aklib_story_狂人号_SN-ST-12_グランファーロ

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狂人号_SN-ST-12_グランファーロ

海へ飛び込んだ狩人たちとアイリーニを救ったのはジョディだ。すべてが終わったそのあと、人々は狂人号の喪失という挫折の中から真理を拾い上げ、それを建材として、新たな戦いに向けて動き始めた。


[審問官アイリーニ] ぷはっ――!

[???] 早く、こちらへ!

[ジョディ] 僕の手に掴まってください!

そこには、一艘の小舟があった。

この場所は、イベリアの眼から、そしてグランファーロから、どれほど離れているのだろう?

[審問官アイリーニ] えっ!? わ、わかったわ――!

アイリーニは彼の手を握る。

エーギルの手に、リーベリとの違いなどなかった。

[ジョディ] っ、はあ――す、すみません、力が弱くて……

[審問官アイリーニ] ううん、気にしないで……

[ジョディ] 遠くから、あの船が爆発するところを見たんですが――本当に驚きましたよ……! 皆さん、大丈夫でしたか!?

[スペクター] ――小鳥ちゃんも無事みたいで何よりね。呼吸を整えれば、案外泳げるものでしょ?

[スペクター] 幸い、今は波風も落ち着いてきたみたいだし。

[審問官アイリーニ] はぁ……はあ……ほ、ほかの皆は……?

[スペクター] ……ちょっと状況確認中。

[審問官アイリーニ] さっき見たあれって……エーギルの都市なの? でも、ここまで近くに……? スタルティフィラはずっと都市の上を周回していたってこと?

[スペクター] さあね。何とかあの都市に戻って現状を確かめることもできそうではあるけど、あなたがもう持たないでしょうし……隊長も浮かれた気分で帰ることには賛成できないみたいだし。

[スペクター] そもそも、私の知る限り、エーギルの都市がこんなに陸に近いところにあるはずないのよね。

[審問官アイリーニ] ……げほ、ごほっ……はあ……

[審問官アイリーニ] じゃあ、どうするの? 結局あの街には戻らないわけ?

[スカジ] そうね。グレイディーアが言うには、この辺りもシーボーンの領地らしいわ。あの都市は、避難者たちの隠れ家みたいなものなのよ。

[審問官アイリーニ] どういうこと?

[スペクター] あなたたちが島民と呼んでいるエーギル人は、陸に近い都市が崩壊した時に逃げてきた難民なの。

[スペクター] ……やっぱり、行って助けてあげるべきだと思うわ。

[グレイディーア] ――わかったことは二つよ。

[グレイディーア] 一つ、ウルピアヌスは生きていて、私たちとの同行を拒んでいる。

[グレイディーア] そしてもう一つ。この近くに、あれの進化に惹きつけられて、ほかのシーボーンが現れた。その影響で、群れ全体が落ち着きを失っているわ。

[グレイディーア] この機に乗じて都市へ入ることはできるけれど、そうなれば二度と出られはしないでしょうね。

[スペクター] ……私たち……やっと故郷の街を目にすることができたのに、それに背を向けて出て行かないといけないの?

[スカジ] ……

グレイディーアは、黙ってスカジに目を向けた。

彼女はそれを上手く隠していた。あの静謐が訪れた瞬間、首元を軽く撫でたのと同じように。

[グレイディーア] ……ほかに選択肢はないでしょうね。

[スカジ] どうして、見殺しになんて……!

[グレイディーア] ここに都市なんてあるべきではないのよ。

[グレイディーア] 今は……岸へ戻って、態勢を立て直さなくては。

[グレイディーア] 私たちの責務はエーギルを守ることであって、「家に帰る」ことではないのだから。

[ジョディ] ……

[審問官アイリーニ] それで……あなた一体どうやったの?

[ジョディ] えっ、あっ、僕ですか? 何のことを仰ってるんでしょう?

[審問官アイリーニ] この船、私たちが乗ってきた物より造りが粗末じゃない。どうやって私たちの位置を突き止めたの? 海はこんなに広いのに。

[ジョディ] ……ええと……「狂人号」が信号を送ってきた位置を並べて、見比べてみたら……いくつかの航行パターンを見つけたんです。なのでそれを参照して……最終的には、運任せというか。

[審問官アイリーニ] 運任せですって? その航行パターンって、軌道の誤差はどれくらいありえたわけ?

[ジョディ] ううんと……二、三百海里くらいでしょうか。

[審問官アイリーニ] そんな当てにならないもの、「パターン」とは呼べないじゃない。もし運に見放されていたら、私たちに追いつける可能性なんてほぼゼロよ。そうなれば、海で野垂れ死んでたかもしれないのに……

[審問官アイリーニ] ……まさしく奇跡ね。

[ジョディ] はい……

[ジョディ] ……あの……審問官さん、一つ伺ってもいいですか? ……わ、笑わずに聞いていただけると嬉しいんですが。

[審問官アイリーニ] どうぞ。笑ったりなんかしないわよ。

[ジョディ] ……僕は、偉大な人たちに追いつけたでしょうか?

