aklib_story_シラクザーノ_IS-8_累卵の危機_戦闘前

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シラクザーノ_IS-8_累卵の危機_戦闘前

同盟と分裂を経て、舞台の幕が下りる。


[店員] こちら、ご注文のピッツァです。

[ラヴィニア] ありがとう。

[ラヴィニア] ……

[レオントゥッツォ] この席、空いているか?

[ラヴィニア] いいえ。

[レオントゥッツォ] なら、遠慮なく。

[ラヴィニア] 空いてないと言ったでしょう。

[ラヴィニア] 私のような一般人に構う暇があるのなら、家業を手伝いに戻られたらいかがですか?

[レオントゥッツォ] ラヴィニア姉さん……

[ラヴィニア] ……

[ラヴィニア] あなたを責めているわけじゃないのよ。

[ラヴィニア] もちろん、ベルナルドのこともね。

[ラヴィニア] 責めるべき相手がいるとすれば、それは私自身だわ。

[ラヴィニア] この国に生まれていながら、まだ幻想を抱いていた私が悪いのよ。あなたたちを責めるのはお門違いでしょ。

[レオントゥッツォ] 俺も、こんな時に理性的になれなんて言いたくない。

[レオントゥッツォ] どんなふうに慰めたって意味がないこともわかってる。

[レオントゥッツォ] ラヴィニア姉さんと同じように、俺は自分を被害者だと思っているが……姉さんが俺を加害者だと考えるのも当然のことだ。

[レオントゥッツォ] でも、これだけは言える。……俺はまだ、諦めてない。

[レオントゥッツォ] それを伝えておきたかったんだ。

[レオントゥッツォ] ……このところ、街は大変な騒ぎになってる。身の安全には気を付けて、困った時は俺に電話してくれ。

[ラヴィニア] ……

[ラヴィニア] もしもし……

[ルビオ] ラヴィニアさん、今お時間をいただいてもよろしいですか?

[クロワッサン] 通り歩いてる人らも、みんなピリピリしとるなあ。

[ソラ] 昨日あんなことが起きたあとだしね……

[クロワッサン] ほんまにあの監督はんに会いに行くつもりなん?

[ソラ] うん。何にせよ、はっきりさせておきたいことがあるから。

[クロワッサン] せやけど――

[ソラ] 大丈夫。クロワッサンは自分の仕事に集中して。

[テキサス] 安心しろ、私がついている。

[クロワッサン] ……

[エクシア] ……じゃあ、今日はクロワッサンのボディーガードをしようかな。

[ソラ] うん、お願い。

[クロワッサン] なんかあったらすぐに連絡するんやで。

[ソラ] は~い。

[クロワッサン] ……

[エクシア] 今、テキサスのこと考えてるでしょ。

[クロワッサン] ……そないバレバレやったかな?

[エクシア] そないバレバレやったで~。

[エクシア] だって、あたしも同じこと考えてたもん。

[エクシア] もちろん、ソラの考えもわかるよ。テキサスが残りたいって言うならそれを尊重するつもりなんだと思うし……

[エクシア] そこはあたしもそうだけど。

[エクシア] でも――

[エクシア] 姉ちゃんにも、あたしの仲間を会わせたいんだよね。

[エクシア] そうでなくても、テキサスを無事にシラクーザから脱出させる方法があるなら、それを見つけたい……でしょ?

[クロワッサン] はぁ……エクシアはんには隠し事でけへんな。

[エクシア] 二人にも伝わってると思うよ。

[エクシア] あたしたちがソラの考えを尊重してるように、向こうもあたしたちの考えに理解を示してくれてるってわけ。

[クロワッサン] せやけど、ここはシラクーザやで……しかもテキサスはんはこの国で一番すんごい人らと関わっとるわけやし、もおどうしたらええかわからへんわ。

[エクシア] あれ? キミなら思いついてると思ってたんだけど。

[クロワッサン] えっ?

