獄門島

ページ名:獄門島

登録日:2016/03/20 (日) 22:45:23
更新日:2026/04/04 Sat 23:01:03NEW!
所要時間:約 10 分で読めます



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鶯の 身をさかさまに 初音かな (宝井其角)


むざんやな 冑の下の きりぎりす (松尾芭蕉)


一つ家に 遊女も寝たり 萩と月 (松尾芭蕉)




『獄門島』は、横溝正史の長編推理小説で、「金田一耕助シリーズ」の一つ。
横溝作品の中でも、とりわけ評価の高い一作。


多くの国内ミステリーランキングで1位を獲得しているなど、数ある日本の推理小説の中でも最高峰に位置する作品の一つ。
作者自身もこれが高評価なことに妥当であると感想を述べたり、自選のランキングでも上位だったりと会心の出来だった模様。



数多くメディア化されており、2012年には関智一主演で舞台化もされている。




以下、ネタバレ要素を含みます




【あらすじ】


終戦から1年。
金田一耕助は、瀬戸内海に浮かぶ獄門島へと船で向かっていた。
マラリアで死んだ戦友・鬼頭千万太の死を千万太の故郷と家族に知らせるためであった。


金田一は、千万太がしきりにつぶやいていた言葉が気に掛かっていた。
「俺が生きて帰らなければ、3人の妹たちが殺される……」


獄門島は封建的な因習の残る孤島で、島の網元である鬼頭家は本家の「本鬼頭」と分家の「分鬼頭」に分かれ長年対立しており、千万太は本鬼頭(本家)の人間であった。
千万太の妹花子・雪枝・月代の3人と会った金田一だったが、その3人はいずれも外見は美しいが、兄の死を歯牙にもかけない異様な娘たちであった。
ちょうど同じころ、戦争に供出されていた千光寺の吊り鐘が島に無事に戻り、千万太のいとこで本鬼頭(分家)の一の戦地での無事の朗報ももたらされていた。


そんな中、千万太の通夜の席で花子の姿が見えなくなる。
捜索を始めた矢先、寺の梅の古木に帯で逆さ吊りにされた花子の死体が発見される。
残る2人の姉妹も危ないことを悟った金田一だったが、よそ者ゆえに容疑者として疑われ、駐在所の牢に入れられてしまい……




【登場人物】


ややこしいので、最初に系譜を示しておく。



※編集者自身が作成



金田一耕助
私立探偵。じっちゃん。
死んだ戦友の頼みによって獄門島にやってきた。
明晰な頭脳の持ち主だが、その外見はまるで風来坊のようでとてもそうは見えない。
今回はその風貌が仇になってしまう。



本鬼頭

■鬼頭千万太
金田一の戦友の一人。
本鬼頭家当主・与三松の息子。
無事帰還することにこだわり続けていたが、その願いも空しく、マラリアと栄養失調により復員船の中で死亡する。
死に際に金田一に「自分の代わりに獄門島に行ってくれ」と遺言を残す。



■鬼頭花子
与三松の三女。年齢は16歳。*1
千万太の腹違いの妹の一人。
姿は美しいが、知能が遅れているのか、まるで年端もゆかぬ幼子のようにふるまう。
発狂した父をからかって遊び、兄の死にはまるで興味を示さない。


最初の犠牲者で、千万太の葬儀の晩に千光寺の庭で足を帯で縛られ、梅の古木から逆さまにぶら下げられた状態で死んでいるのが発見される。
この死にざまは嘉右衛門の書いた俳句屏風に記された「鶯の 身をさかさまに 初音かな」に見立てられていた。



■鬼頭雪枝
与三松の次女。年齢は17歳。
千万太の腹違いの妹の一人。
姿は美しいが、知能が遅れているのか(ry


二番目の犠牲者で、金田一が座敷牢に入れられていた間に、首を絞められて吊り鐘の中に押し込まれた状態で発見される。
着物の裾が吊り鐘の間から出ていたことで発見されたが、その少し前に見回った時には裾が出ていなかったことから、鐘の中に押し込められたのはそれ以降であると考えられた。
また、吊り鐘は"てこ"の力を使えば一人でも動かすことは可能であるが、それでも大変な力仕事になることが予想された。
この死にざまは嘉右衛門の書いた俳句屏風に記された「むざんやな 冑の下の きりぎりす」に見立てられていた。



