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ウルサスの子供たち_ジレンマ
ズィマーが自治団の仲間であるナターリアを訪ねる。二人はお互いに、相手に聞きたい問題も、誰かに吐き出したい悩みもあった。 問題の解決には至らなかったが、彼女たちはこれからも共に歩む。
[前衛オペレーター] このちょっとイガイガするような口当たりと、塩を入れすぎたようなくどさ! やっと戻ってきたって感じがするな!
[支援オペレーター] 大げさだな。任務に一回出ただけだろ?
[前衛オペレーター] はぁ、お前は味わってないから知らないだろうけど、ウルサスの食べ物は本当に口に合わないんだ。
[前衛オペレーター] やっぱりロドスの食堂が一番さ、どれも俺の大好物だよ。
[支援オペレーター] さっきの言い方は、とても好物に対する感想には思えないんだが……
[前衛オペレーター] 美味い物と好物は、また別の話だからな。
[前衛オペレーター] ウルサスでは、親戚が見つかった難民たちの食事会にだって招かれたんだぜ。エレガントな食事会で、並んでいる料理も豪華なものばかりでさ、みんなは美味しい美味しいって喜んで食べてたさ。
[前衛オペレーター] だがそれでも、俺の口には合わなかった。
[支援オペレーター] はいはい、じゃあこれからはお前を「ロドスの食堂の回し者」って呼ばせてもらうよ。
[支援オペレーター] で、今回の任務はどうだったんだ?
[前衛オペレーター] ああ、簡単だったぜ。チェルノボーグで救出した難民を他のウルサス都市に送るだけの使いっ走り任務さ。時間はかかれど難しいものじゃない。
[支援オペレーター] あー、聞くだけ無駄だったな。難民の助けになる任務ともなりゃ、お前は何よりも真面目にやるからな。
[前衛オペレーター] 時間や人数の都合で多くのことはできなかったが、少なからず人を救えるからな。
[前衛オペレーター] ドーベルマン教官からは、今の立場じゃウルサスと関わることは難しいって聞いてたから、アーミヤやドクターがこんな救援任務を計画してくれたことが嬉しいよ。
[支援オペレーター] ああ、その通りだ。俺たちもそんなリーダーがいてくれて嬉しい。
[支援オペレーター] だけど今回の件に関しては、アーミヤとドクター以外にもう一人、特に感謝しないといけない人がいるんだ。
[前衛オペレーター] ああ、知ってる知ってる。任務の途中で聞いたぜ、たしかナターリアとかいう女の子だろ。
[支援オペレーター] そうだ、あの子は俺たちの中では大スターなんだぜ。
[???] あら、私について話しているのかしら?
[支援オペレーター] おっと、こんにちは、ナターリア。
[ナターリア] キーランさん、こんにちは。こちらの方は……
[前衛オペレーター] 俺のコードネームはコンパスだ、そのままコンパスと呼んでくれ。
[ナターリア] コンパス……良いコードネームね。こんにちは、コンパスさん。お邪魔でなければ、こちらで食事しても良いかしら?
[キーラン] もちろんさ!
[コンパス] おい、噂ではただの学生って聞いてたが……
[コンパス] どう見てもいいとこのお嬢様じゃないか!
[キーラン] 別に、学生ってことに矛盾はしないだろ?
[コンパス] こういうタイプの子が相手だと、どうやって話せばいいかわからないんだよ!
[キーラン] 緊張しなくていいって、話のできる子だから。
[ナターリア] お二人が先程話していたことだけど、コンパスさんは難民を護送する任務から戻られたばかりなのね?
[コンパス] ああ、そうだよ。
[キーラン] そうそう、ナターリアがあの件でどんな活躍をしたのかこいつに話そうと思っていたところさ。
[ナターリア] 私はただ、些細な仕事をしただけよ。
[キーラン] 謙遜しすぎだって。もしナターリアが率先してあの難民たちを説得してくれなかったら、俺たちの仕事はあそこまで順調に進まなかったはずさ。
[コンパス] 実は俺も、難民たちから聞いてるんだ。親切で優しいお嬢さんが、ロドスは良い人たちだって教えてくれたって。
[コンパス] 態度が悪い難民も多かったからな。もし君がいなかったら、俺たちがどれほど嫌な思いをしてたかは想像に容易い。
[コンパス] 俺自身も難民出身だから、彼らの気持ちはよくわかる。でも人助けをしてるのに白い目で見られるのは、やっぱりゴメンだよ。
[コンパス] だから俺からもお礼を言わせてくれ。ナターリアさん、改めてありがとう。
[ナターリア] あれは私がやるべきことだったというだけよ。本当に大変なのは、コンパスさんたちのように、現地で足を動かして護送をする方なのだから。
[ナターリア] 私はただ、ロドスが確かに人のために動いていると感じたから協力しただけ。生徒会長としていつもそんな仕事をしていて、ちょうど得意分野でもあったから。
[ナターリア] それにみんなロドスを信じようとしなかったわけではなくて、被害を受けたばかりで、心から他人を信じられなくなっていただけなのよ。
[コンパス] チッチッ、キーラン聴いたか、これが美しい言葉ってやつだな。聴いてて気持ちがいいぜ。
[キーラン] さっき言っただろ、ナターリアは話のできる子だって。
[キーラン] 実はナターリア本人に会うまでは、今回の新人は貴族のお嬢様だって話を聞いて、少し心配してたんだけどな。
[キーラン] でも実際に会ったら、心配無用だってすぐわかったよ。ナターリアは仕事はできるし、話もわかる。誰とでも打ち解けて、みんなに好かれる良い子だからな。
[ナターリア] そんなことないわ。私はまだ子供だから、みんな気にかけてくれているだけよ。
[コンパス] また謙遜して。そういえば、ナターリアさんは、もうロドスに残ることを決めたのか?
