事に行ってしまうし、惰眠を貪る生徒もいる。何から何まで自由である。
 授業が終わると中本の指示で仕事やら何やらをやらされる。
 やる仕事は地味な仕事が多い。システムの改修がらみのコーディングなどだ。
 勿論、中学生の書くコードの品質は要求されない。
「コメント読まなきゃ追えないコードは書くなって言ってるでしょ?」
 なかなかと厳しい。
「でもさぁ。俺がどっかにバックドア仕掛けるとか考えないの?」
「大丈夫、一カ所でヘマして抜かれるような、ヤワなシステムじゃないから」
 妙に自信満々だった。

 そして「そういえば」と専用端末を渡される。
「金持ちそうなのに、泥かよ……」
 悪態を吐いてみたが、どう足掻いてもルート化できないようだった。
「これ何?」
 ハードからソフトから自主開発らしい。それをAndroidに見せているだけのようだった。
「基本的に、エミュレートされるから、AndroidもiOSも動くアプリは多いけど、動作は保証しません。まぁ使わないけどね。
 ああ、でも、個人的なメッセージが発信できないように上手いことプロテクト掛けてるし、自由度が高いと見なされたゲームは自動削除されるから、課金する前に確認頂戴ね?」
 俺なら色々と悪用するのになぁと思ってると「なんで自分をそんなに信頼するのか。って思ってるでしょ?」と図星の事を言われる。
「君が何か頑張ったところで、とりわけ大きな事は出来ないだろうって事。あと、何かあったら瞬間的に君は死ぬ。自分の命を賭してまで冒険はしないでしょう? ここでも十分冒険と言えば冒険だし、それを捨てる理由もない」
 そうだ、俺は胸に特殊なチップを埋め込まれている。逃げ出しても死ぬし、反逆しても死ぬ。
「もし、俺がシステムを乗っ取ったら?」
「仮に出来たとしたら、システム破棄して君を殺すかな。一からやり直す事に関しては、割と楽しんでやれる子が多いんだよ、ここ」
 万全の回答であった。

 仕事は常に高いレベルを求められる。やりがいに関しては十分すぎる程だ。
 いずれ返すと言う理由で学資ローンが無金利で貸し出されている。これと僅かながら仕事で得た金で割と好きに遊べている。
 "兵舎"にいる限り賃料も光熱水道費も掛からない。職員用の宿舎を借りてもいいそうだが、当面は黒服の生活に合わせて貰わなければならないと言われる。貯金だけが積み上がる。

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