aklib_story_登臨意_WB-ST-2_我の信ずる所を信ず

ページ名:aklib_story_登臨意_WB-ST-2_我の信ずる所を信ず

このページでは、ストーリー上のネタバレを扱っています。

各ストーリー情報を検索で探せるように作成したページなので、理解した上でご利用ください。

著作権者からの削除要請があった場合、このページは速やかに削除されます。

登臨意_WB-ST-2_我の信ずる所を信ず

ズオ・ラウがようやくジエユンを止めるのに成功した。しかし聞く耳を持たないワイ・テンペイが再び彼を阻止した。リン・ユーシャは様々な手がかりと皆の反応から、一連の事件の全容を徐々に導き出した。


私は川の畔で生まれた。

親父殿はよく私に、川は大地の隅々に通じるのだから、十分に頑丈な船があれば、どこへでも行けると言っていた。

親父殿は雪が嫌いだった。大雪が降って通行止めになると「商売」あがったりで、家族全員が空きっ腹を抱えることになるからだ。私の名もそこから来ている。

私は「商売」が何か知らない。でも月末になる度、親父殿は刀を提げて物資と私への贈り物を持って帰ってくる。母はいつも無言でそれらの物を整理し、親父殿の血の付いた服を洗っていた。

ある日、たくさんの鎧を着た人たちが水寨を攻めてきた。親父殿は一生を川で過ごし、最後は川の底に沈んだ。

私が記憶しているのは彼らを率いていたあの人だけだ。快勝だったにもかかわらず、彼はあまりうれしそうではなく、ただ血で赤く染まった川をぼんやりと見ていた。

あの時、私の心を占めたのはただ一言だ。

仇を討つ。

私はその人の所在を聞いて、家を出た。炎国の最東端から、最西端まで追いかけた。

それでようやく知ったのだ。この大地には川だけでなく、数え切れないほどの山河や平原があるのだと。

この大地の人々には、幾千万の生き方があり、そして幾千万の苦労もあるのだと。

比べてみれば水寨はあまりに小さかった。もし親父殿が外の世界を見ることができたなら、生涯をあのように過ごしてはいなかったかもしれない。

親父殿は間違っていた。一艘の船で行ける場所は、多くはない。

私はようやく玉門にたどり着いた。その人は城壁の上に立ち、顔にはあの時と同じ表情を浮かべていた。この時には、私も多少は理解できるようになっていた。

私は仇を討つべきなのだ。

......

[チョンユエ] ……

[チュー・バイ] 以上が事の経緯です。

[チュー・バイ] 剣はワイ殿の手に渡りました。彼の腕を考えれば、ズオ・ラウではどうにもできないでしょう。

[チョンユエ] たった一つの約束のために、三年も玉門を離れず待っていたのか……面白い奴だ。

[チョンユエ] タイホー殿の傷の具合は?

[チュー・バイ] まだ目覚めていません。

[チュー・バイ] タイホー殿に重傷を負わせたのは一昨日ウェイ殿を暗殺しようとした者と同一人物です。彼女は混乱に乗じて逃れましたが、私では相手にならず、追いつけませんでした。

[チュー・バイ] 現在はズオ・ラウが鋳剣坊を封鎖していて、多くの江湖の者たちが……彼の監視下で行動を制限されています。

[チュー・バイ] ただでさえ天災が迫るこの状況で、守備軍と江湖の者たちも完全に袂を分かちました。玉門の情勢はさらに混乱するでしょう。

[チョンユエ] ズオ・ラウばかりを責めることもできまい。

[チュー・バイ] ……この件は、あなたが手を出さなければ解決できません。

[チョンユエ] ズオ将軍から軍営の守りを務めるよう言われている。大っぴらに反すことなどできるか。

[チュー・バイ] ……私が話しているのは、ここ数日間のことだけではないとご存じでしょう。

[チュー・バイ] あなたはもうすぐ玉門を離れるのです。発つ前に、あなたを慕う者たちにきちんと説明をするべきです。

[チュー・バイ] それともなんでしょう。説明に困ることは、いっそ言葉にしない方が楽ですか?

