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孤島激震_MB-6_計画の制定_戦闘前
サイレンスとミュルジスの舌戦はまだ続いていた。メイヤーがある事実を明らかにした――脱獄チームのメンバーで、納棺師のドゥーマが監獄を去るつもりはないということだ。
[ミュルジス] なるほど……サイレンスさんが、そう単純じゃないって言った理由がわかったわ。
[ミュルジス] どうやら彼女はジェッセルトンに説得され、スパイとして脱獄チームに加わったのね。
[サイレンス] ええ。
[ミュルジス] ……正直、もう驚くような話はないと思ってたわ。甘かったわね。
[ミュルジス] ロビンさんにそんな過去があったなんて、さすがにあたしの情報にすらなかったわ。
[ミュルジス] それにジェッセルトン。噂には聞いてたけど、予想以上に厄介ね……
[サイレンス] 彼を知ってるの?
[ミュルジス] ええ。
[ミュルジス] 彼は、ビーチブレラ社の有能なエージェントの一人よ。金さえあれば動く、ハイドブラザーズの今回最大の切り札。
[ミュルジス] 品があると評判だけど、それ以上に嫌味な奴だと言う人が多いわ。
[ミュルジス] 普通の殺し屋かと思ってたけど、まさか頭も切れるなんてね。
[ミュルジス] 彼がハイドブラザーズの切り札だということだけは知ってたけど、このタイミングで大胆にも姿を現すとは思わなかったわ。
[ミュルジス] 一見ロビンさんに選択肢を与えたように見えるけど、実際には選択の余地などないわ。
[ミュルジス] 確かに彼は、アンソニーさんが持っていないロビンさんの境遇に関する情報を掌握していたようね。
[ミュルジス] それに、アンソニーさんに気づかれないよう、彼をずっと観察していた。なら主導権は彼の方にあるわ。
[ミュルジス] もしあたしがこんな局面に遭遇したら、感情的にも道理的にも、彼に協力することを選ぶでしょうね。
[サイレンス] ……確かに。
[ミュルジス] あら、てっきりサイレンスさんは反対意見かと思ったわ。
[サイレンス] ……彼の考えに同意できない部分はあるし、彼みたいな人は嫌い。
[サイレンス] でも彼のロビンに対する態度は、何度も何度も私に探りを入れようとしてくるミュルジス主任よりは誠実だと思う。
[サイレンス] あなたのその私を完全に理解したと思ってる口調は、私の先生と同じで嫌な気分になる。
[ミュルジス] 少し度が過ぎたみたいね、ごめんなさい、謝るわ。
[ミュルジス] でも正直なところ、あたしでさえこの男は少し偏屈に感じるわ。
[ミュルジス] ロビンさんのように、アンソニーさんと因縁がある人物は、わざわざ探しに行かないと見つけられないもの。
[ミュルジス] そしてわざわざ彼女を引き入れるなんてね……
[ミュルジス] まあいいわ。いずれにせよ、これで脱獄チームは完全に集結したということかしら?
[サイレンス] ……ええ。
[ミュルジス] 抜け目ない情報通に、腕の立つ用心棒、監獄内を自由に移動できる臨時作業員、監獄勤務歴の長い納棺師、そして優秀なリーダー……
[ミュルジス] どの方面においても死角がない、かなり優れたチームね。
[サイレンス] まあね。とにかく、それ以降、脱獄の準備は比較的スムーズに進められていった。
[ミュルジス] その間は何か起きたの?
[サイレンス] ……暗殺以外は、ほとんどない。
[ミュルジス] そうだ、忘れるとこだった、暗殺計画はまだ続いていたの?
[サイレンス] ええ。看守たちは囚人たちをしらみ潰しにチェックする以外に方法が思いつかなかった。それに殺し屋たちはアンソニーだけを標的にしていたから、結局看守たちはこの件を放置することにした。
[ミュルジス] アハッ、彼らがやりそうなことね。
[メイヤー] あっ、ロビンが言ってたこと思い出したよ。
[サイレンス] なに?
[メイヤー] みんなと一緒に逃げ出そうってドゥーマを説得したことだよ。
[ミュルジス] えっ、どういうこと? ドゥーマさんもチームの一員でしょ?
