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更新日:2024/05/20 Mon 10:46:47NEW!
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dcコミックス アメコミ スーパーマン ロイス・レーン レックス・ルーサー new earth earth-0 ポストクライシス プレフラッシュポイント マーク・ウェイド レイニル・フランシス・ユー
『Superman: Birthright』は2003年にDCコミックスから出版されたアメコミ作品。
『Superman: Birthright』#1~#12
発売 2003年9月から
脚本 マーク・ウェイド
作画 レイニル・フランシス・ユー
日本では未邦訳。
スーパーマンを21世紀という新たな時代にふさわしく、誰もが共感できる存在に変えることを目指した作品。
元々はレギュラーシリーズとは無関係な独立した作品だったが、評価の高さから公式に採用され、
スーパーマンは1986年の『The Man of Steel Vol.1/MoS』以来となるオリジンの変更が行われることになった。
マーク・ウェイドが1978年の映画『スーパーマン』を見てから暖めてきたアイディアを活かした作品で、
完璧過ぎて共感しにくいスーパーマンから人間的なクラーク・ケントにスポットを変えて描いている。
そのためにとんとん拍子で10年間の成長を描いていた『MoS』と比べると多くの挫折がクラークの前に立ちふさがる。
序盤では自分が持つ力への悩みや拒絶されることへの恐怖がアフリカでの悲劇を通じて語られ、
中盤からはメトロポリスにヒーローと記者の2つの顔で受け入れられるまでをレックス・ルーサーとの戦いを通じて描かれる。
唯一のヴィランであるレックス・ルーサーの描写にも力を注がれており、『MoS』での大企業の社長という立場を受け継ぎつつ、
『プレクライシス』までの悪の科学者としての姿や少年時代のクラークとの友情が描かれ、もう1人の主人公と言える活躍を見せる。
その他にもスーパーマンの故郷クリプトンの存在も掘り下げられ、両親や文化の様子やSマークの重要性が語られる。
現実の問題からの影響もみられ、アメリカ同時多発テロ事件の影響や報道が持つ力の良い面と悪い面などが描かれている。
本作で描かれた新たなオリジンやルーサーとの関係性、クリプトンの姿はレギュラーシリーズにも影響を与えた。
その後2005年の『インフィニット・クライシス』でスモールビルのスーパーボーイの存在が語られたことで、
スーパーマンのオリジンが変化し、2009年の『Superman: Secret Origin』で新たなオリジンが描かれた。
【物語】
地球から遠く離れた惑星クリプトン。偉大な文明を誇ったその惑星には人知れず崩壊の時が目前に迫っていた。
その事実に唯一気が付いた科学者ジョー=エルは、自らの息子カルをクリプトン人が力を得ることが出来る地球に脱出させた。
地球にたどり着いたカルは、カンザスの片田舎スモールビルの農家ケント夫妻に拾われてクラークという名で育てられた。
そして高校卒業後の自分の居場所を探す旅の中で、クラークは自分の力を役立てる決意を固め、
家族の協力で英雄スーパーマンと記者クラークの顔を生み出し大都市メトロポリスに旅立った。
新天地でようやく居場所を見つけたと思ったクラークだったが、存在感を消し過ぎて会社に馴染めず、
さらに変わり果てた友人レックス・ルーサーの策略で、スーパーマンとしての信頼も失ってしまう。
そしてルーサーが仕掛けた偽りの侵略作戦の先兵に仕立て上げられたクラークは、失意に暮れ街を離れようとしたが、
クラークとしてもスーパーマンとしても自分を見てくれていたロイス・レーンの言葉で再び人々のために立ち上がる。
【登場人物】
- スーパーマン(クラーク・ケント/カル=エル)
惑星クリプトン最後の遺児。両親の手で地球に送られ、スモールビルの農家ケント夫妻の一人息子として育てられた。
特別な力に目覚めながらも地球の両親の教えで隠し続け、高校卒業後に自分の居場所を探そうと海外に旅立った。
7年の旅の中で報道の学士を獲得し、実母ラーラのタブレットでクリプトンの文化を学んでいくが、どこでも疎外感は拭えずにいた。
しかし西アフリカのKobe Asuruとの出会いと別れを経て、クリプトンの文化を継承し力を誰かのために使うことを決心し、
スモールビルに戻ると両親と協力して2つの顔を作り上げ、かつての友人ルーサーがいるメトロポリスに旅立った。
メトロポリスに来て早々にルーサーが起こした事件で活躍し、スーパーマンと記者の両方で社会に馴染めたと思ったが、
