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理想都市-エンドレスカーニバル-_IC-6_戦うか逃げるか_戦闘後
数十万のドゥリン人がアカフラの助けを必要とする状況に直面し、ガヴィルはこれまで経験のないプレッシャーと責任を感じていた。アヴドーチャは地上へのルートマップを探しに図書館へ向かう。
[エッジ] 地上へ向かう?
[アヴドーチヤ] ドゥリン人は、これまで地上に向かったことはありませんのよ!
[ガヴィル] スディチは行ってたよな? 図書館にある本だって、地上に行った奴が持ち帰ったんじゃねぇのか?
[ガヴィル] それに、行っちゃいけねぇなんてルールはないんだろ?
[ガヴィル] お前らの話じゃ、トンネルを行くのは危険だし、新しいシェルターも間に合わねぇ。
[ガヴィル] だったら、地上へ出てアカフラに避難するのが一番いい方法だろうがよ。
[アヴドーチヤ] あの昇降機でそんなにたくさんの人を運べるはずが……
[アヴドーチヤ] ……
[ガヴィル] どうした?
[アヴドーチヤ] 貴方に反論したいという気持ちはあります、ですが……
[アヴドーチヤ] 貴方がたはご覧になったことがないでしょうが、ドゥリンの社会において、列車は最も一般的な交通手段ですわ。
[アヴドーチヤ] 確かに昇降機は垂直方向の移動には便利です……
[アヴドーチヤ] しかし、ドゥリンの都市は移動が不可能で、建設当初から壊滅のリスクを負っているため、垂直移動しかできない昇降機の実用性は、列車にはるかに劣るものだと考えられていますわ。
[アヴドーチヤ] それに、一部のドゥリンの探検家によると、ドゥリンの都市は通常地下千メートルから千五百メートルの位置に建設され、この範囲を超えて存在する都市は極めてまれだそうですわ。
[アヴドーチヤ] つまり、ドゥリンの地下開拓は水平方向にしか行われてませんの。垂直方向に数百メートル行けば別の都市に着くなんて状況は、まずありませんわ。
[ガヴィル] ふーん……で、それが昇降機とどういう関係があるんだ?
[アヴドーチヤ] 貴方にご説明するのが時間の無駄だとわかっていますが、他の方には説明する責任がありますわ。
[ガヴィル] んだよ! お前の言ってることってつまり、ドゥリン人にとっちゃ列車作った方が便利だってことだろ?
[アヴドーチヤ] ええ、まぁそういうことですわ。
[アヴドーチヤ] では、そのような状況で、昇降機は一体何のために存在しているのかしら?
[エリジウム] ああ、わかった。資源のためだね、そうでしょ?
[エリジウム] ドゥリン人の都市がどうして横に発展するのかはわからないけど、恐らくそういう習性なんだろうね。
[エリジウム] でもさ。それは、彼らの資源探索までもが横向きってことじゃないよね?
[アヴドーチヤ] 貴方が色々な場所を渡り歩いてきたというのは、ただの誇張表現だと思っておりましたけど、本当に見識が広いようですわね。
[エリジウム] わお。
[エリジウム] ガヴィル、今の聞いた? 君よりアヴドーチャさんの方が僕の実力をよく理解してくれてるみたいだよ。
[ガヴィル] はしゃぐな、知るか。
[エリジウム] アヴドーチャさん、もし今度君がガヴィルと喧嘩になったら、僕は必ず君の味方につくよ。
[アヴドーチヤ] ……遠慮いたしますわ。
[アヴドーチヤ] とにかく、貴方のおっしゃる通りドゥリン人は地下の探索――特に鉱物の探索に関して、非常に熱意を持っておりますの。
[アヴドーチヤ] それに、都市の計画は多数の住民による決が必要とされますが、穴を掘ることに関しては、ドゥリン人が各々の裁量で自由に行えるのですわ。
[アヴドーチヤ] ですから、うっかり都市の上や下に数百メートルも掘り進めていたなんてこともよくありますの。
[アヴドーチヤ] 実際、多くのドゥリンの歴史学者はこう考えておりますわ……
[アヴドーチヤ] ドゥリン族の一番最初の昇降機が設計された理由は、工業代表が都市上部に鉱脈を見つけ、そこに向かって直接穴を掘るのが最も早いと判断したためであると。
[アヴドーチヤ] ですが、次第にドゥリン族の中からも地上に興味を持つ者たちが現れて、昇降機は地上への近道としてよく利用されるようになったのですわ。
[ガヴィル] えっと……つまり、昇降機は主に鉱石を運ぶためのもので、たまにスディチみたいなガキンチョが地上へ遊びに行くのに使われるってことか。
[スディチ] オレとアンタの年齢はほとんど同じだって言っただろ、ガヴィル!
