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吾れ先導者たらん_GA-4_安魂教会_戦闘後
サンクタは互いの感情を感じ取ることができる。しかしフィアメッタは当時の小隊四人の中で唯一のリーベリだった。モスティマとレミュアンはフィアメッタの怒りを理解できるのだろうか?
[セシリア] もっとお話しして!
[ロゼラ] あっ、蝋燭はちゃんと持たないとダメよ。火傷しちゃうわ!
[セシリア] あっ! 力を込めちゃダメだよね……ぐちゃぐちゃになっちゃう。
[セシリア] ママのために……ちゃんとやらないと。
[ロゼラ] さてと、お話ならもうたくさんしてあげたでしょ。退屈な冒険や普段の生活の話でどれほど満足してもらえたかはわからないけどね。伝説のカズデルについても語ってあげたいところだけど……
[ロゼラ] 恥ずかしながら、私たちも行ったことないのよね。
[セシリア] サルカズのカズデル……きっとサンクタにとってのラテラーノみたいなところだよね! サルカズたちのふるさと……
[セシリア] みんな幸せで、綿あめ屋さんの車もあるよね? あとはお菓子屋さんもあって……街にはニコニコのサルカズたちがたくさんいて、みんな笑い合ってるはずだよ!
[ロゼラ] ……かもしれないわね。
[ロゼラ] きっといつかは、ね。
[ロゼラ] 次はセシリアがお話しする番よ。パパとママはどんな人なの?
[セシリア] ……実は、わたしもよくわからないんだ……
[セシリア] パパにはあんまり会ったことないの……パパに会う時、ママはいつもいっぱい準備するんだよ。それから夜にわたしを連れてすっごく遠くまで行くんだ……それで森の中に入るの。
[セシリア] そしたらパパも来てくれるんだ。パパはいっつも分厚いマントを着ててね、すごく遠くから急いで来てたみたいなの……
[セシリア] わたし、パパの顔はあんまり覚えてないけど、角はちゃんと覚えてるよ! まっくろでまっすぐで、お月様の下できらきらしてるんだよ。
[セシリア] それから手をつないで森の端っこを散歩してるとね、木の種類とかお歳を一本一本教えてくれるの……街の外の夜は静かで、羽獣さんの鳴き声だって聞こえないけど、ちっとも怖くないんだ。
[セシリア] パパはいつもわたしの手をぎゅってするから、ほんとはちょっとだけ痛いけど……でもわたしは言わないんだ。
[セシリア] パパに会う時はね、パパはいつもわたしよりもうれしそうなんだよ……! あとちょっとだけ……緊張してたかも。
[セシリア] わたしが疲れちゃったら、ママがお家までおんぶしてくれるの。後ろを見るとね、高い木のところからパパがこっちを見てくれてるんだ。すごくすごく遠くまで行っても、ずっと見ててくれるの……
[ロゼラ] セシリアのパパとママは立派なんだね。
[セシリア] ママはすごいんだよ! 何でもできちゃうんだから!
[セシリア] そうだ、見て。ママの守護銃だよ。エゼルお兄ちゃんが置いてってくれたの。
[セシリア] ママがね、パパもママにはかなわないって言ってた……それでママはいつも手加減してあげるんだって! でもきっとパパもすごいよね!
[ロゼラ] ハハ……私の言った「立派」とセシリアの言った「すごい」は、たぶん違う意味だと思うな。
[セシリア] そうなの? じゃあパパとママはきっと立派ですごいんだね!
[セシリア] でもね、ママはパパとはじめて会ったときのことは教えてくれないんだ。聞こうとすると、いつも違うお話に変えちゃうの……どうしてママは教えてくれないんだろう?
[ロゼラ] ……お姉ちゃんたちが小さい頃は、もっと気になってたことがたくさんあったなぁ。お茶を淹れる様子を見るのは好き? 私はお茶の色がだんだん変わっていくのを見るのが好きだったんだ……
[セシリア] ……
[セシリア] ……ロゼラお姉ちゃん、そうやってお話を変えるの、ママにそっくりだよ……
[セシリア] ……わたしだって何も知らないわけじゃないよ。
[セシリア] 昨日街中を歩き回ったけど、サルカズはお姉ちゃん一人だけだったよ……もしかしてサルカズは、ラテラーノに来ちゃいけないの?
[セシリア] だからパパとママも一緒にいちゃダメで……ううん、誰かにダメって言われたのかな?
[ロゼラ] 一緒にいちゃダメなんてことはないわ……そんな考えなんて変わるはずよ。きっと……そう遠くない日に。
[ロゼラ] 愛し合うことに罪はないもの。
[セシリア] ……そうなんだ。
[ロゼラ] お姉ちゃんたちはそのためにここへ来たんだから。
[セシリア] そうなったら、わたしもラテラーノの街を歩き回ってもいいの?