[チョンユエ] ……

[チョンユエ] 皆がお前を私の教え子だと思っているが、この私ですらもお前が何者かを忘れかけそうになる時がある。録武官や、ズオ・ラウと同輩の子供だと、つい思ってしまうんだ。

[チュー・バイ] ですが、私はあなたを「先生」と呼んだことは一度もありません。

[チョンユエ] そうだな。私は「先生」とは言えない。

[チョンユエ] お前は勘が良く、剣術もほとんどがお前自身の研究成果だ。私が教えてやれることは、もとから限られている。

[チュー・バイ] しかし私の素性を隠して、玉門に留まらせているのは、他でもないあなたです。

[チョンユエ] 幼な子を、みすみす再度荒野へと戻すわけにはいかないだろう……

[チュー・バイ] 側に置いて、殺されるとは思わなかったのですか? それとも私は永遠に、あなたに勝てないと確信しているのですか?

[チョンユエ] 復讐のために殺すだけなら、武で私に勝る必要などないだろう。

[チョンユエ] 飯に毒を盛るとか、この城壁の上から私を押すだけでもいい。機会だけ数えれば、少なくとも私は優に千回死んでいるな。

[チョンユエ] 私を手にかけた後も、お前が執念を手放せないかもしれないことだけが心配だが。

[チュー・バイ] ……もしもこの五年がなかったら、今のあなたの言葉を聞いた瞬間に私は、君子面した偽善者だと罵っていたでしょうね。この大地で一番唾棄する存在だと。

[チョンユエ] 五年か。お前が玉門に来てからそんなに経っていたか。

[チュー・バイ] あなたからすれば、大して長い時間ではないでしょう?

[チョンユエ] なぜだ?

[チュー・バイ] 十年ごしなのに、記憶と寸分違わない姿で、相変わらず、無常など見尽くしたと言わんばかりのやるせない表情を浮かべている。私がどれだけ鈍くても、普通の人でないことはわかりますよ。

[チュー・バイ] この大地に、寿命が極めて長い種族がいることは知っています。以前はただの物語として聞いていましたが、まさかその伝説が自分の側にあったとは思いませんでした。

[チョンユエ] とっくに気付いていたのか。

[チュー・バイ] あまり気にしていなかっただけです。

[チュー・バイ] 我が心願は復讐のみ。あなたがどれだけ生きられるかは関係ありません。

[チュー・バイ] それに、あなたが只人ではないと考えるのは、自分に言い訳を探しているようなものですから。

[チュー・バイ] あなたが言ったように、徒歩で高みに登るには、ひたすたに一歩一歩上へと歩み続ければいい。他のことなど、考え過ぎれば、心を乱すだけです。

[チョンユエ] しかし恩讐や勝敗で心を埋めたなら、たとえ本当に望みを果たしたとしても、その重石を降ろせるとは限らん。

[チョンユエ] 雑念が増せば、剣は鈍る。

[チュー・バイ] 只人は、その執念こそを生きる糧にしているのです……あなたならわからないはずないでしょうに。

[チョンユエ] 知り合ったばかりの頃のお前は、これほど人を追い詰める喋り方ではなかったはずだが……

[チュー・バイ] この五年で、あなたからは多くの教えを受けましたから。

[チョンユエ] 私が教えたのは、武を学ぶ心構えだけだ。

[チュー・バイ] 教えられるものには限りがある、それはあなたが言った通りです。ですが教えから何をどこまで学ぶかは、弟子次第でしょう。

[チョンユエ] ……

[チュー・バイ] 話を戻しますが、私はやはり会いに行くべきだと思います。

[チュー・バイ] あなたを執念としている人は、あまりに多いんですから。

[チョンユエ] ……

[ジエユン] 大男が消えた……

[ズオ・ラウ] 待ちなさい。

[ジエユン] またあなたか……

[ズオ・ラウ] お嬢さんが賊たちと仲間でないのなら、なぜ剣を盗むのですか? あの医館の人とはどういう関係なんですか?

[ジエユン] あいつらのことは知らない、あの大男が誰かも知らない。

[ズオ・ラウ] 自分がどれだけの面倒事に巻き込まれているのか、わかっていないようですね。

[ズオ・ラウ] あなたを利用しようと、何者かが剣の場所を教えたんでしょう。ですが、あなたは移動都市に住んだこともなく、玉門について何も知らない。

[ズオ・ラウ] この剣を盗むことが一体どのような面倒事を引き起こすか、あなたにはわかっていません。

[ズオ・ラウ] ですから、どうか素直に教えてください。そうすればまだ取り返しのつく余地があるかもしれません。

[ジエユン] 言ったよ。誰の指示でもない、ただ恩返しのためにやってるんだ。

[ズオ・ラウ] それで自分が命を落とすことになっても?