[ナターリア] ええ、先週後方支援部の試験に通ったから、もうロドスの一員よ。
[コンパス] お、それは何よりだ。きっとここが気に入るぜ、俺が保証する。
[ナターリア] もう好きになり始めているところよ。
[ナターリア] そういえば、キーランさん、二巡目の難民リストと護送先の整理は終わっているわ。お昼休みが終わったらお願いするわね。
[キーラン] えっ?
[キーラン] もうできたのか? 全員分?
[ナターリア] ええ、一部の治療中の人たち以外は、みんな確認を終えているわ。
[キーラン] 救出した難民たちの行き先がこんなに早く決まるなんて……。いやはや素晴らしい、部長がこの件を君に任せたのは正解だったみたいだ。
[ナターリア] 私はただ、やるべきことをやっただけよ。
[コンパス] ということは、俺も急いで二巡目の難民護送の参加申請をしてこないとな。
[キーラン] 二巡目も行くのか? ウルサスの食事には懲り懲りなんじゃ?
[コンパス] 確かに料理は口に合わないが……でも彼らが自分の慣れ親しんだ場所に戻って、親戚と会えた時のあの表情を見られるのは嬉しいからな!
[コンパス] おっと、メシもたらふく食ったことだし、この辺にしとこう。食器を戻しといてくれ、俺は急いで申請に行ってくる!
[キーラン] おい、そんなことするなんて約束はしてないぞ!
[キーラン] ったく。すまないなナターリア。おかしな奴だろ、あいつはいつもあんな風に慌ただしいんだ。
[ナターリア] コンパスさんは難民に思い入れが強いのね。
[キーラン] ああ、さっき言ったように、あいつも元々難民で、私たちロドスの小隊に救出された一人だからな。難民と関係ある任務には、いつも肩入れするんだ。
[ナターリア] あなたたち二人の仲は良いのかしら?
[キーラン] まぁ仲良くやってるよ。あいつも最初は支援部の所属で、後々前線に移動したんだ。同期で性格も合うから、いつの間にか親友って呼べるほどになってたな。
[キーラン] たしかナターリアは、あの自治団の一員だろう?
[ナターリア] ええ。でもソ……いいえ、ズィマーたちはコンパスさんと同じ前線のオペレーターになって、私は支援部に残ったわ。
[キーラン] 君たちは一緒に発見されたらしいし、仲も良いんじゃないのか?
[ナターリア] ……そうね。あの頃はずっと一緒にいて、仲も良かったわ。
[キーラン] 苦難を共にした仲ってわけだな、そりゃ良い。あ、誤解しないでくれよ、苦難が良いことって言ってるわけじゃない。
[ナターリア] ええ、わかっているわ。
[ズィマー] ……
[ナターリア] あら? あれは……
[キーラン] ズィマーじゃないか、話に出たところでちょうどいい。
[キーラン] おっと、君のことを見ているようだね。
[ナターリア] ええ。
[ナターリア] ……
[ナターリア] ごめんなさい、キーランさん、少し席を外すわね。
[キーラン] わかった。行ってくるといいよ。
[ナターリア] ズィマー、私に何か用?
[ズィマー] ……
[ナターリア] 大丈夫? すごく顔色が悪いわ。
[ズィマー] っ……
[ズィマー] なんでもない。オマエに会いに来るなんてどうかしてた。アタシが来たことは忘れてくれ。
[ナターリア] ちょっと、待ってよ。
[ズィマー] 引っ張るな!
[ナターリア] せっかくだからお話しましょう、ソニア。ここに来てから、まだ一度もちゃんと話してなかったし。
[ズィマー] ……
[ナターリア] 私の部屋に行きましょう。
[ナターリア] どうぞ座って。何か飲む? コーヒー、紅茶、なんでもあるわよ。
[ズィマー] ……流石貴族のお嬢様だな。
[ナターリア] まだ私を皮肉る気力があるなんて、思ってたよりもずっと元気みたいね。さっきの顔色はひどかったのに。
[ナターリア] コーヒーにしましょうか。ロドスで買えるコーヒーは悪くないわ、紅茶はそこそこだけどね。
[ナターリア] チーフエンジニアのお嬢さんがコーヒーに特にこだわっているのが理由らしいわね。知ってたかしら?