[ティアゴ] この国の未来のために、お前の祖父母も両親も、二世代にわたって力を尽くしてきた。その名は後世に語り継がれ、本当に不滅となるはずだったんだ。

[審問官アイリーニ] ……ふふっ。

[審問官アイリーニ] そうでもないわね。

[審問官アイリーニ] あなたはただ、運が良かっただけよ。

[ジョディ] あはは……そうですか。

[審問官アイリーニ] 師匠と……裁判所の同僚たちは、いつもこう言っていたわ。

[審問官アイリーニ] 「偉大」と称されるに相応しいのは犠牲者のみ。懸命に生き、イベリアのために戦い続けている間は、誰もが、大いなる責任を負って前進し続けているだけのごく普通の人間である……ってね。

[審問官アイリーニ] 別に、審問官たちは自分を卑下して言ってるわけじゃないのよ。私たちが一番残酷なやり方でイベリアと向き合い続けるのは、少しでも気を緩めれば、その瞬間に打ちのめされてしまうからだもの。

[審問官アイリーニ] だけど、それ以前に……人間の意志がこの灯りから火を絶やさずにいる限り、私たちの間に違いなんてないと思うわ。

[審問官アイリーニ] ……自分なりのやり方で奮闘してきたあの市民たちのように。今なお善意を宿したまま、祖国復興のために犠牲となることすら厭わない戦士たちのように。

[審問官アイリーニ] ……グランファーロの、かつての労働者たちのように。

[ジョディ] ……

[審問官アイリーニ] ……ジョディ。運というのは、いつもあなたの味方でいてくれるとは限らないわ。だけど、もしもう一度裁判所と接する機会があれば……ええと、つまりは、私たちに協力してくれるなら――

[審問官アイリーニ] ――チャンスは必ず巡ってくるわよ。

[ジョディ] ……はは……でも、その……今のは、ただ何となく聞いてみただけなんです。

[ジョディ] スタルティフィラから不朽の知識を持ち帰ったのは皆さんだったわけですし、あなたたちこそ本当の――

[スペクター] あなたは一度に三人ものアビサルハンターを救ったのよ? エーギル人として、執政官直々に表彰されてもいいくらいじゃないの?

[グレイディーア] ……

[スカジ] ……確かに、泳いで戻るのは苦労しそうよね。奴らの巣の上にいる以上、何が起きてもおかしくないし。

[スペクター] グランファーロ生まれのあなたに、どういう執念があってのことかは知らないけど……何にせよ、よくやってくれたと思うわ。

[スペクター] エーギル人として……あるいは、イベリア人としてもね。

[ジョディ] ……ありがとうございます。

[ジョディ] ――さあ、それじゃ帰りましょうか!

[聖徒カルメン] ――

[聖徒カルメン] よくぞ戻ってきてくれたな、狩人たち。そして、アイリーニよ。

[審問官アイリーニ] ……あの……上官の、ことですが……

[聖徒カルメン] ……知っていたのかね?

[審問官アイリーニ] ……

[聖徒カルメン] 彼の遺品は整理しておいた。あの灯台の下で戦死した同志たちの物と共にな。

[聖徒カルメン] こうした遺品の今後については、懲罰軍の到着を待って検討するとしよう。

[聖徒カルメン] ――下等な恐魚に大審問官ダリオを打ち破ることなど到底できん。しかし、彼はイベリアの眼を守り抜くために、命を掛けて時を稼ぐことを選んだ。

[聖徒カルメン] 審問官には、悲嘆に暮れる時間など与えられぬものだ。ダリオが君に大きな期待を寄せている以上、前に進み続けねばならない。

[審問官アイリーニ] ……はい!

[聖徒カルメン] ……とはいえ。

[聖徒カルメン] 彼の灯りは、未だ壊れることなく、向こうにそのまま置いてある。

[聖徒カルメン] ……行ってきなさい。

[審問官アイリーニ] ありがとうございます……

[グレイディーア] 懲罰軍はトラブルに見舞われているようですわね。イベリアが誇る海軍力を目にしてみたいものですけれど。

[聖徒カルメン] ……「狂人号」は沈んだか。予想外の結果だな。

[グレイディーア] ええ。これは紛れもなく、我々にとっての後退と言えるでしょう。

[グレイディーア] ……ですが、それ以上に多くの情報を得ることはできましたし、さらには……

[聖徒カルメン] エーギルの都市を発見した、といったところかな。

[聖徒カルメン] すでにケルシー女史から彼女の推測を聞いていてね。貴女方も一度聞かせてもらうといいだろう。

[聖徒カルメン] ――裁判所はすべてを制御できると信じていた。サルヴィエントに始まり、スタルティフィラに至るまで……イベリアの栄光を少しずつ取り戻せるはずと思っていたのだ。

[聖徒カルメン] だが、我々も認めざるを得ないようだな。裁判所は、この現状を維持するだけで……精一杯だということを。

[グレイディーア] ……

[聖徒カルメン] 執政官殿。

[聖徒カルメン] 貴女方は、あの船で何を見たのかな?

