0051 ちさとが俊子の相談に乗った挙げ句カナと麻雀を打つハメに

ページ名:0051 ちさとが俊子の相談に乗った挙げ句カナと麻雀を打つハメに

 俊子ちゃんが、どうにもカナちゃんの事を気にしている。そして、この頃、転生者の家に入り浸ってるらしいと言う情報を手に入れた――どうもそれが気に入らないのだ。
 とはいえ、具体的にどう言って止めてやるものか悩ましい。

 と、言う事で……例によって私の所に相談に来た。

「頼ってくれるのは嬉しいけど、この話ばかりは、私にはどうにもできないよ? カナちゃんとそんなに付き合いないし、あの子が転生者と付き合うのを止めたいなら、俊子ちゃんも私の所に来たらおかしいでしょ?」
「会うなって言ってるんじゃないんだけど……」
 俊子ちゃんがもじもじとしている時は、大体答えは決まっている。単に背中を押して欲しいのだ。
 でも、素直にそうするのも癪なので、ちょっと意地悪をしてみる。
「でも具体的に何回ならいいって話ではないでしょ?」
「それは分かってるんだけど……」
「なら解決じゃないですか?」
「分かってるけど納得できないんです!」
 ちょっと苛ついてきたようなので、助け船を出す。
「納得できないのは、カナちゃんの問題じゃないからでしょ?
 自分の問題を人が変われば解決するだろうって考えは、本当に病むよ。
 自分を自分の力で変える事も出来ないのに、なんで人の事を自分が変えられると思うの?
 本当は、カナちゃんが取られるのが嫌なんじゃないの?」
 流石にド直球の事を言うと、彼女も泣き出しそうな顔になる。
「明日はちょうど暇だし、カナちゃんに話つけに行かない?」
 そこまで言うと、乗せられたのか、うんうんと頷いた。


 それから色々聞いて回って(と言っても校内連絡アプリを使ってですが)、楓さんのウチに行くことが判明した。
 そんなわけで、早速連絡を取り合って楓さんのウチに行くと、むちゃくちゃ明るい笑顔で迎え入れられた。
「ななみも羊子も急な用事で出て行ってしまってな……ところで、ちさとは確か麻雀打てたはずじゃな?」
「えっ……うん」※
 こういう時に、どうしても嘘が吐けないのが、生まれついての……転生前からの性分だ。
 そんなわけだから、今回、面子が揃ってしまった訳である。麻雀だけに。
 カナちゃんは一足遅れて合流して、説明を受けると、破顔一笑した。
「俊子ちゃんと打つの初めてだから嬉しい!」
 カナちゃんの何気ない一言が、俊子ちゃんにどういう影響を及ぼしたのか、うかがい知るのは容易であった。

 東一局。起家は私。
 四巡目にカナちゃんの立直である。私は、五向聴スタートの、現在四向聴なんだけど!
 と思っているウチに、カナちゃんに三倍満をツモられた。親かぶりで、いきなりマイナス12000点マイナスである。
 そこから4局連続で、私は立直を掛けるのだけど、どうも和了れない。
 酷いときには、理想的な三面張で、枚数も六枚と言う状況で、四巡後に立直をしたカナちゃんに、私が一発で振り込んだ時だろう。しかも、七対子である。
 もう何が何だか分からなくなる。
 なんだかんだで、南一局。私の親番なので、小さい手でも和了りたい……と言う所で、来た配牌が八種八牌である。そんなに上手く望み通りの牌が五枚も来るとは思えなかった。
 とはいえ、最初のツモ運はかなり良かった。七巡目までに国士無双まで一向聴となったからだ。
「お、私、意外にツキを盛り返したんじゃない?」
 と思った矢先だ。カナちゃんが立直である。
 そして、その順目で私はなんと、国士無双十三面待ちをテンパったのである。手元に残されているのが八筒。そして、七筒が四枚見えているのでノーチャンスである。
 これは、もう、天が与えてくれた導きだろう。
 と、言う事で、何の躊躇いもなく切ると、カナちゃんよりロンの声だ。
「立直、一発、断ヤオ、ザンクです」
 早速、飛んでしまった。

「カナは強いじゃろ?」
 と何故か得意げな楓さんは、何だかんだで二位である。僅差で俊子ちゃんだ。
「カナちゃんが強い以前に、私、運なさ過ぎやしませんか?」

 と、いうので、また半荘である。
 なのだが……カナちゃん起家で、また三倍満をロンされたので、東一局で私が飛んで終了となった。
「まだ、何もしておらんのじゃが」
「私もですよ?」
「お主は振り込んだじゃろ!」
 醜い争いである。

 最初、不承不承に打っていた筈の俊子ちゃんは、カナちゃんを見て「すごーい! 今度教えて!」といい気なモノである。
 逃げ出したい気持ちを抑えながら、なんだかんだで夜まで麻雀を打つことになったのだが、私の成績はラス、ラス、三位、ラス、ラスであった。
 楓さんは、「まぁ、コレに懲りずに来るといいよ」と労うものの、一日遊べて満足と言う顔をしているので、信用がおけない。
 私だけ一方的に傷ついて終わっただけの会になった。まぁいいさ、俊子ちゃんが笑顔になったなら……


※SF的な考察をする必要がある。
 ちさとの生前の世界とこの世界が似ているとは言え、全く同じではない。
 そもそも彼女が人間と思っているモノと、この世界の人間の姿形が同じであるとは限らないが、転生時にその辺が自動翻訳されている。
 彼女が知っている麻雀も、前の世界の別のゲームである可能性が高い。そして、それを翻訳した形で彼女なりの知識体系に収まっている。

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