aklib_story_暴風眺望_9-20_目前の大嵐

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暴風眺望_9-20_目前の大嵐

ロドスはOutcastの犠牲を知り、ロンディニウムへ向けて正式に出発準備を始めるのだった。


[Misery] ……あとは任せてくれ。こんなに急いで彼女を連れ帰ってくれたことだ、きっと疲れているだろう。

[Misery] 残りのことは全部、俺が対応しておくよ。

[ケルシー] それは遺品と骨箱か。

[ケルシー] チェルノボーグ事変以来、十一ヶ月と二十七日の間、この緊急通信音をロドス甲板で耳にすることはなかった。

[ケルシー] ――今回の犠牲者は誰だ?

[Misery] Outcast.

[ケルシー] ……

[ケルシー] では、その手に握っているのは、彼女のシリンダーか。

[ケルシー] ……甚だ不本意だが、先ほどの通信音が聞こえた時、私は確かにこの事態を予感していた。

[ケルシー] Outcastとはかつて、とある賭けをしていたのだが――

[ケルシー] 勝ったのはやはり、彼女の方だったようだ。

[Misery] ……ケルシー。この後の会議、俺は欠席する。

[Misery] 本来、エリートオペレーターの葬儀はあなたが執り行うのが慣例だが……

[Misery] 今回ばかりは、俺の手で別れを告げさせてくれないか。

[ケルシー] ……彼女を含めて、異議を唱える者などいないだろう。

[Misery] ありがとう。では、会議に出ないと決めた以上、ここで俺の最終判断を述べよう――

[ケルシー] Misery。君の答えは承知している。

[Misery] ならば、あなたは俺以外の全員の答えも知っているのだろうな。

[Misery] 状況は変化した。誰もが望まざる変化だったが、今やこれが唯一の選択肢だ。皆もそれをよく理解しているはずだ。

[Misery] ――俺たちは今すぐにでも、ロンディニウムに向かわなければならない。

[ケルシー] 君たちも知っての通り、私の立場は常に変わらないものだが――

[ケルシー] 君たちが私の提案を支持するか否かにかかわらず、強調しておかねばなるまい。いかなる場合においても、ロドスが個人的な感情を解決するためだけに航路を変えることはない。

[Misery] 俺がOutcastのための復讐を考えないように、忠告してくれているのか?

[Misery] 安心してくれ。俺の心は悲しみと怒りに満ちているが、それでも自らの職責を忘れることはない。

[Misery] ただ、あのOutcastを死に至らしめたものが一体なんだったのか、それをこの目で確かめたいとは思う。

[Misery] 恐らくそれは、一個人でも、あるいは複数人の集団でもない、より大きな概念なのだろう。

[Misery] ケルシー……俺たちが真相を探しに向かわなければ、ロンディニウムを、そしてヴィクトリア全土を覆う暗雲は、より放埒に振る舞うだろう。

[Misery] そうなれば、Outcastだけには留まらない……

[Misery] 俺たちは全員死ぬことになる。誰一人、逃れることなど叶うまい。

[Misery] 確かに、あなたが言ったように、ロドスは死者のための復讐などしない……

[Misery] だが、俺たちは皆、今生きている者たちがこの先も生き続けられるよう、チャンスを作ってやりたいと思っているんだ。

[ジェニー] えーっと……ここ、どこだろ? また道を間違えちゃったのかな?

[ジェニー] って、いけない! もうすぐ約束の時間じゃない! 早く行かないと……はぁ、ここがこんな広いってこと、オリバーおじさんも先に教えてといてくれればいいのに……

[リード] ……

[ジェニー] あれっ、あなたは……!?

[ジェニー] ちょ、ちょっと待って!

[リード] ……何?

[ジェニー] ねえ、あなた……

[ジェニー] (どうして、あたしを見ても無反応なんだろう?)