[エクシア] だってさ……この国のすんごい人の一人には、昨日会ったでしょ?

[ベルナルド] どうぞ。

[ベルナルド] ソラ君、そしてチェリーニアも。歓迎するよ。

[テキサス] ……

[テキサス] なぜソラたちを巻き込んだ?

[ベルナルド] 彼女の履歴書が届いたのは本当に偶然だったんだ。

[ベルナルド] 無論、ある種の必然とも言えるだろうが。

[ベルナルド] というのも、デッラルバ劇団はシラクーザでは名の知れた劇団だからな。

[ベルナルド] ただ、監督がベッローネのドンであることはあくまでも秘密だが。

[ベルナルド] この都市においては、ベッローネ関係の仕事は大方息子に継がせているし……息子のやり方に干渉するつもりもない。

[ベルナルド] ――私は、この劇団の監督を務めて六年になるんだ。

[ベルナルド] どうか君たちには、私の芸術を愛し追い求める心が、普段の立場とは無関係なものであることを信じてもらえると嬉しく思う。

[ベルナルド] できればソラ君にはステージで輝いてもらい、チェリーニアとの感動的な再会を果たしてもらいたかったんだ。

[テキサス] だが、彼女が巻き込まれてもお前は気にしない――そうだろう?

[ベルナルド] ははっ……

[テキサス] わざとらしい態度を取るのはやめてもらおうか。

[テキサス] ソラとの出会いは確かに偶然だったかもしれないが、どれほどそれらしい言葉を並べようと、お前が本気で彼女の安全を気にかけていたとは思えない。

[テキサス] まったく笑えない冗談だ。

[ベルナルド] 実にいい反応だな。君がシラクーザに来て以来、怒っているのを見るのは初めてだ。

[ソラ] ……監督、一つ教えてもらえませんか。

[ベルナルド] 聞こう。

[ソラ] 約束はまだ有効でしょうか?

[ベルナルド] それは――

[ソラ] テキサスさんを見つけたあとも、引き続き役者としての契約を終えるまで舞台に立つ、という約束のことです。

[ベルナルド] ……ほう?

[ベルナルド] 君は契約を解消しにきたものと思っていたんだが。

[ソラ] ……マフィアの人たちの争いとなれば、あたしの力なんて取るに足りません。

[ソラ] この状況であたしたちまで守るのは、テキサスさんにとって負担になると思うんです。

[ソラ] それにあたしは、あなたが約束を守る人だと思ってますから。

[ソラ] 単刀直入に言うと――あたしは、ここに人質として残るつもりでいます。

[ベルナルド] 君の勇気には常々感銘を受けるよ、ソラ君。

[ベルナルド] だが、そう緊張しなくてもいい。

[ベルナルド] 私は君を糾弾するためにここへ呼んだわけではないんだ。実のところ今回の劇場での件は、ロッサティへの挨拶代わりだからな。

[ベルナルド] 君の功績はすでに私の想像以上のものとなった。

[ベルナルド] ゆえに、こう伝えておこう――

[ベルナルド] 君との契約は、ここで終わりだ。

[ベルナルド] 君は自由の身だよ。

[ベルナルド] 以後、チェリーニアはベッローネの庇護下を離れることとなる。

[ベルナルド] このチップでご満足いただけそうかな。

[ウォラック] 言ってくれるな……

[ウォラック] あいつを連れ戻した張本人が誰なのか、俺が忘れるとでも思ってんのか?

[ウォラック] 一つ聞かせてもらうが――あんた、最初からこうするつもりだったんじゃねえだろうな?

