aklib_story_苦難揺籃_7-3_変節の刃_戦闘前

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苦難揺籃_7-3_変節の刃_戦闘前

何人かのオペレーターから話を聞く限り、ロスモンティスの外の世界を感じる方法は尋常ではないようだ。 一方、龍門から去ろうとするチェンの行く手を阻んだのは、彼女を止めようとするホシグマだった。


p.m.7:00 黄昏時/龍門アップタウン

[近衛局隊員] 極秘指名手配? チェン隊長を!?

[近衛局隊員] そんな馬鹿な……何かの間違いじゃないか?

[近衛局隊員] おい! 待て! 間違いじゃないのかって聞いてるんだ!

[近衛局隊員] クソッ! なんでチェン隊長が……一体何の冗談だ?

[近衛局隊員] チェン隊長を見つけて、本人に確かめないと!

[鼠王] ……ふむ、わかった。

[灰尾] ほかに何かご命令はありますか?

[鼠王] いいや。ワシの出した命令を、今まで通りしっかりやってくれればそれで良い。それが終わったら、しばらくは身を隠せ。

[灰尾] かしこまりました。

[鼠王] さあ、行くがいい。

[鼠王] ふう……

[鼠王] ——ふふ、あのウェイを出し抜くとはな。

[鼠王] タルラ、タルラよ……これがまことの運命というやつかの?

[鼠王] なぁ、坊(ぼん)よ。あの世にいるお主とて、こんな状況を見たくはないじゃろうな……

[鼠王] はぁ……龍門の栄華もこれまでか。

[鼠王] しかしフェイゼよ……用心するのじゃフェイゼ……命を無駄にするでないぞ!

p.m. 7:20 龍門 艦船停泊所 接舷エリア

[感染者の群れ] アァ……アアアアア! グゥッ、ウゥ……

[オペレーター] ったく、この数、冗談じゃないぞ……近衛局の奴らはまだか?

[オペレーター] 昨日はレユニオンで、今日はこいつら異常感染者かよ。街中で大型武器を使うわけにはいかないし——ったくいくら俺たちでも流石にそろそろもたないぞ?

[ロスモンティス] こんにちは。あれが今日の敵?

[オペレーター] ロスモンティス! ふぅ、助かったぜ。

[ロスモンティス] あれはアーツで変異した感染者……? 動きは止められないの?

[オペレーター] ああ。俺たちに許可されている装備は、ほとんどが都市防衛用だ。ワイヤーもファイバーネットも効果なし。陸戦用兵器でも使わないと無理だろうな。

[オペレーター] 防衛ラインのプレッシャーが激しくてな、仕方なく本艦に支援要請したんだ。来てくれたのがお前で助かったよ、これで何とかなりそうだな。

[オペレーター] 奴らは体内のオリジニウムで身体を強化してるから、こっちは砲撃ぐらいの火力で対抗するしかないぞ。それと……奴らの脳波が検出できない。

[オペレーター] 恐らくは……実のところ奴らはもう死んでるといったところだ。今は何者かにアーツで操られてるようだ。見た目通りの歩く屍状態だよ。酷い話だ。

[ロスモンティス] そんなことをする人には……代償を支払ってもらうよ。

[ロスモンティス] あっ、でもあなたたちの安全を優先しなきゃだね。

[ロスモンティス] ドクター、作戦を考えておいて。私が……あの人たちを止める。

[ドクター選択肢1] 君が戦うの?

[ロスモンティス] うん。

[ドクター選択肢1] でも君は——

[オペレーター] ドクター……この子が戦ってるところを見たことないんだな?

[ロスモンティス] ドクター、ちょっと下がって。

[オペレーター] 気をつけるんだな。もっと離れた方がいい。初めて見る光景になると思うぜ。

[ドクター選択肢1] 鉄の箱が、飛んでる!?

[ドクター選択肢2] ……?

[ドクター選択肢3] あの宙に浮いているのは、君の装備?

[ロスモンティス] それは私のだよ。

[ロスモンティス] 目標の分析データを教えて。

[オペレーター] わかった。情報伝達マニュアルの通りに……あー目標は、えーと、源石組織が異常活性化した大量の感染個体群?

[オペレーター] 特性・性質は……集団行動、凶暴性顕著、有効目標欠如、経路推測不可。大体こんなもんかな!