[ジェニー] (でも、人違いとは思えない。)

[ジェニー] (ロドスの船に乗ってから、彼女がどうしてるのか、色んな人に聞いてはみてたけど、みんな知らないか教えてくれないかのどっちかだったんだよね。)

[ジェニー] (うーん……彼女の安全のためには、そうした方がいいってことかな……?)

[ジェニー] えっと……こんにちは。

[ジェニー] あなた……ここで、本を読んでるの? それって、『騎士アイヴァンホーの伝説』だよね? あたしも読んだことあるけど、すっごくお気に入りなんだ。

[ジェニー] この本で描かれているヴィクトリアの歴史って、面白いよね。

[リード] 面白、い……? そう、かもね。だけど……これは、真実じゃない……

[リード] 小説は……小説でしかないもの。

[ジェニー] うん……それもそうだね。ほかに読みたい小説はある? あたし本ならたくさん……あ、ごめん。持ってきそびれちゃったんだった。

[リード] この本が好きなら……キミにあげる。

[ジェニー] えっ、いいの? あ、ありがとう……

[リード] ……もう行くよ。

[ジェニー] あっ、うん! またね!

[ジェニー] (……「また」なんて、あるのかな?)

[ジェニー] (そういえば彼女、もう一冊本を持ってたけど……詩集?)

[ジェニー] シェイマス・ウィリアムズ……作者の名前も、あの表紙もすごく見覚えがあるような。

[ジェニー] 約束してた場所って……ここ、かな?

[ジェニー] し、識別コード? 何それ? 『新人オペレーターガイド』に書いてあったっけ……?

[ジェニー] うわ、確認してたら遅れちゃう! とにかくノックしてみよう!

[アーミヤ] どうぞ、入ってください!

[アーミヤ] こんにちは、ウィローさん……いえ、オペレーター・サイラッハさんとお呼びした方がいいですか?

[サイラッハ] あっ……アーミヤさん!

[アーミヤ] ふふっ。みなさんのように、気軽にアーミヤと呼んでください。敬語も必要ありませんので、お気兼ねなく。

[サイラッハ] じゃあ、アーミヤ! ほんとにごめんね、忙しいのに時間を作ってもらっちゃって。二日前の健康診断の時、フォリニックさんから聞いたよ……あなた、一日五時間しか休んでないんでしょ?

[アーミヤ] フォリニックさんは、いつも私の身体のことを気遣ってくれてますから。でも、大丈夫ですよ。最近は、すごく調子がいいですし。それに私、ずっとあなたにまた会いたいと思っていたんです。

[サイラッハ] それならよかった! ……ねえ、ところで、ここがOutcastのオフィスだった場所なんだよね?

[アーミヤ] はい。ですが、彼女はあまりここを使ってはいなかったんです。あの事件の二ヶ月前、私たちで彼女を説得して異動してもらったばかりでしたから。

[サイラッハ] 確かに、ヒロック郡へ来る前に半分引退したようなものだって言ってた……

[アーミヤ] それでも彼女は、あの任務への参加を強く申し出ていました。

[サイラッハ] 今でもよく、あの数日間に聞いた彼女の言葉を思い出すの。あの人には初めから、すべてに向き合う覚悟があったんだろうね。

[アーミヤ] そうですね。Outcastさんは、そういう人ですから。

[アーミヤ] 彼女のお人柄は、エリートオペレーターの中でも特別なんです。――あの人は、普通の人には難しい決断を、いつも簡単に下してしまいますから。

[サイラッハ] そうだね……そういえば、昔ある戦争の調停に失敗して、教会内でのすごく高い職位を放棄した、とも言ってたし。

[アーミヤ] ええと……彼女がラテラーノの教会を去ったことは事実ですが、戦争調停の失敗、ですか?

[アーミヤ] Outcastさんのプロファイルにそうした記載はなかったと記憶しています。聞く限りでは、むしろMiseryさんの経歴に似ているような気がしますよ。

[サイラッハ] ……じゃあ、あれは……あたしを慰めるための嘘?