■鬼頭月代
与三松の長女。年齢は18歳。
千万太の腹違いの妹の一人。
姿は美しいが(ry


妹たちが殺された後、白拍子姿となり母から伝授されたという祈祷で犯人を呪い殺すといって祈祷所にこもっており、医者の村瀬幸庵らが番をしていた。
しかし、それもむなしく三番目の犠牲者となり、祈祷所内で首を絞めて殺されており、一面には萩の花が蒔かれていた。
この死にざまは嘉右衛門の書いた俳句屏風に記された「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」に見立てられていた。




■鬼頭嘉右衛門
本鬼頭家先代当主。故人。
島の経済を盛り立てた人間で、島の人間からは「太閤さん」と呼ばれていた。
戦中に病で倒れ、死去した。
生前からずっと本鬼頭家の行く末を案じ続けていた。
遊びに関しては豪勢に大盤振る舞い……俗に言う「お大尽気質」だったようで、特に大の芝居好きだったという。



■鬼頭与三松
本鬼頭家現当主。嘉右衛門の息子で、千万太と三姉妹の父。
千万太の母親である正妻の死後、元役者のお小夜を妾にし、そのことで父・嘉右衛門と激しく対立していた。
お小夜が死んだ後、精神病を患い発狂。
徘徊したり暴れたりを繰り返したため、現在は本鬼頭の座敷牢にいる。



■お小夜
与三松の妾で三姉妹の母親。故人。
役者として島に興業にやってきた際に与三松に見初められ、後添いとなった。
嘉右衛門と激しく争うなど気の強い性格だった。
また、以前から加持祈祷を行っており、島で支持者を増やしていたが、寺を攻撃するようなことを言いふらしたり、あまりにも大げさにな言動を繰り返したりしたため、徐々に人が寄り付かなくなって孤立、精神を患い死去した。



■鬼頭一
与三松の死んだ弟の息子で、千万太のいとこ。本鬼頭分家の当主。
千万太同様戦地へ赴き、未だ帰ってきていないが、彼の戦友から「近々帰ってくる」と知らされた。
名前の読みは「はじめ」ではなく「ひとし」。



■鬼頭早苗
一の妹。
仕事もできるしっかり者の娘。
ろくな人間が残っていない現在の本鬼頭を切り盛りしているのは彼女である。



■お勝
嘉右衛門の妾。
気はいいが知恵が働かず、仕事はできない。



■竹蔵
本鬼頭で潮つくり(潮の具合を見て旗を振る役で、漁師の纏め役)を任されているベテラン漁師。
実直な性格で、和尚を始め本鬼頭の人々からの信頼も厚い。
よそ者の金田一に親切にしてくれる数少ない島民の一人。



分鬼頭

■鬼頭儀兵衛
分鬼頭当主。
島では嘉右衛門が太閤(豊臣秀吉)と呼ばれているのに対し、しばしば「家康」に例えられる。
本鬼頭家先代当主・嘉右衛門のことは仕事ぶりには一目置いていたが、趣味や道楽などの所謂「遊び」には着いていけず、ウマは合わなかった。


なお、後にジュヴナイルの『夜光怪人』で再登場*2し、隣の龍神島の管理をやっていると説明されていた。


■鬼頭志保
儀兵衛の妻。美人だが苛烈な性格。
かつて本鬼頭・分鬼頭と勢力を三分していた巴屋(四、五年前に潰れたらしい)の娘。
嘉右衛門とは過去に因縁があり、嘉右衛門をはじめ、本鬼頭を忌み嫌っている。
そのため、竹蔵を引き抜こうとしたり、鵜飼(後述)を使って三姉妹を篭絡したりと、あの手この手で本鬼頭を潰しにかかっている。




その他の島民

■了然
金田一が世話になっている千光寺の和尚。
生前の嘉右衛門と特に仲が良かった人間の一人。
どこかつかみ所の無いような、独特の雰囲気を持つ。
花子が死んだときに「きちがいじゃがしかたがない」という意味深な言葉を残す。