[ガヴィル] うん、まぁそれについてはわかった。だがよ、そんだけ説明されたところで、結局お前が何を言いたいのかはわかんねぇぞ。
[アヴドーチヤ] はぁ……
[エリジウム] アヴドーチャさんが言いたいのは、ドゥリンの昇降機はほとんどが工業向けに設計されているから、充分頑丈だってことだよ。
[エリジウム] それはトミミと下りてきた時に僕も気付いたよ。あの昇降機なら数十人は楽に運べるよ。
[エリジウム] つまり、ガヴィルの提案は実現可能だってこと。
[エリジウム] でしょ? エッジ先生。
[エッジ] うむ。
[エッジ] 確かに超便利大エレベーター壱号機は、最初はどこぞの暇な奴が上に鉱脈を発見し、その後に多数決を経て設計されたものだ。
[エッジ] だが、その後もっと近い場所に鉱脈が発見されたため、放置されてしまった。
[ガヴィル] あぁ、なるほどな。あの洞窟にゃ、採掘されたような痕跡があるらしいしな。まさかあの洞窟自体がお前らドゥリンが掘ったものじゃねぇよな?
[エッジ] それはわからんが、可能性はある。
[アヴドーチヤ] それに、ドゥリン人は昇降機を設計や建造する際、起こりうる事態に備えて、将来に拡張できるよう、なるべく多くのスペースを掘っていましたの。
[エリジウム] つまり、源石爆発までの時間を有効に使いたいなら、あの昇降機を拡張して、住民たちを地上に行かせるのが一番ってことだね。
[ガヴィル] なるほどな、だったら最初からそう言えば済む話じゃねぇかよ。
[アヴドーチヤ] どうすればいいか知っていても、なぜそうするか理解しなければ、いつか障害にぶつかりますわ。
[ガヴィル] わかってるよ。
[ガヴィル] だけどアタシは医者なんだ、アヴドーチャ。
[ガヴィル] それに、お前だってわかってるだろ。
[ガヴィル] アタシはお前を信じてるから、細かいことは必要ない。
[アヴドーチヤ] 分かりませんわね……わらわたちは一体いつからそんなに良い関係になったのでしょう。
[ガヴィル] アタシはもうダチだと思ってるぜ。
[アヴドーチヤ] ……
[エッジ] とにかく、私はガヴィルの提案に賛成だ。
[エッジ] 詳細はお前たちで話し合ってくれ、私は引き続き観測をする。
[エリジウム] エッジ先生、僕も手伝うよ。僕はアーツで情報を伝達できるし、先生の方で何か結果が出ればすぐにみんなに知らせるよ。
[エッジ] よかろう。
[スディチ] ……
[エリジウム] おっと、そうだ、言い忘れてた。
[エリジウム] アヴドーチャさん、過去の辛い経験のせいで、地上に戻ることに抵抗があるのはわかってるよ。
[エリジウム] だけど君はゼルウェルツァの人たちに影響を与えることができる人だから、君の意見は重要な意味を持つんだ。
[エリジウム] 君は物事をわきまえている人だし、今は野暮なことを言ってる場合ではないってこともよくわかってる――よね?
[アヴドーチヤ] ……はぁ。
[エリジウム] それじゃあ、君たちが話し合いで最適な結論を出してくれることを期待しているよ。
[スディチ] オレはエッジじいを手伝ってくる。今はシンボルのデザインなんて考えたところで意味がないし。
[ガヴィル] あ? お前が行ったところで何もできねぇだろ?
[スディチ] 自分の都市の心配をしちゃダメなわけ?
[ガヴィル] そういうことなら、好きにしな。
[ガヴィル] で、アヴドーチャ、まだ首を縦に振る気はねぇのか?
[アヴドーチヤ] (深呼吸)……
[アヴドーチヤ] もしこれが、ゼルウェルツァの住民たちを救う最善の方法であるならば、わらわの個人的なわがままなど、どうでもよいことですわ。
[アヴドーチヤ] ですが、ガヴィルさん。
[アヴドーチヤ] 貴方は確かにわらわが見てきた数多のウルサスの戦士よりも強く、力があるけれど。
[アヴドーチヤ] けれど、個人の力で解決できる問題ではありませんわよ。
[アヴドーチヤ] この都市には数十万のドゥリン人がいるということを考えたことがおありですの?
[アヴドーチヤ] サルゴンの、一つの地区に突然数十万の人口が押し寄せることが、どれほど大変なことかわかってらっしゃいますの?
