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怒号光明_R8-3_燃え易き「麦藁」_戦闘前
監視隊が村で感染者の捜査を始めた。タルラの罪を肩代わりしようとした老人は、無残にも命を奪われてしまう。怒りに満ちたタルラはついに手を出してしまった。
フェイゼへ:
前回の話の続きをしよう。
私は長い逃亡の末、小さな村にたどり着いた。
その時は特に深く考えず、ただ一時的に隠れる場所を探していた。まさかそこに腰を落ち着かせることになるとは思いもしなかった。
あの老夫婦は恐らく、ウルサスの度重なる戦火で早くに子を失ったのだろう。私をまるで娘のように可愛がった。
私の持つ秘密さえ、二人は私のために隠してくれた。
あの二人には、感謝してもしきれないほど世話になった。
ただ残念なことに、十分な恩返しはできずに終わってしまった。
1月13日
[感染者監視隊] 前回の定例調査において、我々の隊員の一人が襲撃にあった。
[感染者監視隊] 今から、全戸を対象に捜査を行う。感染者はもちろん、襲撃犯を発見すれば即刻処刑だ。更に、これらの者を匿った場合も処罰の対象となる。
[感染者監視隊] 苦しい思いをしたくなければ、心当たりのある者は今すぐ居場所を教えろ。善良な通報者を傷つけたりはしないと約束しよう。襲撃犯と感染者については、相応の処分が待っているがな。
[感染者監視隊] それでは、一軒目から調査を開始する。
[タルラ] 婆さん、とうとうこの日が来た。これ以上は隠れようがない。
[おばあさん] 出て来ちゃダメだよ、タルラ! 家の後ろに隠れていれば見つかることはないさ。処罰が怖くて逃げたってことにしておくから、誰もお前を責めたりしないよ!
[タルラ] だがそれでは皆に危害が及ぶ。恩を仇で返すことなんてできない。
[タルラ] 少しだが金貨を置いていく……ヴィクトリアの金貨だが、贅沢さえしなければ、一生食べることには困らないはずだ。
[おばあさん] タルラ、タルラ! どこに行くんだい? 私のタルラ……ダメだ、あいつらに顔を見せてはダメだよ! あの監視隊の黒い虫どもは、人を人とも思っちゃいないんだから!
[タルラ] だからこそ、これ以上村の人たちを苦しめるわけにはいかない……こんなことはもう終わりにするんだ。奴らに、悪行には報いがあるということを思い知らせてやる。
[タルラ] 大丈夫だよ、婆さん。奴らには、二度と復讐の機会など与えない。もう村の人を誰一人として殺させやしないから……
[タルラ] 隣の男の子が奴らに石を投げただけで殴り殺されたことは、忘れもしない。
[おばあさん] タルラ……ああタルラ! やめておくれ……そんなこと言わないでおくれよ!
[おばあさん] だ、誰だい!? ……監視隊かい? ここには年寄り以外誰もいやしないよ! 早くどっかへ行っとくれ!
[アリーナ] おばあさま、私よ!
[おばあさん] おお、アリーナかい! 早く、早くお入り!
[おばあさん] 顔を青くしてどうしたんだい? 何か悪いことでもあったのかい?
[アリーナ] ……密告者が出たわ。
[おばあさん] え? 何だって? 何の密告だい?
[アリーナ] この村に感染者が一人だけいることを監視隊は知ってるみたい。
[おばあさん] そんな、まさか……あぁ! 冗談だと言っとくれ!
[アリーナ] どこから情報を得たのかはわからない……でも、感染者を匿ったらどうなるかはみんなが知っているわ。
[タルラ] ……
[アリーナ] おばあさま……父が早くにこの世を去った後、母にも私にも本当に良くしてくれて感謝しているわ。二人のことは本当のおじいさん、おばあさんのように思っているの。
[アリーナ] こうなってしまったからには、もう隠し事なんて……
[タルラ] ――待て、アリーナ。
[タルラ] 婆さん、爺さんはどうした?
[感染者監視隊] クソジジイ、何の用だ?
[おじいさん] わしは罪を犯した!
[感染者監視隊] 自首か? おっとそうだ、思い出した。確かあの隊員は老いぼれに足止めを食らったとか言ってたな。その足の様子を見ると、お前が襲撃犯の一人だな?
[おじいさん] その通りじゃ!
[感染者監視隊] ……見たところ特に財産もなさそうじゃないか。ふん、もういい。見逃してやるからどこへなりとも行くがいい。しかし、こんな貧乏な農民にたかろうなんて、あいつもおかしな奴だな。
[おじいさん] 待て! ほら、この体を見ろ! これは何だと思う?
[感染者監視隊] ――!
[感染者監視隊] か、感染者! 密告のあった感染者とはお前のことか!?
[タルラ] 何だって!?
[おばあさん] あの夜、着替えを手伝った時に見えたんだよ……タルラ、あんたは感染者だね。私もじいさんもとっくの昔から知ってるよ。
[タルラ] なっ――
[おばあさん] だけどね、じいさんも同じさ。小遣い稼ぎに採掘場へ行って、鉱石病をもらって帰ってきたんだよ。だからいつもあの上着を着て、脱ごうとしないのさ……
[おばあさん] じいさんはあんたの代わりに罪を被る気なんだよ、タルラ……!
[タルラ] そんなのダメだ!
[タルラ] まさか、爺さんが……
[おばあさん] 村の人間なんて当てにならないよ。金や命のためなら、あいつらはどんなことでも言うからね!
[おばあさん] タルラ、この二年間、私たちは本当にあんたを愛していたんだ! いい子だ……あんたはいい子だよ!
[おばあさん] 私たちは老い先短いんだから構わない。でもあんたはねタルラ……たとえ病気でも先はまだまだ長い! あんたにはいい人生を送ってほしいんだよ……
[おばあさん] タルラ、行っちゃダメだ! 行かないでおくれ!
[おじいさん] さあ、わしを捕まえるんじゃ。
[おじいさん] 早く捕まえてくれ!
[おじいさん] この体を見ろ! わしこそがその感染者じゃ!
[感染者監視隊] ……
[おじいさん] まだ信じられないのなら、これを見ろ!
[感染者監視隊] 剣? それを下ろせ。じいさん、お前じゃ俺たちには敵わない。
[おじいさん] そうじゃない。わしのアーツを……わしのアーツの力を見てほしいんじゃ!
老夫が剣で自らの腕を切ると、流れ出た血は地面の雪に滴り落ちることなく、霧のように空気中に広がった。
[おじいさん] ほら、見ろ……見てくれ! 正真正銘の感染者じゃ!
[感染者監視隊] わかった、信じよう。
[感染者監視隊] 協力に感謝するぞ、感染者のじいさん。
[おじいさん] うぐ……ぐっ……!
[おじいさん] タルラ……
[アリーナ] タルラ! 行かないで! 帰ってきて!
[アリーナ] これは……火?
[アリーナ] どういうこと!? 家が燃えている――
[アリーナ] タルラ! これはあなたの――
[アリーナ] 待って! タルラ!! このままじゃ村全体に燃え広がっちゃう!
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