カフの追憶(Q.E.D. 証明終了)

ページ名:カフの追憶

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更新日:2026/03/01 Sun 12:08:01NEW!
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今の話には決定的な間違いがある

人は未来を知ることはできない



「カフの追憶」とは、Q.E.D. 証明終了のエピソードの一つ。単行本第41巻に収録。同時収録作は「バルキアの特使」。
以下、ネタバレにご注意ください。




【ストーリー】

年末の雪の降る夜、燈馬はアメリカの連邦刑務所にいた。
ハイスクール時代の知人、リン・ダービーの頼みで彼女の受刑中の夫、カフ・ダービーに会いに来たのだ。
リンは台湾出身の占い師で、彼女の占いの力を身をもって知ったカフは、彼女の占いを利用した投資信託会社を経営していたのだ。
しかしリンは何者かの銃撃を受け重傷を負い、カフもその罪を着せられて逮捕されてしまったのだ。
リンの依頼で来たと言う燈馬に対しカフは自らの過去を語るが、話を終えたカフに対して燈馬はこう切り出した。
「僕が見ている風景はあなたと違うモノかもしれません」




【事件関係者】

なァ!!助けてくれ!!
リンに会いたい!!
オレをここから出してくれ!!

  • カフ・ダービー

アメリカ合衆国連邦刑務所受刑者。
弁護士を呼べと言ったのに、やって来たのが何の変哲もない子供である燈馬だったため始めは彼を口汚く罵っていた。
しかし彼がリンの頼みでやって来たという事を知り自らの半生を語る。


アメリカのハイスクール時代、学校の勉強に意味はないと思った彼は学校を中退。
泣き続ける母を一人残し世界中を旅していた。
そんな時に立ち寄った台湾で気まぐれにリンの占いを受け、「帰り道に気をつけて」と占われる。
その後、中国本土で長距離バスに乗り遅れて野宿する羽目になり「占いが指していたのはこれか」と思っていたのだが、
乗り損ねたバスが大事故に遭ったというニュースを翌朝に知り、リンには予知能力があると考え彼女の元へ舞い戻る。
それから助手という名目で(荷物持ちや暴漢からの護衛などの雑用もやりつつ)彼女を付きっ切りで2年間調査して、
彼女の占いが95%という非常に高い的中率を誇っていると結論を出した。
その結果を原稿にして「ULTIMATE DIVINER(直訳すると『究極の予言者』)」という名で本として出版。彼女と共に一躍時の人となった。
そしてリンとも結婚。かつては息子の将来を憂いて泣いていた母もこの時ばかりは喜びのあまり泣いていたそうだ。


自分のクルーザーを買えるぐらいまで稼いだ頃、後の共同経営者となるフロイと出会う。
彼の誘いでリンの占いを用いた投資信託を始め、占い師時代とは比べ物にならないほどの更なる成功を手にするようになった。
やがて世間からも「神の目を持つ投資家」と呼ばれ、経済誌の表紙を飾った事も何度かあったらしい。
しかしその頃から何故かリンには投資をやめようと言い出され、加えてFBIによる監視の目が付き纏うようになった。
そんなある朝、FBIのダラン率いる捜査員達が令状持参で家宅捜索にやって来て、
更に寝室のクローゼットからは見知らぬ銃と手袋が出てきたのだ。
何のことだか分らずにいるとダランからリンがフロイの別荘で撃たれたのだと聞き、捜査員の制止を振り切り病院へと車を飛ばす。
重傷を負い病院に収容されたリンに犯人の心当たりはあるか訊くが彼女からの答えは得られず、
そこへ追いついたダランにより殺人未遂容疑で逮捕されてしまう。
ありったけの金を積んで雇った弁護士で裁判に臨み勝利を確信したものの、何故か禁固40年の実刑判決を受けてしまった。


リンやフロイに会いたいし母にも今の事情を話さなければならないというのに、こんな所で時間だけがどんどん過ぎてしまう。
リンの頼みで来たと言うのならどうか自分を助けて欲しいと燈馬に願う。
トーマ…
お願いだからカフに会ってあげて
あの人を助けてあげて…