[ロスモンティス] ――わかった。任せて。

[ロスモンティス] それとケルシー先生からの伝言。ここの処理が終わったら、すぐにロドス本艦を龍門から離脱させるようにって。

[ホシグマ] こんばんは、隊長。

[チェン] ホシグマ? なぜお前がここにいる。怪我は大丈夫なのか?

[ホシグマ] ええ、これでも鬼ですから。あの程度のかすり傷、とっくに治りましたよ。

[チェン] そうか。すまないが私は今、急いで――

[チェン] いや……お前はここで私を待っていたのか?

[ホシグマ] そのバギー、例のレム・ビリトン製の最新モデルですか?

[ホシグマ] 「オフロード、悪路走行もお手の物。抜群の燃費にクリーンな排出ガスで環境への配慮にも死角なし! 極上の乗り心地であなたを新天地へ誘う!」でしたっけ?

[チェン] …………

[ホシグマ] ああ、一人で盛り上がってすみません。そこら中で広告を目にするもので、うっかりキャッチコピーを覚えてしまいました。

[ホシグマ] それにしても素晴らしいマシンですね。さほどオフロードに興味はありませんが、それでも一台買おうかと悩んだ時期もありました。

[チェン] わざわざそんな話をするために待っていたわけじゃあるまい?

[ホシグマ] ……そんなに急いで龍門を飛び出して、どちらに向かうおつもりですか?

[チェン] なぜ私がここから龍門を出るとわかった?

[ホシグマ] 隊長が内密に龍門から出る時はいつもここを通るじゃないですか。抜け道や秘密のルートを知ってるのは隊長だけじゃありませんよ。

[ホシグマ] ——近衛局から、指名手配が出されています。

[チェン] そんなものを信じるお前ではないだろう。

[ホシグマ] ええ、もちろんですとも。隊長がどんな方なのかは、小官が一番よくわかっていますから。

[チェン] ……龍門を出るには、ここしかなくてな。

[チェン] 誰にも見つからずにここまで来るには骨が折れたがな。近衛局の者たちが皆、お前と同じように話のわかる奴なら苦労はしなかったのだが……

[ホシグマ] 皆が小官と同じ考えならば、なおさら隊長がこの龍門を出ることは叶いませんね。

[チェン] ……何だと?

[チェン] それはどういう意味だ?

[ホシグマ] 小官も彼らと同じく、あなたに龍門を去って欲しくないのですよ。

[チェン] ホシグマ……まさか私を?

[チェン] お前まで私を止めようと言うのか、ホシグマ!

[ホシグマ] 隊長……今の私は龍門近衛局の督察であり、あなたの友人ですよ。止めるに決まっているでしょう。

[ホシグマ] 一人でヒーローごっこをさせるわけにはいかない。あなたを止める理由は、その一点だけです。

[チェン] お前は龍門人だろう、ホシグマ!

[チェン] ウェイの思い通りにさせておけば、より多くの犠牲が出るだけだ!

[ホシグマ] あなたのやり方でなら解決できると言うんですか?

[チェン] ……他に龍門を救うすべなどありはしない。

[チェン] お前を「鬼の姉御」と呼び慕っていた者たちを忘れたのか? 彼らはお前が、彼らの愛するこの龍門を守ってくれると信じている。彼らのためにも……そこを退け、ホシグマ!

[ホシグマ] ……はぁ。「鬼の姉御」ね……思い出させてくれたついでだ。昔のように遠慮なく言わせてもらおうか。

[ホシグマ] なぁチェン、奴らは本当に龍門を愛していたと思うか?

[チェン] 何を——

[ホシグマ] 私は古い人間さ。

[ホシグマ] 酒、漫画、映画、雨の降る街と、そこを傘をささずに急ぐ人々……私が好きなのは、バイク以外はそんな古臭いもんばかりだ。

[ホシグマ] 周りから見れば時代遅れなんだろうな。チェン、私たちは、時間の流れについていけるのか?

[ホシグマ] 私には無理だ。到底できない。早過ぎる時間の歩みに、私の大切なものたちはどれも粉々に踏み潰されてしまった。

[ホシグマ] 私の手に残ったのは、蓋が壊れたスキットル、角の折れた漫画本、血が染み着いた未使用のペアチケット、そんなもんくらいだ。だがそれを遺した連中の名前は皆、今でもはっきりと覚えている。

[ホシグマ] 嫌なんだ。周りの奴らが時間に連れて行かれてしまうのが。

[ホシグマ] 奴らが自分たちの居場所を守るために、犠牲を厭わず戦ったというのに、私は何をしている?

