化身(ブラック・ジャック)

ページ名:化身

登録日:20??/??/?? (曜日) ??:??:??
更新日:2026/03/06 Fri 15:30:00NEW!
所要時間:約 ? 分で読めます



タグ一覧
ブラックジャック ブラック・ジャック 手塚治虫 後味の悪いオチ 漫画 フィクション 脳移植


「化身」とは、『ブラック・ジャック』第31話のエピソードである。
コミックス6巻、文庫17巻収録。






ネバダ州の野を愛馬・プロミネンス号と駆ける少年トミー。彼らを監視する二人の男たちがいた。


「いいか あの馬を殺せ だがトミーに絶対に事故死だと思わせるのだ」


ガラガラヘビに咬まれそうなところをプロミネンスに助けられたトミーは、お礼としてプロミネンスの好きな雌馬に会わせる為2時間ほど寄り道する。
時間になってプロミネンスを呼びに行くトミーだが、そこにトレーラーが走ってきて、トミーとプロミネンスは轢かれてしまう。


トミーの父・ベンソン氏は、トミーを助けるためブラック・ジャックに依頼するが、異常な脳波からブラック・ジャックはいくら自分でも無理だと断ろうとする。
一つだけ治す方法があるとすれば、それはトミーの脳を取り換えること


「もし他人の脳ととりかえられたとしても トミーくんはそのときからトミーくんでなくなるのだ」


「つまりとりかえた他人そのものになってしまうのだ!」


ベンソン氏はトミーが生きてさえいればどうなろうとかまわないと言い張り、ブラック・ジャックは50万ドルの手術料と文句を言わないという誓約書で承諾する。
そして代わりの脳を探しに行ったブラック・ジャックは、脚が折れて走れなくなったプロミネンスを1000ドルで購入して病院に運んだ。


1年後、健康な体で戻ってきたトミーにベンソン氏は感激するが、ブラック・ジャックとの約束のため誰の脳なのかはわからない。
モノも言えず文字も読めなくなってしまい、ナイフやフォークの使い方も忘れ、好きだった肉にも手を付けない。


「笑ったのは確かにトミーの顔だ だが頭の中はなんなのだ?」


まるで馬と心が通じるように天才的な馬のならし方を発揮するトミーは、特にある雌馬を好いている様子だった。
その馬と走るときに、あのトレーラーを発見するトミー。
トミーはトレーラーに近づき、その周囲で休んでいた牧場の使用人を突然蹴り飛ばす。
使用人は蹴り飛ばした後首を振るトミーの仕草に、見覚えがあった。


「プ プロミネンス!」

ベンソン氏にトミーの中身はプロミネンスだと報告に行く使用人だが、プロミネンスのみならずトミーまで撥ねたこともあり、一喝するベンソン氏。
その後、ブラック・ジャックが日本に帰る間際だということで、今日こそトミーの脳の素性を明かしてもらおうと電話をかける。


「相手は人間じゃない 馬です」


「なに? 馬…………なんだって??」


「馬の脳ですよ トミーくんとプロミネンス号は合体したのだ」


一心同体ともいえるほど心が通じ合っていたトミーとプロミネンス、あんなに美しく結びついた人と動物はないと誰でも言う。
二人とも満足だろうと信じているとのたまうブラック・ジャックを悪魔だと罵ったベンソン氏は、散弾銃を持ってトミーの前に現れる・


馬の癖に人間の服など、とトミーを裸にしたベンソン氏は、ことの真相を語り始める。
命より大事に育ててきた息子に、牧場の全てを委ねるつもりだったこと。
しかしトミーがプロミネンスに夢中になるばかりだったのが、トミーが奪われたようで許せなかったこと。
プロミネンスさえいなくなれば、トミーが真剣に牧場の後継ぎを考えてくれると思い、プロミネンスを使用人に殺させようとしたこと。


激しい怒りと共にトミー、いやプロミネンスを射殺しようと銃を向けたベンソン氏だが、引き金には力が篭らない。


「ウ…ウウ……ト…トミー……………おれには…………撃てん…………」


ベンソン氏が落とした散弾銃をプロミネンスは拾い、逆にベンソン氏に突きつけるが、そこにプロミネンスが恋した雌馬が現れる。
プロミネンスはしばらく雌馬と見つめ合った後、銃を捨て、その背中に乗って駆けだしていった。