  • リン・ダービー

カフの妻。占い師。得意料理は肉団子のスープ。
元々は台湾で祖母から教わった占いで生計を立てていたが、そこへ占いの力を調べたいとやって来たカフの頼みで彼を助手として雇う。
カフの出版した本の影響で人気占い師となりセレブからこぞって占いの依頼を受けるようになった。
そして徐々に惹かれあいつつあったカフとも結婚する。


その後カフがフロイと始めた投資信託も成功し順風満帆にもかかわらず、「こんな事いつまでも続くはずない」と投資をやめようと言い出す。
だが「もう少しだけ」と継続を強く推すカフを止められず、代わりに彼を説得してもらおうとフロイの別荘へ行くが、そこで何者かに撃たれ重傷を負う。
幸いにも弾は急所を外れたようだが「犯人の顔を見たか?」というカフの質問にも「わからない」と答えている。
ダランによればどうやら犯人は覆面を被っていたらしい。


ハイスクール時代の燈馬と知り合いだったため、
医者に繋いでもらった電話で息も絶え絶えながら燈馬にカフを助けてもらうよう頼む。




君達は何を買えば儲かるか占ってくれればいいだけだ!
オレは親父達を見返したいんだ
手を組もう!

  • フロイ・エドムント

大手不動産会社経営で知られるエドムント家の三男。
親族一門からは何も期待されておらず自らを「役職はゴクツブシ」と自虐する。
家族を見返したかった時にカフと出会い、彼に占いを用いた投資信託会社の起業を持ち掛けて大成功を収める。
そんな中でカフを止めようと相談しに来たリンを別荘で出迎えるが、彼女同様に何者かの銃撃により重傷を負う。




リンさんもフロイさんも犯人の顔を見てない
そしてお前の家に銃と覆面があった
カフ・ダービー お前を逮捕する

  • ダラン・アート

FBI捜査官。
FBIの権限によりカフが車で移動する度に常にヘリによる監視を行っていた。
後の裁判での証言によれば、カフ&フロイ投資信託の配当金の年率が10%を超えていた事から、経済犯罪を疑っていたようだ。
とは言えその辺りの理由はカフには伝わっていなかったようで、
「インサイダー取引をしているとどこかから根も葉もない噂でも吹き込まれたのだろう」と彼には思われていた。
事件の日はヘリでカフの車を見張っていた所、フロイの別荘からカフの車が出てきた直後にリンとフロイの銃撃の通報を受けたため、
彼の犯行を疑い即座に捜査令状を取り家宅捜索で銃と手袋を発見する。
しかし裁判ではカフの弁護士により「カフの計画的犯行なら別荘から自宅までの長い道のりで何故銃を捨てず自室に隠したのか。
ヘリからカフの車は見えてもその運転手が誰かまでは見えないのではないか。
経済犯罪の証拠が見つけられず焦っていたためにカフの仕業と早とちりしたのではないか。」と突き付けられ、言葉に詰まる。




  • ジェフ・マロウ

カフの秘書。
リンからはフロイの元へ行く事を口止めさせられていたが、カフに殴られて彼女の居場所を喋ってしまう。
裁判の時にも証言者として出廷。
偽証は罪になる事を検察から教えられた上でカフは自分とオフィスにいたためにアリバイがあると証言した。




  • 老人

謎の人物。
カフは燈馬からまず最初にこの老人の写真を見せられて見覚えがないか訊かれ、
話を終えてからも再度見せられて本当に見覚えがないか訊かれたものの、
カフには彼が誰なのか皆目見当もつかないらしい。
年末の大掃除手伝ってもらうばかりじゃ悪いからお礼するようにって
(手伝うのは決定ですか…)


私 言ったのよ 「そんな気を遣わなくていい」って
本来 僕が言ってこそのセリフですね

  • 燈馬想

この漫画の主人公兼ホームズ役。
本作にはサザエさん時空が流れている事情もあり水原家の年末の大掃除をほぼ毎年手伝っているのだが、
今年はそのお礼として可奈から2日後の水原家の夕食に招待されたようだ。
その日の夜にリンからの頼みを受けるのだが、当初は可奈との約束もあったため困惑していた。
しかしリンから決死の想いを聞き、即座に東アメリカの刑務所まで駆け付けた。
弁護士を呼べといきり立つカフの前に現れ「何も出来やしないから手錠くらい外してあげてもいいですよ」と職員に言うなど
カフにしてみればかなり挑発的な行動を取る。