[ホシグマ] 皆一人ずつ、私の前で灰になっていった。私が自ら止めを刺すことさえあったさ。奴らの夢を、私がこの手で叩き壊したんだ。

[ホシグマ] 奴らは龍門を愛していたわけじゃない。行く場所がなかったんだ。そして最後に残った居場所まで、私が奪ってしまった。

[ホシグマ] だから、お前まで行かせてしまうわけにはいかないんだ、チェン。

[チェン] …………

[チェン] ファーの死も、龍門のために犠牲になった者たちも……お前は全てなかったことにするつもりなのか?

[ホシグマ] わかったような口振りは止してくれ。

[ホシグマ] 奴らとの付き合いはお前よりもずいぶんと長い。連中のことなら、お前なんかよりもずっとよくわかっている。

[チェン] ああ、もちろんそうだろう。だが、私には龍門を守る責任がある。誰に邪魔されようと、それだけは変わらない。

[ホシグマ] まだ自分が警司のつもりでいるのか? その責任は誰に与えられたものなんだ?

[チェン] 私自身だ。

[ホシグマ] ……それは自分で自分にそう言い聞かせているんじゃないのか?

[ホシグマ] お前一人で龍門を救えるのか? たった一人でレユニオンを根絶やしにすることができるのか? 思い上がりもほどほどにしろ!

[ホシグマ] 妙な話だ。これまではウェイ長官を理解し、その命令を実行するのはお前の役目だった。しかし今となっては、私の方がウェイ長官のことを理解している。

[ホシグマ] 長官の考えなら想像がつく。誰かが死ななければならないのなら、自分が犠牲になるつもりなんだろう。チェン家の血筋を考えれば、事後にお前が難癖をつけられることもない。

[チェン] どういう意味——

[ホシグマ] ウェイ長官は自分の命を捨ててでも、お前に生きてほしいんだ。

[チェン] あの男を美化し過ぎだ。

[ホシグマ] お前も彼を悪く捉え過ぎだ。

[チェン] 奴が死にたいというのなら勝手に死ねばいい。だがそれがいったい何の役に立つ? それで戦争は避けられるのか? 龍門が真っ先に攻撃目標から外れるのか?

[ホシグマ] 長官が死ねば、他国から龍門が糾弾されることはなくなるだろう。全ての責任は、彼の死と共に煙と消えるのだから。

[チェン] そううまく行くと思うか?

[ホシグマ] まあ、言うほど甘くはないだろうな。だから長官は、お前に近衛局を任せたいと思っているはずだ。

[ホシグマ] 近衛局局長の座はそう遠くない。そしていずれこの都市の主にも。……チェン、お前は彼の後継者になるんだ。

[ホシグマ] 龍門にまとわりつく数々の問題も、残留する害悪も……全てお前が一掃していくんだ。

[ホシグマ] 私はウェイ長官の志を理解しているつもりだ。彼はこの時をずっと心待ちにしていたんだ。あの眼、あのやり方、初めて会った時から少しも変わっていない。

[チェン] …………

[ホシグマ] 龍門にはお前が必要だ、今、お前に危険を冒して欲しくはない。

[チェン] 反吐が出そうだ。

[ホシグマ] たとえ彼の死に心が動かなくとも構わない。彼が死んだ後、お前は自らの手でこの龍門を変えられるようになる。

[チェン] 一つ教えてやろう、ホシグマ。私がこの龍門にいられない理由を。

[ホシグマ] 適当なことを言ってはぐらかすな。お前以上にこの龍門に相応しい者など——

[チェン] 私は、感染者だ。

[ホシグマ] ……何だと?

[ホシグマ] …………

[ホシグマ] いつから……?

[チェン] 3年前。

[ホシグマ] 私にすら黙っていたのか!?

[チェン] 私の意志ではない……

[ホシグマ] なぜ……言ってくれなかった?

