aklib_story_果てなき旅路

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果てなき旅路

負傷したスカジはイベリアの村に辿り着く。村人たちは親切に彼女を受け入れてくれたが、彼女は自分自身に対してある疑問を抱いていた……


どれだけの距離を歩いたのだろう。

どれだけの時間歩き続けたのだろう。

固い地面の上にいる限り、自分に居場所などない――スカジはそれをよく理解していた。

だが、今はこの大地を進むほかなかった。

「大地」――初めて覚えたイベリア語だ。

なんと耳に馴染まぬ言葉だろうか。

[スカジ] ロビーって人はいる?

[友好的な村人] あっ、私です。

[スカジ] 今日の分の食糧よ。

[友好的な村人] えっ? あ、ありがとうございます。えーっと……

[スカジ] それと、この花はジョニーから。

[友好的な村人] わぁ、このお花大好きなんです! でもジョニーったら、わざわざ人に頼むなんて……

[スカジ] 仕事で忙しいらしいわ。

[友好的な村人] ……根性なしなんだから。

[スカジ] 問題なければもう行くわ。

[友好的な村人] いやいや、ちょっと待ってください!

[スカジ] お金なら彼からもらってるけど。

[友好的な村人] いえ、そうじゃなくて……スカジさんですよね? 最近町にやって来たバウンティハンターの……

[スカジ] ええ。

[友好的な村人] やっぱり! スカジさんが来てくれて大助かりだってみんな言ってますよ! 会えて嬉しいです!

[スカジ] そんな大層なことはしてないけど。

[友好的な村人] まあまあ、どうぞ座ってください。せっかくなのでご馳走させてください!

[スカジ] ……お酒はある?

[友好的な村人] ビールでいいですか?

[スカジ] ええ。

[友好的な村人] どうぞ!

[友好的な村人] スカジさんって……もしかして外国からいらしたんですか? 言葉がちょっと訛ってるっていうか……

[スカジ] そうね。

[友好的な村人] だと思いました! この村には外国の方なんてめったに来ないんですよ。よく避難中の被災者が通りがかるんですが、みーんなイベリア人ですし。

[友好的な村人] それで、どちらから?

私はどこから来たんだろう?

[スカジ] ……海から。

[友好的な村人] 海から? エーギル人ってことですか?

[友好的な村人] エーギル人なら私たちの村にもいますよ。でもみんなすっかり村に溶け込んじゃってて、スカジさんみたいに垢抜けた感じはしませんけどね。

[友好的な村人] その人たちは、おじいさんの代でエーギルを離れて、陸へやって来たと言ってました。

[友好的な村人] そうだ、私のご近所さんもエーギル人なんです。せっかくなので紹介しますよ!

[スカジ] 必要ないわ。

スカジもかつては陸地のエーギル人に期待を抱いていた。だが実際に会ってみれば、やはり彼らは自分とは違っていた。

エーギルの姿を覚えていたのは、ごく一部の年老いた者たちのみであり、その記憶すらもおぼろげだった。

彼らと共有し合えるものは何一つないのだ。

[友好的な村人] ……うーん、残念です。

[友好的な村人] スカジさんは評判なので、きっとみんなお話ししたいと思うんですけど……

[スカジ] 私と?

