登録日:2020/03/30 Mon 23:14:09
更新日:2024/05/17 Fri 11:10:20NEW!
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「センチュリオン」とは、第二次大戦末期にイギリスが開発し、戦後から冷戦期にかけて活躍したステキな戦車。
Centurionという名前は、古代ローマにおける軍の階級(というか役職というか)である、ラテン語「Centurio」の英語発音。日本語だと「百人隊長」などと訳される。
【どんな戦車?】
突然ではあるが、「第二次世界大戦の戦車!」と言われてとっさに皆様が思い浮かべる戦車はなんだろうか?
ソ連のT-34?
アメリカのM4シャーマン?
日本のチハたん?
そしてこのあたりで何か別の事を思い浮かべないだろうか?
「あれ?イギリスは……?」
と。イタリア?犬の餌にでもしろ
そう、第二次世界大戦におけるイギリスには「これこそイギリス戦車!!」と呼べるような戦車がどうにも出てこないのである。
これは単にイメージばかりというわけではなく、実際に各国が大戦中に主力とした中戦車の生産数を比べてみても、
IV号……約8000両
パンター……約6000両
M4シャーマン……約49000両
T-34……約58000両
チハたん……2133両
といった具合にチハ以外凄まじい数が作られているのに対し、イギリスの国産戦車では、最も数が作られた巡航戦車(他国で言えば概ね中戦車に該当する)「クルセイダー」ですら4000両程度でしかなく、これは輸入したシャーマン(約5000両)にすら劣る数である*1。
というのも大戦中のイギリスにおける巡航戦車の開発は不手際と不運と不具合のトリプルパンチにより、決定的に「頼れる」戦車がついにできなかったのである。
※ 第二次世界大戦時の栄光ある英国巡航戦車達(クリックで展開)
「カヴェナンター」
車高を低くし過ぎて容積が足りず、エンジンとラジエーターを前後に分散配置して対処しようとするも英国面と化す。
冷却能力不足によるオーバーヒートに悩まされたうえ、両者を繋ぐ配管が乗員の真下を通過する都合上「乗員が車より先にオーバーヒートする」欠陥車。
しかし大戦勃発が秒読みだったので性能評価試験すらせず大量生産し、見事に裏目に出た。
「クルセイダー」
カヴェナンターと並行開発され、多くの部品を共通するエンジン違いの兄弟。
採用実績豊富なリバティエンジンはオーバーヒートこそしないもののいかんせん古くて非力で車両が重すぎ負荷かかり過ぎ。
おかげで「整備後3日の内に故障しなければ、それは奇跡」とすら言われた劣悪な信頼性の上、装甲・火力共にドイツのIII号戦車に負けていた。
「キャバリエ」
クルセイダーの時点でも非力だったリバティエンジンを再登板。多少の改良はされたが小手先に過ぎず、クルセイダーより重い車両なので言うまでもなく信頼性・パワー共に劣悪。観測や訓練にしか使えなかった。
「セントー/クロムウェル」
キャバリエの駆動系を改修し、懸念のエンジンは後述するミーティアの投入でようやく解決。
……と思ったら今度は小型なせいで大火力の砲が装備できず、進化したドイツ戦車の装甲に対しては完全に力不足に。
「センチネル」
本国と比べて生産設備の劣るオーストラリアでも量産可能なコンセプトの下、米軍のM3中戦車と部品を共用化する設計の巡航戦車で、スピードこそ40㎞/hと標準的だが足回りの生産性や信頼性は悪く無く、前面は65㎜厚の鋳造傾斜装甲を有し、攻撃面では25ポンド榴弾砲や17ポンド対戦車砲が搭載可能で大戦全期間を通じて英国戦車最強の攻撃力を有するにも拘らず30t級に重量を抑えた佳作戦車。ティーガーやパンター相手でも有利とまではいかなくとも、何とか対抗可能な性能を有していたのだが、攻撃力は劣るも米軍との部品共用が可能なM4中戦車の輸入の目途が立ったことから製造中止に。
「チャレンジャー」
だが英国紳士は諦めないっ!