[ズィマー] 知るか。
[ナターリア] フフ、最近は褒め言葉ばかり聞いていたから、あなたの攻撃的な態度が懐かしいわね。
[ズィマー] 相変わらずムカつく奴だな。
[ナターリア] 砂糖はいる?
[ズィマー] いらない。
[ナターリア] 本当に? ブラックで淹れたのだけど大丈夫かしら。
[ズィマー] いらねぇって言ってるだろ。
[ナターリア] そう。
[ナターリア] では召し上がれ。
[ズィマー] ……
[ズィマー] オエッ。
[ナターリア] 苦くてびっくりした?
[ズィマー] ……
[ナターリア] フフ、じゃあ砂糖を一匙入れるわね。
[ズィマー] アタシをからかうために連れてきたのか?
[ナターリア] 砂糖はいらないと言ったのはあなたでしょう、ソニア。
[ズィマー] チッ。
[ナターリア] それに忘れないで、あなたが私に会いに来たのよ。
[ズィマー] それは忘れろって言っただろ。アタシはオマエに話すことなんて何もねぇ。友達同士でもないし、オマエのことは嫌いだからな。
[ナターリア] そうね、私はあなたとも、アンナとも友達とは言えないわね。ただ一緒にあそこから生き延びたというだけだもの。
[ズィマー] アタシはただ……
[ナターリア] ソニア、もしあなたが私の友達なら、わざわざ部屋に連れてきたりしなかったわ。
[ナターリア] 仲が良ければ良いほど、言い辛いこともあるもの。
[ナターリア] でもあまり大切じゃない相手で、しかもお互いによく知っている関係だからこそ、言えることだってあるでしょ。
[ナターリア] 私からすれば、それはアンナが一番だけど、あなたでも良いのよ。
[ナターリア] ロザリンは……うーん、直情的すぎてダメね。ラーダは優しすぎるからダメ。
[ナターリア] あなただって同じなんでしょう? そんな相手は私しかいない。だからあなたの方から会いに来ても、私は何も驚かなかったわ。
[ズィマー] つまりオマエも、アタシと話したかったってことか?
[ナターリア] ええ。
[ズィマー] どうしてだ?
[ナターリア] ソニア、この二ヶ月、オペレーターとして戦ってきてどうだった?
[ズィマー] どうだったってなんだよ。戦うだけ……そう、ただ戦うだけだ。あのドクターとかいう奴の指揮に従うのはウザったいけどな。
[ナターリア] ドクターにまで楯突くなんて……支援部にも噂は伝わってきているわよ。あなたらしいわね。
[ズィマー] ……アタシはオマエみたいに綺麗事は言わねぇ。
[ナターリア] 私は聞きたかったの。あんな経験をした後に、武器を持って辛くはならないの?
[ズィマー] ……アタシは戦うのが好きなんだ。
[ナターリア] なるほどね……話は戻るけど、やっぱりあなたはいわゆる綺麗事を言う練習をした方がいいわ、損になるから。
[ズィマー] オマエが心配することじゃねぇ。
[ナターリア] 私たちは確かに友人関係にはないけど、苦楽を共にした仲間じゃないの。相手を気にかけるのは変じゃないでしょう?
[ナターリア] それに本当は、私はあなたのことが好きだし、友達になりたいの。
[ズィマー] ……は?
[ナターリア] 正確に言うと、あなたが羨ましいの。あなたは私にできないことを簡単にやってみせるから。
[ナターリア] そうだ、ソニア、どうして私に会いに来たか、本当に教えてくれないの?
[ズィマー] ……最近、毎晩のように悪夢を見る。
[ナターリア] 夢の内容を教えてもらえる?
[ズィマー] ……ダメだ。
[ナターリア] わかった。でも私が思うに、きっとアンナには言えないような内容なのね。そうじゃなきゃ私に会いになんか来ない……当たりでしょう?
[ズィマー] ……ああ。
[ナターリア] 実のところ、チェルノボーグにいた時からそんな気はしていたの。
[ナターリア] あなたたちは息が合っていて、相手が何を求めているかよくわかっている。それなのに相手と交流することを避けているようだったから。
[ズィマー] アタシたちのことは、オマエには関係ない。
[ナターリア] 安心して、あなたを諭すつもりはないわ。私はもう、自分に人を諭す資格があるなんて思っていないの。
[ナターリア] 話題を変えましょう、ソニア。あなたはこれからも「ズィマー」として生きていくつもり?
[ズィマー] どういう意味だ?
[ナターリア] つまり、これからもずっとロドスにいるつもり?