■荒木真喜平
獄門島村長。
生前の嘉右衛門と特に仲が良かった人間の一人。
いつもしかめ面をしている。
生前のお小夜とは仲が悪かった。



■村瀬幸庵
村医者。
生前の嘉右衛門と特に仲が良かった人間の一人。
雪枝が殺された時期に、片腕を骨折している。
飲んだくれで、よく酒に酔っている。
酒に酔いつぶれて寝込んでしまった隙に月代を殺されてしまった。



■鵜飼章三
分鬼頭の居候。鬼頭志保がどこからか連れてきた。
美青年で、志保は彼を使って三姉妹をたらしこむことで、本鬼頭の家を破綻させようと企んでいる。



■清水巡査
島の駐在所の巡査。
自分を差し置いて捜査に首を突っ込む金田一を怪しみ、磯川警部の非常に紛らわしい言葉も相まって、彼を抑留してしまう。
その間に第二の殺人が起きてしまい、島にやってきた磯川警部の説明で誤解を解いた。


後に鬼頭儀兵衛共々『夜光怪人』で再登場し、海賊が根城にしている龍神島への案内をした。



■清公
島の床屋の親方。
元々は島の人間ではなく、日本国中歩いて獄門島に居ついたらしい。
情報通で、金田一に色々と島の事情や人間関係などを説明してくれる。
生前の嘉右衛門に可愛がられ、いつもお供を仰せつかっていたらしい。



■復員兵風の男
島内でたびたび姿を目撃されている謎の男。
花子が殺害された時にも現場に居合わせていたことが確認されている。
警察の山狩りで追い詰められて警察と銃撃戦となり崖から転落して死亡。
死因は銃弾によるものではなく、頭を強打したためであった。


その正体は近隣の島を荒らしまわり、指名手配されていた海賊の一味。
事件とも島の人間とも何の関係も無かった。
しかし、警察が彼を犯人と見たことと、早苗や金田一はこの男を早苗の兄の一だと思い込んでしまったことが遠因となって事件の捜査が大幅に遅れ、その隙に月代が殺されてしまった。






以下、物語の核心に迫るネタバレ注意!

































「了然和尚さん。あなたを縛りに来ました。お世話になったのにこんなことになって残念です。」


「それは何の咎で・・・?」


「花ちゃんと海賊を殺したのはあなたでしたね。」


「それだけ?雪枝や月代を殺したのはわしではないのかな。」


「違います。」


「花ちゃんを殺したのはあなたですが、雪枝ちゃんを殺したのは村長の荒木真喜平さんだし、月代ちゃんを殺したのは医者の村瀬幸庵さんです。」



■了然
■荒木真喜平
■村瀬幸庵


殺人事件の犯人達。
この殺人事件は“被害者が三人姉妹”“それぞれの殺人が同じ俳句屏風に見立てられている”と、さも一人の犯人による一連した殺人事件のように思わせる風があったが、
実は三件の事件は三件とも犯人が違う上に互いに共犯関係にもない、いうなればそれぞれが独立した殺人事件だったのである。
今回の事件はアリバイや状況的に三件すべてを行える者が存在せず、それが事件の捜査を困難なものにしていたが、三件個々に考えれば、いずれも行える人物が存在したのである。


ちなみに了然は海賊に花子の殺害現場を見られてしまっており、その口封じのために追い詰められた海賊を闇夜に紛れて撲殺したのであった。
また、花子が死んだときに了然が残した「きちがいじゃがしかたがない」の一言は、金田一は「気違い」すなわち与三松のことを指していると当初は思ったが、
実際は、見立てに使う俳句は春の句でも犯行は秋になったことを指した「季違い」という俳句用語であった。


しかし、なぜこのような恐ろしい事件が引き起こされたのか。
それはある人物による差し金であった。




■鬼頭嘉右衛門


今は亡き本鬼頭の先代当主。一連の事件の首謀者で、真犯人ともいえる人物。
生前、彼は本鬼頭家の行く末を案じ続けていた。
もし千万太が戦死すれば、与三松の娘のあの三姉妹が後を継ぐことになってしまい、三姉妹の誰が跡を継いでも本鬼頭の家は潰れてしまう。
本鬼頭のためには、仮に千万太が死んだ際に後を継ぐのは一であるのが一番良い。
しかし、そのためにはやはり三姉妹の存在が邪魔になるため、もし千万太が戦死した際には三姉妹を何とかしなければならないと考え、そのための計画を練っていたのであった。