[アヴドーチヤ] 貴方がたのジャングルは数十万人を受け入れられるくらい広いから大丈夫だなんて、そんな単純な話ではありませんわ。
[アヴドーチヤ] 現地の首長はこれをどう思いますの?
[アヴドーチヤ] サルゴンという国はこれをどう思いますの?
[アヴドーチヤ] ドゥリンたちが貴方を信じて地上に出たとしても、彼らを待ち受けているのが、故郷に迫るものより残酷な現実だとしたら。
[アヴドーチヤ] 貴方は本当に、これが唯一の現実的な方法だと言えますかしら?
[ガヴィル] ……
[イナム] ガヴィル、アカフラの首長として一番適任なのは、あんたなのよ。すべてのティアカウを従えることができるのはあんただけ。
[イナム] あんたが帰ってくるのをみんなが期待しているの。
[イナム] 本当に嫌で断ると言うんなら、最終的にはサルゴン宮廷から送り込まれた誰かが首長になって、アカフラを管理するでしょうけど。
[イナム] その時、アカフラは確実に自由を失うわ。今のような姿であることはありえない。
ガヴィルは、わずかに躊躇した。
いつの間にか、選択の時がすぐ目の前まで迫っていることに気付いたのだ。
彼女は責任を負いたくないわけではなかった。
放浪の最中も、ロドスでの暮らしの中でも、彼女がアカフラや部族のことを忘れたことは一度もないのだから。
ただ――
医術を学び、鉱石病に罹っている人々を救う。
アカフラを去る時に誓ったその決意も忘れてはいない。
選択がこれほど困難なものになるとは、彼女は思いもしなかった。目の前にある二つの選択肢はどちらも正しく、どちらも彼女が望むものだった。
[アヴドーチヤ] どうやら貴方も、そこに考えが及ばないほど単純というわけではなさそうですわね。
[アヴドーチヤ] ガヴィルさん、もし貴方が本当にこの問題を解決できるのならば、わらわは喜んでドゥリン人を説得いたしますわ。
[アヴドーチヤ] ――答えをいただけますか?
[ガヴィル] ……
アヴドーチャの言う通り、もしこれがゼルウェルツァを救う唯一の方法であるのなら。
もし自分が首長になることで、この問題を解決できるのなら。
もしこれが自らの理想を貫いた結果、支払わなければならない代償であるのなら――
もし本当にそうなのであれば――
[ガヴィル] アタシは――
[トミミ] わ、私がアカフラの首長になります。私がその責任を負います!
[ガヴィル] トミミ!?
[スディチ] ……
[スディチ] ゼルウェルツァが、滅びる?
[スディチ] ハッ、ハハッ……ほんと笑えない冗談だ。
スディチがドームを見上げる。
彼はずっと、このドームを改修することから、あるいは新たにそれをデザインすることから逃げてきた。
まだ時間はある……彼はそう思っていた。
しかし、今になって彼はようやく気付いた。自分に残された時間は少ないのだと。
[スディチ] 師匠、オレにはもう、あなたを超えるチャンスはないみたいです。
スディチはボートに乗り込み、対岸に向かって進んでいく。
彼には冷静になれる場所が必要だった。
[ガヴィル] トミミ、お前どうしてここに?
[ユーネクテス] エッジ先生が必要としていた設備と人手を運んできたついでに、お前たちの様子を見に来たんだ。
[イナム] どうやら来てみて正解だったわね。
[ガヴィル] お前らまで……いや待て、トミミ、お前がさっき言ったことは、本当にちゃんと考えた結果なのか?
[トミミ] もちろんです!
[トミミ] アヴドーチャさん、アカフラはこれまで首長がいない状態でした。
[トミミ] アヴドーチャさんの言ったように、数十万のドゥリン人が地上へ行けば、必ずサルゴン政府の注意を引きます。
[トミミ] ですからそれまでに、わ、私がサルゴンのアカフラ地区を管理する首長となって、この件を問題なく収めたいと思います!
[アヴドーチヤ] 首長がいない? たとえそうだとしても、そう簡単に首長になれるわけが――
[イナム] 私はサルゴン政府からアカフラに配属されたトランスポーター……兼偵察員よ。
[イナム] 私が手伝って、政府の注意を引く前にアカフラに首長を立てれば、この件は大事にはならないわ。
[イナム] それなら、あんたも安心じゃない?
[アヴドーチヤ] ……
[ガヴィル] だがトミミ、お前……
[トミミ] 大丈夫です、これでガヴィルさんが困ることはありませんから!