[ロゼラ] もちろんよ。
[セシリア] もうお家に隠れてなくていいの? ラテラーノ中のお菓子屋さんに一回ずつ行ってみてもいい?
[ロゼラ] 一回じゃ足りないでしょ。好きなだけ行っていいのよ。
[セシリア] うわぁ……早くそうならないかな……早く大きくなりたいな!
[ロゼラ] そうよ、あなたが大きくなれば、もしかしたら……
[ロゼラ] ううん、セシリア、そんなに急がなくていいわ。お姉ちゃんも小さい頃は、大きくなればどんな悩みも解決できると思ってた。でも、大きくなっても……
[ロゼラ] それに、大きくなることはとってもとっても辛いことなのよ。あなたの出自を考えると他の人以上に……いや、何でもないわ。あなたはまだ小さいんだもの、こんなこと考えなくていいわ。
[セシリア] でもみんな大きくなるんだよね?
[ロゼラ] ……そうよ、なりたくなくてもね。
今まで微笑みを絶やさなかったロゼラが、少し寂しげな表情を浮かべた。
彼女は小さな教会の窓の外へと目を向けた。花の咲き誇る墓園がそこにあり、遠くにはラテラーノの中心にそびえ立つ聖像がかすかに見える。
彼女はそのまま外を眺めながら、憂いと少しばかりの希望を帯びた歌を口ずさむ。
[セシリア] あっ、このお歌! 昨日ロゼラお姉ちゃんに会った時の……
[セシリア] ママは歌詞を忘れちゃったから、代わりにラララって歌うことにしてるって言ってた。ラララでもすっごくいいお歌だけど……ほんとはどんな歌なの?
[ロゼラ] サルカズのとある英雄のことを歌ってるんだよ。遠くへお出かけしてすごいことを成し遂げようとしてる英雄に、みんなが歌でお別れをして、無事に帰ってくることを願うお歌なんだ。
[ロゼラ] 歌詞はこんな感じかな。――旅立ちの時がきた。英雄はその胸に夢を抱き、遙か彼方に続く道に踏み出す……
[ロゼラ] 道は遠くとも。でもきっと、きっと……
[セシリア] あ! エゼルお兄ちゃん、修道士さん!
[アンドアイン] 何のお話をしていたのかな?
[ロゼラ] 先導者様、ごきげんよう――まったく他愛もない話ですよ。サルカズの昔話だったり、世間話だったり……
[セシリア] でも楽しかった……こんなにおしゃべりしたのわたし初めて。
[セシリア] エゼルお兄ちゃん、お花を摘んできたの?
[エゼル] うん。エキスを抽出して、蝋燭に香りを足そうと思って……
[アンドアイン] 香りは亡くなった人たちに方向を示してくれるんだよ。
[セシリア] そうなんだ、ありがとうお兄ちゃん!
[セシリア] あのね、お兄ちゃん、わたし……ほんとは……ちょっと怖いんだ。
[セシリア] お葬式……ママとのお別れ……本当に最後のお別れになっちゃうんだよね?
[セシリア] 本当にもう会えないの? お祭りの時とかもダメなの? それか……パパみたいに、たまに一回会うのも……ダメなの? ちょっとだけ……ちょっとだけ頭をなでてもらうのもダメ?
[セシリア] あと……あと……
[セシリア] ママ……まだ天使と駄獣さんのお話の続きが残ってたのに……
[エゼル] セシリア……
[アンドアイン] セシリア、悲しいけれどこれが最後の夜だよ。
[ロゼラ] セシリア、今夜はお姉ちゃんが一緒にママのお部屋にいてあげる。みんな一緒なら寂しくないでしょ?
[エゼル] ……サルカズがサンクタの親子のために通夜を過ごすなんて。
[アンドアイン] 蝋燭の火は弱くとも、彼岸を照らすことはできるんだ。
[モスティマ] レミュアン、また来てあげちゃったよ。
[フィアメッタ] スイーツも持ってきたわ。
[モスティマ] 大聖堂からくすねてきたフルーツタルトだよ。
[レミュアン] いらっしゃい。あら、上に載ってるサボテンがまずそうね。
[モスティマ] さっすがレミュアン、よく気付いたね。
[レミュアン] それよりあなたたち、毎日会いに来るほど私が恋しいの?
[モスティマ] 君が望むなら、一時間おきに会いに来てあげてもいいよ。
[レミュアン] モスティマ、それはご機嫌取りのつもり? フィアメッタも……あなた笑顔が引きつってるわよ?
[レミュアン] 何かあったの?