しかし、嘉右衛門自身は病に侵され、既に余命幾ばくもない。


そこで、嘉右衛門は了然・真喜平・幸庵の三人を死の床に呼び出し、この殺人計画を話し、実行に移すように誓わせ(担当する事件を割り振り、それぞれに見立てに使う俳句を記した色紙を渡した)もしこれを守らなかったならば七生までも祟ってみせるとまで言い放ったのである。
突然のことに混乱する二人をよそに了然が話を承諾、他の二人にも計画の実行を誓わせる。
帰り道、なぜあんな頼みを引き受けたのかと二人は訝るが、他ならぬ了然もこの約束を守る気は無かった。
にもかかわらず約束を交わしたのは、老い先短い嘉右衛門が安心してあの世に行けるようにと考えたから、そして殺人に必要な寺の鐘は軍に接収され、とっくの昔に鋳潰されてしまっていると考えていたからである。*3
鐘が無い以上、少なくとも「むざんやな 冑の下の きりぎりす」は実行に移せず、この句を担当することを決められていた真喜平は誓いを果たしたくても果たせない。
三人が一人ずつを殺すという誓いなのだから、一人が誓いを果たせないのなら他の二人にも誓いを守る義務はなくなる。
これなら自分たちが誓いを破った事にはならないし嘉右衛門も許してくれるだろうと笑う了然の言葉に、二人も納得し安堵する。


しかし何ということか、幸か不幸か、吊り鐘は鋳潰されること無く島に帰ってきてしまった
さらに同時にもたらされた「千万太の死」と「一の生存」の知らせ。
全ての条件が揃ってしまったのだ。


この事態に三人は恐怖した。嘉右衛門の想いを、祟りを、怨讐を恐れた。
そして、嘉右衛門との誓いを実行に移すことを決めたのであった。




金田一は聞いた。もし千万太と一が共に戦死した場合、嘉右衛門はどうするつもりだったのか、と。
了然はこう答えた。もし、二人が死んだ際には、その時は諦めてこの計画は実行に移さず、三姉妹が少しでもまともな婿を取ってくれることを願い、その婿養子に全てを託すつもりだったと。


金田一は全てが明らかになった後、前夜に村長の真喜平が島から逃亡したこと、医者の幸庵が「ある知らせ」を聞いて、発狂したことを話す。


「和尚さん。これは言いたくないことです。しかし、隠してもいずれあなたの耳に入ります。」
「さっき神戸で復員詐欺の男がつかまりました。その男は、戦友の家に“死んだ”と告げた際にはお礼があまりもらえず、“生きている”と告げるとお礼を奮発してくれるということに目をつけ、戦死した戦友も生きているということにして知らせていたようです。」
「き、金田一さん、そ、それじゃ一さんは・・・?」
「そうです。一さんは戦死したのだそうです。


つまり、三人は殺人を犯す必要など無かったのである。
不本意な殺人にまで及び、祟りを怖れた先に待っていたのは詐欺師の嘘を真に受けていただけ。
皮肉にも七生まで祟られる運命がまた別の形で確定してしまった瞬間であった。


不意に了然さんは立ち上がった。その目は大きく見開かれ、頬に血管が走った、かと思うと顔色がギタギタと紅潮してきた。
「南無……嘉右衛門どの……」
了然さんはそうつぶやくと、朽木を倒すようにひっくり返った。
それが了然さんの最期であった。


嘉右衛門の物騒な計画さえ無ければ、せめて「彼なら本当に祟りを起こしかねない」と本気で恐れさせる程酔狂な人物では無かったなら、三人とも殺人などせず穏やかでいられただろう、ある意味では第五〜七の被害者とも言える。


救いようのない展開だったためか、初映画化の1949年版(片岡千恵蔵主演)では「一は復員済みで、家出しただけ。(最後に事件を聞いて戻ってくる)」となっていた。
(嘉右衛門も終盤まで生きており、自分の計画が見破られた*4ことを知った上で死ぬ。)