[ガヴィル] 確かにそうだが、でも……
[ユーネクテス] 負い目を感じることはないぞ、ガヴィル。
[ユーネクテス] トミミが自ら望んでやっているんだ。それに彼女がやらなければ、私が立候補していた。
[トミミ] そうです!
[ガヴィル] ズゥママ……
[ユーネクテス] それとも、怖いのか? 自分が間違っていると思うのか?
[ガヴィル] ……
[ガヴィル] アタシは自分が間違ってるとは思わねぇ、ただ妙な感覚だな……
[ガヴィル] この感覚をどう説明すりゃいいんだろうな。
[ガヴィル] そうだな。例えば、今アタシの目の前に巨大な岩があるとする。
[ガヴィル] 全力を出さなきゃ、そいつをぶち壊せないだろうと思ってたんだ。
[ガヴィル] だが、いざやろうとすると、案外簡単に粉々にできそうだって気付いたんだ。
[ガヴィル] ただ……なんでだろうな? こんなにでけぇ岩なのによ。
[ユーネクテス] ガヴィル、私がお前のために作った斧は、扱いやすいか?
[ガヴィル] おう、正直想像してたよりも手に馴染むぜ、すげぇ気に入った。
[ユーネクテス] その装備一式を作るため、私は何日も徹夜した。使用した材料も、現段階で揃えられる最高のものだ。
[ガヴィル] あ? もっと早く言えよ、悪いじゃないか。ありがとうな。
[ユーネクテス] なぜ今その話をしたかというと、お前のためにしたことに対して、お前からの感謝など必要ないと言いたかったからだ。
[ユーネクテス] なぜなら――
[トミミ] なぜならガヴィルさんはガヴィルさんだからです!
[ガヴィル] そりゃどういう理屈だよ?
[ユーネクテス] 簡単な理屈だ――
[ユーネクテス] ――ガヴィル。お前の拳は、お前が思っているより大きいんだ。
[ユーネクテス] 私がついているからな。
[トミミ] 私も忘れないでください!
[ユーネクテス] もちろん、私たちだけじゃない。ロドスの者たちも、お前に救われた人々やアカフラの奴らもだ。
[ユーネクテス] なんでみんながお前につくのか。それは、ガヴィル。お前がいつも正しいからだ。
[ユーネクテス] お前にぶちのめされた者たちは、いつも結局お前を認めるだろう。それは、そいつらも最終的にはお前が正しいと気付くからだ。
[ユーネクテス] ガヴィル、お前は正しさを間違えたことがないんだ。
[トミミ] みんな、ガヴィルさんを信じています!
[ユーネクテス] だから、私たちの拳はみんなお前の拳だ。
[ユーネクテス] ──だから、自分の拳を信じろ、ガヴィル。
[トミミ] ガヴィルさんはただ前へ突き進めばいいんです、私たちが支えますから!
[ガヴィル] お前たち……
[トミミ] あっ、でもでもズゥママ――
[トミミ] 次にガヴィルさんの装備を作る時は、私も手伝いますから!
[ユーネクテス] いや、私一人で充分だ。
[トミミ] ダメです、不公平ですよズゥママの飾りばっかり! 私だって……私のドリームキャッチャーを描きたいんです! それと「ガヴィルウィル」のマークも! それから……
[ガヴィル] おいトミミ、そりゃ無理だって、多すぎんだろ。
[トミミ] ううっ、三つだけでいいですから!
[トミミ] 描かせてくれなきゃガヴィルさんの尻尾が太くなっちゃいますよ!
[ガヴィル] アタシの尻尾を呪おうとすんな!
[トミミ] いたっ! ゲンコツはやめてください……
[イナム] ……
イナムは、隣にいるループスの女性が目の前で繰り広げられている光景を、理解できないといった様子で眺めているのを感じた。
しかし彼女にとっては、ごくありふれた一幕だった。
イナムは小さくため息をついた。
彼女は理解したのだ。自分がようやく覚悟を決めたことに。
[イナム] だったら、私にもっと良い提案があるわ。
[ユーネクテス] イナム?
[イナム] 私がアカフラの首長をやるわ。
[ガヴィル] は?
[イナム] 政府のトランスポーターとして、あんたたちと腐れ縁でアカフラで過ごしてたことだし、私にも首長に立候補する権利はあるはずよ。
[イナム] ただ、これまでそうしたくなかったってだけ。
[イナム] 今、トミミをロドスから戻って来させるより、ずっとアカフラにいる私が首長をやる方が都合がいいでしょ、違う?