[ジエユン] ……とにかく、もうつきまとわないで。

[ズオ・ラウ] 真相がどうであれ、無関係の人が危険にさらされるのを黙って見ていることはできません。

[ズオ・ラウ] 私は、あなたを助けているんです。

[ジエユン] ……

[ジエユン] 調子のいいことを言っても無駄。あなたは良い人じゃない。

[ズオ・ラウ] 私はお上の命令を受けて調査しています。先に剣を盗んだのはあなたですから、たとえ事情があったとしても、正当化はできません。

[ジエユン] 工房にいた人たちを全員軍営に連れて行くよう命じたよね。あれだけでもう信用できない。

[ズオ・ラウ] 彼らは山海衆を庇い立てして、奴らを鋳剣坊から逃がそうとしたんですよ。

[ジエユン] 違う。あの場所を守ろうとしたんだよ!

[ズオ・ラウ] 容疑が晴れるまで、全員を厳しく取り調べる必要があるんです。天災と賊が人々の安寧を脅かしている今、私には玉門を守る責務があります。

[ジエユン] 私の部族では、十六歳になった身体の丈夫なアナサに対してだけ、部族の人が専用の武器を作ってくれる。

[ジエユン] 武器を手にしたアナサは、老人や子供、病気の同胞をずっと守らなければならない。

[ジエユン] 無関係の人が危険にさらされるの見てられないとか、玉門を守るためとか、それなら簡単に武器を一般人に向けていいの?

[ズオ・ラウ] 私には果たすべき職責があります……

[ジエユン] 師匠の言ってた通りだ。あなたたちは、もっともらしい言い訳ができるなら、自分が間違ってるとは思わないんだ。

[ズオ・ラウ] ……

[ワイ・テンペイ] あえて速度を落としたのに、誰もついてきていないではないか。

[ワイ・テンペイ] 剣はまだ俺の手にあるぞ。お前らは何を悠長にしゃべりはじめてるんだ?

[ズオ・ラウ] 失礼。お二人とは少し誤解があったようです。元の持ち主に返すためその剣を差し出してはいただけないでしょうか。

[ワイ・テンペイ] お前たちの言い争っているのを聞いて、大方は理解した。

[ワイ・テンペイ] この剣は元々宗師のものであったが、この娘が盗み出したんだな。

[ワイ・テンペイ] あの人の武術はすでに人知を超えた域にある。特定の武器に依存することはないはずだ。それなのに、この剣が惜しくてお前に追わせているのか?

[ズオ・ラウ] 秘密事項です。申し訳ないが話せません。

[ワイ・テンペイ] 宗師に面倒をかければ、退任の日がまた後ろ倒しになるよな……しかしこの娘を手伝うと約束もした。

[ワイ・テンペイ] うむ……参った。参ったな。

[ズオ・ラウ] ……

[ワイ・テンペイ] そうだ!

[ワイ・テンペイ] 俺は理屈など知ったことじゃないが、もっと単純明快なやり方があるな。

[ワイ・テンペイ] お前たち二人とも少しは武術の心得があるのなら、ここで一勝負してみろ。武器の使用は禁止、拳だけの戦いだ。勝った方に、剣を渡してやる。

[ズオ・ラウ] ふざけないでください。民草の大事に関わることを、戯れで決めていいはずがないでしょう!

[ズオ・ラウ] 私は勝負など絶対にしません――

[ジエユン] ……時間が惜しい。

梅花拳法、これにより拳と脚の連携を自在にせよ。来た拳は繋ぎ止めて、相手が手を引いたら己の拳を伸ばせ。

至近距離で発勁せよ、力にも正誤あり。意を他に向ければ、その精神はまことに不出来……

[リー] ん?