■鬼頭花子
■鬼頭雪枝
■鬼頭月代
家督を相続させたくないからという理由で殺された哀れな娘達。
たしかに知能が遅れている節はあったが、殺されなければならないようなことは何もしていない。
そもそも、兄の千万太がそうならないように必死で生きのびようとしていたほどの相手なのだから。


■荒木真喜平
島から逃げ出したらしいが、その後の消息は一切不明。
島民たちはどこかで人知れず自殺したのではないかと取り沙汰している。



■村瀬幸庵
真実を知り、気が狂ってしまったらしい。
和尚曰く「いたって気の小さい男」だったらしく、思い詰めた挙句にこの真実は、彼には残酷過ぎたのだろう。




■鵜飼章三
三姉妹が死んだことで用済みとなり、事件後分鬼頭の家から追い出された。




■鬼頭早苗
結局、本鬼頭の家は彼女が継ぐこととなった。
実は、彼女は作中で金田一耕助が惚れた数少ない女性の一人で、金田一は残された早苗に「一緒に東京に行かないか」と思いを伝えるが、早苗は本鬼頭を継ぐ意志を固めていたため断られ、その想いが実ることはなかった。


なお、鬼頭儀兵衛の項にあるように『夜光怪人』で獄門島が再登場したが、この時彼女については一切触れられていないのでその後本鬼頭がどうなったのかは不明である。


最終的に別れる形になったとはいえ、長いシリーズの中で金田一がガチで惚れて実質的なプロポーズ(?)まで行った数少ない女性である事、
読み方こそ違えど兄の名前が「一」である事などから、いわゆる「ばっちゃん」候補として名前が挙がる事も少なくない。



余談

トリックに「きちがい」という放送禁止用語と文字通り精神異常者の男が大きく関わっているせいで、映像化の際の大きな障壁となっている。
今でこそきちがいという言葉を発したアニメがカルト的な人気を誇る時代だが、70年代の特撮作品なんかでは割と普通にきちがいきちがい言ってて時代を感じる他、今でもご年配の方が「きちがいみたいに叫ぶ」という言葉を差別的な意図などなしに平然と言う*5など、時代の変遷により大きくそのニュアンスを変えた言葉である。


そのため、平成期以降の映像作品ではトリック自体が改変され最大の要素が薄くなってしまっており、この点はたびたび文句を言われる。ただし放送禁止用語になったのにはちゃんと文化的な理由があるので、あんまりとやかく言うべき問題ではないだろう。
しかし「きちがい」の話が有名になっている一方で、どもり(吃音)をはじめとした「当時は許されていたが現在は差別用語とみなされる言葉」については底本から変えられていることがかなり多い
本の末尾に改編した旨を、あるいは差別用語だがそのまま掲載した旨を書いているため、こだわる人はちゃんと確認した方がいい。
原文にこだわる人は、図書館の蔵書になっている黄ばんで手垢に汚れたくらいの汚い本が一番いいかもしれない。


余談だが本作同様、差別表現が問題となり後年の映像作品では内容が変更された作品には松本清張の「砂の器」がある。


後世登場した「金田一少年の事件簿」シリーズのお決まりの展開である「実在しそうにない不吉すぎる名前の土地」「犯人が捕まらずに『死に逃げ』する展開」のはしりともいえる作品。つまりあの展開、本家のリスペクトなのである。
しかし金田一少年のような「殺意に満ちても仕方がないレベルの怨嗟」ではなく「妄執のあまり頭のねじが外れて良識がとんでしまった人」というものが下地になっていることが多いため、トリックやプロットこそ凝ってはいるが殺害方法自体は割と拍子抜けする淡白なものが多い。
日本には金田一少年と名探偵コナンという2つの推理漫画の金字塔があるが*6、この2つの哲学の差としてコナン側には「どんな理由があろうと殺人者の気持ちなんて分かりたくねーよ」というものがある。
金田一耕助シリーズはこの人気作品2つの要素がうまく両立している作品で、さらにこの手の漫画にはない「犯人は一人とは限らない」という変則トリックや、些細な事態の積み重ねによって起きていく凝ったプロットがやみつきになる。
そして事件を解決して感謝こそされるが金田一耕助自身は「自分がもっと早く気づいていればこんなに人は死なずに済んだ」と自責の念を語るなど、現在の価値観で読んでも割とすんなり話の筋が呑み込めるので非常に面白い。