[ベルナルド] その点は、うちの息子に感謝したまえよ。

[ベルナルド] 君が協力に値する相手だと教えてくれたのは息子だからな。

[ウォラック] レオンか……ハッ、なるほどな。

[ベルナルド] 私はこれまでずっと、ロッサティの勢いを有望視してきた。

[ベルナルド] チェリーニアはこの協力関係のために足場を築いただけのことだ。

[ウォラック] つまり、仮にレオンがそうしなくても、あんたが俺を訪ねに来てたわけか。

[ウォラック] 心が通じ合う親子の姿ってのはホント感動的だな。

[ベルナルド] ははは……息子にも、君のその鋭気を見習ってほしいところだ。

[ウォラック] いいか、ベルナルドさんよ。ほかの奴ならあんたの策に乗るかもしれねえが……

[ウォラック] 俺は乗らん。

[ベルナルド] そうだろうとも。私は、君にとっての真の障害が誰なのかを伝えるためだけにこうしたのだよ。

[ウォラック] なんだと? その障害は今俺の目の前に座ってるだろうが。

[ウォラック] 俺にドンを裏切らせようってんなら、見当違いだったな。

[ベルナルド] いいや、私はヒントを出しているにすぎんさ。

[ベルナルド] 君自身が一番よくわかっているはずだろう。

[ベルナルド] チェリーニアが現れたことで、ジョヴァンナがどれだけ影響を受けているか……

[ベルナルド] シラクーザ人なら誰もがサルヴァトーレを尊敬するものだが、さりとてそれは盲従を意味するわけではない。

[ベルナルド] 彼の時代は七年前に幕を下ろした。それなのに君は、この先も彼の遺産をジョヴァンナと共に守り続けるつもりなのか?

[ベルナルド] 君たちは本来なら、より高く遠くまで飛んでいけるはずだろう。

[ウォラック] ……ドンは大局を見られる人だ。

[ベルナルド] その大局の中に、君が本当に求めるものはあるのかね?

[ベルナルド] ロッサティはかつて、テキサスと肩を並べてクルビアに君臨していた……

[ベルナルド] だがシラクーザに戻った今は、ほかの十一家からあらゆる方面で抑圧され続けている。

[ベルナルド] 君の思い描くロッサティは、ほかのファミリーの上に立ち、ミズ・シチリアをグレイホールから引き剥がす……そんな存在ではないのか?

[ウォラック] 知ったような口利くのはやめてもらおうか、ジイさん。

[ベルナルド] 確かに君のことはよく知らないが、君のような人やその眼差しはよく知っているのでね。

[ベルナルド] ――活力がまだ残っている者なら、シラクーザのよどんだ水に順応することなどできないものだ。

[ベルナルド] チェリーニアが生きてあの部屋を出てきたのを見ても、それがまだ理解できなかったのか?

[ウォラック] ……たとえあんたの言う通りだとしても――

[ウォラック] これは俺たちの問題だ。

[ウォラック] そもそも、こういう道義に背いたことはあんたらみたいな昔かたぎのマフィアのほうが毛嫌いしそうなもんだが……

[ウォラック] シラクーザ人のプライドってのも、しょせんはこんなもんか。

[ベルナルド] 思い違いをしているようだな。

[ベルナルド] 君を招いたのは、チャンスを分け与えるためだ。

[ベルナルド] シラクーザの今ある秩序を打ち砕き、新たな秩序を確立するチャンスをな。

[ウォラック] ……

[ウォラック] なぜロッサティを選んだ?

[ベルナルド] ――六十年前。ミズ・シチリアはラテラーノから「銃と秩序」を持ち帰った。

[ベルナルド] そして現在、多くの人々はグレイホールの創設が十二家の共同決定によるものだということしか覚えておらず……

[ベルナルド] ミズ・シチリアが何を用いて十二家を同じテーブルにつかせたのかを忘れている。

[ベルナルド] それは絶対的な実力だ。

[ベルナルド] たとえば、アルベルトは機をうかがってばかりいる。あれは生涯慎重で居続けることだろう。

[ベルナルド] だが、ミズ・シチリアに立ち向かうなら、そんな盟友は必要ない。私が求めているのは――

[ベルナルド] 私と同じく、今ある秩序を覆したいと考えている友なのだ。

[ベルナルド] 君もよく考えてみてくれたまえ。

[ベルナルド] 今こそが、絶好のチャンスなのだから。

[ウォラック] ……

[ウォラック] ドンはご在室か?