[ナターリア] 私たちはロドスを離れることだってできる。ここの大人たちはみんな良い人だから、私たちがロドスを離れたいと言えば、落ち着いた暮らしができる場所へ送ってくれるわ。
[ナターリア] 現に私たちと一緒に救出された人たちだって、たくさんウルサスに向かってる。
[ナターリア] 私たちが望めば、チェルノボーグ以外の都市へ行って、そこで新しい生活を始めることだってできるのよ。
[ズィマー] じゃあオマエはどうしてまだロドスにいる?
[ナターリア] わからないわ。
[ズィマー] ……?
[ナターリア] 今日はいい天気ね、ソニア。
[ナターリア] ピクニックにはちょうど良さそう。
[ズィマー] おい。何言ってんだ急に。
[ナターリア] 廃墟の中で食べ物を漁り、運良く見つけた貴重な水を節約して使いながら、私はいつも考えていたの。
[ナターリア] もし生き延びられたら、晴れ渡った日の昼下がりに、どこかの綺麗なお庭で、お腹がはち切れるまで食事をするって。
[ズィマー] おい、聞いてんのか!
[ナターリア] でもそれよりも多く考えていたのは――
[ナターリア] あの日、あなたが私を殺してくれれば良かった……そんなことよ。
[ナターリア] 躊躇わずに、憐れまずに、情けをかけずに、私を浅ましい貴族の一員と思って、あなたの斧を振り下ろしてくれれば良かった。
[ナターリア] あそこで死んでいれば、私にとっては一番幸せだったかもしれないわね。
[ズィマー] 今あの世に送ってやってもいいんだぜ。
[ナターリア] 本当にできるの?
[ズィマー] ……
[ナターリア] 私たちはもうあの場所を離れた。ソニア、私たちは文明社会に戻ってきたの。
[ナターリア] だから文明的な考え方で行動しなくてはいけないわ。そうすれば、あの場所で起きた多くのことは、もう起きはしないのだから。
[ズィマー] アタシはそんなこと気にしない。
[ナターリア] いいえ、あなたは気にするわ。心はとっても優しい人だもの。「冬将軍」、「弱者の守り神」、「イジメっ子の天敵」、どれもあなたよ、ソニア。
[ズィマー] なんだそれ。気持ち悪いこと言うな。
[ナターリア] これは私が噂で聞いた、あなたの通り名よ。
[ズィマー] チッ、アタシはただ、ちょっと力があるからって人をイジメるような奴らが気に入らなかっただけだ。
[ナターリア] あなたはきっと貴族のことも嫌いでしょう、ソニア。
[ズィマー] 当たり前だ。嘘くせぇ奴らだし、いつだって自分たちが他人より上だと思ってやがる。
[ナターリア] そうね、彼らは、いえ、私たちは、いつでも自分たちが他人よりも上だと思っている。
[ナターリア] あなたに連れ帰ってもらってから、私が一体どんな経験をしてきたか具体的に話したことはないわね?
[ズィマー] ああ、オマエがあの貴族団体のボスだったってことしか知らねぇ。
[ナターリア] もし時間があるのなら、聞いてもらえるかしら。
[ズィマー] 好きにしろ。
[ナターリア] 大半の貴族とお金持ちの人たちは、実際レユニオンが都市を占領し始めた時に――ううん、それよりも前に避難を始めたわ。
[ズィマー] 貴族たちは、あんな騒動になるって事前に知ってたのか?
[ナターリア] ええ、早いうちからね。
[ズィマー] ……卑怯な奴らだ。
[ナターリア] そうね。でも知っているでしょう。貴族はみんな利己的なの。
[ズィマー] オマエもか?
[ナターリア] ええ、私も。
[ズィマー] ……じゃあなんでオマエはあそこにいたんだ。
[ナターリア] 簡単よ、私と家族は逃げ遅れたの。それで他の一部の貴族たちと一緒に捕まったというわけ。もちろん、逃げることなんか最初から頭になかった人たちもいたけど。
[ズィマー] そうか。
[ナターリア] あら、そんなつまらなさそうな顔はしないで、これも必要な事前知識だから。
[ナターリア] とにかく、あの学校に連れてこられた貴族の学生たちは、基本的には逃げ遅れたか、逃げようとしなかった貴族の子供たちだったわ。
[ナターリア] 私たちは両親と一緒に閉じ込められて、レユニオンとウルサスとの取引に使われると思っていたのだけれど、無理やり両親と引き離されてあの学校に送られたの。変でしょう?
[ズィマー] 変? 何がおかしいんだ?
