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翠玉の夢_DV-4_無人の路地_戦闘前
バーに現れたホルハイヤは、男を脅して口を封じるとその場を去った。ドクターたちは彼女を追うも、再びパワードスーツに阻まれる。基地のほうでは、エレナが秘密裏にデータを取っていることに気付いたサイレンスが、実験の目的に疑念を抱き始めていた。
[サリア] ……
[サリア] こちらはお前のことなど知らないが。
[ホルハイヤ] へえ、本当に?
[ホルハイヤ] 悲しいわ、傷付いちゃう。
[ホルハイヤ] ――「シエスタアイスティー」を一杯お願い。
[ホルハイヤ] そちらの紳士にね。
[酔っぱらった男] ううっ……
[サリア] ……どうした?
[ホルハイヤ] 震えが止まらないみたいね。このバー、冷房が効きすぎてるんじゃない?
[ホルハイヤ] もっと飲んで身体を温めたらどう?
[酔っぱらった男] いや……
[ホルハイヤ] ああ、忘れるところだったわ。あなた、好みが変わったのよね。
[ホルハイヤ] 執刀医をしていた頃は、シエスタアイスティーがお気に入りだったでしょう。度数が高い分、飲んでいればローキャンの小言や罵倒を忘れられるものね。
[ホルハイヤ] それが今では、彼の刑期はまだ百二十二年残ってるのに対して、あなたは……自由の身だもの。
[酔っぱらった男] お前……よくも俺に向かって自由なんてものを語れたな!?
[酔っぱらった男] 俺はお前たちに言われたとおり、毎週毎週自分の身体データを提出して……
[ホルハイヤ] しーっ……
[ホルハイヤ] 仕事の話はこの辺りにしましょ。
[ホルハイヤ] 誰だって、リラックスしたくてバーに来ているものじゃない?
[ホルハイヤ] それともまさか、そっちの表情が見えない人や表情自体がない人とはおしゃべりしておいて、昔なじみとは一杯もご一緒してくれないつもり?
[酔っぱらった男] 昔なじみ? ハッ……笑わせるんじゃない!
[酔っぱらった男] 俺がこうなったのは全部――
[ホルハイヤ] それじゃ、自由に乾杯。
[酔っぱらった男] ……
[酔っぱらった男] サリア。奴らは俺に選択の余地を与えちゃくれないらしい。
[サリア] ――!
[酔っぱらった男] あとはお前だけで頑張ってくれ。
男はグラスを手に取り、皆の目の前でそのほとんどを飲み干した。
見開かれたその両目は誰の姿をも捉えておらず、そこに浮かぶのが怒りか絶望かを読み取ることはできなかった。
そうして、彼はすぐさまその場に倒れ込んだ。
彼の両足は感電したようにピクピクと震えていたが、左手は己が右腕を強く握り締めている。
その指先は、彼を苦しめてきた電子部品の塊を過去の罪ごと引き裂こうとするかのように、肉を抉らんばかりに食い込んでいた。
[バーの客] きゃっ、この人どうしちゃったの?
[バーの客] 早く救急車を呼んで!
[サリア] ――
[ドクター選択肢1] 発作だろうか?
[ドクター選択肢2] 酒に何か入っていたのか?
[サリア] ……これはてんかんだ。
[サリア] 血液に異常があるな……恐らく薬物の影響だろう。
[サリア] 応急薬を投与しておいた。これで命に別条はない。
[サリア] 恐らくはあの酒に……
[ホルハイヤ] もったいないわ、あと半分も残ってるじゃない……無駄にするのは嫌いなのよね、私。
[ホルハイヤ] ――
[サリア] ……飲んだのか?