正体を隠すために存在感を消し過ぎて会社で居場所を失い、さらにルーサーの策略でスーパーマンとしての信頼も失くしてしまう。
その後ルーサーとの過去を見直すための帰省から戻ると、ルーサーが自分の知らない故郷の情報を悪用していることを知る。
そのことを問い質しに向かうと、ルーサーの口から故郷クリプトンが消滅していることを知り衝撃を受け、
さらに故郷の破片『クリプトナイト』から情報を得ていることや自分への攻撃が勝手な思い込みにあると知り、完全に対立した。
そしてルーサーによる自作自演の侵略が始まり戦いを挑むも、『クリプトナイト』の悪影響と市民からの拒絶で戦いを放棄、
両親の勧めもあってスモールビルに戻ろうとするが、ロイスに発破をかけられ再び人々のために立ち上がることを決意する。
ロイスに『クリプトナイト』を任せると、クリプトンの象徴Sマークを奪われながらも市民を守るために戦い続け、
その姿を見た市民たちから信頼を取り戻すことに成功し、時を同じくして『クリプトナイト』も排除され反撃を開始した。
『MoS』では自分の出生を知りすぐに人助けを開始していたが、本作では旅と出会いを通じて決意する流れに変更された。
両親のアイデアで生み出していたコスチュームは、自分から積極的にアイデアと素材を提供している。
クリプトン人としての名前が最初から付けられており、生みの親の腕に抱かれるなど両親との絆が強くなっている。
また彼を乗せたロケットも卵型のチェンバーに巨大な黄色のエンジンが付いたデザインに変更されている。
- レックス・ルーサー
大企業レックス・コープの社長。メディアや政府を操作し市民の信頼を勝ち取ることでメトロポリスの支配者に君臨している。
宇宙に強い関心を持っており、手に入れたデータから新技術を開発し、人生の成功と発展を成し遂げてきた。
自分より上と思った存在は叩き潰す傾向にあり、そのためならどんな被害を出しても構わないと思っている。
ウェイン社の防衛ドローンが軍に採用されたと知り、街でドローンを暴走させシェアを奪おうと企てた。
しかしスーパーマンの活躍で失敗に終わり、さらにクラークの記事で元社員の関与を報じられ名誉を傷つけられた。
この一件を本人は気にしていなかったが、スーパーマンから問い詰められた際の彼の目つきが気に入らず復讐を開始する。
まずクラークを通じてスーパーマンは宇宙人という情報を流し、彼が市民から得た信頼を奪って見せた。
さらに『クリプトナイト』のスーパーマンへの悪影響を実証するために橋を落とし、その責任をスーパーマンに押し付けた。
そして『クリプトナイト』から得た情報を元に宇宙人の偽りの侵略を報道させ、スーパーマンを精神的に追い詰めていった。
スーパーマンとの2度目の邂逅を経て完全に対立すると、部下にクリプトンの象徴Sマークを付け、偽りの侵略を開始した。
『クリプトナイト』でスーパーマンを妨害して街にダメージを与えつつ、特別部隊で街を救い英雄になるつもりだった。
しかし予想外のスーパーマンやロイスそして市民の活躍で計画に狂いが生じていく。
実は15歳の数か月間のみ父親に頼んでスモールビルに滞在し、昔そこで発見した隕石『クリプトナイト』を研究していた。
天才ゆえに町に馴染めなかったが、同じ空気を纏うクラークと意気投合し、宇宙の話を通じて親友と呼べる存在になった。
ある時から研究に没頭するようになり、その成果として時間を超えて対象が存在した空間を投影する装置を生み出した。
そしてクラークと共に『クリプトナイト』の過去を見ようとしたが、体調を崩したクラークの視線を軽蔑していると誤解、
彼も他の人間と同じ存在と断じて追い出し装置を起動したが、装置の爆発によって父親を含む全てを失い町から姿を消した。
この失敗をバネに10年の歳月をかけて現在の立場を手にしたが、スモールビルでの日々は無かったことにしており、
自分の記憶からはもちろんのこと町に残された痕跡もあらゆる手を尽くして抹消し、クラークの存在も忘れている。
唯一投影装置と一瞬だけ見たクリプトンの姿は忘れられず、再び装置を完成させ、スーパーマンの出現と共に利用している。
『MoS』では外見・設定共に大幅にアレンジされていたが、本作では『MoS』版とそれ以前のものが折衷されている。
特にクラークとの少年時代のつながりが復活し、2人の因縁や類似点がより分かりやすくなっている。
≪スーパーマンの家族・友人≫
- ジョナサン・ケント、マーサ・ケント
スーパーマンの地球の両親。ロケットの赤子を引き取り、成長するにつれて超人的パワーを発揮する息子を真っ当に育て上げた。
海外の旅から戻りヒーローになる決意を固めたクラークに、マーサはコスチュームを作成するなど積極的に協力した。