[ロッサティの構成員] はい。

[ウォラック] ……

[ウォラック] だったら、こう伝えろ。俺はチェリーニアとやり合う前に、あいつの友人をさらうつもりでいる、と。

[ロッサティの構成員] 本当に……そんなことしていいんでしょうか?

[ウォラック] 違うだろ。お前が疑問に思うべきことは――

[ウォラック] ロッサティは、本当にこのままでいいのかってことだ。

[クロワッサン] ほんまに昨日会うたあの人がすごい人やっちゅうんか?

[エクシア] うん、多分!

[クロワッサン] せやけど、そこまですんごい人がほんまにこの街におるんかな?

[エクシア] 居て当然だと思うよ。だってあたしならそうするし!

[クロワッサン] ……そう言われると、なんか説得力あるなあ。

[クロワッサン] にしても、なんで裁判所におるってわかったん?

[エクシア] んっとね……あっ、見っけ!

[エクシア] ほら、最後に言ってたでしょ? 普段は教会じゃなくて、裁判所にいるよって。

[エクシア] だよね、おじいちゃん?

[アグニル] ……

[エクシア] あれえ? もしもーし?

[アグニル] Zzz……Zzzz……

[クロワッサン] ……あんま邪魔せんほうがええんとちゃう?

[アグニル] んん……ん?

[アグニル] ああ、君たちか。

[エクシア] こんちわー!

[エクシア] おじいちゃんに聞きたいことがあって来たんだ!

[アグニル] はっはっは、もちろんいいとも。そのあたりに掛けなさい。若人と話すのは面白いものだしね。

[クロワッサン] おおきに。えっと、ウチらの友達のことなんやけどな。その子があるファミリーと約束しとって、向こうの手伝いをせなあかんねん。

[クロワッサン] でも、そこから上手く抜け出されへんかなって思て。なんかええ方法ある?

[アグニル] その友達はテキサスという名前だろう。

[クロワッサン] ……うん。

[アグニル] 聞くところでは、ベルナルドは義理堅い人物だそうだ。

[アグニル] ファミリーのドンとして、約束を反故にすることはないと思うが。

[クロワッサン] でもな、ウチらみたいな外国人にも、これはベッローネからミズ・シチリアへの挑発やっちゅうことはわかってまう状況やし……

[クロワッサン] ウチらじゃ複雑な問題には関われへんし……正味、ウチはあんま興味自体もあらへんし……

[クロワッサン] そいでも、せめてテキサスはんがミズ・シチリアの報復の対象になるようなことは避けたいんよ。

[アグニル] ……

[アグニル] 当時、シチリアはサルヴァトーレへの称賛と同じくらい、ジュセッペの行動への怒りをあらわにしていたんだ。

[アグニル] あれは彼女が定めた秩序に対する直接的な挑発だったからね。

[アグニル] 彼女は、秩序に反することでなければどんな挑戦も受け入れる。だが秩序を乱すことだけは誰であろうと許さない。

[クロワッサン] つまり……何があっても秩序を守らんとあかんっちゅうこと?

[アグニル] ……私も昔はそう思っていたよ。

[アグニル] だが、人が確立した秩序に絶対はない。

[アグニル] 私がここで君たちと会ったことが、チェリーニアとは何の関係もないのと同じでね。

[アグニル] これはただ、偶然同族に会ったからというだけのことだろう。

[エクシア] ふっふふ、そうだね!