[ナターリア] だって、戦争になれば貴族は、敵との交渉材料に使えるわ。そんな無駄に浪費して良いものじゃないの。
[ナターリア] 貴族は常に優雅で、高潔で、尊重されるべき身分よ。捕虜になっても自分の家族と身分は、決して忘れてはいけないの。
[ズィマー] 貴族ってやつはやっぱり、頭がイカれてるな。
[ナターリア] もし以前の私なら、あなたのその言葉に対して、少なくとも二時間は反論していたでしょうね。私はそうやって教育されたから。
[ナターリア] でも今は、私もあなたの考えに同意するわ。
[ナターリア] 貴族の美しく繕った化けの皮を剥がしてしまえば、平民と何の違いもないわ。というよりも、その美しい化けの皮が、余計に貴族を滑稽に見せているの。
[ナターリア] アンナとの、あの討論は覚えているでしょう? もし最初の火災で一つ目の食料庫が焼けなければ、あれほどひどいことにならなかったんじゃないかって。
[ズィマー] でもあいつは言ってた。仮にあの火事が起きなくても、いつか同じようなことが起きて、結局どうしようもなくなってたと思うって。
[ナターリア] 私も、あんな経験をしたからにはそう思うわ。
[ナターリア] 何はどうあれ、それが意味することは――「何かが要因となる出来事が起きて初めて、その後の全てが引き起こされる」ということ。
[ナターリア] でもおかしいのだけど、貴族の間では何かが起きる必要はないの。一つに集まっているだけで、争いが生まれるから。
[ズィマー] なんでだ?
[ナターリア] 新旧の貴族の違いや市長の政治傾向、そして市内の貴族がどれだけの派閥に分かれているかについて、説明したほうが良さそうね。
[ズィマー] なんでそんなこと聞かなきゃなんねぇんだよ?
[ナターリア] 説明しないと理解できないからよ。
[ズィマー] じゃあ理解できなくていい、興味ないから。
[ナターリア] 私だって興味ないわ。でもロストフ家の長女として、絶対に理解しておく必要があったの。
[ナターリア] まあ、あなたはこれだけ知っておいてくれれば良いわ。貴族たちが学校に集められたその日に、貴族学生たちの間では、流血事件が起きそうになったのよ。
[ナターリア] それで私は仕方がなく、第四高校の生徒会長として立ち上がり、私の威信をもってみんなを一つにまとめたの。
[ズィマー] 内輪もめを防ぐために、あいつらを一つにまとめたってことか?
[ナターリア] ええ、そう言うとすごく聞こえは良いでしょう? 私は学生たちが争わないように、自ら立ち上がったのよ。
[ヴィクトル] ぐっ、あ……
[ニコライ] パーヴェル、貴様の父が鉱脈採掘権を握っているからと言って、何もかも好き放題できると思うな!
[パーヴェル] ただの男爵の分際で、私に楯突くとは……。彼には私の剣で一突きにされていない幸運に、心から感謝してほしいところだな!
[パーヴェル] 君もそうだ。イワノフ家の次男坊ごときが、私に楯突くとはいい度胸ではないか。胸に穴を空けてほしいという意味か?
[ニコライ] 貴様……私のお父様は議員だ、わきまえろ!
[パーヴェル] 議員? 君は毎週日曜、私のお母様が主催する会食に、どれほど多くの議員が参加しているか知らないのか?
[パーヴェル] ああ、知るはずがないか。君のお父様には、その資格すらないのだから。
[ニコライ] 貴様っ!
[ナターリア] パーヴェルさん、黙りなさい!
[パーヴェル] ナターリア、私のことはパーシャで構わない。それほど他人行儀にしなくていいではないか。
[ナターリア] 真面目に言っているのよ、パーヴェル・ニコラエヴィチ! こんな時に不要な争いを起こさないで!
[パーヴェル] 仰せのままに、尊敬する生徒会長様。
[ナターリア] タチアナ、ヴィクトルさんの傷口の手当をしてあげてちょうだい。
[タチアナ] は、はい!
[ナターリア] みんな、私たちはこの学校に閉じ込められている。これから何が起きるかはわからないわ。だけど少なくとも、あのレユニオンの人たちが私たちを逃がすつもりはないことは想像できるでしょう。
[ナターリア] 改めて、自分たちの様子を見てごらんなさい。私たちはここに来てまだ半日よ、それなのに諍い合って、他の貴族を手に掛けようとする人までいる。
[ナターリア] それが貴族のあるべき姿なのかしら!
[アントン] お前は誰だ、何を根拠にお前に従えと言うんだ?
[タチアナ] このお方は、ボリス第四高校の生徒会長、ナターリア・アンドレーエヴィナ・ロストワ様ですわ!
[アントン] お、お前があのロストフ伯爵の長女だって!?
[アンドレイ] 彼女があの「第四高校の明珠」、ロストフ伯爵が爵位を継承させると公言しているナターリア・アンドレーエヴィナ……
[ナターリア] ここには各地区の貴族高校の学生が集まっているし、私も自分の立場を強調したいわけではないわ。ただ今私たちは、生きるか死ぬかの瀬戸際にあるということを知ってほしいの。
[ナターリア] それにここには私たち以外に、多くの平民の学生たちがいるわ。みんなも平民に醜態は晒したくないでしょう?