[友好的な村人] ええ。最初はみんな怖がってたんですけどね。同業者に狙われて負傷した挙句、村に逃げ込んだんだって噂もあって……

[友好的な村人] 手負いのハンターなんて、殺気立ってる獣みたいなものですから……

陸地の生物たちはあまりにも脆く、彼女に手傷を負わせられる者はそうそういない。

あの時彼女に傷を負わせたのは、「深海教会」という組織を名乗る者たちだった。

彼らは見るからに普通のイベリア人とは異なっていたが、スカジは彼らの目的も、自分が狙われる理由も分からなかった。

[友好的な村人] だけど今はみんな、スカジさんみたいに優しいバウンティハンターは初めてだって言ってますよ。

[スカジ] ろくなバウンティハンターがいないのね。

[友好的な村人] そうですね……これまでもバウンティハンターが村にやって来たことはありましたが、怖い人ばっかりでトラブル続きでした……

[友好的な村人] だから最初は、スカジさんのことも追い出すべきだって意見もあったくらいで……

[スカジ] 心配しなくてもすぐに出て行くわ。

[友好的な村人] まあまあそう仰らずに……もう誤解も解けて、みんなスカジさんのことが大好きになってるんですから。

[友好的な村人] 好きなだけ村にいてくださいね。

[友好的な村人] とは言え……どこか他に行きたいところがあるなら、無理に引き留めたりもしませんが……

行きたいところ?

[スカジ] わからないわ。

[友好的な村人] え? わからないって……じゃあ、故郷に帰る予定とかは?

私の故郷?

故郷に……帰れるの?

[スカジ] 故郷……

[友好的な村人] あ……ごめんなさい……故郷をめちゃくちゃにされて仕方なく離れた人だってたくさんいるのに、私ったらデリカシーのないことを……

[スカジ] そうじゃないわ。

[友好的な村人] よかった……

[スカジ] ……いえ、あなたの言う通りかもしれないわね。

[友好的な村人] えっ……鐘の音!?

[スカジ] 鐘がどうしたの?

[友好的な村人] こっ、この村で鐘が鳴るのは緊急事態の時だけで──

[慌てる村人] おいっ、ロビー!

[友好的な村人] ジョニー? 仕事じゃなかったの?

[慌てる村人] 今すぐ身を隠せ!

[友好的な村人] 何があったの!?

[慌てる村人] 怪物が村に近づいてきてるんだ! もう負傷者も出てるし、俺もすぐに加勢に向かうつもりだ!

[慌てる村人] お前は地下室に隠れてろ!

[友好的な村人] わ、わかったわ!

[スカジ] ……

[慌てる村人] スカジ、あんたは……この村の人間じゃない。巻き込まれる前に逃げろ。

[友好的な村人] スカジさん、心配ならひとまず一緒に隠れましょう!

[スカジ] ……いえ。

陸地に来てからというもの、嫌な予感が頭を離れなかった。

その予感は、こういった事態が起こるたびに現実味を増した。

信じたくなかった――

――自分が海の怪物を引き寄せているとは。

[恐れる村人] いやぁ、た、助けてっ!!

[海の怪物] ──!

[慌てる村人] 下がってろ!

[恐れる村人] な、何なのよこれ!?

[慌てる村人] 噂で聞いたことがある……海からやってきた怪物に違いねぇ!

[慌てる村人] だけど、こんな内陸にまで這い上がってくるなんて初耳だぜ……

[慌てる村人] しかも……とんでもない数だ!

[海の怪物] ──!

[恐れる村人] きっ、傷一つついてないわよ!

[慌てる村人] チッ……奴らがチンタラしてるうちに、他のみんなと合流するぞ!

[恐れる村人] そ、そうね……

[恐れる村人] きゃあ! こっちにも!

[恐れる村人] 来ないで、来ないでよっ!

[慌てる村人] クソッ、俺が相手だ!

[慌てる村人] 畜生……まだまだ……

[恐れる村人] いやっ、もうやめて……!

[海の怪物] ──!

[海の怪物] ……

[慌てる村人] 一撃で……スカジ、あんたすげぇな!

[スカジ] ……

[慌てる村人] 一緒に戦ってくれるのか?

[スカジ] ええ。

[慌てる村人] あんたマジでいい奴だな……恩に着る!

[スカジ] ……私はあなたが思うような人じゃないわ。

[スカジ] ……ついてきて。

あの日スカジが浜辺で目覚めたとき、周囲には誰もいなかった。

エーギルとアビサルハンター、死と隣り合わせの殺し合い――

繰り返されてきたすべてが、まるで一切存在しないかのような静けさだった。

ただ波と潮風の音だけが、耳元で反響していたことを覚えている。

[海の怪物] ──!