[チェン] この事実を誰にも知られたくなかったのは、他でもないウェイだ。近衛局に感染者がいることなど許されない、だから私の感染は隠蔽された。

[チェン] ホシグマ、感染者の居場所など、この街にはない。この大地のどこにもな。

[チェン] ウェイの操り人形はもううんざりだ。これ以上、奴に従うつもりはない。

[ホシグマ] ……そうか。ようやくわかった。

[ホシグマ] お前がなぜ龍門を離れるべきではないか。その理由が今、はっきりとわかった。

[チェン] ……ホシグマ?

[ホシグマ] もしお前がここを離れて、チェルノボーグの中枢区画に向かえば、長官はお前を敵と見做すほかなくなる。それもただの敵ではない、感染者だ。龍門に仇なす感染者……

[ホシグマ] そうなれば、全龍門人がお前が感染者であることを知る。そして、レユニオンとの共謀すら疑われるだろう。

[ホシグマ] そうなれば二度と龍門に戻れなくなるぞ。覆水盆に返らず、だ。

[チェン] 構わない。

[ホシグマ] それはこちらのセリフだ。

[ホシグマ] 「お前が感染者だろうと、構わない。」

[ホシグマ] 私も、スワイヤーお嬢様も、ナインも、そして近衛局も、皆同じ考えだ。

[ホシグマ] ウェイ長官だってそう言うだろう。彼の願いはお前が龍門を変えることだ、ここから去ることではない。

[チェン] お前は、奴の感染者に対する所業を見ていないから言えるんだ。私はそれをまじまじと見せつけられた。

[チェン] それにナインなら、もうとっくに出て行ったぞ。あいつが近衛局を離れた理由も、感染者になったからだ。

[ホシグマ] ……そうか、ナインも。

[チェン] 思い返せば、私とナインは同じ任務で感染したのかもしれん。

[チェン] 近衛局を離れた後、ナインは私の諜報員となり、レユニオンに潜入した……しかし最後には、レユニオンのために龍門を捨てたんだ。

[チェン] この街の真実を、見抜いたからだ。

[ホシグマ] だがお前は龍門を裏切ってはいない。犯してもいない罪を、お前に背負わせるわけにはいかない。

[チェン] ホシグマ。一つ問おう……私があの中枢区画を目指す理由、それがお前にわかるか?

[ホシグマ] 悪いが謎解きは好きじゃない。はっきり言ってくれ。

[チェン] フッ……

[チェン] レユニオンのトップが誰か知っているか?

[ホシグマ] 名前までは知らない。

[チェン] タルラだ。

[チェン] ……スワイヤーから聞いていないのか?

[ホシグマ] 何をだ?

[チェン] タルラは私の姉だ。

[ホシグマ] ……ああ、なるほど……はぁ。そういうことか。

[ホシグマ] チェン、やはり今日はここを通す訳にはいかない。

[チェン] ……どうしてまだそんなことが言えるんだ? 私の家族など、たいした問題じゃないとでも!?

[ホシグマ] いや、だからこそ——

[ホシグマ] だからこそ、お前を行かせられないんだ。

[ホシグマ] 私がここで命を落とす羽目になろうと、お前だけは通さない。

[チェン] …………

[チェン] それはお前が決めてどうにかなるものではない、ホシグマ。

[ホシグマ] 私と、この般若にならできる。

[チェン] ――たとえ天災が立ちはだかろうとも、今日ばかりは大人しく引くつもりはない。ましてや盾の一枚、鬼の一匹など!

[ホシグマ] この盾を鍛えた職人は、流れ者の悪鬼たちに一家全員を殺された。その怒りは、天災よりもずっと恐ろしい。

[ホシグマ] そしてこの盾が吸った血の悲劇は……天災よりも遥かに残虐だ。

[ホシグマ] チェン、ウェイ長官が悪だと言うのなら、二人で殴り飛ばしに行くのもいい。

[ホシグマ] やりたいことがあるんなら、どんなことだろうと付き合う。私のクルビアハイパワー70VVを気に入ってただろう? バイクなどいくらでもくれてやる。

[ホシグマ] だから行くなチェン。私に手を出させないでくれ。この私の一生の願いだ。

[チェン] 手を出させるなだと? ウェイと同じような口を利くんじゃない。私を諭すような……その話し方をやめろ!

[チェン] ウェイが手を出そうが出すまいが私はもう……いや——

[チェン] 奴が兄弟と呼んだ男を売り、私の母を裏切り、この街をその罪深い手で闇に沈めたあの時に、私はもう決心していたんだ。

[ホシグマ] お前は長官のやってきたことのすべてが、自分に関係することだと考えているのかもしれないが、私はそうは思わない。

[チェン] 何だと……?