[サイラッハ] あ、はは……確かに、Outcastらしいや。

[アーミヤ] はい。そういうところが誠実さに欠けると感じるかもしれませんが……

[サイラッハ] ううん、そんなことないよ。彼女の話の全部が本当じゃなくても、Outcastはあたしの知る限り誰よりも誠実な人だから。

[アーミヤ] なるほど、あなたの人柄も思っていた通りです。Outcastさんには、人を見る目がありますから。

[サイラッハ] ねえ、アーミヤ、あなたの貴重な時間を割いてもらって悪いんだけど……彼女のこと、もっと聞かせてくれない?

[アーミヤ] ええ、もちろんです。

[アーミヤ] ただ、彼女にまつわるお話は、本当に長くなりますので――

[サイラッハ] 大丈夫。あなたの手が空いてる時なら、いつでもいいよ。

[アーミヤ] ふふっ、わかりました。では、そうしましょう。……ロンディニウムへ向かう間、時間はたくさんありますから。

数ヶ月後

[チェン] 修理の目処は立ったか?

[バグパイプ] そんなに焦らないでよ~。この町は相当僻地の方だし、発信機用のコイルなんてなかなか見つからないんだからさ……

[チェン] ならば、やはり私がやろう。しかし、デバイスに少し触れただけで煙を上げさせるとは、キミの機械音痴は相変わらずだな。

[バグパイプ] だけど、そもそもこのセーフハウス自体もうずっと使われてなかったわけだし~……

[チェン] 「そもそも」を語るのなら、こちらのルートへ行こうと言うキミの意見を聞くべきではなかった、という話になるが?

[チェン] お陰で、数ヶ月もこうした人里離れた僻地ばかりを無意味にうろつき回っているわけだからな!

[バグパイプ] ひゃ~、チェンちゃんの睨み顔、何年か会ってない内にもっとおっかなくなってる……

[チェン] ……声が大きい。聞こえてるぞ。ぶつくさ言うんじゃない。

[チェン] まったく、キミは焦るなと言うが、私からすればなぜ焦らないのか不思議なくらいだ!

[チェン] 出発してからどれだけ時間が経ったと思っている? 我々は未だに亡霊部隊どころか、その手がかりすら見つけられていないんだぞ!

[チェン] もし、私が龍門の警察官だった頃に、同様の状況に陥っていたら、捜査の切り上げを提言していたところだ。……こうも長く持ちこたえられる人質など、いないだろうからな。

[バグパイプ] ……でも、うちは諦めないよ。

[バグパイプ] 隊長はきっと生きてるって、わかってるから。

[バグパイプ] それとおんなじで、隊長も、うちが何とか助けに行こうとしてるってわかってるしね。きっと今頃、合流するために手を尽くしてくれてるはずだべ。

[チェン] はぁ。わかった、わかった。キミはそういう奴だったな。

[チェン] そもそも、キミを容易く説得できるのなら、ここまで引きずり回されずに済んだのだろうしな。

[バグパイプ] そう言いながら付き合ってくれるんだから、チェンちゃんはやっぱり優しいよね!

[チェン] はぁ。私もキミの執念深さは理解しているからな。それに、私があいつを探すことで頭がいっぱいだった頃、ずっと応援してくれていたのは他でもないキミで……いや、この話は置いておこう。

[チェン] ――とにかく、キミも知っての通り、だ。

[チェン] ヒロック郡での事件は、対外的にはとっくに「軍事演習中の事故」として公表されている。

[チェン] そして、現地の傷病者は全員、補償と定住地を得ることができた――と、政府の公文書に記されているのが実情だ。

[チェン] 加えて、ダブリン――あるいは亡霊部隊はといえば、キミが最後に彼らを見た時、連中がヒロック郡を占拠していた事実の真偽を問わず、今は既に、音もなく去って行ったように見える。