[フィアメッタ] ……アンドアイン。
[レミュアン] ……
[レミュアン] 彼に会ったのね。
[フィアメッタ] ラテラーノにサルカズが紛れ込んでいたの。そのサルカズを追っていた時……あいつのアーツで邪魔されちゃって。
[レミュアン] そう。怪我がなくてよかったわ。
[フィアメッタ] レミュアン、ここにいて大丈夫なの? 普通の病院だし、万が一あいつが……
[レミュアン] もう来たわ。
[フィアメッタ] なっ――
[モスティマ] ……はぁ。
病室にしばらく静寂が訪れた。
レミュアンがテーブルの上の花瓶に目を向ける。
[フィアメッタ] ……
[フィアメッタ] 週末のピクニックの予定を決めてるんじゃないんだから、なんでそうサラっと話せるの?
[フィアメッタ] レミュアン、あんまりあなたに怒りたくはないけど……
[フィアメッタ] でもこの件だけは……あなたたちはいっつもそうじゃない。私があの時の話を持ち出すたびに、二人とも同じ顔をして……
[フィアメッタ] そんな風にされると……あの日気が狂ったのはあいつじゃなくて、私だった気がしてくるわ。
[モスティマ] ……私たちはアンドアインの思いを「感じた」から……
[フィアメッタ] またサンクタお得意のやつ? じゃあ共感したのに、どうしてあいつに銃を向けたの?
[モスティマ] それはまた別の話だよ。当時アンドアインがどんな思いだったとしても……私だって錠と鍵を奪われるわけにはいかなかったんだ。
[フィアメッタ] じゃあその後のことは? あなたはあいつのせいで堕天使になったのよ……! どうしてそんな他人事みたいに話せるの?
[フィアメッタ] レミュアンだってそうよ! あいつのアーツのせいでこうなって、それから五年間も昏睡状態だったっていうのに……なんでいっつも他人事なの?
[レミュアン] フィアメッタ……
[レミュアン] 信じて、私たちはあなたの味方よ。
[レミュアン] ただ、私も確かにアンドアインの思いを感じて……
[フィアメッタ] ……その言葉はもう聞きたくない。
[フィアメッタ] あなたたち、どうせ私が怒ってるのは余計なお世話だとでも思ってるんでしょ?
[レミュアン] そんなことないわ、私わかるもの……
[フィアメッタ] ええ、当然あなたたちはわかるんでしょうね。
[フィアメッタ] わからないのは私だけ、そうでしょう?
[モスティマ] ちょっと、フィアメッタ!
[レミュアン] はぁ……
[モスティマ] フィアメッタ! フィアメッタ!
[モスティマ] 幽光の夜警さん!
[フィアメッタ] 張り倒すわよ!
[モスティマ] 話を聞いてよ!
[フィアメッタ] モスティマ、言っておくけどね!
[フィアメッタ] いい!? もうあなたたちサンクタにはうんざりなのよ! 何が共感よ、何が相互理解よ! 私はそんなのこれっぽっちも理解したくないのよ!
[フィアメッタ] 光輪の熱で天使の脳みそは溶けちゃってるわけ? あなたもレミュアンも、あの廃墟で死ぬところだったのよ!
[フィアメッタ] どうして怒らないの? どうして憤りを感じないの? どうしていつも私だけ一人で怒って……私だけ仲間はずれなの?
[フィアメッタ] 意味ありげな笑顔はやめて! 何を話してもひょうひょうとした態度でいるのもやめて! あなたがラテラーノを去ることになって、居場所がなくなったのは、一体誰のせいなのよ!?
[フィアメッタ] 私があなたに付き添ってヴィクトリアやリターニア、サルゴン、炎国にまで行ったのは……
[フィアメッタ] 一体何のためだと思ってるの!?
[フィアメッタ] あなたに、レミュアンに、アンドアイン……私たちの小隊はあんなに……お互いを信頼し合ってたのよ。
[フィアメッタ] あいつにどんなご立派な大義名分があるの? なんで信頼を裏切られなきゃならないの? なんであなたたちはあいつを理解しようとしてるの? なんで私まであいつを理解しなきゃならないの?
[フィアメッタ] 私があの日々をどれだけ恋しく思ってるかわかる……? いつも危なげなく任務を終えて……レミュアンが私たちを飲みに連れて行ってくれて……新しくオープンしたスイーツ店に行って……
[フィアメッタ] みんなの報告書をあいつが手直ししてくれて……
[フィアメッタ] そんな日々を、あいつはどんな理由があってあっさり壊したって言うのよ……!!?
[フィアメッタ] そんな日々が……
[フィアメッタ] そんな日々が、私は大切だったのよ……
[モスティマ] ……そっか。
[フィアメッタ] ……
[モスティマ] ……
[モスティマ] フィ……
[フィアメッタ] ……ラテラーノのアイリス。
[モスティマ] ……
[フィアメッタ] この花が咲いてるのは、聖マルソー中央庭園、サンセット礼拜堂、ステファン区安魂教会……この三箇所だけよ。
[モスティマ] うん。
[モスティマ] 行こう、一緒に。
[モスティマ] ……君は私の監視人なんだから、くれぐれも私に怪我なんてさせないようにね。
[フィアメッタ] ……
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