[ホシグマ] 彼が街のためにやってきたこと、そしてお前のためにやったこと。それらとお前がやるべきことには、何の関係もない。

[ホシグマ] 長官もそれは自覚している。彼は悪者になりたいわけでも、龍門の支配を望んでいるわけでもないんだ……

[ホシグマ] だからこそ、お前にその剣を預けたんだ。

[チェン] ……お前は何もわかっていない。

[ホシグマ] ――わかっていない? 何をだ?

[ホシグマ] 何度も、何度も……自分の居た場所を、家を、家族をこの手で始末してきた。

[ホシグマ] 常に血に塗れながら、最後まで戦った。立っている者が私一人になるまで。

[ホシグマ] それが正しいと信じたから。相手が間違っていると思ったから。

[ホシグマ] 私も時折自らに問いかける。自分に生きる価値はあるのか、と。

[ホシグマ] きっとそんなものは無いのだろう。だが結局生き延びてしまった。今はもう、自分のためだけに生きることなどできない。

[ホシグマ] 独りよがりで善悪を決め付け行動する……そんなのは人として最も愚かな行為だ。

[ホシグマ] 後悔の苦味は、いつまで経っても舌から消えはしないぞ。

[ホシグマ] 重い十字架を背負っているのは、自分だけだとか思っているんじゃないだろうな、チェンお嬢様?

[チェン] その呼び方をやめろ!

[ホシグマ] ……どうして私の気持ちを少しは理解しようとしてくれない?

[ホシグマ] これほど長く苦楽を共にしてきたというのに、腹を割って話せないのは何故なんだ?

[チェン] 私たちにはそれぞれ苦しい胸中がある。それはお互いさまだろう。それなのに……

[チェン] なぜ解ってくれないんだ? お前たちのことは誰一人として巻き込んでいないと言うのに……相手の気持ちを理解しようとしていないのはどちらだ!

[ホシグマ] ……無用な死を迎える者を、見過ぎたんだよ。

[ホシグマ] お前が何者であろうと別に構いはしない。だが、お前があの場所に向かおうとするのを見過ごすことはできない。

[ホシグマ] この先には行かせない。敵がすでに一線を越えている以上、お前が何をしようと現状は覆せない。ただ無駄死にするだけだ。

[ホシグマ] そんなことは誰も望んでいないんだよ。近衛局に、いや龍門にも、お前の死を望む者など、誰一人いない。

[チェン] ——その言葉には、感謝しておく。ホシグマ。

[チェン] だが私は、やはり行かなければならない。

[ホシグマ] 本気か?

[チェン] たとえお前を相手に剣を抜くことになろうと、恐れる私ではない。

[ホシグマ] これだけ言葉を、心を尽くしても、か? 一度自分の取った選択は鋼の杭で固定されて動かせないとでも思っているのか?

[ホシグマ] 前にも言ったはずだ、お前は自分の考えに固執し過ぎる癖がある。そして周りが見えなくなる。周りがどれだけお前のために努力しているのかも。

[ホシグマ] 意地の張り過ぎが、身を滅ぼすことになるのが何故わからない?

[チェン] フンッ……これ以上は不毛な堂々巡りだ。

[ホシグマ] 仕方ない。一度しこたま殴られないと、自分の執念が幼稚で無謀なただの妄執だと気付かないのだろう。昔の私と同じようにな。

[ホシグマ] それでもやるというのなら……2年前からどれほど成長したのか、見せてもらうとしようか、チェンお嬢様。

[チェン] その呼び方をやめろと言っただろう!

[ロスモンティス] EX-42、使用者ロスモンティス、許可を。

[PRTS] 生体コード遠隔照合を完了。使用者:ロドスエリートオペレーターロスモンティス。

[PRTS] アーツ遠隔操作型機EX-42、起動を承認。防衛戦限定での運用及び艦外への携行を許可。

[ロスモンティス] うん。じゃあ行ってくる。

[ロスモンティス] ロドス本艦の移動の件、クロージャに伝えて。

[オペレーター] ドクター、早く乗れ! いいから早く、もう見るな!

[オペレーター] あの子の戦闘中に飛び散る破片に当たっただけでも死ぬぞ。

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