[海の怪物] ……

それからスカジは、何度も海に帰ろうと試みた。

しかし、何度試してもあえなく徒労に終わった。無数の怪物に囲まれ、途中で引き返さざるを得なくなるのだ。

[スカジ] 消えなさい。

何度も何度も繰り返すうちに、彼女はある錯覚に陥った──

深海を埋め尽くす怪物たちは、彼女を拒んでいるのではなく、歓迎しているのではないか、と。

[スカジ] (エーギル語)どうして私に寄ってくるの?

もう二度と海へは帰れないかもしれない――彼女はその現実を受け入れると、海に背を向け、未知の陸地へと足を踏み出した。

そう、この大地に。

[友好的な村人] スカジさん、すごい……

[慌てる村人] ロビー!? 隠れてろって言っただろ!

[友好的な村人] スカジさんが心配だったのよ……それに、スカジさんが村を守るために頑張ってくれてるのに、私たち村人が隠れてるだけなんておかしいでしょ?

[慌てる村人] それもそうだな……

[勇敢な村人] その通りだぜ!

[スカジ] 助けなんて必要ないわ。

彼女から見れば、彼らも典型的な「陸地の人間」でしかなかった。

つまりは――脆弱で、傷つきやすく、非効率で質素な生活を送り続ける人々である。

[友好的な村人] でも、あなた一人に全部押しつけるなんてできない。

[慌てる村人] よし、スカジさんに加勢するぞ! 怪物どもを倒せなくたって、奴らの注意を逸らすことくらいはできるはずだ!

[友好的な村人] 私もやるわ!

[勇敢な村人] みんな、スカジさんに続け!

[スカジ] (エーギル語)近づくなって言ってるでしょう!

だがそれでも、陸地の人間と自分との間に、気持ちの通じ合う部分があることは認めざるを得なかった。

どんなことが起きれば彼らがどんな気持ちを抱くのか──彼女には理解できる。

だからこそ、彼女の苦悩と罪悪感は増すばかりだった。

しかし村人たちに気持ちを打ち明けられるはずもなく、彼女はただその手に握った大剣をいっそう強く振り下ろすことしかできなかった。

[慌てる村人] ありゃエーギル語か? 何て言ってるんだ?

[勇敢な村人] 聞き取れねぇけど、どんどん動きが速くなってる! きっと俺たちを鼓舞してんだ!

[慌てる村人] よぉし、行くぞ!

[海の怪物] ──!

[慌てる村人] 怪物ども! ここから出ていけ!

[海の怪物] ──!

[慌てる村人] うわっ……

[勇敢な村人] 慌てんな。怪物め、これでも食らいやがれ!

[慌てる村人] すまねぇ!

[勇敢な村人] 気にすんなって、ダチだろうが。

[海の怪物] ──!

[勇敢な村人] おい、奴らビビってやがるぞ! みんな、あと一息だ! 力を合わせて怪物どもをこの村から追い出すぞ!

[村人たち] おう!

[友好的な村人] やったわ! 一匹残らず逃げ出したみたいよ。村の周囲にも怪物の姿は確認できないって。

[勇敢な村人] へへっ、俺たちもやればできるもんだな。

[友好的な村人] 調子に乗らないの。スカジさんがいなかったら、今頃村はなかったかもしれないわよ。

[慌てる村人] ハハッ、相変わらず厳しいなぁ。無事に生き残れたんだし大目に見てやってくれよ。

[友好的な村人] はいはい。

[スカジ] ……

かつては彼女にも共に戦い、勝利の喜びを分かち合う戦友がいた。

しかしそのほとんどは、かの戦いで命を落とした。

「犠牲」など、ごくごくありふれたものだったはずだ。

しかし村人たちが心から喜び合う姿を見て、ふとある考えが脳裏をよぎった──

もしかしたら自分は、アビサルハンター最後の生き残りなのではないだろうか、と。

[スカジ] ……

[友好的な村人] スカジさん、大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ。

[スカジ] ……何でもないわ。

[勇敢な村人] ははーん。さてはスカジさん、ひと働きして腹減ったんだな?

