aklib_story_マリアニアール_MN-2_ロアーガード_戦闘後

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マリア・ニアール_MN-2_ロアーガード_戦闘後

合成樹脂騎士の弱点に気付いたマリアは、見事逆転勝ちを収めた。それにより、彼女にはさらなる注目が集まることとなる。


[ビッグマウスモーブ] さあさあ! 皆様! ご注目ください!

[ビッグマウスモーブ] 試合開始前に、いったい誰がこの展開を予測できたでしょうか? その名がとどろくニアール一族と「合成樹脂」騎士の対決、果たして誰がこんな状況になると想像していたでしょうか!

[ビッグマウスモーブ] マリア・ニアール! 誇り高き、ニアールの名を受け継ぐ少女が、まさかの――!

[ビッグマウスモーブ] 完・全・試・合! シェブチックに完全に抑え込まれています! 全く反撃ができなーーーい!!

[ビッグマウスモーブ] ダメだダメだ! ニアール! ここにいる観客がその名前にいくら賭けたと思っているんだ!?

[ビッグマウスモーブ] えっ、何? 実はそんなに賭けた人はいないだって? ヘイヘイ! ニアールの名をもっと信じてやりましょうよ! あの愛くるしい顔にならお金を出す価値はあるでしょう!?

[マリア] くっ――!

[合成樹脂騎士] ゾフィアの訓練? 耀騎士の妹? その触れ込みに期待してみればこの程度か……

[合成樹脂騎士] 失望した。

[ビッグマウスモーブ] さすがはロアー騎士団屈指のベテラン選手だ! 人工の地形を巧みに利用した速攻に、可哀想な子馬ちゃんは逃げ場がなーい!

[ビッグマウスモーブ] ストップ&シュート&ゴー! 急停止、速射、離脱を一瞬で流れるように繰り出す。これぞ「プラスティック・テンポ」だ!

[マリア] (相手の動きが全く見えない……どうして? どう見てもゾフィアの動きほど速くはないのに――)

[マリア] (止まった! 射撃が来る、ブロックしないと――!)

[合成樹脂騎士] 甘い!

[ゾフィア] ――マリア! 左!

[マリア] えっ? ――うっ!

[ビッグマウスモーブ] シェブチック、壁を蹴っての見事な連射だ! なんてこった、もしこの場で射殺事故でも起きたら、中継を打ち切らなければならないところでした。危ない危ない……

[ビッグマウスモーブ] なんと試合が始まってからここまで、何度か攻撃を受けたにもかかわらず、シェブチックの強固なアーマーには傷一つありません! しかもあんな軽やかな動きまでできるなんて! 驚きの性能です!

[ビッグマウスモーブ] ご覧ください! これこそロアーガード社の新商品「Jack2」が誇る特殊高性能可塑化ゲルの効果です!

[ビッグマウスモーブ] こんな商品欲しくないという人がいるでしょうか!? 現在競技場のフロントデスクでは5%OFFの割引券をお配りしております! ぜひこのチャンスをお見逃しなく!

[???] あれが……ニアール?

[???] あれが本当にあの耀騎士の妹?

[???] ……どうしたの、がっかりした?

[???] いや……そんなことでがっかりしたりしない。お前は?

[???] あたし? んー……もうちょっとだけ見てみようかしら。せっかくチケットを買ったんだし。あんたはどうするの?

[???] この場所にいたくない……モーブのあの相変わらずの軽口を聞いてるだけでイライラする。

[???] 人の感情を煽って波みたいにうねらせる……しかも、余計なセールストークのおまけまで付いてる。あんなセールストークで本当に商品を買うやつがいるのか?

[???] いるんでしょ。

[???] でもまあ、思考を麻痺させて流れに従わせるってのが「騎士競技」ビジネスの真骨頂なんじゃない?

[???] ねぇ、あそこ見てよ。競技台から一番近い観客席。あそこに座ってるの、“ウィスラッシュ”ゾフィアよ。

[???] それだけじゃない。あっちにいる人たち……みんなそれなりに有名な騎士だ。

[合成樹脂騎士] ……あと十分ほどってところか。

[合成樹脂騎士] お前は運が良かった。もし試合を引き伸ばす必要がなかったら――お前は即座にひざまずいて許しを請い、試合はとっくに終わっていただろうな。

[マリア] ――くっ!