  • 水原可奈

この漫画のヒロイン兼ワトソン役。
今回は燈馬が単独で謎を解く関係上、主に幕間のみの出番である。
夕食のメニューについて「何鍋がいい?」と鍋物という簡単な料理にさりげなく誘導しようとしてる魂胆を見抜かれ、
よりにもよって「手作り餃子」という手間のかかる料理を頼まれてしまった。
(『手作り』なので冷凍餃子を買ってきて焼くだけ、もアウトだろう)
だったらむしろ徹底的に手作りしてやる、とばかりに小麦粉も買ってきて皮から手作りする事にしたようだ。
ただし当てにしていた母からの手伝いは得られなかった。





【キーワード】

  • カフ&フロイ投資信託

投資家達から集めた金を元手に儲かりそうな株や不動産に投資して金を稼ぐ。
投資家への配当金の支払いを差し引いた分が儲けとなる。
専門的な実務関連はフロイが担当し、カフはリンと共に値上がりしそうな株を占いで見つけ出す役目を負う。
フロイの目論見は見事に当たり、値上がりする株をリンが次々と当てた事でその噂がまた次々と客と金を呼び込んだ。






あなたはいつも都合のいい解釈をする
長い時間 自分の間違いを受け入れてこなかったんだ

…まだ…大丈夫だ…まだやり直す時間はあるさ…
リンにもフロイにも謝って…一からやり直すんだ
へへ…間違いに気付いてよかった
みんなに謝らないと…またリンの肉団子スープを食べるんだ…

  • カフ・ダービー

そもそもリンの占いは本当に当たるのか。
もし的中率95%にカフの嘘が含まれてなかったとしても、それは本当に占いが当たっているか、統計の取り方が間違っているという事でしかない。
例えば「悪い事が起きる」という占いがあるとしてその客観的な的中率を調べるならば、
何日以内に起きれば当たりなのか、「悪い」という基準は何か、普段はどれくらい起こらない事なのか…などを考慮しなければならない。
ではハイスクールを中退したために正しい統計のデータの取り方を学んでいなかったであろうカフに、それが出来ていただろうか。
その答えを如実に指し示すのが、リンと初めて会った時の占いである。
彼は「帰り道に気を付けて」と占われたが、あの占いが指していたのは本当にバス事故だったのだろうか。
当初こそバスに乗り遅れた事を指していると思っていたカフが、
バス事故というもっとそれらしい物を知った事でそちらを指していたのだと都合よく解釈しただけなのではないだろうか。
彼が九死に一生を得たのは事実だが、それはリンの占いが的中したかどうかとは関係ない。
リンの占いを何千回と見てきた彼は、もちろん彼女の占いが外れた瞬間も何度も見てきたはずである。
しかし彼は自身の目が曇り、「リンの占いは実はそこまで当たるものでもない」という事を長年受け入れられずにいたのだ。
とは言え、占いその物が主観性の強い分野であるため、いくら占いを信じようと、
「妻の占いがよく当たる」と主張しようと、それに関する本を出版しようと何の問題もなかった。
(当たると聞いて金を払ってまで占ってもらった人たちからすれば避難轟々ではあろうが)
真の問題はその先にあったのだ。
カフ&フロイ投資信託の占いを利用した資産運用も多くは外れたはずで、
本来ならば資金はどんどん減ってあっという間に底をつくはずだった。
だがその状況を皮肉にもリンが救っていた。
彼女自身にカリスマ性があったため、数少ない的中の瞬間が訪れる度に噂が広がって次々とお金が持ち込まれ、
それがそのまま投資家への配当に充てられていたのだ。
やがて会社は何の投資実績もないまま、儲かると言う噂だけが独り歩きして資金を呼び、
そのお金を投資家への配当金にするだけのシステムへと変貌していた。
さて、これを世間一般で何と呼ぶか。「ポンジ・スキーム」いわゆる「ネズミ講」である。
これは資金の調達が途切れれば一瞬で崩壊する違法なシステムとも作中で言われているが、
当然のように会社は破綻して、カフは巨額の詐欺事件の主犯として起訴されたのだ。


