aklib_story_快刀乱麻_5-3_名も無き義人_戦闘後

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快刀乱麻_5-3_名も無き義人_戦闘後

チェンとホシグマは迅速に動いたものの、一歩遅かった。 遺言をしゃべりながら、ファーは息を引き取った。


[レユニオン構成員] クソッ、敵はどこにいる!

[レユニオン構成員] アーツで攻撃するんだ! おい、誰か!?

[レユニオン構成員] に、逃げたのか! や、奴が来る! 誰か止めてくれ!

[レユニオン構成員] みんなどこへ行った!? どうして……。

[ホシグマ] 残っているのはお前だけだ。

[レユニオン構成員] ぐ、ぐうぅ……。

[レユニオン構成員] お、鬼だ……なんて奴だ……。

[ホシグマ] ……その程度で私を止める気か?

[レユニオン構成員] ちがっ、俺は…ま、待ってくれ……。

[ホシグマ] その程度で――この私を止められると思うのか!

[レユニオン構成員] 許して、許してくれ!

[ホシグマ] 貴様にはこの般若の錆になる資格すらない。

[レユニオン構成員] う、うわあああ!!

[近衛局員] マジかよ。俺たちまだ何にもしてないのに…。

[近衛局員] 一人で、しかも二分半で、レユニオンを全員片付けちまった。

[近衛局員] さすが悪鬼というべきか…。

[チェン] 五年前に奴に出会っていなかったことを喜べ。奴のあの戦いっぷりは私も久々に見た。

[チェン] 逃げ出したレユニオンの構成員たちは?

[近衛局員] 各小隊がそれぞれ捕縛しました。

[近衛局員] ……チェン隊長、ホシグマから合図です!

[チェン] よし倉庫の周辺はクリアになったな! メディック、私と来い!

[チェン] ホシグマ、いま尋問していた相手から何か情報は得られたか?

[ホシグマ] はい。倉庫の中に何か罠はないかと聞いていました。

[チェン] 確かに、もし内部に爆発物でも仕掛けられていたら――

[ホシグマ] その場合は、とっ捕まえたレユニオンを全員ここに放り込めばいいだけです。

[チェン] つまり?

[ホシグマ] 何もないはずです。ファーもレユニオンの待ち伏せを受けて逃げ込んだものかと。レユニオンは倉庫の付近で潜伏していただけのようですから。

[ホシグマ] チェン隊長、右の扉を引いてください、左は小官が。

[チェン] ……クソッ、この扉、堅くて動かないな。私が斬る。

[ホシグマ] いえ、ならば小官がこじ開けます。

[ホシグマ] (咆哮)!

[チェン] 開いた!

[チェン] XR02、現在地を教えろ! どこに居るXR02!

[チェン] !

[チェン] XR02!

[諜報員] チェン隊長…人が来る音がします…倉庫のゲートも……破られたみたい…です。新手のレユニオン……。自分の始末は…自分で……。

[チェン] 違う、それは私だ! 通信を切るな!

[諜報員] まさか…本当に来てくれたんですね…。よかった…俺は……一番奥です。

[チェン] その傷……それに目はどうした!?

[諜報員] うっかり…アーツを食らってしまって…。でも大丈夫です…ゴホッ…これを…受け取ってください。

[チェン] メディック、止血だ!

[諜報員] いえ…チェン隊長……必要ありません……自分でも…分かってます……。

[チェン] いいから黙っていろ!

[諜報員] 俺を…見れば…チェン隊長だって…助からないと…分かっている。もう…何も見えない…。動くのも億劫です…。ああ、痛ぇなぁ…。もういいんです…。疲れまし……た。

[諜報員] これを……チェン隊長……S249TA……F106。

[チェン] 49.場所は覚えた。

[諜報員] 詳細は紙に…。レユニオンが感染者集落に潜伏した後の情報…。これは他のリーダーにも伝達されず、一方通行で送られたもの…。何か特別な目的が…きっと…あるはず……。

[チェン] わかった。

[諜報員] ゴホッ…俺が…死ぬ思いで手に入れた…情報ですから…どうか…。まさか…こんな日が来るとは……。

[諜報員] 役に立てたと思ったら……こんな形になるなんて……。

[チェン] 我々も思ってもみなかった…。だがお前の努力で敵を止めるチャンスが生まれたことには変わらない。

[諜報員] ハハッ、ゴホッ……俺は…龍門を愛したことも…龍門に愛されたことも…ありません……。

[諜報員] ですが……そんな俺が……まさか龍門の為に…ここまでやるなんて……ね。ただの街のゴロツキ風情が…これだけできれば…十分ですよね……。

[チェン] 中水三傑(ちゅうすいさんけつ)と呼ばれたお前も、街のゴロツキと呼べるのか?