[合成樹脂騎士] 棄権しろ、ニアールの小娘。

[合成樹脂騎士] お前はここのルールをわかっていない。その手足がすべて俺の矢で貫かれるまで、審判が試合を止めることはない。

[合成樹脂騎士] そこまでする必要はない、諦めろ。

[マリア] わ、私は諦めない……!

[合成樹脂騎士] 従わなければ痛い目を見ることになるぞ? 耀騎士に似たその目つきを除けば、お前に評価すべき点は一つもない。

[合成樹脂騎士] 仕方ない……どれだけ耐えられるか試してやろう。

[マリア] ――!

[ゾフィア] 実戦は訓練とは違うわ。

[ゾフィア] こんな平坦な場所で、正々堂々と戦ってくれる相手なんていない。

[ゾフィア] 選手によって装備や武器、戦闘スタイルは違うし、試合ごとに変化する地形、罠、場外の支援アイテム……それらすべてが勝敗に影響するの。

[マリア] 情報収集が大事ってことかな……?

[ゾフィア] そうよ。でも問題もそこにあるの。短期間でカジミエーシュの騎士一人一人の弱点すべてを頭に入れるのなんて無理よ。だけど他の選手たちは、話題になった君に注目している。

[マリア] うわぁ……

[ゾフィア] 騎士競技に絶対の戦術なんてものはない。でもどんな状況でも役に立つ心得を強いて言えば……

[ゾフィア] 自分の長所を活かす――または、全力を尽くすこと。

[マリア] えーと……簡単に言うと、出たとこ勝負ってこと?

[マリア] 痛っ!

[ゾフィア] よく観察し、よく考えるのよ。方法なんてものは、あらかじめ準備万端に整えられるわけじゃないの。

[ゾフィア] 戦いの最中、短い時間で状況を分析し、即座に判断して行動する。これが簡単に思える?

[マリア] ――左!

[合成樹脂騎士] 運のいいやつだ……

[ビッグマウスモーブ] おおっと! これはニアール家の麗しき御令嬢による初めての反撃――いや、シェブチックのフェイントをブロックしただけで、まだ反撃とは言えません!

[ビッグマウスモーブ] 票数に変化は無し。依然としてシェブチックの――圧倒的――優勢です!

よく観察して、よく考える……

マリア――

お前はペガサスの瞳を持っているんだ。

[マリア] (騎士アーマー――「Jack2」?)

[マリア] (ロアーガードの製品は13種類。でもあれはどれとも違う――)

[合成樹脂騎士] ……攻撃の隙をうかがっているのか? 愚かな!

シェブチックの放った矢が煙の尾を引きながら、マリアの髪の間を突き抜けていった。

[マリア] (ボアアップ……違う、もっと強力な――でもあのデザイン……)

[マリア] ……試してみよう。

[ビッグマウスモーブ] 突っ込んだ!? これまで“プラスティック”シェブチックに棒切れのように弄ばれていたニアール家の御令嬢が、ここで初めて自ら攻撃に出たぞ!!

[ビッグマウスモーブ] 立ち上る炎と人工の氷をかわした! 速い! とてつもなく速い! ――しかしシェブチックは顔色一つ変えずその場に立っている! 真正面から勝負を受けるつもりか!?

[合成樹脂騎士] 剣と盾相手に真っ向勝負を挑む狙撃手などいない――

[マリア] 逃がさない――!

[合成樹脂騎士] 誰が逃げると言った!?

互いが交錯する刹那、矢が鋭い音とともに放たれ、マリアの頬を掠めた。しかしマリアは剣を抜かなかった。

彼女は敵の肩に手を置いて空高く舞い上がった。彼女の突撃がこんな「友好的」なものだとは、シェブチックも予想していなかった。

手のひらに感じた温度、低くうなる機械音、不自然な煙――

[ビッグマウスモーブ] なんだ? 何が起こったんでしょう? しかし騎士競技の最中に、華麗なアクロバットパフォーマンスまで観られるとは!

[ビッグマウスモーブ] マリアがようやくシェブチックの懐に飛び込んだと思いきや、なぜか剣を抜きませんでした! これはニアール流の挑発でしょうか?