[ホルハイヤ] ええ、ご覧の通り。
[サリア] ……
[ホルハイヤ] 納得いかないようだったら、お友達の歯を確かめてみて。
[ホルハイヤ] 左側の第二小臼歯ね。
[サリア] ……
[サリア] 差し歯だ。中が空洞になっている……
[ホルハイヤ] ローキャン水槽を去る前、彼は自分自身に最後の手術を施していたのよ。
[サリア] それを知っていて放置したのか。
[ホルハイヤ] 本来なら、私が取り除いておくべき不確定要素だといえばそうね。どうせ一本歯を抜いたところで、彼の仕事に影響はないし。
[ホルハイヤ] だけど、私はそうはしなかった。
[ホルハイヤ] このクルビアでは、誰しも死を選ぶ自由くらいは持っていてしかるべきだと思うの。
[サリア] ――ドクター。
[サリア] 彼を支えて、離れていてくれ。
[ドクター選択肢1] わかった。
[ドクター選択肢2] 君はやり合うつもりなのか。
[サリア] 案ずるな。解決すべき問題に対処するだけのことだ。
[ライン生命研究員] フェルディナンドさん、最新テストのデータが出ました!
[フェルディナンド] そう大声を出すほどの価値がある結果であることを祈ろう。
[フェルディナンド] ……
[フェルディナンド] 67パーセント……?
[ライン生命研究員] さ、最善を尽くしたのですが……
[フェルディナンド] 再検証の結果は?
[ライン生命研究員] こ、こちらです。
[フェルディナンド] 全パラメーターを見せてくれ。
[ライン生命研究員] は……はい。
[フェルディナンド] ……
[ライン生命研究員] あ、あの……
[フェルディナンド] ――本当に小細工はしなかったらしいな、あのヤギめ……
[フェルディナンド] こうなれば、あとはホルハイヤ次第だ……サリアを止めてくれればいいが。
[ホルハイヤ] ライン生命警備課の元主任様に「解決すべき問題」だと思ってもらえるなんて、光栄だわ。
[サリア] お前は何者だ?
[ホルハイヤ] そういえばお目にかかるのは初めてね、サリア主任。
[ホルハイヤ] あなたのお噂はかねがね伺ってるわ。
[ホルハイヤ] ライン生命の創設者の一人であり、トリマウンツ工科大学の卒業生……生体医用工学の博士号まで取得しながらも、学会からは姿を消し、警備課の責任者に就任した……
[ホルハイヤ] なのに、ライン生命といえば誰もがクリステン・ライトを思い浮かべる一方で、あなたのことを知る人はそう多くない。
[ホルハイヤ] これまで、それに不満を感じたことはないの?
[サリア] 知られる必要などない。
[サリア] これは私自身の選択であり、責務でもある。
[ホルハイヤ] ふふ、そうでしょうね。
[ホルハイヤ] あなたは自分を火消し役だと思っているみたいだけど、実際のところは火中に飛び込む感覚を楽しんでいるんじゃない?
[ホルハイヤ] あなたは戦うのが好きだもの。
[ホルハイヤ] ああ、でもあなたは戦士ではないわね。なにせあなたには、絶えず挑戦し続けたり、状況を打破し続けたりしたいなんて欲求はないから。
[ホルハイヤ] そしてそれこそが、科学の世界にあなたの居場所がないことの原因でもある。
[ホルハイヤ] ――五年前、ミュルジスから接ぎ木の鉢植えを贈られたでしょう。あれはなかなか綺麗だったわね。彼女お得意の小技を使って蔓を踊らせたあの一鉢……
[ホルハイヤ] だけどあなたはその特殊性を気にも留めず、ただ受け取ってオフィスで育てて、毎日ぐんぐん伸びてくる新芽を毎朝七時に剪定し続けていた。
[サリア] お前はずっとライン生命を監視していた、と?
[ホルハイヤ] 社内のうわさ話を聞いただけかもしれないわよ。
[サリア] それならば、事の顛末は知らんだろうな。その夏、ミュルジスは三人の主任のオフィスをサルゴンの密林に変えたんだ。
[サリア] おかげで警備課はかなり厄介な目に遭った。
[ホルハイヤ] それって……
[ホルハイヤ] 「炎魔」と比べたら、どっちのほうが厄介だったの?
[サリア] ……
[サリア] お前のくだらん無駄話には、一つは正しい部分がある。
[ホルハイヤ] っていうと?
[サリア] 確かに、戦いは嫌いじゃない。
[ホルハイヤ] 綺麗なアーツね……
[ホルハイヤ] 統括とやり合った時に使ったのもそれ?