[チェン] この点については、たとえ我々が現地に向かってこの目で確認したところで、同じことだろう。

[バグパイプ] うん。うちもそう思うよ。

[バグパイプ] だけど、うちはあそこで見たものを全部覚えてる。今がどんなに平和に見えても、ヒロック郡と、周辺にある多くの都市には、見えないところで大きな変化が起こったはずなんだ。

[バグパイプ] それに……たくさんの人の目が向けられてる中で、そういう変化が起きたことが、ここまで上手に隠し通されてるなんてさ……チェンちゃんも恐ろしいと思わない?

[バグパイプ] あんなに大きな騒ぎを起こした後に、もう一度潜伏を選んだと考えると……あいつらはまだ、もっと大きな陰謀を企ててるってことになるべ!

[バグパイプ] つまり、ヴィクトリアは今……ヒロック郡での事件よりも大きな危機が、いつ訪れてもおかしくない状況なんだよ。

[チェン] ああ。キミを信じているさ。

[チェン] ……だからこそ、私はここにいるんだ。

[チェン] とは言え、キミを信じてくれる人間がほかにどれだけいるのかは、私にも確証がない。

[バグパイプ] みんなに信じてもらうためにも、頑張り続けないとね!

[チェン] そう考えると、我々はやはりなんとかして大都市に入らねばならないな。

[チェン] ……ヒューズのことは覚えているか?

[バグパイプ] ぽっちゃりした男の子だよね? 訓練中によく転んで、いつもたんこぶ作ってたっけ。

[チェン] ……そう。その彼は今、トレーダーズミルの商業連合で副会長をしている。

[チェン] 我々の同級生の中でも、意図的に隠された情報に最も近付けるだろう人物がヒューズなんだ。

[バグパイプ] なるほど……実は、うちもヒューズを探しに行こうと思ってたんだよね。正確に言うと、ヒューズだけじゃなくて……巨漢のグリムとか、赤髪のビルも探して、助けてもらおうと思ってたの!

[バグパイプ] でも、一人で探すのは難しくてさ……

[バグパイプ] だけど今なら、チェンちゃんもいてくれるし、ロドスのみんなが物資や情報を提供して支えてくれるし――

[バグパイプ] これはもう、絶対なんとかなるべ!

[チェン] 言っておくが、彼らを説得できるかどうかはわからな――わっ!?

[チェン] こらっ、*ヴィクトリアのご挨拶*! 何をする! 急に引っ張るんじゃない!

[バグパイプ] 見て、発信機が光ってる!

[チェン] ――ロドスからの緊急連絡か?

[チェン] 発信機が故障する前に送ったのは、こちらの位置情報だけだ。こんなに早く連絡が来たということは、まさか、ロドスはずっと私を探していたのか……?

[チェン] ……

[チェン] …………ッ!

[バグパイプ] どうしたの? そんな顔して……

[バグパイプ] んー、うちわかったかも。きっと、あの人のことで来た連絡だべ?

[チェン] ……キミの推測通りだ。

[チェン] ――

[チェン] どう動くべきか、考えなくてはな。

[リスカム] ジェシカ、状況は?

[ジェシカ] こちら、現在移動中です。

[リスカム] 了解。警戒は怠らないで。

[ジェシカ] 大丈夫ですよ、リスカム先輩。……ヴィクトリアに戻ったことはあまりないですけど……この飛行ユニットはもう通行許可を得てますし、ナビゲーションシステムも正常に動いてますから。

[リスカム] 確かに、今回の――クルビアへ帰国する駐在員の護送任務は、特別難しいものじゃないけど、いつハプニングが起きてもおかしくはないと思うよ。

[ジェシカ] そう、ですね。駐在員のみなさんから救難信号が届いた時は、正直少し驚きました……

[ジェシカ] ここまでは何事もありませんでしたが、本当に、状況はそこまで深刻なんでしょうか……?