それでも金融破綻に至るまでに何とか投資信託をやめさせようとしていた者たちもいた。
それが、カラクリが分からずともネズミ講に陥っている事に気付いたダランと、
そもそも何が起きているかが分からずとも今の状態はきっと良くないはずだと感じていたリンだったのだ。
だが自分の判断が間違っていたと認められずリンの説得に耳を貸さないまま、
カフは破綻まで突き進んでしまい禁固40年の有罪判決を言い渡されたのだ。
彼が服役していたのはリンとフロイの銃撃事件とは何の関係もない。
有能な弁護士の手により彼は銃撃事件については無罪を勝ち取っていたのだ。
しかし詐欺を犯して有罪判決を受けたという失敗が認められなかった彼は記憶が混同して、
誰かの陰謀により殺害未遂容疑で不当に有罪判決を受けたのだと思い込み続けてきたのだ。


なお今回の話はカフ視点でしか語られていないため、フロイが実情をどれほど把握していたかは不明。
だが「実務は自分がやる」と言っていた以上、投資信託がネズミ講と化していた事に気付いていなかったとは考えづらい。
もし気付いていた上で放置していたとしたら最終的にはカフと同様の刑を受けていた可能性が高いだろうし、
そうであれば例えリンから頼まれた所でカフを説得することはなかっただろう。


さて、それではリンとフロイを撃ったのは誰なのか。
犯人は今も捕まっていないらしいが、それについて燈馬は「恐らくこうだったのだろう」と自身の推理を明かす。
カフは病院でリンに「撃った奴の顔を見たか?」と訊いたが答えが得られず、そこへ犯人が覆面を被っていた事をダランから教えられた。
しかしこの会話の流れはおかしい。
彼はリンに「撃ったのは誰だ?」と訊けば良かったはずなのに、覆面の存在をダランから教えられる前から、
彼女には犯人の顔が見えていなかった可能性がある事をまるで知っていたかのような前提でリンに質問している。
これが意味するものは一つしかない。


リンを撃った真犯人、それもカフだったのだ。
彼はリンとフロイの浮気を疑って別荘で覆面を被って2人に発砲。
逃走後に覆面と銃と手袋を自宅に隠し、裁判ではジェフにアリバイを偽証させたのだ。
だがリンは浮気などしていなかった。
ジェフがカフに喋ってしまったように、カフに投資をやめさせるようフロイを説得しに行っていただけだったのだ。
彼は自分の思い違いで妻を殺しかけた事実を受け止めきれないばかりに、
自分の記憶すらも書き換えてしまっていたのだ。
勿論これは燈馬の推測なので証拠はないし、銃の類を自宅に隠した理由も不明である。
裁判で無罪判決が出たのもそこが取り沙汰されたからである。
燈馬も覆面に関する証言の矛盾からカフが犯人と推理しただけで、彼の行動の理由についてはノータッチである。
ただその場にいる職員たちの表情から見るに、証拠こそなくとも彼が2人を撃ったのはもはや自明の解だったようだ。


謎を燈馬に明かされて全てを思い出したカフは虚ろな目に乾いた笑いを浮かべながらも
「まだやり直す時間はあるさ…間違いに気付いてよかった…みんなに謝らないと…」と呟き続け、
燈馬はそれを見遣りながら面会室を後にした。
それでリンさんの容態は?
亡くなった…先ほど息を引き取ったそうだ…


彼女の最期の願いを叶えてあげられなかった…
仕方がないさ カフはいつもああやって失敗から逃げてきた
いくらやり直したいと言っても手遅れだよ
時間(とき)が経ちすぎた

  • 老人

その正体は現在のカフ・ダービー
彼は自分の失敗を何一つ受け入れられなかったまま、現在の自分をも正しく認識できなくなっていた。
一連の事件が起きたのは何十年も昔なのにもかかわらず、彼はまだ自分が逮捕された直後の若いままのつもりであり、
写真で見せられた年老いた現在の自分を知らない別人だと本気で思い込んでいた。
彼はいわば小説などで見られる「信頼できない語り手」だったのである。


本作が文章で描写される小説ならば老人=カフという可能性に至る読者は多いだろう。
この記事も文章で書かれている事もあり、閲覧者の中にも薄々真相に気付いた人は少なくないと思われる。
しかし漫画という媒体である本作ではカフ自身の認知が歪んでる事を示すためか、
解決編のラストまでは彼を若々しい姿で描いているため、真相が明らかになった時の衝撃がその分大きい。