[サリア] 傭兵にしては好奇心が過ぎるようだな。
[バーの客] ど、どうして喧嘩なんかしてるの……!?
[バーの客] 酔っ払ってモメたのかしら? 警備員は何してるの?
[Mechanist] ......
[バーの客] ねえ、あなた警備員さん? だったらあの人たちを追い出してちょうだい!
[Mechanist] 悪いが、私はただのメカニックだ。
[Mechanist] 加えて言うと、命が惜しいのなら外に出るべきなのは君たちのほうだぞ。
[バーの客] きゃっ! て、天井が崩れてくるわ……! 逃げましょう!
[Mechanist] ドクター、無事か!?
[ドクター選択肢1] ああ。
[ドクター選択肢2] 情報提供者のほうが危険な状態だ。
[ドクター選択肢1] Mechanist、サリアに加勢してくれ。
[ホルハイヤ] そんなに急いで決着を付けたがるなんて……
[ホルハイヤ] 私としては、もうちょっと一緒にいてあげてもいいのよ?
[ホルハイヤ] あなたの一撃を受けられる人なんて、クルビアにそう何人もいないでしょう?
[サリア] これほどの腕前に見合う報酬を支払える人物も多くないだろうな。
[サリア] この件はヴォルヴォート・コシンスキーとは無関係に近しく、そしてお前の戦闘スタイルは軍での訓練を受けたものとは思えない。
[サリア] お前の狙いは銀色の試薬の手がかりを途絶えさせることだろう。
[サリア] となれば、雇い主はフェルディナンドか、あるいは……
[ホルハイヤ] ……統括か。
[ホルハイヤ] この期に及んで、真っ先に疑いはしないのね。
[サリア] お前には聞きたいことが多くある。逃すわけにはいかない。
[Mechanist] サリア!
彼女は同僚の位置をはっきりと確かめた。敵の退路はすでに塞がれている。
これ以上の対話は不要だと判断したサリアは、即座にアーツを展開した。
エナメル質の堅牢な壁が瞬時に現れ、同じもので覆われた手刀がホルハイヤの急所をめがけて振るわれる。
[ホルハイヤ] お喋りはこれでおしまいみたいね。
[サリア] 避けないのか?
[ホルハイヤ] 成功率が低すぎることはしない主義なの。
その時、サリアの五本の指は、相手の腹部に間違いなく触れた。
しかし奇妙なことに、それは人間の血肉の感触ではなかった。
ホルハイヤの表情に痛みの色は表れない。
それどころか彼女は顔を近付け、サリアの耳に唇が触れそうな距離で言った。
[ホルハイヤ] 信じてもらえないかもしれないけれど――私は本当に、あなたと話したかっただけなのよ。
[ホルハイヤ] 私はあなたに……ライン生命に興味があるの。
[サリア] お前が訪れたことで同伴者が倒れたこの状況で、話がしたかっただけと言われてもな。
[ホルハイヤ] ふふっ……そんな仕事までさせてくれちゃったのは誰かしら?
[ホルハイヤ] そうだ、最後に一つアドバイスしてあげる。
[ホルハイヤ] 私を敵と思い込まないほうがいいと思うわよ。
[ホルハイヤ] 私に限らず、相手が何だろうと同じことだけど。
[サリア] ……
[Mechanist] この壁……なぜ穴が空いている? 奴はここから出ていったようだが……
[サリア] 私の攻撃が命中したせいだ。
[Mechanist] 向こうのアーツに惑わされたと?
[サリア] アーツではなく、何かしらの技術によるものだろう。
[サリア] 奴はこの周辺一定の範囲で空気中の成分構成を変化させ、私のアーツを妨げて、最後の一撃が逸れるよう誘導したんだ。
[サリア] こんな技術は……見たことがない。
[ドクター選択肢1] ミュルジスの件は……
[ドクター選択肢2] 彼女なら術者と水分子の繋がりも断ち切れそうだ。
[Mechanist] 彼女の失踪にも関与している可能性は高いだろうな。
[Mechanist] ああ、恐らくはな。
[Mechanist] 確かに、指向性を持たせて空気を熱するだけならば、ミュルジスの能力を封じられるほど高度な技術ではないと思っていた。
[サリア] ドクター。すぐに奴を追うべきだ。
[サリア] 彼女が持つ情報から見ても、あの奇妙な技術から見ても――
[サリア] あれは危険な人物だ。
[ライン生命警備課職員] 保安官、どちらへ?