クロムウェルの車体を拡げて強力な砲を搭載しようとするも開発が超難航。
完成したのは1944年になってからで、しかも同じ砲を搭載する急造品「シャーマン・ファイアフライ」に性能面で完敗。
そんな有様であったのだが、しかしこれらポンコツいまいちな巡航戦車達の開発・生産は、決して時間と資源と資金と紅茶の英国的浪費のみで終わったわけではない。
これらの失敗をしっかりと血肉にし、戦訓や他国の戦車達の長所を取り入れながら完成した英国戦車の決定版…それが参謀本部ナンバーA-41こと「センチュリオン」なのだ。
【性能】
「走」
エンジンは、クロムウェルやコメットに採用されたロールスロイス製V型12気筒ガソリンエンジン「ミーティア Mk.IV」を搭載。
これはスピットファイアをはじめとしたイギリス航空機に使われRAFを支えた傑作「マーリン」エンジンを戦車用に改良したもので、良好なトルクと優れた信頼性を併せ持つ。燃費のことはおいておこう。
駆動系、つまり戦車の足回りはクロムウェルやチャーチル歩兵戦車などに採用実績のあるメリット・ブラウン式ギアを採用。
旧式のクラッチ・ブレーキ式に比べギアの負担が小さくて信頼性が高く、きびきびした動作が可能。停車中なら「超信地旋回(左右のキャタピラをそれぞれ前後逆に動かして行う高速その場旋回)」もできる。
車輪を支えるサスペンションにはそれまでの巡航戦車で一般的だったクリスティー式ではなく、チャーチルと同様の水平バネ型ホルストマン式が用いられている。構造的に言うと中期型シャーマンのものに非常に近い。
これは車体に外付けできる独立した連成懸架サスペンションで、むきだしのサス部分が被弾などで破損しやすい一方、それ自体が装甲として機能するため防御力が高いという利点がある。
また転輪が2個1組で並んでいるため、1つにダメージを受けても2輪が使えなくなるだけで済み、耐ダメージ性も高い。おまけに個々の装置が小さいため、破損したサスを交換するのも簡単で整備性も高い。
総じて高速走行にはあまり向かないが、逆に地形への追従性は高く、不整地や急な坂道などでも平気で走行が可能である。
エンジン出力600馬力に対し戦車重量は約47tなので、出力重量比(戦車1tあたりのエンジン馬力。基本これが高いほど機動性が良い)は12.7馬力とそれほど高いわけではなく、最高速度も時速34kmとあまり重視されていない。
しかし実際の戦車戦で重要なのは、最高速度よりもむしろ急加速/急停止などといった「運動性」の方であり、この点に関しては非常に優秀。
また前進速度に対して後退速度を非常に速くしてある特徴で、急速後退しながらの砲撃や、遮蔽物から出たり戻ったりするのも得意。
総じて「走」の部分に関して言えば、巡航戦車よりはむしろ歩兵戦車、特にチャーチル系のそれをダイレクトに継承したものとなっている。
つまり端的に言えば「最高速度を犠牲に、運動性と地形対応力を優先した」感じの方向性であり、これが戦後センチュリオンが高く評価された大きな一因となった。
ただしそうしたトルク・瞬発性重視設計の代償として燃費が極端に悪化しており、最高速度の遅さも相まって航続距離がとてつもなく短いという弱点も持ってしまった。
「攻」
主砲にはイギリスの誇る傑作対戦車砲「ロイヤルオードナンス QF 17ポンド砲」を採用。
これは1000mの距離で約150mmの装甲を貫通できる(APDS弾を使えば230mm超!)強力な砲で、常に対戦車火力不足に悩まされていたクロムウェルやシャーマンと違い、ドイツ重戦車との正面戦闘でも充分に有効打が望めた。
同じ17ポンド砲を搭載した戦車には、アメリカから大量購入したシャーマンを改造したファイアフライなどがいるが、車内の広さからくる装填速度の速さ、制振性(射撃後や停車後の振動を早く止める力)の高さからくる命中精度などの点ではこちらが勝っている。
一方でシャーマンやクロムウェルなどに搭載されているような車体機関銃は持たず、主砲防盾脇にボールマウント式(その名の通りボール状になっていて、全方位にグリグリ動かせるようにした銃架)の機関銃を1門搭載するのみとなっている。
「紅」
イギリス人であるからには当然イギリス紳士であるところの全戦車兵が待ち望んだ待望の装備、「電熱式湯沸かし器(ボイリング・ヴェッセル)」を英国戦車として(というか人類の戦闘車両として)初搭載。