[アグニル] 実際、シチリアが現れるまでシラクーザは無秩序な土地だったというわけではない。

[アグニル] マフィアたちにはそれぞれの信ずる秩序が存在していたが、そのどれもが個人に依存しており、ファミリーの間で異なっていた。ゆえに、彼らには争いが絶えなかったんだ。

[アグニル] シチリアは、この秩序を完全に壊したわけではなく……

[アグニル] ファミリーごとに違っていた秩序を、一つの基準で統一したのさ。

[アグニル] そうして、すべてのファミリーが一つになり――

[アグニル] シラクーザは今のシラクーザになった。

[アグニル] これが何を意味するか、わかるかな?

[クロワッサン] 結局、シラクーザは……ミズ・シチリアがおってもおらんくても……実は変わってないっちゅうこと?

[アグニル] 君は聡明だな。

[アグニル] そう。シラクーザに過去存在していた問題は今も存在しているし、私は――私たちは、それをよくわかっている。

[アグニル] だが、どんな問題もシチリアにかかれば解決可能だ。

[クロワッサン] せやかて、ミズ・シチリアに会うんは大変すぎるやろ……

[アグニル] 私も、会いに行くのを助けてはやれないが……

[アグニル] 会う方法を持つ人物には心当たりがある。

[アグニル] ただ――

[クロワッサン] ただ?

[アグニル] それを頼るのは、少々骨が折れるかもしれないな。

[ジョヴァンナ] ……

[ロッサティの構成員] ドン?

[ジョヴァンナ] ……ん?

[ロッサティの構成員] 昨日の夜から、ずっとそのネックレスを見てらっしゃいますよね。

[ジョヴァンナ] これはミズ・シチリアからもらった証なの。

[ジョヴァンナ] テキサス家の後始末をして、クルビアのマフィアたちをシラクーザへ連れ戻したことの見返りとしてね。

[ロッサティの構成員] えっ、そんな貴重なものだったんですね……

[ロッサティの構成員] でも、この状況でお使いになるおつもりですか?

[ジョヴァンナ] ……私自身、迷ってるの。

[ジョヴァンナ] ウォラックがチェリーニアの友達に手を出そうとしてるって話だったわよね?

[ロッサティの構成員] はい。ターゲットは外出中のようなので、戻り次第、待ち伏せしている人員が行動に移す予定です。

[ジョヴァンナ] ……

[ロッサティの構成員] あら、どちらへ?

[ジョヴァンナ] チョコレートを買ってくるわ。

[カポネ] チッ……あんたの予想通りだったな。

[カポネ] ロッサティの奴ら、もうこの区画に潜り込んでやがる。

[カポネ] ペンギン急便の連中が戻ってきたら、結構な目に遭いそうだ。

[カポネ] ……一つ聞いておきたいことがある。

[ラップランド] 何だい?

[カポネ] ロッサティがテキサスに手を出すことぐらい、予想はついてたが……

[カポネ] あんたはサルッツォの人間だろ。わざわざガンビーノにあのサンクタを追わせるまでして、その上自分もこの家を見張る必要なんかあるのか?

[カポネ] 俺はあんたが友情に篤い奴だとは思ってなかったんだが。

[ラップランド] へえ、そんなふうに見える?

[カポネ] いいや、全然。

[カポネ] だから聞いてんだろ。あんたは何を待ってんだ?

[カポネ] トラックで裁判所に突っ込んで罪を被ったり、そうしてあいつの容疑を晴らしたり、挙句の果てにサルッツォとベッローネに無理やり手を組ませたり……

[カポネ] 両家がどうして争い合わずに手を組んだのかは知らないが、あんたはその理由を知ってるはずだ。それがベッローネを――ひいてはあの女を助けることになるってわかっててそうしたんだろ。

[カポネ] それに、昨日だってあいつを助けてたし……

[カポネ] あんたこの前言ってたろう。シラクーザという泥沼からは、そう簡単には逃げられないってことをあいつに証明してやりたい、とか。

[カポネ] だが実際は、あいつを泥沼から助け出そうとしてるようにしか見えない。

[ラップランド] 仮に、あの子の大切な人たちを殺したり、あの子を不快にさせるようなことをしたりしないと証明できないのなら――

[ラップランド] それはボクの執着心がもたらす妄想で、定められた事実じゃないってことになるでしょ。

[ラップランド] 事実っていうのは、ボクが見てるだけだったとしても、すべてがそうなることを指すんだよ。

[ラップランド] でも、そんなのじゃ足りないんだ。

[ラップランド] 邪魔をしないだけじゃなくて、あの子の手助けをしてあげた上でその事実に直面させないと――

[ラップランド] あの子は、自分の足掻きが無駄だったことを認めたりしないから。

[カポネ] ……そうなれば満足するわけか?