[ナターリア] レユニオンがウルサスに何かを要求するつもりなら、私たちは交渉材料になる。レユニオンは、私たちのことを軽々しく傷つけることはできないはずよ。
[ナターリア] あなたたちは、そんな貴重な命を内輪もめで無駄にするつもり!?
[ナターリア] 今の私たちに必要なのは、争いじゃない。一致団結することよ!
[ナターリア] もちろん、今となっては、レユニオンは私たちのことを気にかけていなかったのは明らかなのだけれど。
[ズィマー] ……
[ナターリア] まあ、それはいいわ。それで私は争いを収めたのだけど、口上と威信だけでは、あの状況下で大きな効果を得ることは難しかったの。
[ナターリア] ソニア、ウルサスが今ほどの強大さを有し続けているのは何故かわかる? ……って、いきなりすぎる質問だったわね。
[ナターリア] 話を戻しましょうか。実際、多くの学生は私に従うことや、誰かと共存することに耐えられず、私たちから離れそれぞれのグループを作ったわ。
[ナターリア] でも最後には、少なくとも三十数人の学生が私に従ってくれたの。
[ナターリア] 当時の私は、それで十分よくやったと思っていたわ。
[ズィマー] 道理でオマエのグループ以外にも、はぐれた貴族のろくでなしたちがそこら中にいたわけだ。
[ナターリア] ええ、みんな自由に過ごしていたでしょうね。
[ズィマー] アタシが知るか。
[ナターリア] 残念ね、あなたとお話するのは楽しいけど、こういう話題はやっぱりアンナと話す方が良いわ。
[ズィマー] ……話を逸らすな。
[ナターリア] フフ、ごめんなさい。私も積極的に話したいのだけれど、なかなか難しいものね。
[ナターリア] さっきの話だけど、ウルサスが今日までやってこられたのは、戦争があったからよ。先代の国王陛下が絶えず戦争を仕掛け、資源を手に入れ、そしてその資源をまた次の戦争に充てていた。
[ナターリア] 戦争さえあれば、ウルサスは回していけるし、国民たちも心を一つにすることができる。
[ニコライ] わ……私はナターリア会長の言う通りだと思う。
[パーヴェル] もしナターリア会長が私たちを率いてくれるのならば、私も喜んで従おう。
[ナターリア] みんなが私を信じてくれるのなら、私はこのグループのリーダーになることを厭わないわ。
[ナターリア] (ああ、これでなんとか争いは止められたわ。でもこれからどうしたら……)
[パーヴェル] そうなれば、私に一つ提案がある。
[ナターリア] えっ?
[パーヴェル] ナターリア会長の言う通り、我々は貴族にあるべきメンツを保たなければいけない。
[パーヴェル] となれば、あの平民たちに貢献してもらうべきではないだろうか。
[ズィマー] オマエ……まさか……
[ナターリア] ええ、私は彼らの「平民から略奪する」という提案を呑んだの。
[ナターリア] ソニア、私はかつて、自分は善良な人だと思い込んでいたわ。
[ナターリア] 少なくともあの時は、そう思っていた。
[ナターリア] だって私は、貴族間のコミュニティはくだらなくて嘘くさいものだと感じていたし、悲劇を嘆き悲しみもした。難民に食料を分けてあげたこともあるわ。
[ナターリア] でも、結局善良なんかじゃなかった。あなたにも、自分にも噓をつきたくないから話すわね。
[ナターリア] あの時私は、貴族を団結させるために、彼らの蛮行に同意したの。
「ドンッ」! 白髪の少女が地面に押し倒され、顔を数回、強かに殴りつけられた。口角からは真っ赤な血が滴ったが、彼女は笑みを返した。
白い肌を染めた赤は美しい笑顔によく映え、その痛ましさを際立たせた。
[ナターリア] くっ、うう……
[ズィマー] この――
[ナターリア] この悪魔。そうでしょう?
[ナターリア] でもこれだけは知ってほしいの、ソニア。もしあなたたちと一緒に過ごさなければ、そしてもしロドスに来ていなければ、私は今のように考えることすらしなかったわ。
[ナターリア] そう、あなたたちと過ごさなければ、ロドスに来ていなければ……私は優雅で高潔で、現実を知らない貴族のままだった。
[ナターリア] あなたたちが、私は高潔ではないという事実を教えてくれたの。でもその事実こそが、私を責め立てるのよ。
[ナターリア] だからあんな風に言ったの。私を見つけたあの日、あなたが私の仲間たちを殺したみたいに、私のことも殺してくれれば良かった、なんてね。そう、そうだったらずっと良かったのよ。
[ナターリア] 私が自分は良い子だって幻想に溺れている内に、仕方がなかったって自分を慰められている内に、あっさりと死ぬことができれば、今のように悩むことはなかった。
[ナターリア] ……ソニア、見て、これが何かわかる?
