「ルチルちゃん、温泉行ったみたいだね? 楽しかった?」
榛名、牡丹、百合で遊びに行った時の話だ。榛名から「悩みあるみたいだけど大丈夫?」と聞かれたのだ。あの時、峰ちゃんに説教されたけど、まだ得心いってなかった訳である。若いから仕方ないか……
「楽しかったよ!」
と笑顔で答える彼女は、その陰りを見せない。
「凄くいい温泉だそうだね? 私も行ってみたいわぁ」
峰ちゃんが乗っかる。
「いいねぇ、今度四人で行こう?」
場が温まってきた所で、呼び鈴が鳴る。ちさとちゃんと三惠子ちゃんだ。
「おまたせー」
ちさとちゃんが三惠子ちゃんを引っ張ってくる。
先生は気後れしたような顔つきでリビングにやってくる。
軽く紹介と挨拶をする。三惠子ちゃんと峰ちゃんはいつぞの飲み会で肩を並べて歌った仲ではあるが、流石に酔っていたので、素面だとちょっと気まずいようだった。
「ルチルちゃんと、三惠子ちゃん、年齢近いし、話題とか合うんじゃないかな? って」
冷静に考えて、二十代半ばの子がこの学校にあんまりいないと言う事実に突き当たったのだ。黒服で二十代半ばの女子というのはいないことはないが、"外回り"の仕事なので、学校には殆ど顔を出さない。
彼女たちの次に近い人となると、三十代の利香先生かナオさんぐらいになる。それもちょっと違うなと思えたので、この二人がいいやとなった訳である。
「あ、どうも……」
そんな感じのぎこちない対面であった。
「若い子は若い子同士で~」
峰ちゃんが、昔の見合いかよって台詞を吐いて、我々は別室へ移動した。
それからなんやかんやと酒を呑み、いい頃合いで顔を出してみると、存外会話が成立していた。
その内容がBLだったので、何とも言えない気持ちになったわけだが……
解散の後、ルチルと少し話したのだけど、あんだけ話していた割には「あの人ちょっと苦手です」とか言われた。
手堅い仕事に就いているし、考えもしっかりしてるし、自分よりずっと大人だからだという。
「それは僻みじゃない?」
すかさずツッコミを入れると「そうだって分かってても、上手く付き合えそうにない」とどうしようもない答えが返ってきた。
これで頭を抱えていたわけだけど、翌日、ちさとちゃんから同様のメッセージを受け取る。
「三惠子ちゃん、ちょっとルチルちゃん見てるとしんどいみたい……好きな仕事を自由にやれているのを見ると、自分はもっと上手く出来ないのかって言うんだよね」
どうしろって言うんだよ……
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