[ラップランド] さあね。ほかに方法がないってこと以外、ボクにはわからないよ。

[カポネ] あんた自身どうすればいいかさっぱりなわけか。

[ラップランド] そうだね、否定はしないさ。

[ラップランド] それと――いい加減キミもガンビーノを見習って認めたほうがいいと思うよ。キミたちのための答えを、ボクから見出すことはできないってこと。

[カポネ] ……バレてたんだな。

[ラップランド] 彼はベッローネの一員として返り咲こうとしてるけど、キミは?

[ラップランド] まだここにいるってことは、本気でボクの付き人になったつもりなのかな?

[ラップランド] あるいはボクの道にキミの同行を許す余地があると思ってるとか?

[カポネ] ……

[ラップランド] そんな期待は捨てたほうがいい。ボクはキミを殺しちゃうよ。

[ラップランド] ボクの道はボク専用だから。

[カポネ] だったらテキサスはどうなんだ?

[ラップランド] テキサスは……きっとこの道そのものなんだろうね。

[カポネ] ハッ……

カポネはしばらく沈黙し、ついに身をひるがえして去っていった。

[ラップランド] アハッ。思いがけないサプライズだね。

[ジョヴァンナ] 来るのは初めてだけど……間違いなさそうね。

[ジョヴァンナ] ここがペンギン急便の拠点……

[ジョヴァンナ] ……

[ソラ] もしもし……カタリナさん。

[ジョヴァンナ] ソラ? ……ああ、そういえば連絡先を渡してたわね。

[ソラ] あなたのこと、ジョヴァンナさんって呼んだほうがいいですかね。

[ジョヴァンナ] ……カタリナでいいわ。

[ジョヴァンナ] この名前、気に入ってるのよ。

[ソラ] ……シラクーザのマフィアはみんな、劇場関係の仕事がお好きなんですか?

[ジョヴァンナ] ええ。私たちだっていつも殺し合ってるわけじゃないもの。

[ジョヴァンナ] あなたたち、今一緒に……

[ジョヴァンナ] ……

[ソラ] えっと……どうかしました?

[ジョヴァンナ] 何でもないわ。

[ジョヴァンナ] ねえ、ペンギン急便について聞かせてくれない?

[ソラ] えっ?

[ジョヴァンナ] たとえば、設立の経緯とか、チェリーニアが加わった時の話とか。

[ソラ] ……あたしもよく知らないんです。テキサスさんに助けてもらった時には、もうペンギン急便はありましたから。

[ソラ] ボスから何度か聞いた話では、テキサスさんと出会ったのをきっかけに、二人で相談しながら会社を設立したらしいですよ。

[ソラ] あっ、でも、あたしが入社してからのことなら、たくさんお話しできますよ。

[ソラ] だってあたしたち、何年も一緒に生活してますから。

[ジョヴァンナ] はぁ……チャンスがあったら、あなたたちともっとお喋りしたいところだわ。

[ジョヴァンナ] チェリーニアについて色々話してあげられるし……

[ジョヴァンナ] 彼女が龍門でどうしてたかって話も聞いてみたいもの。

[ソラ] ぜひ。そうだ、色々落ち着いたら龍門にも招待させてください。街中案内しますよ。

[ジョヴァンナ] 本当に?

[ジョヴァンナ] 私の立場を気にしないでくれるの?

