デジモンアドベンチャーtri. 第2章「決意」
公開日…2016年3月12日
上映時間…88分
興行収入…1億6千5百万円(※一章は2億3千万円)
概要
高校生(中学生)となった選ばれし子どもたちが新たな脅威『感染デジモン』と戦い、その謎に迫る全6章の劇場公開作品第二作目。
新たに加わった選ばれし子ども『望月芽心』とそのパートナー『メイクーモン』と出会った太一たちの前に、インペリアルドラモンを操る『デジモンカイザーに酷似した謎の男』が姿を現す。
問題点
- 内容の薄さ
上記概要欄でほぼ網羅出来てしまうほどにストーリーが進まない。
→ 他に特筆すべき描写についても上手く活用できているとは言い難い。
「芽心とメイクーモンが無印組と交流する」
→溶け込むまでには至らなかった
「メイクーモンが感染と歪みの原因」
→この事実を知ったところで具体的な対策は取らず
「姫川と西島が旧知の仲」
→後の姫川の行動を西島は止められず
-
温泉パート
大江戸温泉とのコラボレーション。
総じてあまり意味は無く、あまりに冗長すぎる。
→時間にして前半の20分すべて。それだけの時間をかけても芽心とメイクーモンはあまり溶け込むことができなかった。
→新しい仲間との親睦会、という名目で出掛けたにも関わらず、02組は声がかからず。親睦会の体を成していない。
→劇中でもタケルが、親睦会は建前で実際は太一とヤマトの関係修復が目的と発言。
→提灯を見たメイクーモンが暴走しかける描写などもあるが、5章現在特に説明はない。
→足湯や食堂ではデジモンが堂々としていたり、逆に多数の入浴客から隠す展開となったりと状況が安定しない。
→芽心と子ども達が、デジモンやかつての冒険について深く話をするわけでもなく、好意的に見ても単に友人として親睦を深めているだけに終わっている。
選ばれし子ども達と温泉
ガブモンが毛皮を脱いで入浴した以外には温泉ならではの描写が乏しい。
→太一の裸を凝視するなど、芽心をどう描きたいのか分からないシーンも。
※ちなみに芽心は帰宅後に入浴する。どうせ入浴描写を入れるならコラボしたほうに入るべきだったと思われる。
→男性視聴者へのサービスシーン・お色気シーンとしても中途半端で不十分。小学生がメインターゲットだった無印と02やクロスウォーズまでのテレビシリーズと違い、tri.は当時子どもだった年齢層をメインターゲットにしており、制作陣もそういった年齢層がターゲットのアニメを沢山作っている人物で集まっているというのに、勿体無い。
第2章パンフレットによると、シナリオを書く段階ではプールに行く予定だったとのこと。
→上記の通り、あまり意味のないコラボレーションのために現場に余計な負担がかかってしまった。
- 文化祭
ミミが我を押し通した結果、周囲との亀裂に悩む。
模擬店の衣装について他の生徒と意見が衝突。
→「その時は黙ってても後で文句ばっかり言ってさ。だいっきらい」と発言するものの、実際に他の生徒から不満が出た際には話し合う事もなく怒り、芽心や空に八つ当たりする始末。物の見事にブーメランとなる。
→「やりたいことをやる。周りの意見は気にしない」と押し切る。基本的にコミュニケーションを取ろうともしない。
→彼女自身がかつての冒険(無印25話など)を通して他人を思いやることを学んできただけに、非常に残念。
不自然な活動描写
文化祭とはいうものの、企画立案から開催当日まで時間が経過した描写がほとんどない。
→02組の消息不明に気づかない期間が長すぎるなど。
具体的に学生として活動しているのはミミと芽心のみ。他は特に何もしていない。
- インペリアルドラモン戦
インペリアルドラモンを躊躇なく攻撃する無印組
歴代でも極めて特異性の高いインペリアルドラモンを、仲間と疑うこともなく全力で攻撃する。
そして、撃破に成功したら満面の笑みで歓声を上げる。
→今作では全編を通して「仲間同士では戦えない」「仲間を倒すことは絶対にできない」と強調している。
その一方で仲間である可能性が高いインペリアルドラモンを攻撃しており、物語を通して行動と言動が矛盾していることが否めない。
しかし、02のブラックウォーグレイモンとの戦いから色違いは違うデジモン、つまり大輔たちのパートナーではないと認識してる可能性はある。
インペリアルドラモンの攻撃
→相手は成熟期以下3体であり、普通に戦っても瞬殺できる戦力差。
→手加減をしていたのかは不明。
インペリアルドラモンの戦闘能力については第2章パンフレットにて宇木氏もキービジュアルについて「上からヴァイクモンが押さえつけている構図はどうなんだろうって最後まで悩んでいました」「僕の中ではインペリアルドラモンのほうが強いんだろうなって思いがあったので…」と発言している。