空がわずかに白み、客桟内の従業員はようやく机を拭き、地面を掃いて、今日の厨房で必要な食材を準備し始めていた。

目覚めたばかりのリーの耳に、裏庭の方から羽獣のさえずりと、そして、立て続けに鳴る拳の音が聞こえてきた。

[リー] 親子ってやつは、切っても切れない縁だねぇ……

[リー] お見事、お見事。

[ワイフー] リーおじさん……

[リー] お前さんがその拳法を使ってるのを見るのはしばらくぶりだな。突然心法か何かに悟って、無策の策の境地に達したのかと思ったよ。

[ワイフー] ……また冗談を言って。

[ワイフー] 武術は、そんな突拍子もないものではありません。進歩したければ、日々の厳しい訓練に頼るしかないんですよ。

[リー] こいつは一本とられたね。

[リー] そういやぁ、初めてお前さんに事務所の使い走りをさせた時、ちーとばかり節度のなってないギャングの奴らと面倒事を引き起こしてたっけか。

[リー] おれが気付いて駆けつけたら、倒れたギャング連中の真ん中でお前さんが一人で立ってたね。まるで何もなかったみたいな様子でな。

[リー] あの時お前さんは、まだ十六歳だった……

[ワイフー] 私はちゃんと言葉を身につける前から、武術を学び始めましたから。

[リー] そんな昔のことも覚えてるのか?

[ワイフー] あの人が、教えてくれました……

[リー] 少なくともそっちの面に関しちゃ、あいつの教育は染み込んでるな。

[ワイフー] 古い言葉にはこうあります――「師とは門をくぐらせるもの。修行とはその者の行いによるもの。」と。

[ワイフー] でもそうですね、実は「門をくぐらせる」こともとても重要です……

[リー] あいつからしたら、それが父親として唯一お前さんにしてやれることだったんだろうよ。

[ワイフー] ……

[リー] 弁護してるわけじゃない。父親としては不出来なやつだが、それは別にお前さんが自分の望む人生を送る妨げにはならないだろ。

[リー] お前さんの武術は、あいつからの置き土産だと思えばいい。もし嫌なら、嫌いな習い事をやらされたとでも思って捨てちまってもいいさ。

[リー] 武の頂を追い求めることはあいつの道だ。だがそいつが、お前さんの道であるとは限らないよ。

[ワイフー] 私は武術が嫌いなわけではないです。当然自分の人生もあります。

[ワイフー] 私は龍門科学技術大学の機械工学専攻で、優秀な成績で卒業もしました。同時に、リー探偵事務所の従業員であり、ロドスの外勤オペレーターでもあります。

[リー] だが、冬青木区の勧善懲悪大義侠じゃあないんだろうな。

[ワイフー] 必要とあらば、やってみせますよ!

[リー] そうか。納得がいったんなら、次会った時、この話をあいつにしてやりゃどうだ。

[ワイフー] リーおじさん、やっぱり……

[リー] 突然ずっと修練してなかった拳法を使い始めたんだ、何かしらの理由はあるってもんでしょう。

[リー] ところで、あいつのここ何年もの無責任な行状を考えれば、お前さんに不満があるなら、一勝負挑みに行ったところで、誰も文句はつけやしないと思うぜ。

[リー] 挑んだ結果、負けたって構わないさ。あいつが今のお前さんの年の頃に、お前さんより優れていたとは限らないだろ。

[ワイフー] ……

ズオ・ラウは持燭人としてはまだ年若いが、こなしてきた仕事は決して少なくない。

だが、一撃も繰り出せないほど追い詰められたことは一度もない。彼がこれまで学んできた武術の中にも、反撃せず一方的に攻撃を受ける技などない。

己が間違っているという意識があるのだろうか? それとも傷を負った少女に手を下すような真似をしたくないのか?

まばらな雨粒のようにその身に振り下ろされる拳を、ズオ・ラウはただ防ぐだけだった。

双方ともに地面に倒れ、顔は泥だらけになりながらも、少女は全く諦めず、さらに懸命に拳を振るう。

その光景は、子供の喧嘩のようで滑稽だった。

[ワイ・テンペイ] (首を振ってため息をつく)

[ワイ・テンペイ] そこまで。

[ワイ・テンペイ] もう勝負はついた、この娘の勝利だ。

[ワイ・テンペイ] 受け取れ。

[ワイ・テンペイ] ひとまず見逃してやる。恩を返し終わったら、戻ってきて医療費を返済しろ。

[ジエユン] ……わかった。

[ワイ・テンペイ] 小僧、お前の刀だ。受け取れ。

[ワイ・テンペイ] 相手が負傷しているのに気付いて、やり返さなかったのは見てわかった。負けはしたが、言い訳は立つ。

[ズオ・ラウ] ……

[ワイ・テンペイ] そんな目で俺を見る必要もない。

[ワイ・テンペイ] あの娘は帰ってくると約束した、俺は彼女を信じる。もし約束が違えられるなら、俺に人を見る目がなかったということだ。

[ワイ・テンペイ] その時は、俺が連れ戻してこよう。

[ユーシャ] もう行っていいわよ。

[ドゥ] ……なんでそんな目で見るのよ?

