土曜日の喫茶店。昼も過ぎ、入ってくる客も落ち着いて、長居している客だけになった時間。
仕事が楽になったと言う安堵感もあるが、静かに時間が流れるこの雰囲気は好きだ。
そんな時を見計らって、店主の下の子がやってきた。
「お姉さん。ちょっといい?」
見た感じ普通の小学校五年生だ。太くも細くもなく、そこそこ健康的で、ただ、いささか生意気そうな顔をしている。
「なんで、人を殺したら駄目なのかな?」
あ、コレ、進研ゼミで見た奴だ! と言う奴である。
「え、殺したいの?」
私の即答に、彼も一瞬ぎょっとして、そして、嫌なことを言われたなと言う事を隠しきれない笑顔で、しかし堂々と答えた。
「殺してみたいんだけど」
「人を殺してみたい人とは対話は不要ね。
貴方に必要なのは、スクールカウンセラーよ」
演じる事に関しては、こっちの方が、切実なんだからと思いながら答えた。
すると、少年は残念な顔をしてその場を去ろうとした。
「君! 人が答えに窮するだろう発言をして、それで勝ったと思わないようにね。
大人になってもそういう連中いるけど、ただの面倒臭い嫌われ者にしかならないよ。自分は利発で世の中の事をズバっと言い当てる人間って思い込んでるけどね。
今の君みたいに!」
去って行く後ろ姿は、ややビクビクしていたように見えた。
なるほど、店主が世話を焼くのも分かる。性格は顔に出るモノだなと。
私は思いっきり意地悪な顔をしていたのかも知れない。店主は嫌な顔をしていた。
何はともあれ、お小遣いゲットだ。
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