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孤島激震_MB-2_別の視点から_戦闘前
ミュルジスは、カフカよりも、アンソニー救出チームのもう一人――ロビンの視点に興味があるようだった。彼女の要求に応じて、サイレンスは違う角度から説明を行った。
[ミュルジス] じゃあ、続けましょうか。
[ミュルジス] 感染者と非感染者の立場が監獄内ではむしろ平等だなんて、ほんと皮肉よね。
[サイレンス] ……あんなのは平等とは言わない。
[ミュルジス] フフッ、確かに。もし人として扱われないことでしか平等な立場が得られないのであれば、そんなものはない方がいいわ。
[サイレンス] 話題を変えない?
[ミュルジス] もちろんよ。あたしも続けるつもりはないわ。悟った顔してこんな話をしてても、夜に寝つきが悪くなっちゃうだけよ。カフカさんの件に戻しましょう。
[ミュルジス] カフカさんが実際に監獄に入ったのは、おそらく今から四ヶ月半前……脱獄の四ヶ月前ってとこかしらね。つまりマンスフィールド監獄がサンソフィーシティに停泊してた時期ってことでしょ?
[サイレンス] そう。
[ミュルジス] やっぱりね。それ以前だとすると、さらに一年前になってしまうはずだもの。
[ミュルジス] 移動監獄であるマンスフィールドは、数ヶ月ごとに物資補給や囚人収容のため周辺都市に向かう。それ以外の時間は基本的に荒野に留まっているから、潜入のチャンスは限られる。
[ミュルジス] 潜入してから四ヶ月で計画を立てて脱獄した。短い時間とはいえないけれど、長くもないわね。
[ミュルジス] ん? 待って、一つ疑問があるわ。
[サイレンス] 今は私が聞く番。あなたが決めたルールだよ。
[ミュルジス] アハハッ! そうね、それじゃあどうぞ。
[サイレンス] ……その前に、メイヤー、何か食べるもの作ってくれない?
[メイヤー] え? いいけど、ここのキッチン、使って大丈夫かな?
[ミュルジス] いいわよ。実は話が長くなるだろうと思って、色々と食材も用意してあるの。
[ミュルジス] メイヤーさん、料理できるの?
[メイヤー] できるよ。ラボは私一人でやってるからね、料理ができなきゃとっくに餓死してるよ。
[メイヤー] ライン生命にもロドスにも食堂はあるけど、研究に没頭しちゃうと行くのがめんどくさくなるんだよねー。
[メイヤー] じゃあ二人は続けて、私は何か作ってくるから。
[ミュルジス] 作る前に食材のチェックしてね。食材に何か小細工しただろなんて後で言われたくないから。
[メイヤー] はーい。
[サイレンス] あなた……これは親切と言うべきなのか。
[ミュルジス] ふふっ、何度も言ったでしょ? あたしは、あなたとお話をしに来たの。
[ミュルジス] それよりもあなた……どうしてわざわざメイヤーさんに席を外させたの?
[サイレンス] ……まだメイヤーには、ハイドブラザーズの背後にエネルギー課がいたことを伝えてないから。
[ミュルジス] ……え?
[ミュルジス] この件は、あなたたち二人が計画したものじゃないの?
[サイレンス] 違う。私はもともとメイヤーを巻き込むつもりはなかった。彼女にはただ、器材を買うために付き合って来てもらっただけ。
[ミュルジス] ……なるほどね。エネルギー課とエンジニア課は関係が深いから、彼女に悪い印象は与えたくないってことね。
[ミュルジス] でも、彼女が共犯じゃないとしたら、彼女と行動をともにするのは相当リスキーよ?
[サイレンス] ……言われなくても分かっている。
[サイレンス] それよりも、私が知りたいのは、この件においてエネルギー課は、一体どの位置にいるのかということ。私もエネルギー課が背後にいるかもしれないという程度しか掴んでいない。
[ミュルジス] 確かに、ハイドブラザーズの背後にはエネルギー課がいる……でも今回の件自体はエネルギー課とは無関係よ。
[ミュルジス] ハイドブラザーズは、エネルギー課のリソースを借りて今回の暗殺を画策したの。
[サイレンス] やっぱりそういうことだったのか。
[ミュルジス] じゃあ、今度はあたしが聞く番ね――
[ミュルジス] あたしの知る限り、アンソニーさん脱獄の協力者には、もともと監獄の納棺師だったドゥーマさんに加え、ロビンという名の女性もいた。
[ミュルジス] 不思議なのは、あたしの情報によると、彼女は本来アンソニーさん暗殺に向かった殺し屋の一人だったはず。
[ミュルジス] でもさっきのあなたの話し方だと、あなたの仲間はカフカさん一人みたいね。
[ミュルジス] もしかして、ロビンさんはあなたが手配したわけじゃないの?