この画期的装備のおかげで、エンジンさえ動いていればいつでもどこでもお湯を沸かすことが可能になり、わざわざ車外に出てお湯を沸かす隙をさらすことなく、車内で安全なティータイムが可能となった。我慢するという選択肢はない模様。*2
ただしこれは紅茶専用に備え付けられたのではなく、消毒や調理など用途は多岐に渡るものであったし、当時の機甲師団における戦死者の約37%が車外にいた者だったことに対する対応策の一つであったことも留意する必要がある。
「VBE.NO.1」と名付けられたこれの操作には、「湯沸かし隊長(BV Commander)」という権威ある専用乗員が用意され、常に装置が万全に稼働するよう、いつでもどこでも乗員全員に淹れたての紅茶を提供できるよう、細心の注意を払うことが求められた。
あとついでに暇になる戦闘中などは主砲弾の装填や通信なども担当した。
「守」
車体正面装甲は実厚76.2mmの圧延装甲だが、ソ連のT-34に倣った傾斜装甲を大々的に採用し、垂直方向からの砲弾に対する実効厚は120mmを越える。
逆に砲塔正面は単純な垂直装甲(鋳造)となっているものの、こちらは素の厚さが127mmあり、車体同様の堅固な防御力を誇る。
要するに「正面から撃たれる可能性の高い部位は全て120mm以上の防御力」ということで、ティーガーIの正面装甲(垂直100mm)をも上回り、パンターに並ぶ防御力を獲得している。
若干気になるのは車体前方の真正面に弾薬庫(当たり前だが被弾すると砲弾が誘爆することがある)が設置されている点だが、実は現代に至っても戦車の弾薬庫配置に「これが正解!」という決定打は無く、「一番強固な装甲の裏側に配置する」というのもそれはそれでアリではある。
また弾薬庫にはシャーマン系の後期型に装備されていた「湿式弾薬庫」を採用。
これは「弾薬庫が燃えやすい?なら中に水*3入れとけばいいんじゃね?」という大変にシンプルな発想に基づいた弾薬庫で、原理は単純だが弾薬の誘爆率を劇的に抑えられる逸品である。
とまあそんな感じで、走・攻・紅・守いずれの要素においてもそれまでの主力であったシャーマンやクロムウェルを大きく上回り、ドイツのティーガーやパンターとも堂々真っ向勝負が可能な性能を実現した。
また単純なカタログスペックだけではなく、戦車として、というか大型兵器としてとても重要な要素である「拡張性」において非常に優れているのも特徴。
それまでのイギリス戦車はサイズギリギリの設計を強いられたせいで拡張性が低く、時代に合わせた改良すら施せないことが非常に多かったのだが、センチュリオンではその反省から
・ターレットリング*4をクロムウェルの60インチ(1524mm)、コメットの68インチ(1626mm)から一気に拡大して74インチ(1880mm)に。
・車体容積を食わないホルストマンサスの採用や、乗員を4名に減らしたおかげで広々とした車内。
・曲面をほとんど用いず直線によって構成され、追加装甲などで増厚しやすいフォルム
などなど、様々な点で拡張性を重視した設計がなされている。
このため技術や時代に合わせて改良を施す余地が十分にあり、実際に幾度もの大改造を耐え抜いて長きにわたり運用され続けることに成功している。
【開発経緯】
センチュリオンの開発が始まったそもそもの原因は1942年9月、ドイツが誇るかの「ティーガーI」の登場にさかのぼる。
「この戦争での戦車の性能はまあうーん、重量が30tぐらいで、75mmクラスの砲を搭載って感じかな?最終的に?」と判断していたイギリス軍にとって、
・戦闘重量57t
・88mm砲搭載
・車体正面装甲100mm
というティーガーのぶっ飛んだ性能はまさしく衝撃的だった。
当時イギリスが生産に入ろうとしていた「最新型」であるクロムウェル巡航戦車の性能は
・戦闘重量27.5t
・57mm砲搭載
・車体正面装甲64mm
といった感じであり、ティーガーと比べればほとんど大人と子供のような差があったのである。
そして1943年5月にかけての北アフリカ戦線での戦いにおいて、ティーガーは連合軍に対して暴虐的なまでの戦闘性能を発揮し、その矢面に立った連合軍戦車部隊を恐怖に陥れる。