[メアリー] あなたに伝える義務があるなんて知らなかったわ。
[ライン生命警備課職員] ……記録を見るに、車のカギをお持ちのようですね。
[メアリー] ええ、ライン生命の資産を少しお借りするつもり。
[メアリー] なんだったら、例のクソ主任へ私の代わりにそう伝えておいてちょうだい。
[ライン生命警備課職員] 保安官……いえ、ミス・バナー。
[メアリー] まだ何か? さっさと言いなさい、急いでるから。
[ライン生命警備課職員] あなたは幼少期、トリマウンツ北部郊外のスチールハムに住んでいたそうですね。サニー・ロマーノはあなたの隣人であり、中学校の同級生だったとか。
[メアリー] 私のことを調べたの?
[ライン生命警備課職員] ――四年前、感染者として登録されたロマーノは、法律事務所のインターンシップを打ち切られてスチールハムに戻り……その半年後には医療保険の支払いができなくなったとあります。
[ライン生命警備課職員] しかし、彼の名前が開拓隊の名簿に載るのは、それから三ヶ月と十七日が経ったあとのことでした。
[ライン生命警備課職員] この間、彼はどこに隠れていたのでしょうか?
[メアリー] 私が知るはずないでしょ?
[ライン生命警備課職員] 問題発生を未然に防ぐことも、我々警備課の仕事なのです。
[メアリー] ……資料を暗記しておけば私を脅せるだなんて思わないことね。
[メアリー] このポジションに就くのに五年かけてきた私が、あなたたちみたいな大企業のペットにどう対処すべきか知らないとでも?
[ライン生命警備課職員] ごほっ……まさか。あなたの能力を疑ったことなどありません。
[メアリー] だったら邪魔しないで。あなたも荒野の牙獣の餌にはなりたくないでしょう?
[ライン生命警備課職員] ……信じていただけないかもしれませんが、私はただご忠告がしたいだけなんです。
[ライン生命警備課職員] あなたを見ていると……時折、昔の上司のことを思い出します。私はあの人を心底尊敬していますが、彼女は私情に流されてご自分の前途を台無しにしてしまったんです。
[ライン生命警備課職員] あなたまで同じ道を歩まれるのを黙って見ていたくはありません。
[メアリー] ハッ……私情ですって?
[メアリー] そんなもので誰かが救えたとしても……
[メアリー] ……自ら破滅を選んだ人までは救えないのよ。
[ライン生命警備課職員] ……
[ライン生命警備課職員] 緊急連絡――
[ライン生命警備課職員] フェルディナンド主任にお伝えください。
[エレナ] ……この記録で十七回目。現在地はエリア9の廊下。
[エレナ] 対象の位置は前回から変化なし……
[エレナ] ……基本の粒子構造は安定してるね。
[エレナ] ――
[エレナ] やっぱり電波が届いてない……これじゃメッセージは送れないや。
[エレナ] (進捗を遅らせるわけにはいかないし、なるべく早く計画を修正しないと……)
[エレナ] (ボスには通信が復旧し次第、このレポートを受け取ってもらわなくちゃね。)
[サイレンス] ……エレナ?
[エレナ] げほっ……ごほっ、ごほっ。
[サイレンス] ここで何してるの?
[エレナ] えっと……少し息抜きしてただけ。
[サイレンス] 開拓者に対して思うところがあるのはわかるけど……一緒にいたほうがいいと思う。
[サイレンス] 前回の攻撃は10分前、このすぐ近くで起きてるから。
[サイレンス] アレがまた現れた時に、一人でいたら危険。
[エレナ] わかった、すぐ戻るよ。
[サイレンス] ……待って。
[サイレンス] その前に……私に言うべきこと、本当に何もない?
[エレナ] 何のこと?