[サイレンス] 実は彼らも後から知ったことだけど、ドゥーマはアンソニーの脱獄を助けるとは言ったものの、自分が去ろうとは考えてなかった。
[ミュルジス] どうして?
[メイヤー] 彼女はあの監獄から出たことがないからだよ。
[ロビン] え? いま何て?
[ドゥーマ] 私はあなたたちとここを去るつもりはないって言ったの。
[ロビン] どうして? まさかこの監獄が好きだとか?
[ドゥーマ] いえ、そうじゃないわ、少しも好きじゃない。
[ドゥーマ] この監獄がある都市に停泊していた時、私は前任の納棺師に拾われた……私にはここで育った記憶しかない。
[ドゥーマ] 看守たちの冷酷さ、囚人たちの憎しみや悪意、暴力、それに死……私は、それ以外のものを見たことがない。
[ドゥーマ] 都市に停泊する時に外に出てみたことはあったけど、私の居場所はそこにはないって感じるの。
[ドゥーマ] 私は外に出るのが……怖い。
[ロビン] ならどうしてアンソニーの脱獄を助けるの?
[ドゥーマ] アンソニーは私の唯一の友達だから。
[ドゥーマ] アンソニーがここに来てから、この大地には彼のような人間も存在するんだってことを初めて知った。
[ドゥーマ] 彼も他の囚人と殴り合ったりするけど、自分を抑えることを知っている。
[ドゥーマ] 彼も怒ったりするけど、それが他の無関係な人に及ぶことはない。
[ドゥーマ] 彼はいつも礼儀正しくて、誰に対しても道理をよく弁えている。
[ドゥーマ] 彼は私に面白い本を薦めてくれて、外の世界がどんなものか教えてくれる。
[ドゥーマ] 監獄に来たばかりの頃、彼は時々「運命は不公平なものだ」って嘆いていた。私はその時から彼をここから出してあげたいと思ってたわ。
[ドゥーマ] でも私には何もできないし、彼の力になってあげられない。だからあの時は何も言えなかった。
[ドゥーマ] そのうち、彼はだんだんと落ち着いた性格になっていって、他の人はますます彼を尊敬するようになった。……私はそれが嬉しくもあり、少し悲しくもあった。
[ドゥーマ] 彼から、何かが欠けてしまったような気がしたから。
[ドゥーマ] 私は、やはり彼はこんな場所に閉じ込められるべきじゃない、もっと良い生活を送るべきだと、ずっと思ってた。
[ドゥーマ] だから今回、カフカが彼の知りたかった情報を持ってきてくれて、彼がここから出ようと決心した時、私は心から嬉しく思った。
[ドゥーマ] 彼が逃げ出す手助けをできれば、私はそれでもう十分満足なの。
[ドゥーマ] アンソニーには言わないでくれる? 実はもう準備はできてるの。どこかで問題が起こったら、私は命を懸けてでもその問題を補う。
[ロビン] ……問題。
[ドゥーマ] どうしたの? ロビン、顔色が悪そう。
[ロビン] 何でもない。
[ロビン] ただ、彼のためにあなたはそこまでできるんだって思っただけ。
[ドゥーマ] そう。
[ロビン] でも、私はそういうのは良くないと思う。
[ロビン] 確かに、外の生活は、監獄の中よりもずっと複雑だけど。
[ロビン] それに良いことばかりだとは限らない……いや、むしろ悪いことに出会う方が多いかも。
[ロビン] でも、だからといって怖がって出て行かないのは……すごくもったいないと私は思う。
[ロビン] アンソニーは監獄で生きるべきじゃないとあなたは思ってる。
[ロビン] それと同じで、あなたみたいな善良な人も、こんな監獄で生きるべきじゃないと私は思うよ。
[ロビン] あなたの方こそもっと良い生活を送るべきだよ。
[ドゥーマ] ……そう、なの?
[ドゥーマ] 私にはわからない。
[ロビン] それに私は、あなたがこんなにアンソニーのことを思いやっているなら、アンソニーもきっと同じくらいあなたのことを気にかけていると思う。
[ロビン] 彼もきっとあなたにもっと良い生活を送ってほしいと思ってる。
[ドゥーマ] ……
[ドゥーマ] もう一度考えさせてもらっても……いい?
[ロビン] もちろん。
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