このためイギリスは、ティーガーに対抗できる新戦車として、クロムウェルを全面的に再設計した
・戦闘重量36t
・77mmHV砲*5搭載
・車体正面装甲76mm
というスペックを持つ「A-34巡航戦車」ことコメットの開発に着手したが、ドイツはその時点でティーガーを上回る後継機を当然開発しつつあるはずであり、それを考えればこの性能でもなお不安があった。
よってコメットはストップギャップへ回されることになり、北アフリカ戦線の終結後の5月から行われた関係者会議では、
・88mm砲を上回る貫通力の砲を搭載
・88mm砲の直撃に耐える装甲を持つ
・重量は40tまでOK
とティーガーを、そしてコメットをさらに上回る性能を持つ「A-41重巡航戦車」の開発が決定。これがのちのセンチュリオンとなる。
開発を担当したのは装輪装甲車なんかを作っていたAE社(宇宙世紀の方ではない)で、この時点ではまだ戦車の開発経験こそなかったが、A41の開発に当たってはそれまでのイギリスおもしろ戦車の開発・運用経験を存分に活用しつつ急ピッチで進めていった。
【活躍】
しかしヨーロッパにおける戦況の推移は開発当時の想定よりも早く、1944年2月には早くもドイツへの総反抗が開始された。
そして連合軍の対ドイツ作戦はいろいろとありながらも総じて順調に進んだため、完成したセンチュリオンがイギリス軍に引き渡されたのは1945年4月、つまりドイツ降伏のわずか一か月前となってしまった。
一応5月頭にはベルギー戦線に試作機6両が配備されたのだが、9日にはドイツが降伏したため当然ながら実戦を経験する間もなく、結局第二次大戦におけるセンチュリオンの履歴書はほぼ白紙で終わることになってしまう。
初陣をかっこよく決めそこなったセンチュリオンの真価は、しかし大戦終結間もなく始まった1950年の朝鮮戦争において発揮される。
この戦争では中朝軍の激烈な人海戦術に対し、国連軍側では戦闘の要として「盾」を担当する戦車の需要がひっ迫した。
しかし当時の国連軍側が保有していた戦車は
「M4シャーマン」
言わずもがなの大戦中の主力となった戦車だが、この時代では既に防御力が不足気味だった。
「M26パーシング」
防御力と火力は抜群だったが、出力重量比が低く足回りにも問題があって半島の地形に対応できず、特に攻勢時には「M4の方がまだマシ」とすら言われてしまう。
後にアメリカは走行系を改良して機動力の改善を図ったM46パットンを投入している。
「M24チャーフィー」
大戦中に使われていた軽戦車。機動性はあったが、所詮軽戦車なので火力・装甲ともに明らかに力不足。
と微妙にかゆいところに手が届かないラインナップであり、そんな中でイギリス陸軍第8王立アイリッシュ軽騎兵連隊が投入したセンチュリオン(当時はMk.III)は
「パーシングと同等以上の装甲」
「パーシングよりさらに高い攻撃力」
「シャーマンやチャーフィーを上回り、急斜面でも平気で動ける高い走破性能」
「地雷を踏んだり水田で故障したりしても、すぐ交換できるホルストマンサス」
などすべてにおいてジャストフィットする高性能を発揮。
臨津江の戦いや第2次フックの戦いなど各所で華々しい戦果を挙げ、「国連軍における最高の戦車」とまで言われるようになり、その評価を確固たるものとした。
さらにこのバランスの取れた戦闘性能は、大戦後の「戦車の行く先」にも影響をもたらした。
大戦中に開発・運用されていた「戦車」は、大きく分けて
- 機動力を犠牲に火力と防御力にステ振りし、敵戦車の駆逐や大火力陣地を強行突破する「重戦車」
- 火力と防御力を犠牲に機動力にステ振りし、偵察や哨戒、警備や輸送護衛を任務とする「軽戦車」
- それなりの攻撃力・防御力・機動力を持つが、重戦車や強力な対戦車砲には手も足も出なくなる「中戦車」
の3系統から運用されていたのだが、この戦いでセンチュリオンが見せた活躍は「あれ?センチュリオンって走攻紅守そろってるし、もしかして3系統の仕事を一機種で全部やらせても大丈夫なんでは?」という認識を改めて抱かせた。
これが3系統の戦車を統合する「主力戦車」という概念であり、やがてこの主力戦車が全戦車界の主流となっていくのだが、この流れに対してセンチュリオンの実績も大きな説得力となったことは間違いない。