[ジェシカ] ふぅ……すみません。隊長や隊員たちの前では見せずに済みましたけど、やっぱりちょっと緊張しちゃって……

[リスカム] ……隊長はいないの?

[ジェシカ] えっと、実はそうなんです。ヴィクトリアに到着したらすぐ、何人かを連れてどこかへ行ってしまって。

[ジェシカ] 多分……彼女の方は、別の任務があるんじゃないでしょうか?

[リスカム] ……駐在員の引き揚げ任務は、あなたたち装備・応用技術部に託された、ってことか。明らかに、何らかの意図を感じるね。

[ジェシカ] い、意図ですか?

[リスカム] まあ、気付かない方が幸せなのかも。

[ジェシカ] まさか、外部の誰かと業務連携しようとしてるんでしょうか?

[ジェシカ] で、でも、ヴィクトリア政府からの正式な依頼は受けてません……

[リスカム] ……機密保持契約に基づいて考えるなら、部門外の情報に対して無闇に意見や憶測を口にするべきじゃなかったね。

[リスカム] さっき言ったことは忘れて。

[リスカム] 今は任務に専念するように。何かあったら、すぐに連絡してね。

[リスカム] それから、もう一つ。これはBSWが受けた任務だけど、わたしたちとロドスの協力関係はまだ有効だってこと、覚えておいて。

[ジェシカ] はい、了解しました。

[ジェシカ] ロドス側のチームがロンディニウムに接近するのを待って、必要に応じて連携を取ろうと思います。

[シージ] ……もうじき、か。

[ドクター選択肢1] 緊張してるのか? ヴィーナ。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] 皆、この日が来るのをずっと待っていた。

[シージ] ……数ヶ月前、ケルシー先生から、「準備はできているのか」と問われてな。

[シージ] 私はその時、「わからない」と答えた。

[シージ] そして今も……その答えは、変わらないままだ。

[シージ] ゆえに、緊張していない、とは言えないな。

[シージ] ドクター。こうして傍らにいてくれることに感謝する。

[シージ] もし私がいまだ、貴様と共に在る穏やかな時間を望むのならば、それは、逃避と取られるのだろうか。

[シージ] ああ。私もまた、あの日逃げることを選んでからというもの、かの地へ戻る日を待ち望んでいた。

[シージ] しかし……私は、考えずにはいられない。元いた環境からあまりにも長く離れていた人間に、帰る家など本当にあるのだろうか?

[ドクター選択肢1] 目が覚めた時、離れていた時間すら忘れていた者もいる。

[ドクター選択肢2] それでも、アーミヤと皆は受け入れてくれた。

[シージ] その話は、聞いたことがある。

[シージ] 貴様は目覚めてすぐ指揮官としての働きを求められ、チェルノボーグでの大きな事件を乗り越えた……並みの人間なら成し得ないことだ。

[シージ] アーミヤ、か……彼女にとって、貴様は本当の家族のようなものだからな。

[シージ] ロドスは貴様を必要としている。我々オペレーターもまた、それは同じことだ。その点について、疑いの余地はあるまい。

[ドクター選択肢1] ロンディニウムには、君を待つ人もいるだろう。

[シージ] グラスゴーのことであれば、きっと新たなリーダーがいるはずだ。でなければ、ロンディニウムで足場を築けはしない。

[シージ] ほかの者たちも……同様だ。

[シージ] 私がこれだけ久しく離れていれば、その穴埋めは為されている。ロンディニウムには、一本の釘の欠落すら存在しないだろう。

[ドクター選択肢1] 答えを知るためにも、一緒に進もう。

[シージ] 一緒に進もう、か。

[シージ] そういえば……貴様も、ロンディニウムへ真相を探しに行きたい、と言っていたな。

[シージ] いいだろう。確かに貴様らが傍らに在れば、私も活力を貰えるというものだ。

[シージ] 我々を待ち受ける答えが、最悪でないことを祈るとしよう。

[シージ] とは言え、何があろうと……私は己のハンマーで、往くべき道を叩き出してみせるがな。

[摂政王] 彼奴らはすべて揃っているか?