[サイレンス] 確かに、開拓者たちは気持ちが不安定になってるし、もう一度彼らを怒らせたら、ジョイスに危険が及びかねない。
[サイレンス] だから、彼らの前で本当のことを言いたくないのは理解できる。
[サイレンス] でも、今は二人きりでしょう。
[エレナ] 実験のことを訊きたいの?
[エレナ] でもキミはプロジェクトメンバーじゃないし、会社に申請しないと……
[サイレンス] 誤魔化すのはやめて。
[エレナ] ……
[サイレンス] あなたが私にたくさん隠し事をしてるのはわかってる。
[サイレンス] 別にそれを怒ってるわけでもない。私たちは友達で、同僚でもあるから。ライン生命の厳しい機密保持契約のせいで、そのルール外の範囲でも、皆真意を隠すことに慣れているものだし。
[エレナ] オリヴィア、私……
[サイレンス] やりたくてやってるわけじゃないのはわかってる。
[サイレンス] 私にわからないはずがないでしょう?
[サイレンス] ――社内の感染者は多くない。当時、来たばかりのあなたは昼休みに声を掛けてくれたけど……エネルギー課の人があなたを呼び止めて、私が感染者であることをこっそり伝えていたのを覚えてる。
[サイレンス] それでも、あなたは気にせず近付いてきてくれた。
[エレナ] 身体に石がついてるからって気にしたりしないよ。誰だって問題の一つや二つはあるものだし、悪口を言う人がみんな完璧だとは思えないしね。
[エレナ] たとえ、そのあと……私の身体に石が生えてきたって、その気持ちは変わらない。
[サイレンス] うん。それでこそ、私が知ってるエレナ・ウビカだ。
[エレナ] 私は……
[サイレンス] このラボで何か問題が起きていることは知っていたんでしょう。
[サイレンス] そして、最初からあの銀色の何かの正体もわかっていたはず。
[サイレンス] アレは私たちと……この場にいる、すべての罪なき人たちの命を脅かしている。
[サイレンス] 私の知るエレナには、こんな恐ろしいことが起きている時に黙って見ているなんてできなかったのに……
[サイレンス] どうして口をつぐんだままなの?
[サイレンス] もしかして、フェルディナンドが……
[エレナ] ……オリヴィア。これは私の仕事なの。
[エレナ] ヘレンや、そのほかのライン生命のために働く無数の研究員たちと同じように……私の夢はここにあるんだ。
[エレナ] キミも、パルヴィス主任やライン生命に感謝していたって言ってたよね。そういう話で言うとさ……
その星図を暗記しなさい。
物理のテストの点数などどうでもいい。満点がなんだ? そんなものは零点と一緒だ。何の意味もない。
お前はウビカ家の娘だ。大地のくだらん知識など、学んだところで家名に傷がつくだけだぞ。
アステジーニ、お前には失望したよ。
……ひと月以上努力した結果がこれか?
......
君には確かに才能がある。だが、そもそもクルビアの科学研究界には才のない人間などいない。それだけではやっていけないんだ。
君は決意を抱いているようだが、試練を乗り越えたことのないそれはひどく脆いものだ。
君は勤勉だな。しかし、方向性を持たない勤勉さは無謀にも等しいものだぞ。
この時代は君の飛躍を待っている。ゆえに、君が機会を無駄にしたとき、それはすべて君と君が生きる時代にとって大きな潜在的損失なんだ。
エレナ。何千人もの学生の中から君を選んだことを、間違いだったとは思わせないでくれ。
[エレナ] ……フェルディナンドさんは私の目標なんだ。
[サイレンス] 彼に何を言われたの? ドロシーが実験を終わらせるのを手伝えばあなたにプロジェクトを任せるとか? それとも……
[エレナ] キミも私の姉さんと同じで、私のことをただ目を輝かせて飴を待ってる子供か何かだと思ってるの?
[エレナ] フェルディナンドさんの……主任のことを、キミに誤解されてるのは知ってるよ。ここ数年キミがやってた調査のせいであの人はすっごく迷惑してて……
[エレナ] まあいいや。代わりに説明する必要もないよね。
[エレナ] でも、本来ならあの人は、キミやロドスの介入を拒むこともできたんだよ。
[エレナ] 主任は、ライン生命を――クルビアを変えたいと思ってるし……私自身、あの人ならチャンスさえあれば本当にできると思うんだ。
[サイレンス] ……そこまでフェルディナンドを信頼してるの?
