第19章 岡山弁で
王子ゃー高ぇー山ぇー登った。それまで王子が知っとる山ゆーたら、自分の星にある3つの火山だけで、それもすねぼんさん※1ぐれぇーの高さしか無かったんじゃ。せーで、死んでしもうた火山やこー※2腰掛け代わりに使うとったぐれぇーじゃ。
「こねー高ぇー山じゃったら、この星ぜーんぶと、人間もみーんな見えるんじゃねぇーかなあ……」ゆーて、王子は思うた。じゃけど見えたんは、針みてぇーにとんがった岩山ばぁーじゃった。
「なんしょんなー。」ゆーて、王子が言うてみたら、
「なんしょんなー……なんしょんなー……なんしょんな……」ゆーて、やまびこが返事した。
「なめぇーはなんなん?」ゆーて、王子が言うたら、
「なめぇーはなんなん……なめぇーはなんなん……なめぇーはなんなん……」ゆーて、やまびこが返事した。
「友達になってん、ワシゃーひとりぼっちなんよ。」ゆーて、王子が言うたら、
「ひとりぼっち……ひとりぼっち……ひとりぼっち」ゆーて、やまびこが返事した。
「なんなら! いなげな星じゃ!」※3ゆーて、王子はそんとき思うた。「ここぁー、かさかさしとるし、とげとげしとるし、ひりひりしとる。人間ゆうて、想像力がねえんかのう? 人が言うたことばぁー繰り返しょーる……ワシんちにある花は、いっつもこっつも向こうから話しかけてきてくれるのにから……」
[注釈]
※編集者注:同人誌版では第18章と第19章の注釈番号は通し番号ですが、Wiki版では章ごとに注釈番号を振っています。
- 「すねぼんさん」はすねのことではなく、岡山弁ではひざのこと。
- 「やこー」は~なんて、~なんかという意味。
- 「いなげな」はおかしな、変な、という意味。
[翻訳者紹介]
岡弁先生(おかべんせんせい)
1989年岡山県岡山市生まれ。西大寺地区で岡山弁(備前方言)を話す祖母の影響を受けながら育つ。大学時代は中国語を中心に言語を専攻。岡山弁の魅力を発信すべく、Xで「ぼっけぇ!岡山弁」(@Okayama_Ben)アカウントを運営中。
[ことばの解説]
コテコテの備前方言を話す祖母の影響を強く受けて育ったので、おばあちゃんの話すような表現が多いかもしれません。ちなみに「げーさんせー」という言葉、聞いたことがない方がほとんどだと思います。これは生きていれば今では100歳を超しているような親戚がかつて教えてくれた岡山弁です。若い岡山県民の間で「~やろ」といった関西弁の影響を強く受けた表現が増えてきていると感じる今日この頃ですが、古き良き岡山弁ならではの語彙や語尾を楽しんでいただければ幸いです。

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