aklib_story_暴風眺望_9-7_かくれんぼ_戦闘後

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暴風眺望_9-7_かくれんぼ_戦闘後

爆発の後、ダブリンの部隊が「リーダー」の指揮下で反撃に出た。結果、集会参加者には多くの死傷者が出てしまう。


[ホルン] うっ、げほ、ごほっ……!

[バグパイプ] わっ、隊長、大丈夫?

[ホルン] 平気よ。今回は突っ込まなかったのね、あなた。安心したわ。

[バグパイプ] 隊長の方がうちより早く反応してたからね。お陰で、このホールも盾の後ろの辺りはほとんど無事で済んだし。

[ホルン] ……だけど、全員を守ることはできなかった。

[バグパイプ] ――煙が収まってきたね。大佐も軽傷だったみたいで、別のドアから撤退してるのが見えたよ。

[ホルン] ウィリアムズさんは……

[バグパイプ] ……爆弾に近すぎたみたい。

[バグパイプ] すごい人だった、みんながみんな、他人のために、暴力に立ち向かえるわけじゃないよ。この人は詩人さんだけど、立派な戦士にも負けないくらい、勇気を持った人だったのに……

[ホルン] …………

[ホルン] 彼の死が、無意味なものではないことを願うばかりね。

[ホルン] ――さあ、バグパイプ。敵が来る前に、生存者を避難させるわよ。

[ホルン] ……バグパイプ?

彼女は、ぼんやりと窓の外を見つめていた。

ふと、戦いの音すべてが消え去ったかのように思えた。

闇夜の奥から、巨大なエネルギーが奔流となって押し寄せる。

炎が燃え上がることはなかった。けれど、確かに彫像から市庁舎に至るまで、すべての生物が一瞬にして灰となった。

そして、光のない夜と灰の中から、静かに一つの軍隊が現れた。

[バグパイプ] ……

[バグパイプ] …………ッ!

[バグパイプ] あんな炎、見たことない……

[バグパイプ] 先頭の術師、あれは……?

[ホルン] バグパイプ、そこを離れて!

[ホルン] 早く窓のそばから離れるの! さっきのエネルギー量から見て、次は壁が吹き飛ばされてもおかしくないわ。

[バグパイプ] は……はい、隊長。

[バグパイプ] でも、うち……

[野心に満ちた男爵] ……た、助けて……早く、助けてくれ……

[野心に満ちた男爵] 足が痛い……足が……!

[ホルン] 救出優先。まずは撤退しましょう。

[ダブリン兵士] ――誰だ? まさか、まだヴィクトリア兵の生き残りが……!?

[バグパイプ] 隊長、そこら中敵だらけだよ!

[ホルン] 常軌を逸した行軍速度ね。亡霊部隊はかなり前からこの都市に潜り込んで、着々と準備を進めていたと見ていいでしょうね。

[バグパイプ] にしたって、十一地区から十七地区まで一瞬で占拠されるなんて、早すぎるよ! もしかして、大佐がこの辺を捜査しようとしてた理由はそれだったの!?

[ホルン] ……!

[ホルン] とにかく、第十地区の南まで撤退しましょう。駐屯軍が亡霊部隊と交戦しているのは、その辺りだから。

[野心に満ちた男爵] せ、戦場に向かうのは御免だ! それよりまずは……私を安全な場所まで送ってくれ……! あの幹部たちに、私が生きていることを気付かれるわけには……!

[バグパイプ] この状況で送ってくれ? 本当に牢屋にぶち込まれた方がいいみたいだね!

[野心に満ちた男爵] ううっ……痛いぃ……乱暴すぎるぞ……私を誰だと……

[野心に満ちた男爵] なあ……金をやるぞ! いや、土地の一つくらいならくれてやってもいい……! お前たちが……

[バグパイプ] 隊長っ! この人、うちのやり方で黙らせてもいい!?

[ホルン] 止しなさい。意識があるうちに聞いておかないといけないこともあるんだから。

[ホルン] それで、さっきの奴らを率いていた術師は誰なの?