[サイレンス] あなたは、ライン生命が……
[サイレンス] ――そこにいるのは誰?
[エレナ] まさかアレが追いついてきたの!?
[サイレンス] あなたは、開拓隊の……!
[開拓隊の隊員] く、来るな!
[開拓隊の隊員] 結局、リーダーの言う通りじゃないか……! や、やっぱり俺たちのことなんか実験動物としか思ってないんだろ……!
[サイレンス] きっと誤解があると思う……
[開拓隊の隊員] そう言ってまた騙すつもりなんだろ?
[開拓隊の隊員] お……俺はもう信じないぞ! あんたらが良くしてくれたのも、全部見せかけに決まってる!
[サイレンス] 落ち着いて、ええと……マイヤーズさん。
[サイレンス] 私たちの言い分が信じられないなら、近くにいるサニーさんから話を聞いてみてほしい。
[開拓隊の隊員] う、うるさい、俺は……俺はこんなとこで死にたくないんだ……!
[開拓隊の隊員] くそっ……何なんだよこの廊下は! どこまでも続いていやがって……感染者収容区の壁みたいで息が詰まってくるんだよ!
[開拓隊の隊員] み、見逃してくれ……俺らを行かせてくれ! 頼む、頼むよ……!
[開拓隊の隊員] ダメだって言うなら、こ、この女を殺すぞ!
[フィリオプシス] ……
[サイレンス] ジョイス!
[エレナ] なんで……どうしてこんなことになったの?
[エレナ] ジョイスを放して! その子を……傷つけないで!
[Mechanist] 地面に残る痕跡から見て、彼女はここを通ったばかりだ。
[サリア] どこへ向かったかわかるか?
[Mechanist] 前方の路地だな。
[サリア] 追うぞ。
[ドクター選択肢1] 待った。
[ドクター選択肢2] まだいくつか疑問が残っている。
[サリア] 何か気にかかる点でも?
[ドクター選択肢1] 先ほどの戦いだが、こちらが勝ったと言えるだろうか?
[サリア] いずれにせよ、私は勝敗に意味など感じないが。
[Mechanist] ……発言の意図は理解した。
[Mechanist] あのリーベリは私たちに勝てはしないが、あそこまで早く負けを認めるほど無力でもない。
[Mechanist] 彼女ならばあと三分は持ちこたえられたはずだ。
[ドクター選択肢1] あるいはもっと早く逃げ出すこともできた。
[ドクター選択肢1] 我々が来るのを待っていたんだろう。
[ドクター選択肢2] 彼女はわざと情報を残したように思う。
[サリア] つまり、我々をこの路地に誘導しようとしていたということだな。
[Mechanist] それで、路地には入るのか?
[ドクター選択肢1] ああ。
[クルビア傭兵] ホルハイヤ様、準備が整いました。
[ホルハイヤ] ありがとう。
[クルビア傭兵] 奴らはすぐに追ってくるでしょうか?
[ホルハイヤ] サリアの性格を考えれば、誘導されていることに気付いていても必ず来るわ。
[クルビア傭兵] ……まだ少し心配なのですが、あのパワードスーツは……
[クルビア傭兵] フェルディナンドさんの許可を得ずに使ってもいいのでしょうか?
[ホルハイヤ] それって、私が言った「もしも」の通りに自分が入ってみたいってこと?
[クルビア傭兵] い……いえ、そんな、滅相もない……
[ホルハイヤ] ――これはテストなの。
[ホルハイヤ] 私たちの雇い主もきっと、これを見たら喜んでくれるはずよ。
[クルビア傭兵] ! ホルハイヤ様、足音が聞こえてきました!
[ホルハイヤ] 先行部隊に伝えて。始めてちょうだい、って。
[クルビア傭兵] 我々はどうしましょう?
[ホルハイヤ] 決まってるでしょ、撤退よ。
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