追記・修正お願いします。


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  • 金田一少年の方で戦後最大の難事件として獄門島の名前が出てたな -- 名無しさん (2016-03-20 23:16:25)
  • 今の時代じゃ「キ○ガイ」が放送コードに引っ掛かるのがネックな作品。昔の映画やドラマじゃその部分がカットされたりP音入ってたりする…。この事件において、割と重要な部分だけにひたすら残念 -- 名無しさん (2016-03-20 23:47:04)
  • 「一」は少年の方の名前の由来なんだろうか -- 名無しさん (2016-03-21 00:06:11)
  • オチが嫌な事件ってレベルじゃない -- 名無しさん (2016-03-21 00:18:08)
  • ゲームディギン思い出した -- 名無しさん (2016-03-22 02:29:59)
  • せめて一が戻ってくるまで待っていればなぁ‥祟りを恐れて即決行したのが残念だ -- 名無しさん (2016-03-22 10:09:31)
  • ↑6 露西亜人形だね。あの事件も実行犯とは別に黒幕の当主がいて一人勝ちで病死したってオチだったし、伏線だったのだろうか -- 名無しさん (2016-03-22 14:54:02)
  • 獄門塾という名前で孫の方も同じような事件を -- 名無しさん (2016-03-22 17:36:06)
  • 鐘の下に押し込められてた子、どの映像化のだったか忘れたけど鐘の下から出した後もう一回その鐘が倒れて首チョンパされてた気がする -- 名無しさん (2016-03-23 16:21:27)
  • 長女が月代、花子は三女だった気がするがどうだろうか? -- 名無しさん (2016-04-27 23:12:25)
  • 殺人が無駄になって犯人が発狂したところは天草財宝伝説も。あちらも告白を振れるくらい逞しく育ってほしいものだな(笑) -- 名無しさん (2016-04-27 23:48:43)
  • 『そして誰もいなくなった』の「○ガー」は「ソルジャー」に代用されてるけど、この作品の「キチ○イ」はどうしたらいいんだろう? -- 名無しさん (2016-10-19 16:38:16)
  • 一人の老人が主謀した理不尽な殺人事件 -- 名無しさん (2016-11-19 21:57:48)
  • 長谷川博己版できちがい普通に言ってたね。別に今でもやろうと思えばできるんだな -- 名無しさん (2016-11-21 23:42:01)
  • バッチャン候補って他に誰がいたっけ? -- 名無しさん (2017-01-11 10:29:08)
  • そろそろ手毬歌や八墓村の項目(映画じゃなくて原作)の項目もたてて欲しい -- 名無しさん (2017-02-22 14:39:51)
  • 孫以上に救いようが無いんだな・・・じっちゃんの事件簿って -- 名無しさん (2017-05-07 18:18:56)
  • ↑じっちゃんの事件は救いようがない事件多いからねぇ…孫も初期はそれを意識して救いようがない話の方向性だけどね -- 名無しさん (2017-06-27 12:58:39)
  • 今やってる「歌島リゾート殺人事件」でも、見立て殺人の例として挙げられてたな。 -- 名無しさん (2018-04-16 12:03:45)
  • ↑16 復員詐欺の男は嘉右衛門が連れてきたとしか思えない。結局本当の動機は家を守るためでなく、息子を廃人にして自分の最後を無残なものと化したきっかけを作ったお小夜に対する復讐心だと思うから -- 名無しさん (2018-04-16 12:59:01)
  • 漫画しか知らんが和尚が一番ヤバい奴だと思う。上記のきちがいのシーンで金田一に指摘された時「間違ってやんのwww バロスwww」って人殺した直後に大笑いしてたし。海賊の男殺したのだって結局保身のために関係ない人間口封じしただけだからなあ。仕方なくやった、ようにしているが結構楽しんでたんじゃないかと思う -- 名無しさん (2018-04-16 13:09:56)
  • き○○い・・・のセリフについては今では放送コードと原作準拠云々で話題になるが、よく考えたら罪のない女の子殺しておいて季語がずれてることを気にするという、あまりにも酷すぎる発言 -- 名無しさん (2018-04-16 16:23:03)
