かまいたち(怪奇大作戦)

ページ名:かまいたち_怪奇大作戦_

登録日:2014/12/25 (木) 17:26:06
更新日:2022/11/12 Sat 11:02:12
所要時間:約 4 分で読めます



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かまいたち トラウマ 加藤修 怪奇大作戦 怪奇大作戦エピソード項目 通り魔 理由の無い殺人



真面目で、大人しくて、イタチのようなおどおどした目をしたこの男が、どうして……


怪奇大作戦』の第16話。
現代でも時折大きな事件として取り上げられる「理由の分からない殺人事件」とその犯人の心の闇をテーマとした作品。
脚本:上原正三 監督:長野卓 特殊技術:高野宏一


【ストーリー】

終電も過ぎた深夜、一人の女性が足早に歩いていた。暗い夜道の中、何者かの気配を感じた女性はさらに足を速める。



出典:怪奇大作戦/円谷プロ/第3話「かまいたち」/1968年12月29日放送


女性が橋に差し掛かった時、突然風が吹き街灯が割れ、女性の体はあっという間にバラバラになってしまった。


翌日、現場を調べていた町田警部は状況から死体遺棄と考えたが、牧は現場での突発的な殺人と考える。しかし、現場は民家や工場があり誰も悲鳴も聞いていないことから牧の意見は聞き入れられなかった。
牧は現場に落ちていた白い粉を見つけ、野村に採取させる。



出典:同上


そして、野次馬の中にこちらをじっと見つめる青年を見つけ、目を留める。その青年は、口元は隠れていたが目はかすかに笑っていたのだ。


現場に落ちていた粉を調べると、それは粉おしろいだった。牧は女性がおしろいを道に落とし、拾い集めたのではないか。つまり、やはり女性は現場にいてそこで殺されたのではないかと考えた。
しかし、町田警部は犯人が拾い集めた可能性もあるとしてやはり取り合わない。


その夜、同じ場所で同じ事件が発生する。しかも、今度は警察官2名の目の前だった。
牧は少しでも手ががりを得るため、付近の住人名簿とさおりに現場に現れた人間を片っ端から写真に撮るように頼む。


的矢所長は警官がゴーッという音を聞いていた事、また街灯が割れていたこと、切り口の鋭さからかまいたちのような現象ではないかと推理。三沢も、かまいたちの現象を応用したものではないかと続く。


さおりの撮った写真を検証していると、最初の事件の時に現場にいた青年が写っていた。牧は写真を引き伸ばすと、その目に何か異常なものを感じるのだった。


その青年は近くの工場で働く小野松夫(演:加藤修)という男だった。休憩時間に他の社員の輪から離れて一人でいる青年で、社長にどのような人物か尋ねると、おとなしくて無口、仕事は真面目。最近通信教育を受けているという。社長は良い若者と語り、評判も悪くないようだった。
だが、夜になって松夫が食事に出かけた隙に家捜しをした牧は事件の日の日記が空白になっているのを発見する。


休日、松夫は友人たちと待ち合わせてとある店に入る。友人と楽しそうに談笑する姿に変わった所は何も無い。
しかし、店で飼っているアロワナに餌が与えられた時、松夫の様子が変わる。突然立ち上がり、視線は餌として丸呑みにされる金魚に釘付けになった。友人たちは驚いて声をかけたが、松夫はそのままどこかへ歩いていってしまったのだった。


その夜、松夫を見張っていた牧にかまいたち式真空発生装置が完成したとの連絡が入る。やはり、かまいたちを使った殺人は可能だった。
だが、同じ時に第三の事件が発生し今度は幸いにも寸前で助かったが、最早一刻の猶予も無いと考えた的矢所長により、さおりを使った囮作戦を決断する。


現場を歩くさおりを、物陰から見ている男がいた。男が箱にパイプのような物がつながった機械を取り出しスイッチを入れると何とさおりはバラバラになってしまう。
現場を張り込んでいた牧らによって取り押さえられた男のマスクを剥ぎ取ると、そこにいたのはやはり松夫だった。
野村はさおりがバラバラにされたために怒りを爆発させたが、実際に歩いていたのはリモコン操作の吊り人形であり、さおりは無事だった。


やがて、松夫の取調べが始まった。町田警部が厳しく問い詰める。


三人の殺しを考えついた理由は何だ!!