[ズィマー] カッターナイフ。
[ナターリア] ここ数ヶ月で、これで腕を切ろうとしたのが26回、喉を突き刺そうとしたのが15回。
[ズィマー] ……なんだってそんなに細かく覚えてんだ。
[ナターリア] いつも諦める度に、自分の愚かさと臆病さを嘲笑うの。忘れたくても忘れられないわ。
[ナターリア] 貴族らしい方法も考えたのよ。お茶に毒を入れるとか、剣で首を切るとか、遺書はどんな風にどんな文字で書くかなんて、バカらしいことまで。
[ナターリア] でもそんな方法は、実行する前に必ず人に見つかってしまうわ。他人に迷惑はかけたくないの。
[ズィマー] で、オマエは一体何が言いたいんだ?
[ナターリア] ソニア、私はね……
[ナターリア] 大人たちに言ったの。ロドスに残って、ウルサス人のために何かをしたいって。
[ナターリア] 自分にも語りかけたわ。ナターリア、それは贖罪だって。
[ナターリア] でも本当にそうなの?
[ナターリア] ニコライたちの笑顔を思い出すたび、彼らが平民から強奪した後私に手柄をひけらかす時の表情を思い出すたび、間違っていると言いたいのに笑顔を返してしまう自分の臆病さを思い出すたび――
[ナターリア] 彼らの要望を許可したことを思い出すたび、強奪の計画を立て、指導までしたことを思い出すたび、山積みになった物資に喜びを感じたことを思い出すたび――
[ナターリア] あの悲惨な叫び声や泣き声に耳を塞いだ自分を思い出すたび、仕方なかった、自分は無罪だなんて思い込もうとしたことを思い出すたび、人から奪う生活に慣れていく自分を思い出すたび――
[ナターリア] ソニア、信じられるかしら? 私はあの殺し合いの中で、一人だって手にかけていないのよ。
[ナターリア] それでも私はきっと、あの中で一番汚れた人間なの。
[ナターリア] 私があなたを連れてきたのは、あなたに今後どうするべきかを教えるためだと思ったかしら?
[ナターリア] 違うわ、ソニア。わからないの、私には何もわからないの。
[ナターリア] それをどうやって人に伝えれば良いかすらわからないの! だから私は、何に対しても余裕があるふりをしながら、あなたをここまで引っ張ってくることしかできなかったの!
[ズィマー] ……
[ナターリア] ……
[ズィマー] オマエ……
[ナターリア] ふぅ、ごめんなさい。少し取り乱してしまったわ。
[ズィマー] ……なんか飲むか?
[ナターリア] 紅茶がいいわ、ありがとう。
[ズィマー] おぅ。
[ズィマー] おい、紅茶はどこにしまってあんだ。
[ズィマー] 茶葉の箱が多すぎて、どれがどれだかわからねぇ。
[ズィマー] あっ。
[ナターリア] ……プッ。
[ナターリア] やっぱり私がやるわ、ソニア。
[ズィマー] ああ、悪ぃな。
[ナターリア] 思い出したわ、あなたは紅茶なんて淹れられないって。取り乱してあなたに不得意なことを任せてしまったわね、ごめんなさい。
[ズィマー] オマエって奴は……
[ナターリア] ねえ、ソニア、あの日は一体どういうつもりだったの?
[ズィマー] ああ?
[ナターリア] あの火事の後、そこら中を逃げ回って、それでも他の学生に捕まってしまった私を、どうして助けようとしたの?
[ナターリア] 私が、数日前まで好き放題していた貴族たちのリーダーだと知っていたのに。
[ズィマー] 忘れた。
[ズィマー] たぶん可哀想に見えたからだろ。
[ナターリア] じゃあどうして私が自治団に入ることを許可したの?
[ズィマー] アンナがいいって言ったからだ。
[ズィマー] オマエはアタシに恨んでほしいのか? ナターリア。
[ナターリア] わからないわ。ソニア、あなたは私を恨む?
[ズィマー] アタシが見てきたクズどもは、自分がクズだなんて認めなかった。
[ナターリア] 自分がクズであることを認めたクズは、もうクズではないの?
[ズィマー] ……そんなにアタシに殴られたいのか?
[ナターリア] 私はマゾヒストではないわ。ただ、なんと言えば良いか……さっきの話を聞いてくれたあなたには、誠実になりたいと思って。
[ズィマー] マゾ……なんて言った?
[ナターリア] あら、貴族の間に伝わる趣味みたいなものよ。私も噂で聞いたことしかないけれどね、気にしなくて良いわ。
[ズィマー] アタシは、もう一度オマエを殴りたいとは思わない。
[ナターリア] そう?
[ナターリア] 紅茶はクルビア産のにする? それともヴィクトリア産が良い?
[ズィマー] ……切り替えが早ぇことで。
[ズィマー] なんでもいい、どうせ違いなんてわからねぇからな。
[ナターリア] 私はそういう教育をされてきたから。どんな時でも、体面を保たなくてはいけないの。
[ナターリア] 砂糖はいる?