  • パロディ作品では「まちがいじゃがしかたがない」というききちがいが存在する -- 名無しさん (2019-02-19 21:44:11)
  • 三姉妹は三つ子です… -- 名無しさん (2020-01-30 05:04:39)
  • 違反コメントを削除しました -- 名無しさん (2020-01-30 09:37:06)
  • 真犯人が何も命じなくても三姉妹が色々利用されて家乗っ取られて碌な目にあわなさそうなのがまた辛い。こりゃ兄貴も絶対帰らなきゃって思うはずだ。 -- 名無しさん (2020-05-22 00:19:16)
  • ↑18 孫の方の事件に落ちてきた釣り鐘に首チョンパなシーンがあるがその映像化作品が元ネタかな -- 名無しさん (2020-05-22 06:17:33)
  • 確か、三人がそれぞれ別の被害者を殺し、それが一つの連続殺人のようになる、って、ポワロの小説であったよね。 -- 名無しさん (2020-05-22 10:10:01)
  • ↑横溝正史はアガサクリスティを敬愛してるからな -- 名無しさん (2020-06-04 22:10:31)
  • 三姉妹かわいそう… -- 名無しさん (2021-02-18 23:54:31)
  • コナンと金田一、二大推理漫画の作者が金田一耕助の傑作に挙げてる作品 -- 名無しさん (2021-04-25 20:17:52)
  • 『名探偵夢水清志郎事件ノート』では「きが違うが、仕方がない」と現代子供向けでも違和感ない程度の改変でオマージュされてたな -- 名無しさん (2022-02-02 05:42:26)
  • 長谷川版では犯人達の前時代的な動機に金田一が完全に腹を立てて、復員兵という事も相まって和尚を追い詰める時には今まで溜め込んできたモノを吐き出す様に「お前たちの計画はご破算だったのだ!」と罵倒する結末になっていたね。 -- 名無しさん (2022-02-08 22:58:15)
  • なんで見立て殺人をしなければならないのかに説得力がある、この感覚は外国の人が読んだらどんな反応するのか気になる -- 名無しさん (2022-02-08 23:39:43)
  • 人殺しになってことを開き直るというか諦観していた和尚が意味がなかったと知らされた瞬間、泰然とした得体のしれない人物から罪の意識に苦しむ人間に戻って卒倒するのが、恐ろしく物悲しいというか哀れですごく印象に残ってる -- 名無しさん (2022-05-11 11:47:41)
  • 金田一少年シリーズ(少年か39歳か)で、これ絡みの事件やらないかな。とはいっても、鬼頭の問題は解決してるから無理かな……。 -- 名無しさん (2022-05-11 13:21:24)
  • 千万太が死んで一が生き残った場合、一と三姉妹の誰かを結婚させて家を継がせる、じゃ駄目だったのかな。イトコなんだし。 -- 名無しさん (2022-05-26 01:02:59)
  • 三姉妹が恐らく知的障がい者なのは遺伝なのかな?両親も精神患っているし精神障がい者が生まれやすい家系だったのかも -- 名無しさん (2022-07-18 19:23:16)

#comment

*1 作中で「十八をかしらに三人年子」と語られている
*2 金田一に無反応だが、この作品は由利麟太郎が登場する話の探偵を金田一耕助に変更し、この際のすり合わせが完全でないため。つまり本来は初対面の人への態度。
*3 歴史の授業で習った読者も多いと思うが、当時は軍が民間から鍋や釜、銅像など金属製品を接収していた。
*4 一への相続という目的はもう済ませているが、この映画では嘉右衛門に「鬼頭儀兵衛を犯人に仕立てる」というもう一つの目的があって、こっちは失敗したことになる。
*5 塩川正十郎が地上波で「きちがいの顔」と言ってしまい番組を降板させられた事件があったが、あれは差別的な意図があったのではなく単なる年代的な問題の失言という側面も大きい。アニヲタの世代でも『めくらめっぽう』『どもり』『どかた』『おしのように黙る』『片手落ち』『オカマ』『肌色』などといった言葉がいつの間にか改められているが、その先鞭となった言葉のひとつがきちがいだったのだ。
*6 ちょうどブームになった時期も90年代後半と非常に近く、よく並び称された。

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