0195 ちさとの日常

ページ名:0195 ちさとの日常

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 歩く。家を出て学校へ向かう。
 伸びやかに続く坂を登った先に校門があり、校舎がある。

 お店に使う材料の殆どは事前に発注するのだけど、当日になっていいものが入る事もある。そんなわけで、朝一の購買は日課になっている。
 授業が始まる前に仕入れをして、材料を冷蔵庫に詰める。
 その他の材料やお酒、油、お米の類は、購買の人が運んでくれるし、唯ちゃんがちゃんと整理してくれる。

 今日は高知から直送の初鰹が手に入ったので、ほくほくとした顔でお店に行く。
 雇われ店長とは言え、私の城だ。
 これで稼いで、これで生活していると思うと、ひとりでににんまりしてしまう。
 目の前に活気が甦る。
 朝のウチに仕込まなければならない事を仕込んで、漸く息がつける。

 それから授業を受けて、偶に仮眠室に入ったりする。
 授業をエスケープしておねんねするなんて、随分と図太くなったものだ。
 授業そっちのけで記者会見の準備もすることがある。すっかり学校の雰囲気に馴染んでしまっている。
 そう言えば、黄色の場合の後、割とみんな忙しくて、授業の出席率が低い。
 三惠子ちゃんがちょっと寂しそうではある。

 お昼を過ぎたら本格的に開店の準備だ。
 お店に向かう途中で出逢う友達との挨拶は、「あとでお店でね」ばかりになってしまう。尤も、それで、実際にみんなお店に来てくれるので、本当にいい商売をしている。

 唯ちゃんが先にお店の掃除とかを始めてくれている。配達された荷物の検品検数もやってくれるし、券売機のメンテナンスも彼女の仕事だ。
 元テロリストだと自嘲する割に、こういう細やかな仕事にソツがない。

 煮物を仕込んで、他の材料も下ごしらえをやっつけていく。
 魚を開いて、野菜を切って、肉に下味をつける。
 初鰹は既に藁焼きされているサクなので、出す時に切ればいいだけだ。

 記者会見がある日は、もう、その準備に掛かりきりで、お店なんてやっていられない。なので木曜日はお店はお休みになってしまう。
 その代わり、木曜の定例記者会見の後は家に帰って、Youtubeの振り返り配信を行う。これも立派な広報活動だ。

 時間が来るとお店を開く。
 待ち構えていた常連がぞろぞろ入ってくる。
 月に一回、職員感謝デーがあり、転生者以外の職員のドリンクが半額になると言う大盤振る舞いを行う。
 尤も、転生者みたいにバカみたいに飲む人はいないので、儲けはトントンだ。

 お店の切り盛りは大変だけど、お客さんと色々喋っていると、趣味の延長に思えてくる。勿論、本業なのでしっかり稼がせて貰うけど。

 こうやって、話を聞いていると、様々な情報が入ってくる。そして、そういう情報を求めて足を伸ばすお客さんもいる。
 これは、内輪向けの商売だから出来る事か。
 楽しい事ばかりだけど、気になる話は横に展開していく。
 こう見えても、学校の顔になってしまっているのだから、そういうのには敏感にならざるを得ないのだ。

 十時に閉店して、まかないを食べて掃除と片付けを済ませて解散。
 登下校の警護は十一時に最終なので、それで部屋まで戻ってくる。
 シャワーと洗濯を済ませて十二時に就寝……睡眠時間が短いのが気になるけど、壊れる身体ではないと言う事を頼りにそれで回している。
 無理しているのは私だけじゃないしね。

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