[野心に満ちた男爵] ……あれは……リーダーだ……

[バグパイプ] えっ? リーダーって、亡霊部隊の!?

[バグパイプ] あの人、一体どこのどちらさん?

[野心に満ちた男爵] わからない……

[バグパイプ] 仲間同士じゃないの? ひょっとして、全然知らない人たちを平気で街に入れてたわけ!?

[野心に満ちた男爵] 彼女は……公爵の、客だから……

[ホルン] ……公爵? どの公爵か言いなさい!!

[野心に満ちた男爵] 私には、言えな……

[野心に満ちた男爵] うっ――!

[バグパイプ] なっ!? そんな……もう息がない。

[バグパイプ] まさか、亡霊部隊がやったの……?

[ダブリン兵士] ――

[バグパイプ] ねえ、この人たち仲間同士なんだよね? だったらどうして亡霊部隊は身内まで狙ってるんだろう?

[ホルン] ……考えてる暇はないわ。とにかく、ここを離れましょう。

[ダブリン兵士] 待て、そこのお前。

[ウィル] ……!

[ダブリン兵士] 何者だ? なぜこんなところに隠れている?

[ウィル] 俺はアレだ……ただ、薬を運んでただけだ。……お前らがここでやり合ってるなんて知らなかったからな。

[ダブリン兵士] 薬? まさか、ヴィクトリア兵にか?

[ウィル] っ、はは……俺たちには、患者の身分なんて関係ない……ロドスの薬は感染者のためにあるんだ。

[ダブリン兵士] どうだか、怪しいものだな――

[ウィル] う、わっ……!

[Outcast] ――やあ、ウィル。調子はどうだい?

[ウィル] Outcastさん! も、もうダメかと思いましたよ!

[Outcast] やれやれ。午後の通信が来てただろう? ロドスはヒロック郡での日常業務すべてを緊急停止する、と。

[ウィル] よ、読んだには読んだんすけど~……

[Outcast] ――それでも薬を運び終えたい、といったところか。

[Outcast] ははっ、君はいい子だな。そら、薬を貸しなさい。あとは私が運んでおこう。

[ウィル] あ、あの……Outcastさん、これって一体何がどうなってるんすか? 気付いたらそこら中が戦争みたいになっちゃってんすけど……!

[Outcast] 何百年と積み上げられてきた恨みを利用した連中がいるようでね。お陰で人々の怨念が、すべてを灰にせんとする業火を生み出した、というわけさ。

[Outcast] しかもだ。これは、ほんの始まりに過ぎない。

[Outcast] とにかく、君はすぐに戻りなさい。私がここにいるからには、ロドスの仲間は一人として欠けさせやしない。

[ウィル] は、はい。……そうだ、さっき十七地区の辺りでジェーンさんを見かけたんです……あの人、ほんとよく事務所に来てくれるんすよ……だから俺たち、もう彼女を半分ロドスの仲間だと思ってて……!

[ウィル] でも、彼女はヴィクトリア兵っすから……暴れてる連中は、きっと見逃しちゃくれないと思うんすよ!

[Outcast] わかった。

[Outcast] 先ほどの言葉に付け加えよう――半分だろうが何だろうが、ロドスの仲間は誰一人欠けさせやしないさ。

[バグパイプ] 隊長、動かせる人は全員移動が終わったよ。

[ホルン] 助かるわ。あなたは? 怪我はない?

[バグパイプ] ないない、大丈夫! ……それにしても、向こうさんと一晩戦ってみて、ちょっとほっとしたよ。先頭にいた術師と、ちらほら見かける手強い相手以外は、ほとんどの兵士が普通の人みたいだね。

[バグパイプ] ある程度訓練はされてるけど、統率は取れてないから、同じくらいの規模同士で正面からのぶつかり合いに持ち込めるなら、ヴィクトリア軍の敵じゃないよ。

[ホルン] それはそういう前提があっての話でしょ。しかも、彼らのターゲットは駐屯軍なのよ。

[バグパイプ] そうだね。たしかに駐屯軍じゃ、あの人たちと戦っても優位には立てないな。

[ホルン] それで、ほかに気付いたことは?

