第12章 丹後弁で
その次に行った星には、飲んだくれが住んどったんやん。王子くんはほんのちょっと寄っただけだったのに、気持ちがえらい落ち込んでしまったらしいで。
王子くんは最初、飲んだくれに「ここで何しとるでゃー?」いうて聞いたんやん。そんとき飲んだくれは、空の瓶の束と中身の入った瓶の束を前に置いて黙って座っとったわ。
飲んだくれはしょんぼりしながら、「飲んどるんだ。」いうて答えたわ。
王子くんが「どうで飲んどるでゃー?」いうて聞いたら、飲んだくれは「忘れてゃーんだ」言うやん。
だで王子くんは気の毒だなぁ思って、「何を忘れてゃーんだ。」いうて聞いたわ。
飲んだくれは下向きながら「恥ずかしいのを忘れてゃー。」いうて答えたで、王子くんは男の人を助けたなって、「何が恥ずかしいでゃー?」いうて聞いたら、飲んだくれは「飲むんが恥ずかしんだーや!」いうて、それきりずっと黙り込んだわ。
王子くんはどうしたらええか分からんようになって、その星から離れたわ。
王子くんは、大人の人ってやっぱりがっさい変だなぁ思いながら、旅を続けたらしいで。
[翻訳者紹介]
ふなや
1990年代、京都府宮津市北部生まれ育ち。父と祖母は同地出身。1930年代生まれの祖母の言葉をよく聞いて育ちました。
[ことばの解説]
地の文は私自身が同級生に語り掛けるような口調で書きました。王子くんと飲んだくれの台詞は、祖母の言葉を思い出して書きました。「てゃ」のような「エ段+ゃ」はaiが変化した[æː]の音を表しています。「何しとるでゃー?」のような疑問文は、私なら「何しとるん?」と言うところですが、年配の方だと「何しとるだ」のような「だ」や「だい」「でゃー」が付きます。

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