ただしイギリスが重戦車と決別したのは、センチュリオンとコンカラーの後継を兼ねたチーフテンが登場する1960年代の話である。
また機動性が不足気味で砂漠地帯では故障も頻発したため、イスラエルはベン・グリオンへ近代化改修する際に徹底的な改造を施して対処している。
そして朝鮮戦争で得た高い評価を背景にセンチュリオンは各国に輸出され、米ソの代理戦争が世界中で繰り広げられた冷戦真っただ中、西側諸国の主力戦車として世界中で活躍した。
主要な戦いのみを挙げても第二次中東戦争(イギリス軍)、第三次中東戦争(イスラエル軍)、ベトナム戦争(オーストラリア軍)、印パ戦争(インド軍)など、世界のありとあらゆるところでセンチュリオンの姿が見られたのである。
【派生型】
センチュリオンは前述したように拡張性が非常に高く、かなり無茶な改造も(それも割と簡単に)施せる構造上の余裕があった。
そのためイギリス自身で、あるいはそれぞれの輸出先で状況に合わせた様々な派生型が作られており、生産数の割にはバリエーションが豊富。
「オリファント」
南アフリカが運用している、おそらくは最も有名な派生型。
アンゴラ軍の運用するソ連製戦車群に対抗するべくセンチュリオンに独自回収を施したのが始まりだが、それから魔改造に次ぐ魔改造を重ね、現在ではめっちゃ近代的な外見になった「オリファント MK.2」に進化している。
「ナグマショット/ナグマホン/ナクパドン/プーマ」
イスラエルがセンチュリオンの車体をベースに作り上げた各種装甲車両。
イスラエルは1000両以上のセンチュリオン(イスラエル名:ショット)を運用しており、主力戦車の座を後継のメルカバに譲って以降は多くの車両がこれらに改造された。
「テムサ」
ヨルダンがセンチュリオン(ヨルダン名:タリク)を改造して作った装甲兵員輸送車。噂ではタリクそのものも近代化改修の予定があるとかないとか……
などといった一部の派生型が、今でも現役で配備されていたりする。
【バージョン】
「試作型」
後述のMk.2の1号車を除くと大戦中に完成した唯一のモデル。
試作機なだけあってテストを兼ねた武装バリエーションが多く、
- 主砲に17ポンド砲、ボールマウントにポールステン20mm機関砲
- 主砲に17ポンド砲、ボールマウントにベサ7.92mm機関銃
- 主砲に77mmHV砲、ボールマウントにベサ7.92mm機関銃
- 主砲に77mmHV砲、砲塔後部にベサ7.92mm機関銃
の4つのタイプが存在していた。
「Mk.1」
試作車から砲塔をちょっと改造した初期生産モデル。武装は17ポンド砲+ベサ7.92mm。
戦後すぐに発注され、約100両が納品された。
「Mk.2」
1946年にMK.1から生産が移行したモデル。このモデルから名称が重巡航戦車から「中戦車」になった。コメットと似すぎていた砲塔が一体鋳造式の新型になっており、見た目のイメージが一気に変わって角ばった見た目や防盾内の機銃など、ぐーんと近代戦車っぽくなった。
また見た目だけでなく装甲もきっちり増厚されており、砲塔正面で防盾部(127mm)と重なる部分は254mmに達する重装甲となった。
実は大戦中に新型試作砲塔をエンジンを強化したボディに乗せて作り上げた増加試作機をそのまま量産しており、増加試作機を「生産1号」に登録変更した為、実は記録上の引き渡し開始はMk.1よりも早かったりする。
「Mk.3」
主砲を新開発の84mm砲「ロイヤル・オードナンスQF20ポンド砲」に換装し、FCSを最新型にしたモデル。
またエンジンも「ミーティアMk.IVB」に換装され、出力は650馬力となっている。
センチュリオンシリーズの中で最も多く生産されたいわばスタンダードモデルであり、他国に輸出したタイプもほとんどはコレ、ついでに画像検索をかけた時に出てくる画像もほとんどコレだったりする。
「Mk.4」
正統進化系モデルと異なり、歩兵の火力支援のために「ロイヤル・オードナンスQF95mm榴弾砲」を搭載したガンタンク的モデル。
計画段階ではセンチュリオンの1割をこのタイプにしようという話も出ていたのだが、既に同じ砲を搭載したクロムウェルが相当数配備されており、また歩兵用の携行ロケットの普及などで「今更95mm程度のためにわざわざ新型つくることもなくない?」という話になり、試作機1両が作られたのみとなった。