[ユーシャ] 怪我はないようね。

[ドゥ] ええ。予想外だったかしら、それともがっかりした?

[ユーシャ] もちろん、あなたが無事な方がいいわ。

[ユーシャ] 無用な誤解を招いて、面倒事に巻き込んでしまったわね。ごめんなさい。

[ユーシャ] 彼らには説明をしておいたから、大丈夫。行っていいわ。

[ドゥ] 待ちなさい。

[ドゥ] さっきここの兵士から聞いたわよ。あの腕章――あんたから倉庫に落ちてったって渡されたやつは、元々一昨日都市の外から拾ってきた証拠品だそうね。

[ドゥ] 何も説明しない気?

[ユーシャ] もう知ってるなら、いまさら私が説明することもないでしょう。

ドゥ・ヤオイェの拳が空中で止まる。リン・ユーシャも避けるつもりはなかった。

[ドゥ] あのね。知り合ったばかりだし、信じてくれないのも無理ないわ。

[ドゥ] 鋳剣坊を調査する人間が欲しいなら、あたしだって協力するのに異論はない。

[ドゥ] でも、あたしの仲間の話を使って騙し打ちのように利用するのは最低よ。

[ユーシャ] ごめ……

[ドゥ] ストップ。やめて。

[ドゥ] あんたにそれを言う資格はないわ。絶対許さない。

[ユーシャ] わかったわ。

[ドゥ] これが、あんたたち龍門人のやり方なの?

[ユーシャ] いいえ。私のやり方よ。

[ドゥ] ……

[ドゥ] それで? 何か有用な情報は出てきたの? ただで利用されるだけってのも癪だし、教えてもらうわよ。

[ドゥ] 知ってることを全部話して。

[ユーシャ] 元々は少し疑わしかっただけよ。でも今は確信を持ってるわ。

[ユーシャ] 都市の外で襲撃に遭った信使部隊を見つけた時から、奇妙なことばかり起きているでしょう。

[ユーシャ] あなたたちが鋳剣坊で山海衆に遭遇したのも偶然じゃない。あのモンとかいう刀匠が、山海衆と通じている確かな証拠よ。

[ドゥ] 本当におじさんが……?

[ユーシャ] これら全てを計画する能力と動機がある人を一人挙げるなら、彼しかいないわ。

[ドゥ] でもなんで、おじさんはどうしてこんなことを……

[ドゥ] あたしの仲間の行方について、結局どこまで掴んでるの! 知ってることを全部教えなさい!

[ユーシャ] 今は新しい情報はないわ。でも人をやって調べさせてる。

[ユーシャ] 最悪の場合、信使部隊だけじゃなくて、玉門自体がすでに極めて大きな危険に陥っている可能性もあるわね。

[ユーシャ] 彼の目的がそうではないことを、あるいは、まだ挽回の余地があるのを願うばかりね……

この数十年、モン・ティエイーが鋳剣坊の外から自分の仕事場を眺めることはめったになかった。

中にいると、いつも中庭が窮屈に感じたが、通りから見てれば、壁は高くレンガは厚く、正門はどっしりとした構えで、それなりに立派だ。

ひと月限り立つ市場は、最後の数日を迎えていた。街頭は変わらぬ賑わいで、閑散としている鋳剣坊は却って目立っている。

「臨時休業」の看板は地面に落ち、代わりに赤い印が押された二枚の紙で扉が封じられている。

黒塗りの扉に打たれた黄銅の釘が、一つ欠けていた。いつ落ちたのやら、これまでずっと気付かず、言ってくる者もいなかった。

[モン・ティエイー] はぁ……

[モン・ティエイー] やっぱり歳だわなぁ、まるで木偶の坊だ。最後の一件も、うまくいかなかった……

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