[バグパイプ] うーん、相手は武器も装備も相当いいもの使ってるってことかな。実は、さっきお役人さんや貴族さんを助けに行った時、曲がり角で襲撃されたから返り討ちにして、これを取り上げてきたの。

[ホルン] 軍用クロスボウね。それも、ヴィクトリア式?

[バグパイプ] そう。二年前のモデルだよ。でも、改造されててさ、このコイル二つと、下についてるガイドレールを見て。

[ホルン] ……シールド破壊弾用の、加速装置。

[バグパイプ] うち、クロスボウはあんま詳しくないんだけど……こんなの、軍隊でも学校でも見たことないよ。これってうちらの技術なのかな?

[ホルン] 多分、違うでしょうね。

[ホルン] ねえ、バグパイプ。私、何か見落としていたのかも。……一度整理しましょう。我々は源石製品窃盗事件の調査に来た……そうよね?

[バグパイプ] うん。それから、亡霊部隊がうちらみたいな正規軍に対抗するためには、大量の武器が必要になる、ってところも間違いないよね。

[ホルン] だけど、このクロスボウは多くの情報を秘めているわ。

[ホルン] まず、この計画は、想像よりも長い間ひそかに進められていた、ということ。そして、彼らは我々から奪った物資で賄うだけでなく、ほかの勢力から長期的な援助を受けている、ということ。

[ホルン] それらを鑑みるに、彼らには、わざわざ今ここで新しい装備を手に入れる必要なんてないはずよね。

[バグパイプ] あっ、隊長の言う通りだよ! でも、だとしたら……盗まれた武器はどこに行っちゃったのかな?

[ホルン] そう、今あなたも気付いたように――亡霊部隊がようやく姿を現した一方で、ヒロック郡で消えた源石製品はなおも行方知れずのままなのよ。

[ホルン] トライアングルが何か手がかりを見つけてくれてるといいわね。

[トライアングル] (小声)お呼びですか、隊長。

[ホルン] ええ。あなたたちの方は、全員無事?

[トライアングル] ドラムが負傷していますが、そのほかは全員、行動に支障はありません。……ただ、皆疲労と空腹で、状態がいいとは言えません。

[ホルン] 昨日も交戦したの?

[トライアングル] はい。昨日の夕方頃に、突如として大量の敵が出現しました。どうやら、連中はずっとビニールハウスや灌漑施設に潜んでいたようです。

[ホルン] ……つまり、そこが彼らの隠れ家だった、と。確かに駐屯軍は農業用地には詳しくないし、こちらには不利なかくれんぼでしょうね。

[トライアングル] 我々はその一部と会敵しましたが、相手の数が多すぎたので、夜明けまで隠れてやり過ごしました。

[ホルン] よくやったわ。それで、街に戻ってくることはできそう?

[トライアングル] ははっ。隊長、それはちょっと難しい相談ですね。連中の半分が街に侵入し、もう半分はまだ至る所でうろついている状況ですから。

[ホルン] ……

[トライアングル] 隊長、こちら側の我々の総意は、当初の任務の続行です。

[トライアングル] こちらで輸送車を一台発見したんです。隊長のご想像通り、何者かが農産物の輸送ルートを利用して、源石製品をどこかへ運んでいるようです。

[トライアングル] 一度の運搬量それほど多くないようで、今運ばれているこれで、恐らく最後なのではと。

[ホルン] 「これ」……? あなたたち、今どこにいるの!?

[トライアングル] 輸送車の中に隠れているところです。

[トライアングル] ……連中に聞こえてしまうかもしれませんから、報告はここまでにしておきます。次にご連絡する時には、盗人の正体を報告できるはずです。

[ホルン] 危険すぎるわ!