- デジモンカイザー関連
メイクーモンを大した抵抗もされずに拉致する。
一乗寺賢であることを匂わす数々の描写が見受けられた。
→しかし後にまったく関係の無い別人と判明。また、カイザーの似姿をとっていた理由・必然性もまた不明。
- 過去に乗り越えたはずのことでつまずく「選ばれし子どもたち」
八神太一
→別項を参照。
戦うことへの迷いを払拭しきれていない。
「なぜオメガモンの合体は解けた?」とヤマトに問われ、答える事なく立ち去ってしまう。
→インペリアルドラモン戦では歪みが物理的に閉鎖され見ているだけとなり、太一の葛藤については先送りにされた。(その後有耶無耶に)
城戸丈
→別項を参照。
・冒険を通して自分で決めたはずの『医者になる』という夢を世間体に挿げ替える。
・「選ばれし子どもなんて言うけどさ、本当は僕たちが選んでるんだよ」と言ったその本人が『なぜ選ばれたか』で悩む。
→結局「選ばれたことには理由がない」と納得し、戦いと将来の両立については先送りにして悩みを振り切った。
太刀川ミミ
→別項を参照。
性格面についての描写に問題があると言わざるを得ない。
→自己中であることを前面に押し出した結果無印当時から退行しているようにすら見える。
- 進化バンクについて
tri.初の完全体、そして究極体の進化バンクが流れた。
しかしワープ進化を採用しなかったためテンポが悪く、また個々の仕上がり自体も非常に残念なもの。
→リリモン
無印の蕾から飛び立つ様を踏襲。8体の完全体の進化バンクの中では形式が異質。全体的に見て最もマシな部類だが、やはり最終的なポーズや他と共通した背景の地味さに難がある。
→ロゼモン
ロゼモン自体があまり動かず、よく分からないリングを潜るだけというメリハリのないもの。
→イッカクモン
1章で成熟期7体が戦う中イッカクモンの出番は無かったため2章で出番がお披露目。
決めポーズが異常にダサい。2章パンフレットによるとスタッフは拘りを持ってこの決めポーズを作ったとのこと。
→ズドモン
プロセス自体はロゼモンと同じ。特筆すべき差別化された要素はない。
→ヴァイクモン
プロセス自体はロゼモンと同じ。特筆すべき差別化された要素はない。
- 謎のメール
真なる力を求めるには 暗黒を知り、超えて行け
→詳細は伏線の項目を参照。
→差出人は一切不明のまま6章が完結。流石にこのメールの送り主くらいは明かして6章を完結させなければいけないのでは…。
→このメール自体は単なる電子メールであり、無印における究極進化の鍵となった遺跡の予言とも関連はない模様。
本作における究極進化にもなんら影響していない。
-
レオモン
→変態と化す。
→当然のように死ぬ。理由や必要性については特にない。
→現実世界で死亡したデジモン(無印におけるウィザーモンなど)は、はじまりの町で生まれ変わることができない。
→『謎の男』の発言から、現実世界で死亡したデジモンもリブートによって復活することが判明。レオモンも生き返ったことが確定。
→だが3章以降レオモンは一切再登場せずに6章が完結。
その他
空気と化す選ばれし子ども達
→太一を始め、日常パートでも特に率先して何かするわけでもなく、戦闘においてはミミと丈しか関わらない。
悪い意味で「ただ居るだけ」
→辛うじてインペリアルドラモン戦のモニタリングに成功した光子郎は存在意義がある。しかしメイクーモンやインペリアルドラモンについてデジモンアナライザーで調べることすらしない。
オーガモン
→感染デジモンとして出現。レオモンによってデジタルワールドへ連れ戻された。その後一切再登場せずに6章が完結。
→知り合いだから倒せない、とインペリアルドラモンとは真逆の対応。
→意思疎通はできず、うめき声のみ。担当声優も誰かの兼役。
→第2章上映前の約1ヶ月前に発売されたゲーム、デジモンワールドネクストオーダーでは、江川央生氏(無印のオーガモンの声優)がタイタモン(オーガモンが進化した究極体)役で登場した。tri.第2章でも江川央生氏を呼ぶべきだったのではないかと感じざるを得ない。うめき声のためだけに声優さんを呼ぶ必要は無いと感じたのかもしれないが、それならそれで、デジモンの複数のメディアミックスを通じてズレを感じざるを得ない。
止め絵が多い。
温泉パート、ダンスシーンやインペリアルドラモン戦など全編に渡って蔓延。
戦闘シーンについて
主に1章と同じく、キツすぎるエフェクトなどの問題から、何をしているのか分かりにくい戦闘シーンとなっている。
→「アークティックブリザード」(絶対零度の冷気で空気ごと敵を凍らせハンマーで砕く技)と叫ぶも氷要素無しの打撃技を繰り出すヴァイクモンなど、描写が間違っているのかセリフが間違っているのか分からないものも。