[ズィマー] ……いる。
[ナターリア] ごめんなさい、こういう紅茶に砂糖は入れないほうがいいの。このまま飲んでちょうだい。
[ズィマー] うぜぇな。じゃあなんで聞くんだよ。
[ズィマー] チッ。
[ズィマー] 聞け、ナターリア。アタシはどうやってオマエを励ませばいいかなんてわからねぇし、本当は励ましたくもない。
[ナターリア] あら、私を恨まないだけではなく、励まそうともしてくれるの?
[ズィマー] 黙ってろ。
[ナターリア] はいはい。
[ズィマー] 人を励ますのは苦手なんだ。やろうとしても、いつもひどい結果になる。
[ズィマー] だからアタシが今思ったことを、ただ伝えることしかできない。
[ズィマー] さっきオマエは聞いたな、「ズィマー」として生きていくかって。
[ズィマー] 答えは「イエス」だ。
[ズィマー] アタシの両親はどっちもチェルノボーグで死んだ。だからあそこには戻りたくないし、ウルサスにも戻りたくない。簡単な話だ。
[ズィマー] オマエはアタシが、オマエの苦しみだ何だを理解できると思ってるかもしれないが、アタシにはよくわからねぇ。
[ズィマー] 初めはオマエがただ言い訳をしたいだけだと思ってた。オマエと似たようなことを言いながら、奇襲する隙を狙ってた奴らに出会ったこともある。でもオマエは本当に辛そうにしてる。なんでだよ?
[ズィマー] オマエがいなくても、あの貴族のろくでなしどもはどうしようもない奴らだった。オマエが奴らをクズにしたわけでもねぇし、オマエが全ての事件を引き起こしたわけでもねぇ。
[ズィマー] というよりもアタシが……
[ナターリア] あなたが?
[ズィマー] いや、なんでもない。それにアタシがもし貴族の一員だったら、オマエみたいな奴がリーダーになってくれて喜んだと思う。アンナがアタシをリーダーに選んだ時みたいに。
[ズィマー] オマエはオマエにできることをやっただけだ。
[ズィマー] アタシがオマエを嫌ってる理由は、自治団に加入するまで敵だったことと、貴族が気に食わないからってだけだ。
[ズィマー] アタシは今でも悪夢を見る。悪夢を見てゲロ吐いて、一睡もできなくなるんだ。
[ズィマー] でも生き延びたことは悪いことだとは思わねぇ。
[ズィマー] オマエを生かしたことも、悪いことだと思ってない。
[ズィマー] オマエは自分のことをクズだと思ってるだろうが、もしオマエがいなければ、アンナに頼ることしかできないアタシたちじゃ、その後の十数日は生き延びられなかったはずだ。
[ズィマー] 今が辛いってんなら、アドバイスをやる。オマエも気ままにそこら中駆け回って、腹が減ったらメシ食って、眠くなったら寝る。そんな生活をしてみたらどうだ。あれこれ頭を抱えて考えるよりもずっとマシだ。
[ナターリア] ……プッ。
[ズィマー] なんだよ。
[ナターリア] アハハハハハハハ。
[ズィマー] そんなに笑うことか、涙まで出てるじゃねぇか。
[ナターリア] いえ、ただあなたと話をしたかいがあったと思って。
[ナターリア] もしあなたがアンナだったら、今ごろ頭を抱き合って二人で号泣していたと思うわ。
[ズィマー] あいつもオマエのことは好きじゃない、忘れんな。
[ナターリア] わかっているわ、プッ、アハハ、わかってる。
[ナターリア] あのね、ソニア。
[ズィマー] なんだよ。
[ナターリア] 気付いてる? あなたは私の問題を何も解決してくれてないのよ。
[ズィマー] オマエのことなんてどうでもいい。
[ナターリア] そしてきっと、私も、あなたの問題を解決してあげることはできないわ。
[ナターリア] でも一つだけあなたの言う通りね、私たちは生き延びた。
[ナターリア] じゃあ、私たちは抜け出せると思う?
[ズィマー] ああ?
[ナターリア] 足元の円、夜、迷宮、胸中、思考、深淵。そんなところから。
[ズィマー] アタシにわかる言い方をしろ。
[ナターリア] はいはい。じゃあ、オペレーターたちはみんなコードネームがあるでしょう? 私がオペレーターになるとしたら、どんなコードネームが良いと思う?
[ズィマー] 知らねぇよ。アタシのコードネームもアンナが考えてくれたんだ。
[ナターリア] そう。じゃあ「Poca」はどうかしら?
[ズィマー] ウルサス語で「露」か。
[ナターリア] ええ。共通語で表記するなら「ロサ」かしら。
[ズィマー] ……まあまあか?
[ロサ] よし、じゃあもし私がオペレーターになるとしたら、コードネームは「ロサ」にするわね。
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