[トライアングル] ははっ……隊長。そちらも、どうかお気をつけて。

[トライアングル] ――トライアングル、通信終了します。

[ホルン] ……

[ホルン] バグパイプ、今すぐチェロに連絡して。兵営に戻るわよ。

「……第三から第九までの地区が占拠されました……」

「……市庁舎、新聞社、メアリー医院が同時に襲撃を受けています……」

「……ボレ男爵夫人から緊急連絡! 早朝から男爵と連絡がつかないとのこと、駐屯軍に救援を求めています……」

[ホルン] 大佐! お話があります。

[ハミルトン大佐] ……通してやれ。

[ハミルトン大佐] 無駄話をしに来たわけではあるまいな、スカマンドロス。君も見た通り、我々の敵が狂気の沙汰といえる暴動を起こしている今、これ以上君と言い争っている暇はないんだが。

[ホルン] ――敵は、農業用地に隠れています。

[ハミルトン大佐] 何……?

[ホルン] これまでも、ずっとそこに身を隠していたのです。その上、現在市街地にいる者たちで全員というわけではなく、まだ大勢が控えているようです。

[ハミルトン大佐] ……

[ハミルトン大佐] ……そんなことだろうと思っていた。

[ホルン] 今すぐ農業用地に人員を手配し、民間人の避難誘導を行った上で、これ以上敵が市街地に流入しないよう、都市中心部と農業用地の連結を緊急解除すべきと進言します。

[ハミルトン大佐] 君に指導を受ける筋合いはない。

[ホルン] 大佐! 駐屯軍の兵力と我々特攻隊の人員だけでは、街に侵入した敵を即刻排除できるとは限りません。これ以上敵に援軍を送り込まれるわけには――

[ハミルトン大佐] もういい、下がれ。

[ホルン] 大佐っ……!? 話を聞いてください!

[ハミルトン大佐] ヒロック郡をどう守るべきか――それを考えるのは私の仕事だ。

[ホルン] しかし……! ヴィクトリアの安全を守り抜くという最重要任務において、我々は立場を同じくしているはずではありませんか!

[ハミルトン大佐] ヒル、お客様がお帰りだ。

[ハミルトン大佐] 聞いたか……農業用地だと? ハハッ、そんなところに隠れていたとは! もっと早くに気付くべきだったな。亡霊に手を貸すような連中は、奴らのほかにはいないというのに!

[副官ヒル] 仰る通りです、大佐。やはり、ターラー人が亡霊どもを援助しているに違いありません。

[ハミルトン大佐] ……砲兵大隊の準備はどうだ?

[副官ヒル] 計画通り進んでおります。最後の原料は、正午頃送り届けられる予定です。

[ハミルトン大佐] よし、改造を急がせろ。あの吐き気を催す連中が私の都市でうろついていると思うだけで、もう一秒だろうと待っていられんのでな。

[ハミルトン大佐] ああ、それと……スカマンドロスと彼女の手下、ロンディニウムの狼どもの内、何人かは街の外で調査中といったところだろう。しつこく噛みついてくるだろうが――

[ハミルトン大佐] こうなれば、どんな手段を用いても構わん。誰にも計画の邪魔はさせるな。

[副官ヒル] はっ! 了解しました、大佐。

[ハミルトン大佐] 加えて、スカマンドロスに関しては、すべてを成し遂げるまで、行動を制限しろ。

[副官ヒル] わかりました。

[ハミルトン大佐] ……ときに……彼女の話を聞いて、考えたことがあるのだが。

[ハミルトン大佐] 昨夜のボルトン家において、我々の作戦行動が敵に知られていたのはなぜだ!?

[ハミルトン大佐] まさか、スカマンドロスが……いや、ないだろうな。奴はあの貴族たち同様、単純で軟弱だが、帝国に対する忠誠心は間違いない。

[副官ヒル] ……

[ハミルトン大佐] となれば……チッ。所詮クズはクズ、か。性根の下劣さは救いようがないと見える。

[ハミルトン大佐] これから始まる最後の数時間で、もっと早く片付けるべきだった仕事を終わらせなくてはな。

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