「Mk.5」
NATO規格に合わせて様々な点をアップデート。
砲塔の形がちょっと変更された他、後部脱出ハッチや英国戦車の伝統装備だった2インチ擲弾発射機が撤去され、代わりにけん引ワイヤーのガイドローラーなどが搭載された。
配備済のMK.3も大部分がこの仕様に置き換えられている。
これ以降もイギリス軍でのアップデートは断続的に続けられ、最終的には「Mk.13」にまで至るのだが、改良点が細かい・多い・時系列も入り組んでいると非常にめんどくさいので一気にまとめることにする。
※ 「センチュリオン Mk.13」に至るまでの改良点まとめ(クリックで展開)
「走」
エンジンが「ミーティア Mk.IVC」(750馬力)に換装されたが、車重もきっちりあがっていたため機動性はあまり変化がない(信頼性は上がった)。
また最大の弱点だった航続距離については外付けで大型タンクをつけてみたり車内のタンクを大型化したりと、積極的な改善が図られていた。
最終的には車体後部を延長する大改造を施して車内の燃料タンクを大型化することで、若干マシになっている。
「攻」
・主砲
20ポンド砲を、最新型の「ロイヤルオードナンス L7 105mmライフル砲」に換装。
これは西側諸国の戦車にほとんど搭載されることになる傑作戦車砲であり、センチュリオンの攻撃力を大幅に引き上げた。
105mmは最初砲弾搭載数が少なかったが、のちに改良されている。
・副砲
スポッティングライフルとしてブローニングM2(イギリス名:L21A1 )機関銃を追加で搭載。
またNATO間での運用性を上げるため、ベサ7.92mm機銃をブローニングM1919系7.62mm機銃に換装。
ついでにMk.7から対空機銃(車長キューポラの脇についてるアレ)も搭載されることになり、これもM1919が使用された。
・索敵系
ちょうど実用化されつつあった赤外線探査装置を積極的に搭載。
最初はアクティブ型(自分から赤外線を出さないとダメなタイプ)だったが、のちにパッシブ型(〃出さなくていいタイプ)となり、夜間戦闘能力が大きく向上している。
「紅」
サビとは無縁の新素材(ステンレス系)を採用した「VBE.NO.2」、漏電が多かったソケットを改良した「VBE.NO.3」へと順次改良されており、より美味しい紅茶を・速やかに・安定して淹れられるようになった。
またセンチュリオンでその有効性が証明された湯沸し器は、その後のイギリス陸軍装甲車両の全てに搭載されるようになった。
「守」
砲塔装甲の防盾部分と車体正面上部が51mmほど増強され、さらに強固になった。
元々の設計では8.8cmKwK36(L/56)を想定した装甲厚であり、T-54/55が搭載する100mmD-10(L/56)系統の徹甲榴弾に対しては不足していたためである。
ハンガリー動乱後に既存生産車両も含めて対策している。
【フィクション作品】
とまあそんな英国が誇るセンチュリオンなのだが、フィクション関連ではいまいち目立たない存在であったりする。
戦略SLGなどのゲーム面ではともかく、映画などの分野では非常に影が薄い。
戦争ものとして人気のある第二次大戦には間に合わず、イマイチ人気のない(政治的にも題材にしにくい)冷戦時代を活動期とする戦車だからだろうか……
それでも第二次世界大戦末期や朝鮮戦争に参加したコメットよりは知名度が高いだけマシである。
映画
『ヘルプ!4人はアイドル」
ビートルズ主演のアイドル映画。チーフテンの配備開始で退役したと思われるイギリス陸軍のMK.3が登場。
ストーンヘンジ(世界遺産)の近くで戦車の空砲をガンガン撃ちまくるという、今だとSNS等で炎上不可避であろうステキな場面がある。
あやうくジョニーを人間煎餅にしかけたシーンが有名。
『パワープレイ』
冷戦時代の真っただ中で作られたカナダのサスペンス映画。
主人公たちによってクーデターが起こされようとしている腐敗したある国(一応架空ということになっている)の戦車としてカナダ陸軍のMk.3が登場。
時期が時期なだけあってひたすらに重苦しい映画だが、途中でセンチュリオンのかっこいい行進シーンがあるのでファンにはお勧めかも?