[ゾフィア] ……抜かなかったんじゃなくて、抜けなかったのよ。もし矢をかわさずに剣を抜いていたら、今頃左腕はスクラップになってたわ。

[ゾフィア] プラモデルの騎士が時間稼ぎをしているのは目に見えて明らかよ。少しでも長く商品をアピールすることでスポンサーから報酬を得るために……チッ。

[ゾフィア] マリア……

[合成樹脂騎士] お前今……何をした?

[マリア] ボディが燃えるように熱いよ……シェブチックさん。

[マリア] ロアーガードの新作アーマーは排熱のことを考えてないの?

[合成樹脂騎士] ……それは騎士職人が気にするべきことだ。試合に身を置く騎士が論じる話題ではない。

[マリア] (高性能で軽量……きっとヴィクトリアの最高技術をまねて作ったんだね。他にもクルビアの源石強化骨格インナーの製造技術とか、色んなものを詰め込んでる……)

[マリア] (たぶん何か技術的問題があったから……違う、きっとデザイン性を優先して排熱口を諦めたんだ……)

[マリア] (だとしたら、限界まで――あとどのくらい?)

[マリア] (移動――射撃――移動――射撃、行動パターンが読めても相手の速度に追いつけない)

[マリア] (違う……移動、停止、射撃だ――てことは……)

[ビッグマウスモーブ] 先程は二人で何かやり取りをしていたようですが、現在は双方すでに態勢を立て直しています! 距離をとって、再び――いや待て!

[ビッグマウスモーブ] マリアが躊躇うことなく、敢然とシェブチックを追い始めました! しかし! そのスピードには依然として大きな差があるぞ!

[合成樹脂騎士] ……あまりにも愚かだ。スピードで勝る相手を追い続けるのは最も悪手だと、“ウィスラッシュ”からは教わっていないのか!?

鮮やかなステップを見せた後、脚を止めて振り返る――その一呼吸の間にシェブチックは矢をつがえていた。

[マリア] (今だ!)

[ビッグマウスモーブ] 光!? 突如現れた光があっという間に会場を満たしましたーー! ここで皆様には、レイジアン工業「パイオニア」シリーズより、最新モデルのサングラスをオススメしておきましょう!

[ビッグマウスモーブ] (え? 競合他社の商品? いやいや、金だってもらってるんだから別にいいだろ!)

[合成樹脂騎士] くっ――!

[合成樹脂騎士] ……攻撃してこない? なっ――!

[マリア] (射撃が来ない、動いてもいない! もう一度!)

[マリア] てやああぁ!!

[合成樹脂騎士] ――

[ビッグマウスモーブ] 受け止めた!! 狙撃手・シェブチック、マリアの全力の一撃を、再び、難なく受け止めました!

[ビッグマウスモーブ] ニアール家の末娘マリア、万事休すか!?

[マリア] (やっぱり!)

[合成樹脂騎士] 今のアーツはただの見せかけか? ……しかし何の意味がある? 最後のチャンスをふいにしたな。

[マリア] シェブチックさん、強制冷却システムなんて、試合中に使う余裕はあるの?

[合成樹脂騎士] ほう、もう見抜いたのか……驚いたな。お前は騎士より職人の方が向いているんじゃないか?

[マリア] ――シェブチックさん、あなたはとても強い騎士だと思う。スピードも技術も、非の打ち所なんてない。

[マリア] でも、本当に残念。一企業の製品テスターになる道を選んじゃったんだね。

[合成樹脂騎士] ……お前には関係のないことだ。ロアーガード社の技術力を侮らないでもらいたい。

[マリア] ――そう。

[ビッグマウスモーブ] なんと!? マリアが自ら間合いを取りました! これはどういうことなのでしょう!? 二人はいったいどんな密談を交わしていたのでしょうか!?

[ビッグマウスモーブ] 観客の皆様も大変気になっているはず! だから私は騎士たちにマイクを着けさせるべきだと提言したのです――彼らの会話に興味がない人間などいるのでしょうか!?

[???] おー、ステージ上をめちゃくちゃに駆け回り始めたね。

[???] マリア・ニアール……何かに気付いたようだな。

[???] みたいね……悪くないわ。単純な力比べなんかより、断然面白い。私たち騎士は、本来もっと頭を使うべきなんだから。

[合成樹脂騎士] 小賢しい真似を……!