[慌てる村人] そんなこと言うから俺まで腹減ってきたよ、ハハッ!

[友好的な村人] まったくもう……でも、一番の功労者はスカジさんですからね。今夜は私が豪勢なディナーを作ってご馳走します!

[友好的な村人] こんな大ピンチまで救っていただいたことですし、きっとみんなスカジさんが村の一員になることに大賛成だと思いますよ。

[勇敢な村人] 大賛成もなにも、俺ははなっから反対なんてしてねぇぜ!

[慌てる村人] 俺も賛成だ! なぁスカジ、あんたが居たいってんなら、いくらでもここに居てくれて構わないからな!

[スカジ] ……

この村から離れよう。

先の戦いなど、自分にとっては準備運動にもならないものだった。

だがこの脆弱な村人たちにとっては、あの怪物たちはすべてを蹂躙する災厄にも等しい。

[友好的な村人] そうですよ! スカジさんみたいにすごい人が村に居てくれたら、私たちも安心です。

この村に残るわけにはいかない。

ここは自分の居場所じゃない。ここにいても、彼らに厄災をもたらすだけだ。

[友好的な村人] 行きたいところも特にないって言ってましたよね?

[友好的な村人] それなら一緒にここで暮らしましょうよ。

行こう。今すぐに。

できる限り遠くへ。

[スカジ] ごめんなさい、さっき決めたの。

[スカジ] 海へ帰る方法がないのなら、水のない場所へ行こうって。

[話好きなバウンティハンター] おい、スカジって奴の話は聞いたか?

[物好きなバウンティハンター] スカジ? さぁ。知らねぇな。

[話好きなバウンティハンター] ったく、情弱ヤローがよ。

[物好きなバウンティハンター] へいへい、情弱で悪かったな。いいからもったいぶってねぇで教えろよ。

[話好きなバウンティハンター] なんでも、最近この辺りに現れたエーギル人のバウンティハンターらしいんだがな……

[物好きなバウンティハンター] エーギル人? そりゃどこの人間だ?

[話好きなバウンティハンター] おいおい、そこからかよ……まぁカジミエーシュ人なら知らなくても無理ねぇか。俺も詳しくは知らねぇけど、とにかくどっか遠くの国だと思ってくれりゃいい。

[物好きなバウンティハンター] ふーん……で、そのスカジがどうしたんだ?

[話好きなバウンティハンター] ああ……そいつは誰ともツルまねぇらしいんだが、長ぇ大剣と目立つ服装でイキってるらしい。そんな人目を引くハンターなんて、すぐどっかで野垂れ死ぬだろうって初めは言われてた。

[話好きなバウンティハンター] だが結果として、そいつぁ今もピンピンしてて、それどころか同業者の仕事を奪いまくってるんだとよ。

[物好きなバウンティハンター] はぁ?

[話好きなバウンティハンター] 先月、あの「ファイヤーラング」が奴をとっちめるって躍起になってたんだが……それで、そのスカジはどうなったと思う?

[物好きなバウンティハンター] ビビって逃げちまったとか?

[話好きなバウンティハンター] いいや……「ファイヤーラング」が寄越した部隊を、たった一人で全部ぶっ潰しちまったらしいぜ!

[物好きなバウンティハンター] マジかよ……一体何者なんだ?

[話好きなバウンティハンター] わからん。イベリアから来たバウンティハンターと一緒に現れたって話もあるが、正体に関する情報は何も回ってきてねぇ。

[話好きなバウンティハンター] とにかく、それで「ファイヤーラング」はブチ切れさ。これから面白いもんが見れそうだぜ。

[無口な通行人] ……すまない。

[話好きなバウンティハンター] ん? 何だお前?

[無口な通行人] 名乗るような者じゃない。好奇心から尋ねたいんだが、君たちが先ほど話していたエーギル人の居場所を知らないか?

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