他人に恨みでもあるのか!?


社会に不満でもあるのか!?


何でそう平気な顔をしていられるんだ!!


しかし、松夫は何も答えない。イタチのようにおどおどした目をしながら…



出典:同上


現代でも発生する、特に大きな理由の無い殺人事件がテーマになっているが、これが放送されたのが60年代である事に驚かされる。
こういった短絡的・突発的な殺人事件はかなりの頻度でニュースを騒がせるようになっており、まさに時代を先取りしたかのような内容になっている。
本作は、殺人の方法こそ近未来的な機械が使われているが、大した理由も無く女性をバラバラにしておきながら、何を聞かれても答えない犯人の不気味さが際立っている。
松夫の対する評判の「おとなしくて無口で、真面目な人間」という言葉は、何か事件が起こった時にニュースなどでほぼ確実に聞かれる内容で、当時もこういった犯罪はゼロではなかっただろうがそれでもサスペンスの中の存在だったものが今や珍しくなくなっていると思うと恐ろしい。


作中では、松夫は一切何も喋らないし他で語られる事もないが、松夫は集団就職で田舎から出てきた若者という設定である。
当時、高度成長期にあった日本において彼らは「金の卵」と呼ばれ、聞こえのいい文句に誘われて上京してきた。
しかし、実際の労働環境はかなり厳しいものだったようで慣れない都会での生活に疲れ、孤独感や喪失感を覚える者も多かったらしく、そういった物が事件につながったのかも知れない。
集団就職を扱った作品には他に「言葉のない部屋」がある。


脚本の上原氏によると、この脚本はカミュの「異邦人」にインスパイアされているという。
また、松夫の慣れない環境での疎外感は、上原氏が沖縄から上京してきた時に感じた壁でもあるらしい。


余談だが、この回で松夫の友人役を務めていた一人が後にアニメ版『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で月光刑事役を務めた「劇団椿組」の主宰外波山文明氏だった。