[ソラ] あたしは、あなたが昔テキサスさんの一番の親友だったってことしか知りませんから。

[ジョヴァンナ] ……チェリーニアは本当に運がいいわね。向かった先の龍門で、あなたみたいな優しい仲間に出会えるなんて。

[ソラ] それを言うなら、シラクーザにあなたみたいな友達思いの親友がいるのもすっごく運がいいと思いますよ。

[ジョヴァンナ] ねえ、ソラ……

[ソラ] 何でしょう?

[ジョヴァンナ] ……今、ふっと思いついたんだけどね。

[ソラ] はい。

[ジョヴァンナ] ずっと、グランドフィナーレをどうするか悩んでいたのよ。

[ジョヴァンナ] 当初の構想としては、物語の中の彼女はシラクーザ人らしい最期を迎えるべきだと考えていたの。

[ジョヴァンナ] 路地裏で囲まれて、とか……車に仕掛けられた爆弾で、とか……

[ジョヴァンナ] だけど、こういう現実をもとにしたシーンって、使われすぎてある種のステレオタイプみたいになっちゃってるのよね。

[ジョヴァンナ] そういうのは避けたいから……このお話では、彼女をシラクーザ人らしくないシラクーザ人として描こうと思って。

[ジョヴァンナ] 「シラクーザ人とは何か」を考えてみたけど、定義づけができずにいたの。

[ジョヴァンナ] これが、ずっと続きを書けずにいた理由。

[ジョヴァンナ] でも、今ならなんとなくわかるの。

[ジョヴァンナ] 「シラクーザ人」なんていないのよ。

[ジョヴァンナ] チェリーニア・テキサスはあの火事の中で姿を消し、その行方を知る者はいなかった。

[ソラ] ……カタリナさん、まさか……

[ジョヴァンナ] ――プレゼントを置いておいたから、ゆっくり戻ってきなさいね。

[ジョヴァンナ] ウォラック。あなた確か、チェリーニアの友人をさらうとか言ってたわよね。

[ジョヴァンナ] あの子たちはまだ戻ってきてないのに、そんなにたくさん部下を引き連れてどうしたの?

[ウォラック] ……あなたが来なければ、そうするつもりでした。

[ウォラック] だけど、あなたには失望しましたよ。ドン……いや、ジョヴァンナさん。

[ジョヴァンナ] そんなに待つのが嫌なわけ?

[ウォラック] 待つのが嫌とかそれ以前に、どうして待たなきゃいけないのかって話です。

[ウォラック] 時代遅れの老いぼれからのお恵みを待つ必要が、一体どこにあるんですか?

[ウォラック] 俺たちがあなたについてこの国へ来たのは、いつかここの主になるためで――

[ウォラック] 今がそのチャンスだってのに。

[ジョヴァンナ] 本当に勝算が見えてて言ってるの?

[ウォラック] わかりません。俺自身、シラクーザの頭の古い連中を相手取る自信はないですが……

[ウォラック] ベッローネが本気で新しい時代を作ろうとしてることだけはわかります。

[ウォラック] だから、デカい賭けをしたいんです。

[ジョヴァンナ] 賛同者はどのくらい?

[ウォラック] 七割ってとこですね。

[ジョヴァンナ] 残りはどうするの?

[ウォラック] 時間をかけて説得します。

[ウォラック] あるいは、あなたから説得してもらってもいいですが。

[ウォラック] 目を覚ましてくれるなら、あなたはまだ俺たちのドンですから。

[ジョヴァンナ] ……ほんと、大したものね。私の教育が良すぎたのかしら。

[ジョヴァンナ] 残念だわ、ウォラック。

[ウォラック] あなたにとって、テキサスはロッサティよりも大事なんですか?

[ジョヴァンナ] 私はただ、事がこんなふうに起こるべきじゃないと思うだけよ。

[ウォラック] 俺に言わせりゃ、こんなふうにしかならねえこともあるんですよ。

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