[聴罪師] 間もなくでございます、殿下……ナハツェーラーの王と、ブラッドブルードの大君は、三日の内にロンディニウムに到着いたします。

[摂政王] ふむ。王庭が再び集いてこの方、我らサルカズは内戦後で最も統一に近い段階にある。

[摂政王] いかなる勢力にも、我らの歩みを妨げさせてはならぬ。

[聴罪師] ……ときに、殿下。ヒロック郡からの使者はまだロンディニウムに留まっておりますが……

[摂政王] その件であれば、既に結論は出ているであろう。

[聴罪師] ええ。確かに殿下が以前仰せになりましたように、奴らは心から同盟関係を望んでいるわけではございません。

[聴罪師] かように影へと身を潜め、姿を現すことすらせず、愚かで狂った下僕だけを寄越してくるなど……真に誠意ある盟友ならば、決していたしますまい。

[聴罪師] しかし、欲するものを手にすることは叶わないというのに、かの者はこの地を去りません。その上彼女の率いる部隊は、ロンディニウムの周辺で貴族の残党や地域住民と幾度も衝突を起こしています。

[摂政王] 奴らは探りを入れているのだ。ロンディニウムの現状を探り、同時に我らの実力を推し量ろうとしているのだろう。

[聴罪師] 仰る通りでございます、殿下……仮に、我々が軟弱な振る舞いをすれば、彼女の背後にいる者が早々に動きを見せることでしょう。

[聴罪師] 一方で我々が強硬な態度を取れば、彼女は奴らにとって価値を失くした捨て駒となり、盤上から取り除かれたところで何の痛手にもならぬものかと。

[摂政王] ――サルカズを剣にしようと企む者は、その刃に刺されて死ぬことになる。

[摂政王] あの女は、タルラにすら及ばぬ。

[聴罪師] 左様でございましょう。血筋こそ似通うものはあれど、ダブリンの統率者とあのタルラとでは、まったく異なりますゆえ。

[聴罪師] レユニオンに比して、ダブリンが南部で起こした波乱は……奴らが十分な武力を有し、ヴィクトリアを引き裂く準備を整えている最中か、あるいは既にそれが整った段階であると証明するばかりです。

[摂政王] 混乱に乗じて利を貪らんとする者たちは、混乱が頂点に達した時にのみ姿を現すものだ。

[摂政王] 現段階においては、我らの当面の目的やサルカズ自体と無関係である限り、奴らが外で何を企もうとも、それは私の関心が及ぶところではない。

[摂政王] だが、このロンディニウムで余計な問題を起こすことは許さぬ。

[摂政王] この件はマンフレッドに任せよ。彼奴にはできうる限り早い成長を望んでいる。そも、あの貴族たちへの対処など彼奴には児戯に過ぎぬであろうしな。

[聴罪師] マンフレッドは常より殿下のお考えを承知しておりますゆえ……既に準備は整っております。

[摂政王] それでも、まだ足りぬと言うのだ。……して、ロドスに動きはあったか?

[聴罪師] この幾月か、彼らは常の通り表向きの顔である「商業活動」を続けております。

[聴罪師] あの陸上船は昨年末にカジミエーシュを離れて以降、幾度もヴィクトリアに接近しておりますが……我らの目を逃れたことなど、そうはございません。

[摂政王] であれば、船がロンディニウムに近付いた時……いや、例の者たち数名がヴィクトリアに入った時点で、すぐ私に報告をしろ。

[摂政王] あるいは、彼女に直接報告をしても構わぬ。

[聴罪師] かしこまりました、殿下。――サルカズの王は、彼女自身の王冠をいかように取り戻すべきかを、当然おわかりでございましょうからね。

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