0212
食堂の件は、会議を重ねて漸く大体が決まってくる。
先ず、新設の大食堂だけど、みっちゃんと彼女が見込んだ料理人が監督するが、運営は剣菱グループ内のファミレスチェーンが行う。クォリティも大切だが、コスト重視でやってもらう。流石に全部予算垂れ流しではマズイ――請ける会社は、学校での料理のノウハウや指示を本業に還元できると言うメリットがあるらしい。
旧食堂は今まで通り料理人の学校としてクォリティ重視で運用する。
予約制にして、一ヶ月の予約回数を各生徒や職員に一定数付与するので、全員が平等に利用できる。
それで飲み屋の話になる……
そもそも必要なのか? と言う話だ。
飲むとなるといい加減大人なのだから、校内に作る必要はない。そう思った。
綾夏さんが言う。
「折角温泉掘るなら、普通の人にも入って欲しいじゃない? その方が施設大きく出来るし、私達にもメリットあるでしょ?」
「というと?」
「今、アプローチ裏の崖とその向こうの山を造成しているんだよね。それで、その辺が寮になるんだけど、そこに温泉と飲食の施設、それと購買を作ります。
ひとっ風呂浴びてビールが飲めるんだよ!」
なんか、話が急に大きくなったぞ……元々大きな計画だけど。
「それはいいですけど、セキュリティ的に大丈夫なんですか?」
「通路は歩行者用の分しか作らないから大丈夫だよ」
警備の黒服の人が苦労しそうだ……
「あと、新設の校舎と食堂遠くないですか?」
新校舎は裏山を削っている。今、一番奥側になる建屋だ。
「空きゴマとか使えば大丈夫でしょう? 昼休憩も多く取ってるしね。
それに、新設の校舎は最終的に研究室拡充で使うから、恒久的に使うのは今の購買跡地に作るから大丈夫」
どんだけ建物建てるつもりだよ。頭がくらくらしてくる。
「でも、普通のお客さんがいるところで転生者がお酒飲むのあんまり良くないじゃないですか?」
転生者が稜邦地区でしかお酒が飲めないのもそういう理由だ。
「それなんだよねぇ。でも、宴会はしたいでしょ?
校内側に宴会場置くって言う手もあるのかなって思うけど……」
「多分、厨房がセキュリティ的にアウトになりますよね?」
厨房を共有しないとメリットはないけど、厨房を抜ければノーチェックで学校側への侵入が出来ることになってしまう。
「それなんだよね……」
そこで唯ちゃんが発言する。
「じゃぁ、旧校舎の食堂付近に新設したらどうですか? 以前も夜の利用は予約制だったし……それなら私達のお店も移さなくていいじゃないですか」
無茶な案だ。旧校舎も授業で使うのだから……
私が、「いくら何でも無理筋では?」と言おうとしたところで、綾夏さんが「新設するのは無理だけど、教室で宴会するのも悪くないかもね!」と乗る気になるのだ。
流石にみっちゃんが突っ込む。
「ちさとちゃんのお店を移動しないのはいいけど、宴会やるなら単純に私達の負荷が増えるだけでしょ?
もしやるなら、新食堂からの配達でやってよねぇ~」
と、あからさまな不満顔をする。当然だ。
「と言うか、流石にそんなこと、楓さんに叱られますよ。いくら宴会好きでも学校の事に力入れてるんですから」
私が言うと、「そうかなぁ」と思案顔だ。
仕方がないので楓さんに電話を入れる。
ハンズフリーで状況を説明すると、「たわけ者! そんなことやって良い筈がなかろう! お主がいくら型破りとは言え、常識を弁えないか!」と酷くご立腹である。そりゃそうだ。
「宴会がしたいなら、今まで通り家に集まればよいじゃろ。
人に作らせるのではなく、自分で肴ぐらいつくれなくてどうするんじゃ!」
と、正論を言われて全ては終了した。
私としては、何も変わらないのでいいのだけど、それはそれで、何一つアップデートを求められていないようで少し寂しくもあった。
課題をもう少し見つけていくようにしないと。
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