aklib_story_潮汐の下_SV-3_異邦人_戦闘前

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潮汐の下_SV-3_異邦人_戦闘前

海辺で食料を探してみるも、スカジが海で見つけたものは怪物以外に何もない。


[司教] ご覧なさい。まるで海に迷える鱗獣のように、あなたは未だ彷徨い続けている。

[グレイディーア] ……

[司教] あなたの目はこう問いかけていますね。彼女をどこへ連れて行ったのか。我々が彼女に何をもたらすのか、と。しかし、あなたには我らの集会に参加する資格がありません。

[司教] ところで、姉妹の愛は取り戻せましたか? 古い友人の境遇に、あなたの心は引き裂かれましたか? 不公平だと思いましたか? すべてに怒りを覚えましたか?

[グレイディーア] 目に見えぬものをお探しのようね。

[司教] そう受け取ることもできましょう。

[司教] もし私が彼女を傷つけるつもりだと思っているのでしたら、答えは否です。私は彼女の力になりたいだけなのですよ。

[司教] 彼女の――いいえ、あなたたちの苦痛がどこから来るのかを理解して初めて救済することができる。そうでしょう?

[司教] あなたが自らの意志で信者となり、真の海と一つになりたいと望んだように……この仕事を終えた時、その穢れし本質は浄化されることでしょう。嗚呼、これぞ慈悲深き海の恩恵です。

[司教] そして、いずれはあなたの旧友たちも恩恵を授かることでしょう。彼女たちがあなたを見習い、その狭き視野を――敵対していた時に抱いていた思考を捨てさえすれば、ね。

[司教] 再会こそが最初の歩みとなり、私があなたたちを理解することが次の歩みとなる。そうすれば最後には、あなたたちも私を理解できるようになることでしょう。

[グレイディーア] ……

[グレイディーア] その無駄話を減らしてくださったら、より打ち解けられそうなのですけれど。

[司教] では、お喋りはこの辺りにして……吉報を一つ。あなたのもう一人の旧友が辿り着いたようですよ。

[グレイディーア] スカジのことを仰ってますの?

[グレイディーア] ここには、いないようですけれど。

[司教] 私の招待がなければ、ここに入ることはできませんからね。

[グレイディーア] ということは、彼女がこの街に訪れたことを察知したと……?

[司教] おや、意外でしたか? 私はこの都市すべての音を聞き取ることができるのですよ。

[司教] 神は私の行いを全てお認めになり、そのための力を、そしてより豊かな命すらも与えてくださった。今や私の知覚や心は、肉体という名の枷から解放されたのです。

[司教] 私は完璧へと近付いている。嫉妬をなさるのも当然です。

[グレイディーア] ふっ。

[司教] さて、話を戻しましょう。あなたの旧友ですが――予想よりも早い到着でしたね。

[司教] 「アビサルハンターの血は繋がっている」……

[司教] 彼女は、何が待ち受けているのかも知らず……あなたがもう一人の旧友を連れ去ったというだけで、この街まで追ってきたのです。少しも休むことなく、ね。実に素晴らしい友情です。

[司教] 果たして今のあなたを、彼女はご存知なのでしょうか? そして裏切り者を前にした時、彼女はどんな決断を下すのでしょう? アビサルの血の繋がり――僚友の情か、それとも断罪か。

[司教] 楽しみですね。

[グレイディーア] ……もう行きますわ。ごきげんよう。

[司教] 急いで彼女を探す必要はありません。あなたは十分に役目を果たしました。一人をあるべき場所へと連れ帰り、もう一人をこの街へ呼び寄せたのですから。

[司教] あのお方もご満足でしょう。

[グレイディーア] 「あのお方」?

[司教] あなたは知らずともいいことです。

[司教] 今は待ちましょう。そして時が来たら、あなたの旧友を我々の元へ招いてください。

[グレイディーア] 彼女が来るとは限りませんわよ。

[司教] 来ますとも。自ら、私を訪ねに……ね。

[アニタ] ただいまー! 戻ってきたよ!