砲塔横の雑具箱を外した珍しい姿も見れるぞ。
アニメ
『ガールズ&パンツァー 劇場版』
大学選抜チームの隊長である島田愛里寿の戦車として登場。
愛里寿が後方で指揮に専念していたからか、あるいはセンチュリオンの常として稼働時間が短いからか、中盤までは全然動かなかったが、終盤になって処刑用BGMを流しながらついに出撃。
瞬く間に10両もの戦車を撃破して単機で戦況をひっくり返し、あんこうチーム&西住まほとの最終決戦に臨むが……
その圧倒的な活躍とこだわりの作画に、全世界のセンチュリオンファンが涙したとかしないとか。
なお戦車道のルールで「使用できる戦車は大戦までの車両」なため、登場するのは試作機(17ポンド砲+ボールマウントにベサ7.92mm機関銃装備)である。
ゲーム
『World of Tanks』
PCや各コンシューマ機などで手広く展開している対戦型戦車TPS「World of Tanks」では、当然ながらセンチュリオン各種も登場。
基本はイギリス所属だが、他国に幅広く輸出されただけあって、オーストラリア軍のMk5/1*6、スウェーデン軍仕様のStrv81なども登場する。
イギリスの通常ツリーにはtier(戦車の戦力レベル)8中戦車として「Centurion MK.1」、tier9中戦車として「Mk.7/1」、tier10中戦車として開発中止になった試作機「Action X」がそれぞれ所属している。
共通して「かなり強固な砲塔装甲」「若干頼りない車体装甲」「拡散値以外は非常に優秀な主砲」などといった特徴があり、ハルダウンが強力に作用するゲーム性もあって、総じて使い勝手は悪くない方。
追記:修正はBGM『無双です!』を流しながらお願いします。
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▷ コメント欄
- wotで初めて知って、足回りの色っぽさに惚れて一番乗り回した。 個人的に165mm破砕砲乗っけた防御陣地絶対破壊するマンにドーザーブレードも付いた外観もイかしたやつ好き。動かせるゲーム無いかね… -- 名無しさん (2020-03-31 00:20:15)
- WW2英国巡航戦車一覧でコメットはdisられてないのが流石。まあシャーマンと違って遅すぎた気がするけど… -- 名無しさん (2020-03-31 01:26:10)
- Let's〜ride on 〜♪ -- 名無しさん (2020-03-31 01:47:37)
- 紅はネタに思えるかもしれないが戦場で一服できる設備として兵士のメンタルカウンセリングに一役買ってると考えると馬鹿にできない。いわば走攻守に癒もついていると -- 名無しさん (2020-03-31 09:45:13)
- ↑理屈は分からんでもないけど兵器の項目に紅茶がちょくちょく出てくるのは草……いや茶葉生えるわ -- 名無しさん (2020-03-31 10:03:27)
- 湯沸かし隊長が暇な時に装填手兼通信手やってるの笑える -- 名無しさん (2020-03-31 11:21:57)
- 紅ってなにかと思った。パスタ優先のイタリアを笑えねえな。 -- 名無しさん (2020-03-31 11:38:43)
- いつでも紅茶が飲める!って要は居住性が高いって事だしな。士気の維持という意味では理に適ってはいる。単純な強さ硬さ速さみたいなのとは違うカタログスペックに出ない強みは実際重要。……字面がアホっぽいのは気になるけど……ww -- 名無しさん (2020-03-31 11:59:56)
- WTだとミサイルを撃てる派生型に乗れる -- 名無しさん (2020-03-31 12:09:56)