――それからトミーとあのメス馬の姿を見たものは誰もいなかった おそらく………………

エピソードについて

数多のエピソードの中で架空の症例や治療法が繰り広げられることも多い『ブラック・ジャック』では、脳の移植も度々行われている。
今回は発表順ではその手術を取り扱う第1回となっているのだが、それだけにとどまらず「人間以外の動物の脳を人間に移植する」というさらにひねりの入った展開となっている。
以上のことから本作における架空治療を代表するエピソードとして、おそらく最も知名度が高いものだろう。


作者も本エピソード(および脳の移植手術)のフィクション性を、作中の医療描写への批判に対する反論として用いている節が見受けられ、
以降のエピソードで脳の移植手術が行われる際に本エピソードを話題に出す場面が見受けられる(「からだが石に…」「絵が死んでいる!」など)。
別作品『ミッドナイト』でブラック・ジャックがゲスト出演して脳の移植手術を行う際には本エピソードには言及してないが「これはマンガですからな」と断りを入れている場面がある。


劇中の医療描写については以上の通りだが、それとは別に実質的に患者(トミー)を見殺しにしたブラック・ジャックの態度への批判意見も見られる。
初期のブラック・ジャックは無免許医療は別として、社会正義に反する場合に患者を見殺しにするような選択をすることが稀にあるのだが
(例えば第1話「医者はどこだ!」では患者がどうしようもない不良かつ自業自得で重体となっている上、他人を殺害してその臓器移植で生きながらえようとするため実質見殺しにした)
劇中のトミーは後継ぎとしての自覚がないというベンソン氏の言い分以外に特に問題のある描写がなく、むしろ馬と心を通わせる好青年といった扱いである。
このためトミー自身を治療することを一切講じないブラック・ジャックの態度には問題がある・後味が悪いと見る読者もおり、
劇中の症例や治療法を考察した書籍『ブラック・ジャック・ザ・カルテ』でも、治療の内容とは別に今回の内容を「あんまりだ!」と批判的に述べている。


フォローするなら、劇中でも述べている通り脳へのダメージが大きすぎて本当にブラック・ジャックでも治療できない例だった可能性があること(これはどこまで真実かわからないが)、
トミーとして復活したプロミネンスの生活は徐々に人間に馴染んでおり(クライマックスでは完全にベンソン氏の言葉を理解しており、散弾銃の使い方も理解していると思われる)時が経てばそのまま人間として生活することも可能と思われること、
トミーとプロミネンスが種族を越えた強い絆で結ばれているという認識が劇中で一般的なものと示唆されていること、
ブラック・ジャックはベンソン氏の罵倒に対し「私は悪魔かもしれない だがあなたはその悪魔と誓約書をとりかわしたのですぜ」とこの非道について自覚的であること、
事件の発端や脳の移植手術の承認などはベンソン氏のエゴによるものであり、そのベンソン氏に対する因果応報となっていることなど、
ブラック・ジャックがとった行いが(医者としてはともかく)物語上の流れとして、そこまで異常なものとならないような配慮も見られる。
とはいえ「トミー本人は結局治療を受けられず死亡した」という事実はフォローのしようがないのだが。


なお、冒頭で述べたように単行本では6巻収録だが、差し替えにより本エピソードを引き合いに出した「からだが石に…」が4巻に収録されたため、時系列と収録順が逆転してしまっている。
収録順が様々に入れ替わっている文庫版では17巻(最終巻)に収録されたため、文庫版で本作に触れた人は、エピソードがないのに何度も引き合いに出される「馬の脳を移植した話」を見て不思議に思った人も多いのではないだろうか。
(文庫版自体、かなりの年数を開けて飛び飛びで刊行しており、16巻から17巻の間も3年以上開いている)



追記・修正は馬の脳と入れ替えてからお願いします。

[#include(name=テンプレ2)]

この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600)

[#include(name=テンプレ3)]


#comment()

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