[アニタ] 私たち、北側の一番いい家に住んでるんですよ。ほら見て、この扉閉まるんです! すごいでしょう! 扉がちゃんと閉まる家は、雨の日もへっちゃらなんですよ。

[スカジ] 近くに二人……いるわね。

[アニタ] ああ、あの二人ですか? いつもあそこにいるんです。

[男性住民] 百三十、百三十一、百三十二……

[アニタ] ハーイ、レンガ! 調子はどう?

[男性住民] ……

[男性住民] 一、二、三……

[アニタ] ご、ごめんね!

[アニタ] は、初めからになっちゃった……可哀想なことしました。彼、毎日ここに座って、通りにレンガが何個あるのか数えてるんです。ここだけの話、結果は日替わりなんですけどね。

[アニタ] あっ、あの人は石柱です。通りにある柱の周りを散歩するのが好きなんですよ。雨の日は出歩きませんけどね。もう若くないから、雨に濡れると足が痛むんですって。

[アニタ] 彼らのことはあんまり気にしないでください。向こうも、あなたのこと気にしてませんから。私を気にしないのとおんなじで。

[アニタ] さあ、上がってください、歌い手さん。私たちの家へようこそ!

[男性住民A] ……

[男性住民B] ……

[アニタ] ハーイ、トタン。それにほこりも。起きてたんだね!

[スカジ] ……!

[男性住民B] 痛い……

[男性住民A] おい、木枠。そのよそ者、連れて来たのか。

[アニタ] だって、悪い人じゃないもん。

[男性住民A] だが、よそ者だ。

[アニタ] ベンチも彼女のこと気に入ってるんだから別にいいでしょ。ね、ベンチ?

[幼い住民] うぅ……あう~……

[アニタ] あっ、こら! 噛んじゃダメ! 歌い手さんのスカートが破けちゃうでしょ!

[スカジ] はぁ……

[スカジ] ……これぐらいじゃ破けないわよ。

[アニタ] でもよだれまみれにしたら勿体ないですよ、せっかく綺麗なのに。

[幼い住民] あう~? あぅあう……

[アニタ] この子ったら、本当にあなたが大好きみたいです。

[スカジ] ……

[アニタ] ほら、ベンチも歌い手さんにいてほしいって。

[男性住民A] お前、何か企んでいるな。俺にはわかっているぞ。

[アニタ] ええっ?

[男性住民A] いい結果など、期待するな。

[アニタ] 私は別に、何も企んでなんて……

[男性住民A] ……勝手にしろ。

[男性住民A] だがルールは、破るな。

[男性住民A] お前も、あいつもだ。

[男性住民A] 俺は見ているからな。

[男性住民A] ……行くぞ。

[アニタ] ふぅ……やっと行った。

[アニタ] 歌い手さん、怖がらなくても大丈夫ですよ。トタンはああいう人なんです。見た目はちょっと怖いですけど、何もしませんから。

[スカジ] 怖がる……?

[アニタ] あっ、そうですよね! あなたが怖がるわけありませんでしたね。あなたは彼らよりもずっとすごい人ですから。

[アニタ] でももし本当に何かしてきたとしても、私だって怖がったりしませんよ。

[スカジ] そう。

[アニタ] はぁ……

[スカジ] どうしたの、ため息なんてついて。

[アニタ] この缶、もう空っぽなんです。お皿にも何も乗ってないし……

[アニタ] でも……私の記憶が正しければ、ベッドの下に食べ物が……

[スカジ] ……これがベッド?

[アニタ] そうですよ。あっ、もしかして変でしょうか? あなたのベッドは鉄でできてないんですか?

[スカジ] そんなの、気にしたことないわ。

[アニタ] 家によっては、木のベッドもありますよ。木は便利なのれす。燃やせば部屋が明るく、暖かくなりますし。病気の人にとって、ここの冬はすごく厳しいものですから……

[アニタ] ところで、これ見てください。私の宝箱なんです。朝起きた時、奥の方に入れておいたんですよ。

[アニタ] 海草をどかしてもらえますか? そう、そのからからに乾いてるやつを……あっ、ポイってしちゃダメですって! 食べ物にはなりませんけど、ベッドに敷いて使うんですから。