→同様にハンマースパークとハンマーブーメランの混同も見られる。
これらは1章で見られた「技名を叫ばない」という欠点を解消したものではあるものの、その考証はあまりに粗略であり「これなら技名は叫ばないほうがマシ」という残念な結果となった。
作画崩壊
→キャラクターの描き込み不足が一章に比べ増加している。モブ(学生や姫川の部下など)は特にその傾向が顕著。
→丈を見つめるゴマモンの顔や屋上からみた校舎など形や構図が破綻しているシーンが多い。
→オープニングにて、鏡に映った芽心の服にミスがある等単なる映像作品としても難がある。
トゲモンの進化バンク
88分の間に全く同じ進化バンクが2度流れる。
ただでさえ第1章で1回流れているので、第1章と第2章でトゲモンの進化バンクは合計3回流れた。
→今作は約25分×50話前後のテレビアニメとは異なり、約90分×全6章の、映画が中心の有料視聴(映画・有料配信・OVA)という放送形式。尺の無駄遣いが許されず高い作画が求められている。同じ映像を何度も流す必要性が感じられない。
そもそも、1本の「映画」の中で全く同じ1分位の映像を二回流すというのは、明らかにおかしい。
アニメ映画でも洋画でも邦画でも、一般的な映画で、回想シーンとして同じ映像を少しだけ流すことはたまにあっても、全く同じ1分位の映像を1本の映画内で2回流す映画なんて早々ない。
「なぜオメガモンの合体は解けた?」について
1章のオメガモンとアルファモンの戦いで、ガルルキャノン発射と同時にオメガモンの合体は解けウォーグレイモンとメタルガルルモンに分離していた。
太一は「心に迷いがあったせいだ」とヤマトに指摘された。
→1章のオメガモンの合体が解けウォーグレイモンとメタルガルルモンに分離するシーンはほんの一瞬で、しかも分離後の2体は画面上で小さく描かれている。1章の映像をスロー再生・コマ送り再生して辛うじて気づくレベルである。
合体が解けたこと自体が明確に描かれておらず、この状況では「オメガモンがコロモンとツノモンに分離したことを指しているのか?」と感じるのが普通。
→合体が解けた段階ではむしろ太一は、咄嗟にアルファモンを攻撃する覚悟を決めている。
太一が迷ったのはガルルキャノンを発射する瞬間であり、実際に発射までにはかなりのタイムラグが生じていた。
したがってオメガモンへの合体がなぜ解けた?というヤマトの問いは的外れと言える。
- キモカワコンテスト
→劇中文化祭でのイベント。賞品に釣られてパートナーデジモンたちが参加するが、優勝したのはメイクーモン。
公式側はメイクーモンをキモカワイイと認識していると推定される
- 食べ物について
クレープや水あめなど、食べ物を地面に落とすシーンが多く、人によっては不快に感じる。
- 現実の大江戸温泉について
大江戸温泉の大浴場は、入ってすぐの脱衣場にタオルを渡す係員が最低2名常勤しているので、女子が男湯に入ったら即効で止められる。あんなに簡単に突破されるのは「係員が仕事してない」と云ってるも同然なので、現実の大江戸温泉は怒っていい。
- 女子の男湯への潜入について
女性が男子風呂と男子風呂の更衣室に入るのはれっきとした違法行為である。だが彼女達は温泉経営者側から一切お咎めを受けていない。
- 温泉でのお色気描写サービスシーンについて
上記でも少し記載されているがこちらでも記述。
温泉シーンは、温泉を舞台にしたという時点で、女性キャラのお色気描写サービスシーンを入れる絶好のチャンスのシーンのはずだったのだが、女性キャラのお色気描写サービスシーンが圧倒的に少ない。
デジモンアニメシリーズの日曜朝フジテレビで放送されていた5作では、テイマーズではサクヤモンの進化バンクで牧野留姫の裸に限り無く近い性的な姿の神秘的な描写があったり、セイバーズでは竹田作画による女性キャラ(藤枝淑乃や大門小百合や大門知香やナナミ等)の胸の陰影を強調した性的な描写があった。無印やフロンティアでも小学生女子キャラ(空やミミや織本泉)の入浴シーンをギャグチックに性的に描いていた。
ゴールデン枠と日曜早朝のクロスウォーズでは、メルヴァモンやリリスモン強化形態や天野ネネにかなり性的な描写があった(そちらは下品すぎるという批判も多いが)。
それに対してtri.の温泉シーンはお色気描写サービスシーンが非常に少ない。下品と感じる描写も全く無い。監督のページでは、「アダルトゲーム原作アニメを多く手掛けた人物をデジモンアニメの監督にしたのが間違いなのでは」との可能性が提唱されているが、tri.の温泉シーンがこうなっている辺り、実情はどうなのか不明。