- 湯沸かし隊長はどう考えても紅茶入れる以外の装填や通信がメインの仕事じゃないんですかね… -- 名無しさん (2020-03-31 14:10:21)
- 冒頭のフリのところ完全にフランス無視されてんな -- 名無しさん (2020-03-31 14:23:40)
- お湯が車内で作れる=レトルト食品程度なら調理可能ということで。現代でも残ってるのはその辺の考慮もある。 -- 名無しさん (2020-03-31 16:43:38)
- ある漫画に「末永いセンチュリオン」とあったが、なるほどこいつはすごいや。(対義語は「すぐ作れてとりあえず動くT34」) -- 名無しさん (2020-03-31 17:42:51)
- 湯沸かし隊長って滅茶苦茶気が短そうな役職 -- 名無しさん (2020-04-01 01:15:28)
- イギリスで戦車の発展が遅かったのってやはり島国だからなのでは… -- 名無しさん (2020-04-01 11:08:19)
- 戦車開発競争の面もあった第二次世界大戦において、最後の最後で戦車発祥の地の意地を見せた感があるな。 -- 名無しさん (2020-04-01 12:38:31)
- 湯沸かした時点で水の煮沸消毒にもなるしな。やっぱあれば便利 -- 名無しさん (2020-04-09 19:21:55)
- さらに言えばお湯で器具を消毒できるから軽い怪我なら大分ましな治療を施せるのも大きいと思う。なんだかんだあるとないとではぜんぜん便利さが異なる装備だと思うわ。 -- 名無しさん (2020-08-17 22:05:09)
- 欧州戦線でクッソ寒い最中に車内で待機しろって言われたら、紅茶ぐらい飲みたくなるわな…悪知恵働く兵隊が車内に携帯ストーブ持ち込んで湯沸かしなら火事になるし しっかし湯沸かし隊長て役職…w なんだかんだで今も使われてるのが凄いわな、WW2から現役の車両てこいつぐらいか?(WW2のとは名前を受け継いでるぐらいしか共通点ないが) -- 名無しさん (2020-09-03 11:05:41)
- フランス戦で大量の軍需物資を失ったイギリスが戦車生産に注力できるはずも無いなら生産数が控え目なのは仕方ない。歩兵に持たせる小銃にすら事欠いてたんだから -- 名無しさん (2020-09-03 11:25:10)
- ↑序盤で物資を大量に失っているのはソ連も同じだが工業力の差がかなり大きかったんだな -- 名無しさん (2021-02-21 00:36:45)
- 不謹慎ながら、ウクライナでロシア軍が食事中に襲われたような痕跡が複数あるのを見ると、車内で紅茶飲めるようにした英国軍の意図が少しばかりわかるような気がしてきた…… -- 名無しさん (2022-03-15 21:45:13)
- ↑2ソ連も中盤まで銃や弾薬、戦車のどれも不足しているよ。生産数の違いは性能に不足がないT-34が開戦前に量産開始していたのが大きい。 -- 名無しさん (2023-12-03 05:18:18)
#comment
*2 イギリス人が紅茶狂いなのは確かだが、当時の砂漠戦線では水の輸送にジェリカンが使われていて中の水が臭かったのを誤魔化す意味合いもあった。
*3 実際には不凍液などが使われた
*4 車体に砲塔をぶっさす穴部分のこと。これが大きいほど大きい衝撃を吸収できる=強力な砲を積める
*5 本来は76mmだが、他の76mm戦車砲との区別で77mmと呼称。元々は75mm砲だったが、17ポンド砲の弾頭を流用するために変更された
*6 ただしゲーム的な所属はイギリスになっている
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