[スカジ] たくさんあるのね。

[アニタ] はい。使える物は全部ここに隠してるんです。

[アニタ] じゃじゃーん! 見てください、今私が縫ってる服です! 最近研いだ貝殻針が、ここ数年で一番のできばえで……

[アニタ] でも、布が足りないんですよね。街の南まで行って探さないと……もしかしたら、もっと奥の方にはいくらか残ってるかもしれませんし。

[アニタ] もうすぐ寒くなりますから、早く仕上げないといけないんです。

[幼い住民] ……

[アニタ] ダ、ダメだよ、ベンチ。この服は触っちゃダメ! これはペトラおばあさんにあげるの。咳がどんどんひどくなってるんだから……

[幼い住民] ……

[アニタ] これもダメ! 放して、ベンチ!

[幼い住民] きわく。

[アニタ] 何度も言ったじゃない。私は「木枠」じゃなくて「額縁」!

[アニタ] それに、これは食べ物じゃないの。あげても食べられないからね!

[スカジ] 木枠……額縁?

[アニタ] 皆、私をそう呼ぶんです。聞いてたでしょう?

[スカジ] アニタじゃないの?

[アニタ] アニタって名前は、自分で付けたんです……もともと、おばあさんが聞かせてくれたお話に出てくる、女の子の名前で。あなたみたいに、歌が上手な子なんですよ。木枠よりいい名前でしょう?

[アニタ] ここの人たちのほとんどは、名前を持ってないんです。だから、皆適当に呼んでます。いつもレンガを数えているから、レンガ。トタンの柵で囲まれた家に住んでいるから、トタン。

[アニタ] ペトラおばあさんが、木枠の下から私を見つけたので、私は木枠。でも、皆が木枠って呼んでるものは本来「額縁」だったものなんです。だからあれは「額縁」だよって何度も言ってるんですけど……

[スカジ] あなた、母親がいたと言ったけど。

[アニタ] ええ。お母さんは私を誰の手にも渡さずに守ってくれました。お母さんはすっごく勇敢な人なんです。私が生まれた頃、ここに子供はいませんでしたし、生き延びることもできなかったんですって。

[アニタ] 当時はペトラおばあさんに逆らえる人なんていなかったそうで……だから、おばあさんが私に食べ物をくれてたんです。今は具合が良くありませんけど、おばあさんは街で一番すごい人なのれす。

[スカジ] そうなの……

[アニタ] トタンだって、おばあさんを怖がってるんですから。

[スカジ] そう。

[アニタ] 今はだいぶマシな生活になりました。宣教師さんがどうやって生きていくかを教えてくれたので。ベンチや、あの子たちを見てください。そのうち、ここもきっと賑やかな街になると思うんです。

[幼い住民] あぅ……あう~……

[アニタ] こら、勝手に私の物を触らないの。それさえやめられたら、あなたはすっごくいい子なんだよ。ね、ベンチ。

[アニタ] 他の物なら、あげちゃってもいいんですけど……夜寝る前、この宝箱はちゃんと隠しておくようにしてます。誰にも見つからないように。

[アニタ] 本当は物を隠すのはいけないことなんですけど……ここには、自分の物と他人の物の区別がないので。歌い手さん、このことは誰にも言いませんよね? あなたは私の物に興味なんてなさそうだし……

[スカジ] 私を信用するの?

[アニタ] あなたはお客さんですから。ペトラおばあさんが言ってました。お客さんはちゃんとおもてなししないとダメだって。

[アニタ] ……やっぱりありました! ほら、まだ鱗獣が残ってましたよ。

[スカジ] ……この臭い……

[アニタ] まだ半月前のですから、結構新鮮なのれす。

[アニタ] 半分はベンチにあげようっと……おいでベンチ、鱗獣だよ!

[幼い住民] あう~、あむ、あむ……

[アニタ] もう半分はあなたのです。食べ終わったら骨は残しておいてくださいね。それでスープを作りますから。

[スカジ] 食べ物くらい、自分で見つけてくるわよ。

[アニタ] でも、まだ「その時」じゃないんですよ! 今行っても、何にも見つかりませんって。

[スカジ] それは、やってみればわかることよ。

[アニタ] えっ?

[アニタ] 言ってる傍からどこかに行っちゃうなんて……歌い手さんって本当に変な人!