[イナム] この方があんたも安心できるでしょ、アヴドーチャ。
[アヴドーチヤ] それは確かにそうですけれど、貴方がた、さっきまでの騒ぎは一体どういう――
[イナム] 彼女たちは……いえ、私たちはただ、ジャングルで生活するバカな一族だってことよ。
[トミミ] イナム、本当にいいんですか?
[イナム] そうすれば、あんたもガヴィルのそばを離れずに済むでしょ?
[ガヴィル] ……
[イナム] ガヴィル、私たちは良い友達になれるわよね?
[ガヴィル] ……ハハハ、当たり前じゃねぇか!
[ガヴィル] お前がそこまで言うなら、遠慮はしねぇぜ!
[アヴドーチヤ] ……
[アヴドーチヤ] 承知いたしましたわ。いずれにしても、貴方がたは確かにわらわを説得しました。ならば、わらわも約束を果たしますわ。
[アヴドーチヤ] けれど……ガヴィルさん、喜ぶのはまだ早いですわよ。
[アヴドーチヤ] 都市の住民全員を地上へ向かわせるなんて、このようなことはドゥリンの歴史上、かつてない一大事ですわ。
[アヴドーチヤ] ですから、必ず全住民の採決を経ねばなりませんわ。もし最終的に住民たちの同意を得ることができなければ、わらわも打つ手がありません。
[ガヴィル] だからお前に説得してもらおうってんじゃねぇか。
[アヴドーチヤ] ……ご安心くださいまし。約束したからには、できる限りのことはいたしますわ。
[ガヴィル] ハハッ、ありがとな。
[アヴドーチヤ] (小声)本当は、わらわの方がゼルウェルツァの人々に代わって、貴方に感謝すべきなんですのよ。
[ガヴィル] あ? 何か言ったか?
[アヴドーチヤ] 戻って準備をしなければならない、と申しましたの。
[ガヴィル] だったらアタシは――
[アヴドーチヤ] わらわのためにスピーチ原稿でも書いてくださると?
[ガヴィル] 無理だな。
[アヴドーチヤ] では貴方は自分が得意なことをなさった方がよろしくてよ。本当に貴方の手伝いが必要な時は、声を掛けますわ。
[ガヴィル] おうよ。
[ガヴィル] そんじゃイナム、お前とズゥママはすぐ地上に戻って、老人や子供を連れてアカフラの辺縁部まで退避してくれ。
[ガヴィル] それから――
[ユーネクテス] 若い衆を連れて、昇降機拡張の準備をする。だろ?
[ガヴィル] そうだ。
[イナム] わかったわ。
[トミミ] ガヴィルさん、私はどうすれば?
[ガヴィル] お前はアタシについてきな。
[ガヴィル] アヴドーチャの手伝いが不要なら、エッジ先生の方で手助けがいるか見てくる。
[トミミ] はい!
[ガヴィル] じゃあ、先に行くぞ。
[イナム] ……そういえば、ズゥママ。
[イナム] 現実的じゃないことはわかってるけど、あんたとガヴィルが下りてきた道って、戻れたりしないわよね?
[ユーネクテス] ああ、戻れそうもないな。
[イナム] だったら道案内をしてくれる人が必要よ。昇降機の上にある洞窟は相当複雑だったもの、全く覚えてないわ。
[イナム] 私たちを案内してきたスディチ、もしくはエリジウムでもいいわ。彼ならあの道をどう行くか、スディチよりも詳しいでしょ。
[アヴドーチヤ] ……その必要はありませんわよ。まだ時間はありますし、わらわについてきてくださいまし。
[ユーネクテス] ん?
[アヴドーチヤ] スディチさんが無事にあの複雑な洞窟から地上へと出られたのは、正直申し上げて、運の要素がかなり大きいですわ。
[アヴドーチヤ] そしてエッジ先生がエリジウムさんの手伝いを必要とするなら、彼にはここに残っていただきましょう。
[イナム] まさかあんた、道がわかるの?
[アヴドーチヤ] 恐らく今のゼルウェルツァに、道がわかる方は誰もいませんわ。
[アヴドーチヤ] ですが、探索精神にあふれるドゥリンの冒険家たちは、冒険の後に自分が見聞きしたものを本に記録し、同胞に共有していましたの。
[アヴドーチヤ] わらわはかつて図書館にて、ある冒険家の見聞録を読みましたわ。そこには彼がどのようにして、昇降機の上にある洞窟を抜けて地上に出たのかが、詳しく記録されていましたの。
[アヴドーチヤ] 今ではどこにいるかもわからないその冒険家は、ご丁寧に地図まで残してくれていましたわ。
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