ただし燈馬の「何も出来やしないし手錠を外してもいい」や「僕の見ている風景はあなたと違うかもしれない」などの言葉、
燈馬に電話してきた時に何故か影になっていて見えずにいたリンの顔、
警察から逃げながら車を走らせるカフが、リンの病院を調べるようどこかにかけている電話、*1
など、問題編のそこかしこにもヒントはちゃんと散らばっている。




君はよくやってくれた
リンさんもわかってくれるさ
ただ彼女の占いでも読み切れなかったな
大事にすべきその一瞬がいつだったのか…

  • リン・ダービー

カフの話の中の彼女は若く美しかった。
カフは初めて彼女と会って占われた時の事を「背中に電気が走って彼女からは不思議な力を感じた」と述べているが、
要するにこの時すでに彼はリンに惚れていたのだろう。(まぁ、この時はその場限りの関係と思っていただろうが)
それ程かつての彼女は若く美しかったのだ。
だがそれも昔の話。今の彼女はカフと変わらず年老いた老婆となっていた。


とうの昔に銃撃の傷が癒えた彼女もまた、詐欺事件の事実やそれが既に何十年も昔の話である事を何度もカフに説明してきた。
だが彼にはその事実を一度も受け入れてもらえずにいたのだ。
本来ならば、勝手に妻の浮気を疑い殺しかけてきた夫など見捨ててしまっても良かったはずである。
それでも彼女は何十年もの間、彼を見捨てることはなかった。


自分の死期が近いと感じたリンは最後の手段として、
カフの事を知らない第三者に彼の話を聞いてもらい、そしてその話の矛盾のみから彼の罪を暴いてもらおうという方法に出る。
彼女が最も信頼できる人物としてその役目に選んだのが燈馬だったのだ。
そして彼への電話にはまさに彼女がカフを見捨てなかった理由が集約されていた。リンはカフを助けたかったのだ。


だが燈馬がカフの半生を聞きその主張を論破し、そして彼に罪を認めさせたその時には、
もう既に彼女は老衰でこの世を去ってしまっていた。
生涯愛した夫が自らの過ちを認めて罪を償う意思を示すその瞬間を見る事は、遂に叶わなかったのである。




  • ダラン・アート

数十年の時が経った今、彼もまた髪が真っ白になるほど老いていた。
それでもリンの頼みにより、燈馬をカフと面会させる仲介役を引き受けてくれた。
カフの母も、フロイも、そして今し方リンも亡くなった中で、
彼はただ一人これからも、過ちを認めたがらないカフと付き合い続けていくのだろう。
ピンポーン


あ 来た!
父さん出てくれる?

  • 燈馬想

可奈との約束の日の夜、燈馬は水原家の玄関前にいた。
飛行機は大雪で飛ばないかもしれないとダランに心配されていたものの、どうやら無事に日本へと戻って来れたようだ。
だが顔が影になっておりその表情は読めず、それ故どこか不穏な雰囲気を感じさせる。
玄関から漏れ聞こえるであろう水原家の談話を聞きながら、雪の中で彼は何を思ったのだろうか。







【余談】

本作の同時収録作「バルキアの特使」を掻い摘んで説明すると
「悪質な前大統領に踊らされた末に始めた内戦をようやく終わらせた架空国家バルキアを舞台に、
亡命中に他国で逮捕されてしまった前大統領を自分たちの国で裁かせてもらうために
バルキア人たちが世界から失った信用を取り戻そうと奮闘する」という内容である。
また作中、とあるバルキア人の青年は自身の不用意な行動が原因で父親を命の危険に晒してしまうが、
謝る息子に対して父は「間違えたと分かったならお前は次に進める」と諭している。


つまりこの第41巻において2つの話は「自分たちの間違いを認め一歩先へと進むバルキア」と
「自分の間違いを認められず先へ進めない(心の時が止まってしまった)まま取り返しがつかないところまで来てしまったカフ」という対比になっているのだ。
この漫画は基本的に同じ単行本に入っている同時収録作同士に関係がある事はほとんどないのだが、
後期のエピソードにはこのように何らかの形でテーマが裏で繋がっているというケースが時おり見られる。





以上……証明終了です。

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*1 流し読みしていると気付きにくいがよく見るとコードがつながっている。つまりこれは携帯ではなく自動車電話。某女性芸人が持っていたショルダーフォンより更に古い時代の物である。

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