大きなケースを背負った赤いドレスの歌い手が、通りをゆっくりと歩いていく。

誰も彼女を見ていない。時を止めた灰色の通りに、ただ赤色が静かに流れていく。

[スカジ] ……まだ、つけてきてるのね。

スカジは突然足を速めた。

荒れ狂う風に踊らされた波のように、素早く通りを横切っていく。

彼女はそのまま海へと飛び込むかに見えたが――すんでの所でぴたりと止まった。

赤いドレスの歌い手はハープを抱え、崖の上に立つ教会を見やり、暗い海へと視線を落とす。

この海の、なんと静かなことか。

彼女は、十メートルはあるその断崖から飛び降りた。

[男性住民A] 海岸だ。あいつが海岸に行った。

[男性住民B] そうだな、トタン。お前の考え、正しかった。あいつは、海に入ろうとしてる。海の中、行くつもりだ。

[男性住民A] まだ、その時ではないのに。

[男性住民A] 宣教師が言っていた。百回、潮が満ち引きしたら、海に入ることを許される、と。

[男性住民B] トタン、俺たちは行けない。海岸に行くこと、許されない。

[男性住民A] ……そんなことは、言っても仕方ない。俺たちが止めなければ。

[男性住民B] 止める? あいつに、勝てるのか?

[男性住民A] 宣教師が言っていた。百回。百回待たないと、行ってはならない。まだ九十九回だ。

[男性住民B] あいつ、何も得られない。今日の海岸、何もない。

[男性住民A] それなら、あいつは……何を探しているんだ?

[男性住民B] トタン、ここは寒い。腹が減った。俺たち、行ってはいけない。お前も、気にするな。

[男性住民A] 海には、何があるんだ?

[男性住民B] 知らない。

[男性住民A] 知っていたとして、何ができる?

[男性住民B] ……知らない。トタン、お前が言うこと、わからない。俺には、わからない。

[男性住民A] これまで、俺たちが行った場所……一番遠かったのは、どこだ?

[男性住民B] 西だ。ずっと前のことだ。あの時、俺たちの背は……まだ、これくらいだった。街で、食べ物を拾えた頃だ。

[男性住民A] 境界線。……いつもは使わない言葉だ。俺たちは見た。この街の一番端を。

[男性住民B] それはお前だ、トタン。俺たちではない。

[男性住民B] 俺はあの時、腹が減って、倒れた。

[男性住民B] もう少し行ってみようと、お前は言った。運託しだと。

[男性住民A] ……運試しだ。

[男性住民A] まったく……お前は、いつまで経っても上手く話せるようにならないな。宣教師が、お前には何年も教えているのに。少しも上手くならない。

[男性住民B] へへっ……トタン、お前がいる。お前が、わかってくれる。

[男性住民A] お前はあの時も、そう言っていたな。

[男性住民A] お前はいつも、俺を信じてくれる。お前は、俺にお前の缶を持たせてくれた。俺は、それからまた一日歩いた。

[男性住民B] そして、トタン。お前は帰ってきた。

[男性住民A] ああ。俺は帰ってきた。

[男性住民B] 帰ってきたお前は、何日も、何も食べなかった。俺は、お前が飢え死にしたいのかと思った。

[男性住民A] それは、俺も考えた。だが、飢え死にして、何の意味がある?

[男性住民A] どうせ、皆死ぬ。そう遠くはない。

[男性住民B] あの時もお前は、そう言ったな。俺は驚いた。俺は、お前の言ってることが、わからなかった。

[男性住民A] その後……宣教師が来た。俺はようやく変化を感じた。俺たちは、皆変わった。

[男性住民B] 宣教師……素晴らしい生活。俺たちも、持つことができる。宣教師はそう言っていた。これは、本当だ。本当のことだ。

[男性住民A] ああ、本当だ。なぜなら……それが、真理だからだ。宣教師が、俺たちに見せてくれた……

[男性住民A] 宣教師のお陰だ。俺は生き延びた。俺たちは生き延びた……これでいい。

[男性住民A] 誰も、あの線を越えられない。

[男性住民B] あの線とは、この、海の線か?