一方ジョナサンはクリプトンの文化を受け継ごうとする息子を見て、本当の父親になれなかったと感じ苛立ちを隠せずにいた。
しかしクラークから海外に旅立った理由が、18歳の自分が軍に入隊した過去がきっかけだと教えられ、ようやく受け入れた。
その後は周囲との関わりやルーサーとの関係に悩む息子を支えていく。
『MoS』より2人とも若々しく描かれ、特にマーサはパソコンを使いこなしてクラークとメールのやり取りをしている。
ジョナサンは息子の決断をすぐに受け入れる理解ある人物から、父親として悩むよりリアルな存在になっている。
- ジョー=エル、ラーラ
スーパーマンの実の両親。惑星クリプトンの住人で、ジョーは科学者。星の危機を知り、実の息子を脱出させ星と最期を共にした。
ラーラはクリプトンの情報をタブレットに残すも、自分たちの映像は残せず、スーパーマンは両親の姿を知らずにいたが……。
『MoS』での色味が少なく人間味の無いクリプトンから、レトロフューチャーを現代的にアレンジしたものに変更された。
服装も男性はスーパーマンを思わせるマントとシンボルを身に着け、女性は様々な美しい装飾を身に着け戦いにも参加する。
ジョーは感情を感じさせない雰囲気は変わらないが、その裏には強い愛と不安を隠しており、父親らしい存在になっている。
ラーラは無機質な人間から、夫を後押しし息子を愛する良妻賢母な人物に変更された。
- ロイス・レーン
メトロポリスの新聞社デイリー・プラネットの有能な記者。クラークが尊敬する人物で、Kobeの元にも取材に行ったことがある。
彼女の方もクラークが書いたKobeの記事を目にしており、その縁もあって入社したクラークのパートナーに選ばれた。
各地で活躍する謎の超人を追い周囲から白い目で見られていたが、スーパーマンの最初の活躍を記事にして汚名返上、
その後はスーパーマンを追いつつクラークを見守り、ルーサーの攻撃に追い詰められ逃げようとした彼を厳しい言葉で奮起させた。
最終決戦ではスーパーマンから『クリプトナイト』の対処を任され、何とか成功させたが背後にはルーサーが迫っていた。
『MoS』ではスーパーマンに憧れ、クラークをライバル視していたが、本作では冷静な目線で接し彼の導き手として活躍する。
またルーサーの嘘を根拠を明確にして見抜き、ルーサーの影響力の源を解説するなど、1人の記者としての有能さが際立っている。
- ジミー・オルセン
デイリー・プラネットのインターンのカメラマン。ロイスと共に様々な事件を追い、スーパーマンの最初の事件もカメラに収めた。
クラークとの交流シーンは少ないが、自分のことをジムと呼んでくれる彼を信頼し数少ない友人になっている。
スーパーマンのことはルーサーの情報の影響で疑いの目を向けていたが、最終決戦で市民のために戦う彼の姿を目撃、
その姿をカメラに収めて全世界に公開し、市民の考えを変えるきっかけとなった。
『MoS』ではほぼ背景のみの登場だったが、本作ではカメラマンとして重要な役割を持っている。
- ペリー・ホワイト
デイリー・プラネットの編集長。面接でクラークが真実を隠していることを見抜き、採用を見送ろうとしていた。
しかしルーサーのドローン事件の真相を見抜いたクラークの手腕を評価し、彼を採用した。
スーパーマンとルーサーどちらにもよらない平等な報道に徹しており、結果としてクラークを追い詰めていく。
ジミー同様に『MoS』ではほぼ背景のみの登場だったが、本作では出版に関わる者の代表として現実的な意見を述べていく。
- ラナ・ラング
クラークのスモールビルの友人。クラークが旅に出ている間にスモールビルを離れ音信不通になっている。
子供の頃のクラークは思いを寄せていたが、ラナの方はただの友人と認識していた。
『MoS』での悲劇のヒロインから一転してほとんど物語に関わらず、クラークへの影響も描かれなかった。
≪その他≫
- Kobe Asuru
西アフリカのGhuri族の活動家。Ghuri族を長年隷属してきたTuraaba族に言論で立ち向かっており、常に命を狙われている。
取材に訪れたクラークに命を救われ意気投合し、文化を継承することや誰かのために立ち上がることの大切さを伝えた。
その後クラークの助言を無視して演説を強行し暗殺されたが、Turaaba族の指導者は逮捕され、妹が遺志を継いだ。
そしてクラークも彼の影響と救えなかった後悔を胸に誰かのため立ち上がる決意を固めた。
本作オリジナルのキャラクター。アフリカが最初の舞台になったのはマーク・ウェイドのこだわりから。
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