[ビッグマウスモーブ] 止まった! 射撃か? シェブチックは再び狩りを――おっと! マリアが地上の障害物をかわしながら、再びシェブチックに突撃をしかける――!

[合成樹脂騎士] なっ!?

[ビッグマウスモーブ] シェブチック動かない! シェブチックはまったく動きません! 先ほどと同じようにそのまま受け止める気かっ――!?

[合成樹脂騎士] *警報音* ちっ! この使えない冷却システムが――!

[マリア] ごめんなさい!

[合成樹脂騎士] 調子に乗るな!

[合成樹脂騎士] なに!?

[マリア] 剣と盾相手に真っ向勝負を挑む狙撃手などいない――これはあなたの言葉だよ!

[合成樹脂騎士] (冷却が終わっていない。距離を取らねば!)

[合成樹脂騎士] 離れろっ!!

[ビッグマウスモーブ] シェブチック、なんて恐ろしい技術でしょう! クロスボウのスパイクだけで完璧なブロックを見せましたーー!

マリアは目を瞑った。

過去に何度も目に焼き付けたあの動き……彼女はただ、あの動きをトレースしていた。

ずっと、ずっと繰り返し真似てきた動きを――

[ゾフィア] あぁ……思い出した……

[ゾフィア] あの逆袈裟斬り……あれは確かマーガレットが優勝した時の……

[合成樹脂騎士] 貴様……

[合成樹脂騎士] こ……こんなバカな……

[マリア] ふぅ――

[マリア] い、痛ったたた……

[ビッグマウスモーブ] ……こっ、これは予想外の結末だーーーーー!!

[ビッグマウスモーブ] ついさっきまで優位に立っていたシェブチックが、たったの一振り――剣を一振り浴びただけで意識を失いました! これで決着! 間違いありません! 勝者は……マリア・ニアーーーーール!!

[ビッグマウスモーブ] しかし、これはどういうことでしょう! 数年前、奇跡と言われたあの決勝戦とまったく同じ状況だ! マリア・ニアールは今まで、その実力を隠していたというのでしょうか――!?

[???] へぇ、なかなかやるじゃないの。

[???] ……先に行くぞ。

[???] あれ、もう帰るの?

[???] もう見るべきものはない。戻って武器を点検して、万全を期するほうがよっぽど有意義だ。

[???] はははっ、それもそうね。待ってよ、あたしも行くわ!

[ゾフィア] マリア……やり遂げたのね。

[ゾフィア] ……でも、本当にこれで良かったのかしら?

[???] モーブさん。

[ビッグマウスモーブ] (おい! 誰か知らんがここは実況席だ、早く降りろ!)

[???] しーっ……お静かに。観客に聞こえてはまずいでしょう。ここなら観客からは見えませんよ。ご安心ください。

[???] 私はただ、パーヴィルさんの伝言を伝えに来たまでです……

[ビッグマウスモーブ] パッ……しゃ、社長と親しいのですか……!? 伝言とはいったい何でしょうか?

[???] シェブチックの敗れた原因は、どうやら彼の「実力不足」にあったようですね。ロアーガード社の期待を裏切るとは、実に残念――

[ビッグマウスモーブ] そ、それはつまり――

[???] しーっ……つまりどういうことかはわかっているでしょう。口にしていいこと、口にすべきでないことの判断も、あなたならできるはずです。

[???] さあ、観客があなたの言葉を待っていますよ。

[ビッグマウスモーブ] 皆様――! こちらにご注目ください!

[ビッグマウスモーブ] 現場のオッズと票数を見る限り、今回は間違いなく番狂わせです! この試合結果はブレイキングニュースとして、ここ数日多くのメディアに取り上げられるに違いありません!

[ビッグマウスモーブ] 称号を持たない独立騎士がロアー騎士団の大先鋒に見事逆転勝利! マリア・ニアールはその実力をもって“プラスティック”シェブチックを破り、己の武勇を我々に見せつけました!

[ビッグマウスモーブ] まさか、新人相手にシェブチックが油断を? それとも二人が試合中に交わした言葉が勝負の決め手となったのでしょうか? ああ、だから私は騎士にマイクを着けさせろとあれほど――

[ビッグマウスモーブ] しかーーし! 今さら何を言っても結果は変わりません! あらためて、本日の第一試合の結果を発表いたします!

[ビッグマウスモーブ] 勝者――マリア・ニアール!!

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