[男性住民A] あらゆる線だ。木枠が作った、罠と同じ。外から、誰かが来ないように。すべてを、止める線だ。

[男性住民A] 俺たちも、外へは出ない。これが一番だ。

[男性住民B] トタン……お前の足、水につきそうだ!

[男性住民A] 水……そうだ。俺は行かない。

[男性住民A] 線を越えても……越えたとしても、そこにはきっと、何もない。

[男性住民B] ふぅ……トタン、やっと立ち止まったか。驚いたぞ。

[男性住民B] あまり、たくさん質問するな。お前は、質問してばかりだ。木枠と変わらない。あいつは、変だ。宣教師も、木枠は間違っている、と言っていた。そうだろう?

[男性住民A] 質問は……俺たちを、助けてくれない。

[男性住民A] 意味があるのは、答えだけだ。

[男性住民B] お前はすごいな、トタン。宣教師が言った言葉、よく覚えている。

[男性住民A] ……

[男性住民A] 見ろ。あいつ、よそ者が、海岸を歩き続けている。

[男性住民B] トタン、どこへ行く? ついていくのか? ダメだ、いけない。俺たちは、あいつについていっては、ダメだ!

[男性住民B] 俺たちでは、あいつに勝てない。俺でもわかる。俺たちでは、あいつを追い出せない。

[男性住民A] あいつが、戻ってこれなくなるだろう。

[男性住民B] それなら……それは、いいことだ。

[男性住民B] 俺は、あいつの持ってる、大きな箱が欲しい。きっと、食べ物がたくさんある。

[男性住民A] 箱はない。あいつが持って行った。

[男性住民A] あるのは……これだけだ。あいつが岩の上に置いた。何かは、わからない。

[男性住民B] あいつ、ずっと持っていた。きっと、いい物だろう。

[男性住民B] 一口……噛んでみていいか、トタン? すごく、腹が減った。

[男性住民A] 少し待て。まず、触ってみてからだ……

[男性住民B] こ、これは何だ? こんな音、聞いたことがない。

[男性住民A] これは……この糸から、音がするのか?

[男性住民B] やめてくれ、トタン。その音を聞くと、震え、止まらない。ほしいなら、お前にやる。

[男性住民A] こんな物、何の意味もない。

[男性住民A] 役立たずだ。捨ててしまえ。地の上で、朽ちていけばいい。

[スカジ] 私についてきてたのは、あなたたち以外の誰かだと思ってたわ。

[男性住民B] も、戻ってきた! そんな……ありえない。この時間、海岸に行った者、戻ってこない。

[男性住民A] お前、海に行きたいのか。

[スカジ] ちょっと散歩してただけよ。

[男性住民A] 海には、何がある?

[スカジ] 何もないわ。

[男性住民A] そんなわけが、ないだろう。

[男性住民B] だんだん、お前まで変になっているぞ、トタン。まだそんな、よくわからない質問、しているのか。俺たちは、あいつを止めに来た。そうでは、ないのか?

[男性住民B] 今、あいつは戻ろうとしている。俺たちも、戻ろう。

[男性住民A] お前は、すべて見た。お前は、知っている。

[男性住民B] トタン、震えているぞ。病気になったのか?

[男性住民A] ……

[スカジ] 近付かないで。

[男性住民A] 近付いたら、どうする? さっきみたいに、殴り倒すのか?

[スカジ] ……

[男性住民A] 海には何かある、そうだろ?

[スカジ] 動かないで。

[男性住民B] う、うわああっ――!?

[男性住民A] ほこり!

[男性住民A] 石を、投げたのか……あいつ、なんて速く動くんだ。

[男性住民B] 今のは、俺の声か? トタン、俺は叫んだぞ。俺の心臓、すごくうるさい。俺も、病気になったのか?

[男性住民A] お前の頭が、割れてしまうかと思った。砕かれた貝のように、中から何か零れ出すかと……

[男性住民B] そうなったら、俺は死ぬのか?

[男性住民A] 今度試してみればわかる。今、潰れたのは別のものだ……こんなものは、見たことがない。

[男性住民A] そいつ……どうして、まだ動いているんだ!?

[スカジ] 逃げなさい。街に戻るの、早く。

[スカジ] ――それと、ハープは置いていって。

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