aklib_story_闇夜に生きる_DM-7_亀裂_戦闘後

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闇夜に生きる_DM-7_亀裂_戦闘後

その目で確かめたものをWに伝えるべく奔走するイネスは、レユニオンの妨害を受ける。最後に彼女の目に写ったものは、交差する木の影だった。


タルラは変わった。

初めてタルラと会ったとき、俺は、彼女はテレジア殿下に似ていると思った。

とはいえ、まったく同じだったわけじゃない。当時、殿下の胸には悲しみが満ちていた。この大地の秘密を背負った悲しみだ。

一方タルラは、怒りを宿していた。冷静で、熱情に溢れた怒りを。

それは殿下と比べると小さな感情だったが、力強さは同じだった。彼女たちのような革命者には、多かれ少なかれ似たところがあるのだろう。

そのうちにタルラの怒りはレユニオンを生み、多くの賛同者を集めるに至った。

だが、彼らが熱き情熱を共有していたのは最初だけ。

そのうち俺たちの仕事は、扇動や加害、挑発へと変わっていった。

こんなの、カズデルの戦争と同じじゃないか。俺たちは、こんなくだらない陰謀に加担するためにウルサスに来たわけじゃない。

感染者の革命は、どこへ消えてしまったんだろう。

[ヘドリー] 大丈夫だ、追ってきてない。

[ヘドリー] ……もし彼女と正面からぶつかれば、面倒なことになる。

[ヘドリー] まったく、普段から見るものには気をつけろと警告していたのに。タルラにアーツを使うなんて、どうかしているぞ、イネス。

[イネス] ……でも、タルラの身に何かが起きたに違いないわ。これは何としてでもWに伝えないと。

[ヘドリー] そのWが色々やったせいで、我々はあの暴徒たちに疑いをかけられているんだがな。

[ヘドリー] お前は一体、何を見たんだ?

[イネス] ――昔のタルラはただの反抗者だった。そして彼女は、迫害され続ける感染者たちに道を示していた。

[イネス] だけど今は? 彼女の下に集まった感染者たちは、ただ欲望のままに破壊や殺人を繰り返す暴徒と化している。

[ヘドリー] それがどうした? サルカズを除く非感染者の感染者に対する態度を考えれば、それも理解できるだろう。

[イネス] ……わかってないわね。

[イネス] 私は彼らの行為自体のことを言ってるわけじゃないの。その行為がどんな結果をもたらすことになるか……

[イネス] タルラは……多分、意図的にレユニオンを破壊しようとしてる。

[ヘドリー] ……なぜ?

[イネス] ねえ、この状況、どこかで見たことがあると思わない?

[イネス] タルラは優秀なリーダーよ。だからこそ普通の感染者たちを戦争に参加させ、勝利をもたらすことすらできる。

[イネス] だけど彼女は、彼女にしかできない方法で、自分が築いた塔を崩そうとしてる……

[イネス] 自分も一緒にね……

[イネス] タルラ自身だって、塔が纏う美しいタイルの一枚に過ぎないわ。いつでも粉々になり得る。

[ヘドリー] それはつまり……

[イネス] ええ、三年前と同じね。

[イネス] ただあの人の場合は、誰にも変化がわからなかった。ううん、もしかしたら変化なんてなかったのかもしれない。初めから何の躊躇いもなく、それを成し遂げられる人だったのかも――

[イネス] でも、タルラは違うわ。彼女は確実に、前の彼女とは違ってる。

[イネス] ……彼女には二つの影があるの。アーツの痕跡には見えないわ。あれはまるで……

[イネス] そう、まるで廃墟よ。歴史ある、力強いエネルギーが残っている廃墟……

[ヘドリー] ……イネス、お前のアーツは確かに特別だし、信じるに値する。だが今回の感覚はいくらなんでも曖昧過ぎだ。これじゃとても行動の根拠にはできない。

[イネス] ……そうかもしれない……でも、Wには絶対に知らせないといけないわ!

[ヘドリー] ――声を落とせ。俺たちは目をつけられている。

[ヘドリー] 騒げばどんな難癖をつけられるかわからない。お前もわかっているだろう?

[イネス] じゃあ聞くけど、私たちはバベルのときみたいな災難に、もう一度耐えられると思う?

[ヘドリー] それは……

[イネス] ……少なくとも、Wには無理よ。

[イネス] 私はWに会いに行くわ。ガルシンが死んだ今、新しいリーダーは彼女でしょ。

[ヘドリー] 待て! そんなことをすればタルラに――

[イネス] 待てないわ。私に命令しないで、ヘドリー。私たちは今でも対等な立場のはずよ。

[イネス] ……フンッ。

[イネス] ――とはいえ、命令に真っ向から背くのはこれが初めてね。

[イネス] ヘドリーはいつも考え過ぎなのよ。

[イネス] ……

[イネス] (この通りを抜ければ、Wがいるはず……)

[イネス] (あれは……拠点だったはず……一体何が……)

[イネス] (ううん、今はとにかく急がないと――)

[イネス] ――

[イネス] ――誰?

[レユニオン兵士] ……

[イネス] 感染者……? 何か用?

[レユニオン兵士] 言葉には気をつけろ、魔族。

[レユニオン兵士] いくつかの傭兵部隊が逃げ出してから、敵が市内にまで出現するようになった。

[レユニオン兵士] お前たちはあまりにも多くのミスを犯した。リーダーがそれに気づいていないと思うか?

[イネス] そんなこと、上司でもないあなたに言われる筋合いはないわ。

[レユニオン兵士] お前にはタルラに向けて、責任を償う義務がある。

[イネス] ――タルラに……。わかったわ。じゃあWに報告してから、タルラにも報告する。

[レユニオン兵士] 必要ない。

[レユニオン兵士] そんな「償い」は求めていない。

[イネス] それじゃ何を……

[イネス] チッ……本気?

[レユニオン兵士] 先程の襲撃がこちらにまで波及し、サルカズ傭兵小隊長の一人、イネスが死亡した。

[毅然としたレユニオン術師] 死体の確認は?

[レユニオン兵士] ……戦闘は大きな騒ぎだった。今すぐこの通りを破壊しろ。

[毅然としたレユニオン術師] ……わかった。

[レユニオン兵士] ――ああ、待て。

[レユニオン兵士] レユニオン側にも、最後まで彼女と戦った者がいたはずだ。たしか……術師だった。

[毅然としたレユニオン術師] ……わかった。

[毅然としたレユニオン術師] 家族の面倒をお願い、みんなまだ街にいるから。

[レユニオン兵士] ああ、誓おう。

[レユニオン兵士] ……死体をそれらしく繕って……よし、これでいい。

[レユニオン兵士] Wはすぐに気づくだろう……行くぞ。

[イネス] ……

[イネス] ああ……

[イネス] ヘドリーが来なくて……正解だったわ……

[イネス] ……チッ。

[イネス] まさか、チェルノボーグの街路樹も……

[イネス] ……バーチの木だったとはね……

[イネス] ……アハハ。

[イネス] あそこと、同じ景色ね……どこを見ても、交差する影……

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