- 「2005年らしい風景ということで、できたばかりの大江戸温泉物語が登場します。第1章、第2章『当時のお台場周辺を見せる』というのがテーマとしてあるので、そのあたりは楽しんでいただけるのではないでしょうか。」について
Febri 2016 vol.32 鈴木貴昭氏のインタビューに
「2005年らしい風景ということで、できたばかりの大江戸温泉物語が登場します。第1章、第2章『当時のお台場周辺を見せる』というのがテーマとしてあるので、そのあたりは楽しんでいただけるのではないでしょうか。」
と発言がある。
→だがその発言の上で結果的に温泉パートで多くの視聴者に不満を感じさせ「楽しんでいただける物」を作ることができなかった。製作陣の意図した「視聴者に伝えたいこと」をアニメ内で視聴者に伝えることができなかった。やはり問題であると感じざるを得ない。
→地方民の視聴者にとっては、「2005年の当時のお台場周辺を見せる」と言われて見せられても、特に感慨を感じることは無い。
→お台場に開業したのは2003年なので「当時の様子を見せる」という言葉もズレていると思わざるを得ない。
- エンディングについて
曲は評価が高い。半面ビジュアル面は浴衣姿の男性陣の一枚絵という、無い方がマシな手抜き仕様。
- 劇場限定版Blu-rayの発売延期について
第2章の劇場限定版Blu-rayは2章の劇場で販売する予定だった。
しかし急遽発売延期になり、第3章公開時の劇場で販売することになった。
劇場・有料配信で公開された2章の映像は、約1ヶ月前の先行上映会での映像から、インペリアルドラモンの作画や女性人間キャラの作画が若干修正されていたらしい。
そのため、作画を修正したバージョンでのディスク製造が間に合わなかったと推測される。
→だが、エンディングの映像など、他にも作画を修正すべき部分はあったのではないかと疑問に感じる。
評価すべき点
- オープニング曲「Butter-Fly~tri.Version~」
- 挿入歌「brave heart~tri.Version~」
- エンディング曲「Seven~tri.Version~」
→OPとEDは故・和田光司氏による名曲。前者は特に重要でもないセリフが歌声に被り、後者は前述のとおり背景にまったく注力されていない点が惜しまれる。
→「Seven ~tri.Version~」は、2009年に発売されたCDに収録された曲「Seven~10th Memorial Version~」での和田光司氏の歌声に2016年でのAiM氏と宮崎歩氏の歌声を追加して作られた、非常に特殊な形式な曲。
→原曲版Sevenは無印で主要メンバーが7人+7体だった頃に作られたからSeven(7)という曲名なのだが、tri第2章はヒカルとテイルモンもおり芽心とメイクーモンもおり詳細不明な02組もおり全て合わせると13人+13体であり、7という数字と全く合っていないため、曲のチョイスが不適切だと言う声がある。
→第1章公開の時点で、後に「tri.Version」の「keep on」と「アシタハアタシノカゼガフク」と「いつもいつでも」と「僕らのデジタルワールド」がEDとして作られるのでは、との予想の声が多かったため、Sevenが選ばれたのは予想の斜めのチョイスであった。「tri.Version」の02のOP曲と挿入歌も作られるのでは、との予想(≒願望)の声も多かったがこちらは残念ながら第6章を終えても一切叶わなかった。
劇場版デジモンアドベンチャー(仮題)、改めラストエボリューション絆ではどうなるか…。そちらでは02組が登場することは確定しているが、果たして…。
- 第2章のキービジュアル
ロゼモン、ヴァイクモン、インペリアルドラモンDM、ミミ、丈が映ったキービジュアル。
- 非常にフットワークのいいトゲモン
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コメント
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揺れりゃなんでも良いと思ったら大間違いだぞ。
大きく体動かした時に揺れた!…かな?!くらいがいい。そういう美学が分からないのかねぇ…
無理やりロゼモンの乳を揺らしてて違和感あったし演出に引いた
丈とゴマの屋上の争いのシーンでゴマモンが「放っておけって云ったじゃないかぁ!」と丈をなじりますが、丈は一度たりともそんな台詞を吐いておりません。良ければ記述をお願いいたします
>> 返信元
追記しました。ありがとうございました。
ハンマーブーメランをハンマースパークと言っていたことも追加お願いします
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