なお、松夫役の加藤修氏と同姓同名の声優が存在するが、別人である。


リメイク作品『怪奇大作戦 ミステリー・ファイル』ではこの回が第4話「深淵を覗く者」としてリメイクされた。


追記・修正お願いします。




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  • これ特殊撮影とはいえ一瞬で体がバラバラになるシーンは怖いものがある。 -- 名無しさん (2014-12-25 17:43:18)
  • 理由のない殺人もだけどその犯人をほぼ直感で見つけて深入りして共感までしかかっちゃう牧さんも見所よね -- 名無しさん (2014-12-25 17:48:27)
  • 実際にこういう理由のない殺人で犯人が現場を見に来るってあったりするの? -- 名無しさん (2014-12-25 18:53:08)
  • なんかの小説で『太陽がまぶしかった』という理由で人を殺したというやつがいたな・・・。 -- 名無しさん (2014-12-25 19:01:15)
  • ↑2 犯人が捕まる前に現場近くの住人として普通にTVのインタビューに答えてたのは知ってる。 -- 名無しさん (2014-12-25 19:06:18)
  • 雨が降って機嫌が悪くなっただけで野良犬の首をはねた奴がいたな…… -- 名無しさん (2014-12-25 19:14:29)
  • 神回。 -- 名無しさん (2014-12-25 19:22:26)
  • かまいたちの夜のファンブックで、この回が紹介されてた。 -- 名無しさん (2014-12-25 19:26:37)
  • ↑5 異邦人の主人公は割と普通の人だった。むしろ一人称で正直な性格だから共感できる。 -- 名無しさん (2014-12-25 19:29:26)
  • 「光る通り魔」もそうだけど、牧って周囲から疎外されてる孤独な犯人像に感情移入する傾向が強いよね。 -- 名無しさん (2014-12-25 23:28:04)
  • リブート作品『怪奇大作戦 ミステリーファイル』ではこの話のリメイク『深淵を覗く者』が制作された。犯人の心理を調べるうちに犯人に共感してしまう牧(演:上川隆也)の心の闇をより大きく取り上げた内容になっていた -- 名無しさん (2014-12-26 07:11:19)
  • ↑確か黒幕がもうひとりいる事をラストに示唆していたな。しかも殺人鬼はかまいたちどころか何度も甦る不死鳥(死んでも自分と同じ人間が生まれ続ける)になっていた。 -- 名無しさん (2014-12-26 10:44:48)
  • ↑人の心の闇は人の心が存在してる限り無くなることはないからな。と、どっかのラスボスみたいなことを言ってみる。そしてそれに対する主人公たちの応答も決まってて彼らはそれを信じて今日も戦ってるのさ。 -- 名無しさん (2014-12-26 14:19:39)
  • ↑なるほど。あと上川牧さんは視聴者に「お前か?」って言ってたんだろうな・・・・・ -- 名無しさん (2014-12-26 14:34:17)
  • ↑最後の問いかけは何だったのか… 面白がってみている視聴者も犯人になり得る可能性が充分あるということなのだろうか -- 名無しさん (2014-12-26 15:33:13)
  • 闇夜を引き裂く怪し~い悲鳴、誰だ 誰だ 誰?だ 悪魔が今夜もさ?わ?ぐぅの?さあぁ うっ! -- 名無しさん (2014-12-26 15:40:48)
  • 妙にアロワナが印象的な回だった -- 名無しさん (2014-12-26 15:57:33)
  • こういう作品見ると以前読んだ有栖川有栖の「絶叫城殺人事件」を思い出す。心の闇というのは難解で理解し難いものだけど、それに甘えて理解する努力をしなかったり、安易な言い訳や逃げ場にするのもまた功罪であるって話なんだが。あと、「X-FILE」の「グロテスク」って話でモルダーも牧と似た状態になってたりする。 -- 名無しさん (2014-12-26 16:23:47)
  • 刑事は鬱になりやすいらしい。単純に激務ってのもあるんだろうけど、犯罪者の取り調べや捜査で長い間接触してると価値観が揺らぐ、要するに犯罪者側に意識が引っ張られそうになるらしい。「深淵を覗く者」もそうだけど、他者にしろ自分にしろ“心の闇”に向かい合う・理解するってのは失敗のリスクの方が大きい。 -- 名無しさん (2014-12-26 19:09:19)
  • 「誰であれ、怪物と闘う者は自らも怪物にならぬよう気をつけるべきだろう。長い間奈落を覗き込んでると、奈落もまたこちらを覗き込んでるものだ」byニーチェ -- 名無しさん (2014-12-26 19:36:15)
  • そういや有名な殺人ピエロことジョン・ゲイシーに関わった弁護士志望の人も、結局事件から数年後にその闇に取り込まれたのか自殺したんだよな…… -- 名無しさん (2014-12-27 04:19:42)
  • この話を決して他人事、絵空事、夢物語、幻、架空、空想、TVの作り話と思ってはいけない。凶器のほうは未来的なものだがこいつのような殺人鬼は現実にいるし、誰でもなれる可能性がある。 -- 名無しさん (2014-12-28 20:21:51)
  • ↑じゃけんそういう邪心というかまあそういう類のもんは心の中の封印の扉に封印するように心掛けるようにしないとな。 -- 名無しさん (2014-12-28 21:31:45)
  • ↑3 ジェイソン・モスはゲイシー以外にもシリアルキラーと関わり続けたのが奈落に堕ちた原因だな。一番追い詰めたのはゲイシーに他ならないけど -- 名無しさん (2017-02-16 20:22:43)
  • 工場勤務の青年が簡単に作れるって怖い装置だよな -- 名無しさん (2017-03-10 22:33:22)

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