[審問官アイリーニ] ……上官の灯りだわ。……黒く焦げついて、恐魚の匂いが沁みついてる……

[審問官アイリーニ] 上官……

[審問官アイリーニ] いいえ――師匠!

[審問官アイリーニ] 私は、裁判所に課された任務を達成しました! スタルティフィラ号を発見したのです!!

[審問官アイリーニ] 不幸にも、船は沈没してしまいましたが……それでも、船上のイベリア人は――全員が! 自分のやり方で最後まで戦い抜きました!

[審問官アイリーニ] 上官!

[審問官アイリーニ] 私は――審判の何たるかを! そして我々が直面している敵を、理解しました!

[審問官アイリーニ] ですから、私は――躊躇いません! 怖気づくこともしません!

[審問官アイリーニ] イベリアの国家存続のため、イベリアの敵と戦うため、イベリアの潔白と美徳を守るため――私は、剣と灯りを高く掲げ続けます!

[聖徒カルメン] ……アルフォンソが……? なんということだ……!

[聖徒カルメン] 六十年以上もの間、どれほど苦しめられたことだろうか……! 最も残酷な刑罰を受けた罪人でさえ、一年と持たないというのに!

[聖徒カルメン] 彼が……そんな……

カルメンは次第に言葉をなくし、沈黙した。そしてその腰をかがめると、岩礁の上に座り込む。

恐魚の死体が高く積み上がり、山を成している。最早生きた怪物の痕跡はなく、ただ溟痕の名残だけが海へと後退しながら、空の特権を奪うかのように、青くかすかな光で海面を照らしていた。

彼は勝利を収めたはずだった。何しろ、裁判所が長年宿願としてきたことを成し遂げたのだ。その上今や、もうじき懲罰軍が合流し、すべてが円満に進むだろう状況ですらある。

しかし、彼は黙り込んでいた。

遠く汽笛の音が聞こえてくるまで、ずっと。そうして、懲罰軍はイベリアの眼へと到着した。

[エリジウム] 確か、この場所は……復興の丘という名前だったと思います。ここからなら、町の端までよく見えそうですね。

[エリジウム] ティアゴさんの死は、決して安らかなものではありませんでした。ああいった最期を迎えたことの良し悪しも、僕に判断できることではないでしょう。……それでも……

[エリジウム] 皆さんには感謝をお伝えしないと。――ありがとうございます。

[Aya] どういたしまして。

[Aya] 厳かなお葬式で、英雄に一曲捧げるのも悪くないしね。

[Alty] ねえ、Frostが戻ってきたみたいよ。

[Aya] うん。もう少ししたら、帰ろうか。

[Aya] イベリアのお兄さん、君はどうするの? この数日、大変だったんでしょ?

[エリジウム] ……

[エリジウム] グランファーロはティアゴさんの故郷でしたし、エーギルはここにいる皆さんや、僕の友人であるアビサルハンターたちの故郷です。

[エリジウム] でも……普段の僕はふざけてばかりいるから、皆忘れちゃってるのかもしれませんが……

[エリジウム] イベリアは僕の故郷でもあるんです。だから正直言うと、今は気分が晴れなくて。

[Aya] あの先生は何もしてくれないの? 君はあの人のために働いてるんでしょ?

[エリジウム] もう十分、してくれてますよ。それこそが、ロドスにいようと思う理由ですしね。

[エリジウム] だけど……

[エリジウム] ……僕自身は、まだ何もできてないんです。

[忙しそうな町民] ほら、急げ! 物資を倉庫へ運び込むぞ!

[忙しそうな町民] おい、テントの数はどうなってるんだ? あの方から説明があっただろう? まったく――

[ジョディ] ……あっ。

[忙しそうな町民] じょ、ジョディ? 戻ってきたのか!?

[忙しそうな町民] さ……裁判所に捕まったのに、解放されたってことか? っていうか一体どこに行ってたんだよ!

[忙しそうな町民] 俺らは大勢の懲罰軍に連れて行かれてさ。そのあとまた、奴らのあとについて町へ戻ってきたんだが……懲罰軍は何かと戦ってるらしくてな。今度はテントやら何やら運んでくれって頼まれて……

[忙しそうな町民] グランファーロはどうなるんだ? っと、そういや別件だが、ティアゴさんを見かけてないか?