[諜報員] いや…あの鬼の姉御がいる限り…俺はいつまで経っても…ただのゴロツキでしか…ありません…。

[諜報員] ……。

[諜報員] チェン隊長…鬼の姉御は…元気でやってます…か? まだ…お役所勤めは…続いてますか…?

[チェン] ああ。奴とは相棒になって長い。

[諜報員] チェン隊長…あの人は……実直過ぎるところが…あります…。集会にいた…頃は…ゴホッゴホッ……目をつけられたところで誰もあの人には手を出せませんでしたが……。

[諜報員] ですが…龍門の大物たちには…流石に敵いません…。しっかり面倒を…見ていてやってください…。

[諜報員] あの人が……嫌な思いをしないように……頼みます……。龍門の…威張り腐った金持ちに…生まれのことで…差別されるなんてもってのほかです……!

[諜報員] それだけは……お願いします…。それだけは…。ゴホッ……。

[チェン] それは心配ない。ホシグマは強い、誰も手を出せないさ。

[諜報員] 二つしかない拳じゃあ…四方から来る敵は…相手に…できませんから…ね。

[チェン] 近衛局全部でヤツを支えるさ。

[諜報員] そうですか……。よかった……本当によかった……。鬼の姉御に……チェン隊長がついてれば…怖いものなしだ。

[諜報員] チェン隊長…まだいますか……?

[チェン] ああ。

[諜報員] 俺は…「いいヤツ」でしたか…?

[チェン] 数年前なら分からなかった。だが、今のお前は間違いなくそうだ。龍門が誇る素晴らしい市民の一人さ。

[諜報員] ハハハ…ゴホッ…ハハ……鉱石病の穀潰しに…「いいヤツ」になる資格なんて…あるんですか…?

[チェン] 龍門には鉱石病を忌避する連中は確かに居る……気になるなら、直接龍門に聞いてみたらどうだ。

[諜報員] 冗談を……俺が聞いたら…龍門は答えてくれるんですか…?

[チェン] フッ、では私が代わりに答えよう。

[チェン] 「鉱石病は関係ない」

[チェン] 君はこれまでも、これからも、永遠に我らが龍門の民だ。

[諜報員] ありがとう…チェン隊長…ありがとう……。

[諜報員] チェン隊長…鬼の姉御に…言伝を頼んでいいですか…。

[チェン] 自分で伝えるといい。

[諜報員] どういう意味ですか? まさか……。

[諜報員] ……姉御?

[ホシグマ] ああ。ここにいる。

[諜報員] ハハハ…酷いな…チェン隊長、早く言ってくださいよ……。

[チェン] こいつがずっと黙っていたんでな。

[諜報員] 姉御……俺はうまく…やりましたかね…?

[ホシグマ] まだまだだ。生きて帰らなければ、その言葉はかけられないぞ。

[諜報員] すまねぇ…ハハ……姉御に肩を貸してもらうなんて…ここまでやってきた甲斐があったってもんだ……。

[ホシグマ] どこか行きたいところはあるか? お前は自分の生まれを頑なに言わなかったが……。

[諜報員] ほかでもねぇ龍門さね……。実を言うと……他の街になんて行ったこともねぇんすよ。できれば…俺の骨は…例の場所に……埋めてもらえますかい……。

[ホシグマ] あの集会所か? だが、もう荒れ果ててしまっている。綺麗にしてやりたいところだが……。

[諜報員] いいんすよ……。俺は…他の奴らと……一緒なら…。

[ホシグマ] わかった。

[諜報員] 姉御……俺たちは……みんなあんたの武勇伝の噂を聞いてビビってましたけど……本当は……応援してたんすよ……。役立たずの自分たちも褒められてる気がして……。

[諜報員] 姉御……俺はあんたをずっと…ずっと……応援…し…て…————————

[ホシグマ] …お前だけじゃないさ……。

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