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学校では、恐ろしい速度で工事が進んでいく。
新鋭の工法を使っているそうだが、山が一瞬で消えていくのには驚く。
あそこが平になると、こちらに手を付け、更に向こうの山が裸になると言う具合に進んでいく。
平地が出来れば最初にプレハブの寮が出来る。すぐにでも入寮する必要のある人に宛がわれ、本施設が完成すればそちらへ移っていく。
これの繰り返した。
第一期は、購買と入浴施設他が入る建屋と、物資の入る倉庫、独身寮一棟、学生寮三棟、そして所帯持ちの為の寮が二棟である。
学校側に目を向ければ体育館兼ホールが一棟、教室そして研究室に使う建屋が二棟。
あきらちゃんが、デザインと工法を詰めていったお陰で、二年と掛かりそうなプロジェクトは半年の工期に縮められた。
勿論、施工会社の技術力や工期管理がしっかりしているお陰である。
この工事のお陰で建築会社は新たな技術を手に入れたし、破格の収入を手に入れた。勿論、学校の息の掛かる企業の系列なので、何をしたところで、利益は循環して入ってくる。
これらの工事は、最終的には、職員寮や購買などの幾つかの建物が取り壊され、教室や研究室、講堂やホールへと変わっていく。
商業施設には会議場とホテルも追加で作るらしく、国際会議を自前でやってしまうつもりらしい。
遠くから見てニュータウンに見えていた学校が、ちょっとした都市へと変貌していく。
学校にはそこそこ権威のある先生も引っ越してくるそうで、そういう人は麓の高級マンションに入るそうだ。こっちもこっちで建設が進められていく。
そうなのだ。麓もあちらこちらが大変なことになっている。
県営稜邦住宅が段階的建て直しで高層化――元々はそんなに大規模になる筈ではなかったのに、黄色の場合のお陰で計画変更になってしまった。
駅前でシャッター街になってた商店がホテルや雑居ビルになり、田畑は悉く潰され、ロードサイド店や集合住宅として変貌していく。
「この地域の七割ぐらいの業者が集まってるんじゃない?」
綾夏ちゃんが笑う。
人が集まり、物資が行き交う。一瞬で成山町が栄えてくる。
この光景は、まさに城下町である。
君子色を好むとは言うけれど、それよりも確定的に好むのは建築である。
名だたる国家指導者は、必ず有名建築物を残す。それは人間の宿業みたいなもので、ピラミッドや兵馬俑、古墳からしても明らかだ。
祭祀の為の施設や墓がないのは、ここが地獄だからか。それとも単純に合理性を見ているからだろうか。
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