[サイレンス] ……あなたは本当に何も知らないみたいだね、ミュルジス主任。
[ミュルジス] そう言ったでしょ。
[サイレンス] それから、あなたはおそらく一つ勘違いしている。私はアンソニーの暗殺が行われるなんて情報は、持ってなかった。
[ミュルジス] ――えっ?
[サイレンス] もしも事前にそのことを知っていたなら、カフカを一人で監獄に潜入させたりはしなかった。
[サイレンス] そんなの危険すぎる。それにこの状況下では、彼女一人でやれることには限界がある。
[ミュルジス] あなたはアンソニーさんが収監されていることしか知らなかったっていうの?!
[サイレンス] そう。私は半年前、アンソニーが家族と別の監獄に収容されていることに気付いた。そしてカフカにその監獄への潜入を依頼した……
[サイレンス] 私の当時の考えは、もし彼を見つけられて脱獄の手助けができればそれがベストだけど、できなくても仕方がない――その程度。
[ミュルジス] ……それで、ちょうどこの暗殺計画に出くわしたってわけね。
[ミュルジス] なるほど……そう考えれば確かに多くのことに合点がいくわ。
[ミュルジス] でも、そんな正直にあたしに言って本当によかったの?
[ミュルジス] 最初からこの暗殺計画を阻止するために行動していたとあたしに思わせとけば、あなたは幾分か優位に立てたんじゃない?
[サイレンス] ミュルジス主任……そういったことは私は得意じゃない。
[ミュルジス] ……ふうん。あなたはあたしと同類だろうと勝手に思ってたけど、実はメイヤーさんと同じ種類の人間だったのね。
[ミュルジス] ただ何かしらの理由があって、自分が大好きな研究とは別に、もともと気にしてなかった事情にも関心を持たざるを得なくなった。
[サイレンス] ……
[ミュルジス] その理由はきっと、「炎魔」……でしょ?
[サイレンス] ……
[サイレンス] ミュルジス主任、それは今回の件とは関係ない。
[サイレンス] もしあなたがイフリータの件で来たのなら、話はこれでお仕舞いにする。
[ミュルジス] ごめんごめん、余計なことを言ったわ。安心して、この件については少し噂に聞いただけで、何が起きたのかは全く知らないの。
[ミュルジス] お詫びとして、一問タダで質問していいわ。
[サイレンス] ……いらない。
[ミュルジス] え?
[サイレンス] あなたからの詫びは必要ない。今後もうこの件に触れなければそれでいい。
[ミュルジス] わかったわ、じゃあさっきの話を続けましょ。
[サイレンス] ……要するに、私にとって今回の暗殺計画は完全に想定外だった。ハイドブラザーズがこんなことをするとは思ってもみなかった。
[ミュルジス] てことは、エネルギー課のあの人のやり方を、あなたはまだ完全に理解できてないってことね。
[ミュルジス] アンソニーさんの存在は、潜在的な危険を孕んでいる。あの人はそういうリスクや、制御不能な事態の存在を許すことができない。ハイドブラザーズがそんな人物を取り逃がしたと彼が知れば……
[ミュルジス] 痛い目を見るのは、ハイドブラザーズになるでしょうね。
[ミュルジス] だから彼らは、アンソニーさんを確実に監獄内で葬るため、この暗殺を何年もかけて慎重に計画していた。
[サイレンス] ……自分たちの悪事を覆い隠すために、さらに多くの悪事を働く。
[サイレンス] 吐き気がする。
[ミュルジス] まぁ、一度でもそういうことに手を出したら、後戻りはできないものよ?
[ミュルジス] 話を戻すわ。あのロビンとかいう殺し屋を裏で手引きしてたのがあなたじゃないのなら、残る可能性は一つね。
[ミュルジス] ロビンさんは偶然、途中で寝返った――でしょ?
[サイレンス] ……そう。
[ミュルジス] じゃあ、そのロビンさんの話をしてもらえる? この殺し屋さんが監獄内でどんな行動をとっていたか気になるの。
[ミュルジス] 彼女がアンソニーさんと一緒に逃げたのなら、当然あなたも彼女の身元を確認したのよね?
[サイレンス] ……ロビンは、確かにアンソニーを暗殺するために監獄に送り込まれた殺し屋の一人だった。
[サイレンス] カフカの話によると、囚人たちの乱闘が起きたのは、彼女がまだ監獄に入って間もない頃だった――
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