筆者が2013年に大学卒業論文として提出したもの(黒歴史とも言う)を、一部修正した上で掲載する。修正・加筆した個所は【】で括った。
目次
はじめに
第一章 ムッカイに関する事前調査
- 第一節 身の回りでのムッカイの使用状況
- 第二節 ムッカイの文献調査
第二章 滋賀県立彦根東高等学校でのムッカイ使用調査
- 第一節 調査方法
- 第二節 調査結果
第三章 滋賀大学でのムッカイ使用調査
- 第一節 調査方法
- 第二節 調査結果
第四章 滋賀県内各地での調査
- 第一節 調査方法
- 第二節 調査結果
第五章 おわりに
はじめに
【字数稼ぎ丸出しの陳腐な文章であるため、要約】
共通語の普及などで伝統方言の研究が難しくなっているなか、新方言は方言研究の新たな分野として注目されている。しかし、滋賀県の新方言は研究が進んでいないため、滋賀県の新方言の一例としてムッカイの使用実態を調査した。
第一章 ムッカイに関する事前調査
第一節 身の回りでのムッカイの使用状況
ムッカイは、共通語で「難しい」を意味する形容詞である。滋賀県彦根市で出生し、東近江市(旧神崎郡五個荘町)に育ち、彦根市内の県立高校で学んだ私は、高校時代に使用していたが、共通語ではないと思いつつも、さほど地域性のある言葉であるとは意識していなかった。漠然と、ハズイ(恥ずかしいの略)やウザイ(うざったいの略)のようなごく一般的な若者言葉であるか、マクド(マクドナルドの略)やメッチャ(滅茶苦茶の略)のような関西一円で使用されている俗語ないし新語であると考えていた。
ところが、滋賀県を離れて兵庫県西宮市に本部を置く【本学】に進学した後、大阪府や兵庫県出身の学生がムッカイを使用していないことに気づき、ムッカイが地域性のある言葉なのではないかと初めて意識するようになった。
兵庫県を始め、関西の新方言にも詳しい甲南大学教授都染直也と話をする機会があった際、ムッカイについて質問したところ、ムッカイという言葉は兵庫県や大阪府では通常使用されないとの返答があった。後日、都染が身近な滋賀県出身の甲南大学関係者にムッカイについて質問したところ、その人物もムッカイを使用し、私と同じように、地域性のある言葉であるとは意識していなかったという。
一方、1964年に滋賀県犬上郡豊郷村(現豊郷町)で出生し、滋賀県外での居住歴を持たない私の母にムッカイについて質問したところ、母はムッカイを使用したことがないと答えた。
以上のことから、ムッカイは、少なくとも私の身の回りで確認できる範囲では、地域性のある言葉であり、なおかつ比較的若い世代でのみ使用されている可能性が高いのではないかということが推測できる。
第二節 ムッカイの文献調査
ムッカイが辞書類に記述されていないかどうかについて、大学図書館などを活用して確認した。まず、共通語形か非共通語形かの確認として、『日本国語大辞典』を始めとする複数の国語辞典を当たった。しかし、ムッカイに関する記述は見つからなかった。次に、伝統方言である可能性も考えて、『現代日本語方言大辞典』を始めとする日本全国の伝統方言の語彙を集めた辞書を当たった。しかし、ムッカイに関する記述は見つからなかった。若者言葉を集めた『若者ことば辞典』や、各地の新方言を集めた『辞典 新しい日本語』を当たっても、ムッカイに関する記述は見つからなかった。
滋賀県の方言語彙を網羅した『滋賀県方言語彙・用例辞典』を当たったところ、やはりムッカイに関する記述は見つからなかった。しかし、難しいを意味する語彙として、次のような記述が見つかった。
辞書類の参照により、ムッカイが非共通語形であること、伝統方言ではない可能性が高いこと、新語であったとしても広く使用・認知されている語ではないということが確認できた。また、ムッカイに関連しそうなムツカイという語が滋賀県内で使用されている(されていた)ことが確認できた。
なお、『滋賀県方言語彙・用例辞典』の著者の子息に話を聞く機会があった。収録された語彙は、文献から集めたもののほかは、著者が学校教諭として県内各地を回った際に耳にした語彙を書き溜めたものが多く、いつどこで誰から聞いた語彙であるかは、著者本人もほとんど覚えていないという。もしかしたらムツカイについて何か聞けるかもしれないと期待したが、残念ながらそれはかなわなかった。
第二章 滋賀県立彦根東高等学校でのムッカイ使用調査
第一節 調査方法
滋賀県内の若年層におけるムッカイの使用実態を調査するため、まず滋賀県立彦根東高等学校(滋賀県彦根市金亀町に所在。以下、彦根東高校)でアンケート調査を実施した。調査場所を彦根東高校としたのは、私の出身校であり、調査に対して好意的に協力していただけたからである。
調査実施日は2011年5月9日と5月21日。調査対象は彦根東高校の生徒19名。ただし、生年記入漏れの生徒が1名と、在住地域に関する情報がはっきりしない生徒が2名あったため、17名分のアンケート結果を今回使用することとした。
【アンケートの形式について文章でくどくどと解説しているが、省略】
第二節 調査結果
5月9日の調査と5月29日の調査では条件が異なっており、データの信頼性が薄いため、彦根東高校での調査結果は大まかな注目点のみまとめる。
【回答結果を文章でだらだらと書いているが、図に直す】
ムッカイについて | 使う |
自分は使わないが 聞いたことがある |
使ったことも 聞いたこともない |
長浜市出身 | 3 | ||
米原市出身 | 5 | ||
彦根市出身 | 3 | ||
多賀町出身 | 1 | ||
東近江市出身 | 1 | ||
野洲市出身 | 1 | ||
草津市出身 | 2 | ||
大津市出身 | 1 |
ムツカイを「使う」と回答した生徒はいなかったが、「自分は使わないが、聞いたことがある」と回答した生徒(東近江市出身)が1名あった。調査に協力してくれた生徒のなかには、『滋賀県方言語彙・用例辞典』でムツカイの使用地域として挙げられている犬上郡多賀町出身の生徒もいたが、その生徒は「聞いたことも使ったこともない」と回答していた。
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