[ジョディ] ……

[聖徒カルメン] ジョディ・フォンタナロッサ。

[忙しそうな町民] あっ……せ、聖徒様! それに審問官様までいらしたんですね!

[審問官アイリーニ] ……ええ。

[聖徒カルメン] 少し外してもらえるかな。彼と話がしたいのでね。

[忙しそうな町民] もっ、もちろんです! どうぞごゆっくり!

[ジョディ] ぼ、僕とですか?

[聖徒カルメン] ああ。ついてきなさい。一緒に街を散策しようじゃないか。

[聖徒カルメン] アイリーニは、帰路の途中である決断を下した。

[アイリーニ] ……

[ジョディ] け、決断……? どういった決断でしょうか?

[聖徒カルメン] 元々、ダリオとしては、アイリーニのことは私に託し、彼女が大審問官となるまで育て上げてほしいと考えていたようだ。

[聖徒カルメン] ……彼の戦死は予想だにしないものだった。――いずれその日は訪れるものだが、これほど早く己が運命を受け入れる必要はなかったはずだ。

[アイリーニ] ……

[聖徒カルメン] しかし、アイリーニは決心をした。

[聖徒カルメン] 彼女は、審問官の職を退くそうだ。

[ジョディ] ――! な、なんで……どうしてですか!?

[アイリーニ] これは自分で決めたことよ。私には、私なりの考えがあるの。

[アイリーニ] あなたのこととは無関係だから、気にせず続きを聞きなさい。

[ジョディ] あっ、わ、わかりました……

[聖徒カルメン] そう、問題は君のことだ。君は知りすぎたし、深入りをしすぎた。その上、この町のエーギル人たちはあまりに多くのものを冒涜してきたのだ。

[ジョディ] ……

[聖徒カルメン] ……それでも、君は我々を本当に良く助けてくれた。

[聖徒カルメン] 君は弱い。ゆえに、本来はその命さえも砂粒の如く軽いものだっただろう。だが、君は自らの力を示した。それは小さな火種であっても、実に得難いものなのだ。

[ジョディ] ぼ……僕はただ……自分が生きている理由を探していただけで、皆さんのように気高くもなければ、強い意志を持っているわけでもありません。

[聖徒カルメン] ジョディ。君には……裁判所に加わる、最初のエーギル人になってもらう。

[ジョディ] ……

[ジョディ] え? は、はい? 僕が? さ、裁判所に、ですか?

[聖徒カルメン] 君に拒否権はない。グランファーロには人手が必要であり、君という一人のエーギル人は、重要な役割を果たすことになるからだ。

[聖徒カルメン] それが終われば……そうだな。私にも、年若い書記がもう一人必要になることだろう。

[ジョディ] お待ちください……! 僕が、裁判所の一員になるということなんですよね?

[ジョディ] ぼ、僕としては、そうしたくは……

[アイリーニ] あなた自身が望まないことだというのは知ってるわ。もちろん、裁判所の多くの人や、エーギルに対する根強い偏見を持つ人々も、同様にそれを望まないでしょうしね。

[アイリーニ] だけど、見てみたくはない? ……かつてイベリアがグランファーロに、そしてティアゴに約束していた未来を。

[ジョディ] ……!

[アイリーニ] 誤解のないように言っておくけど――

[アイリーニ] 裁判所に加わるということは、一種の試練よ。エーギル人のあなたからすれば、苦行と見なしてもいいようなものだと思うわ。

[ジョディ] ……か……考えてみます。

[アイリーニ] そうしてちょうだい。

[ジョディ] あの、アイリーニさんはなぜそんな決断をされたんですか? だってあなたのお師匠様は……

[アイリーニ] ……

[アイリーニ] 審問官という地位は、アビサルハンターやエーギルと接触するには都合が悪いの。だからこそ放棄したのよ。

[アイリーニ] 今日まで私を支えてくれた信念を……師匠が殉死されたあとになって捨て去るのは、確かにそう簡単なことじゃないけどね。

[アイリーニ] ……お願い、今はこれ以上聞かないで。また会うことがあれば、その時に話しましょう。

[ジョディ] す、すみません……

[アイリーニ] ――ただ……これだけは言えるわ。

アイリーニは、広場にある彫刻を――イベリアの眼を模したそれを見やった。

戦いで破壊された町並み、廃墟となった家々、そして混乱の中で組まれた仮設テント。

その眼は、すべてを見つめていた。

[アイリーニ] たとえ、相手が法の範疇をはるかに超えた存在だとしても、イベリアは必ず、奴らにその冒涜を償わせてみせる。

[アイリーニ] 私たちは、絶対に勝ってみせるわ。

[ケルシー] どうか感謝の意を表させてくれ、Frost。ジョディと狩人たちを助けてくれたのは君だろう。

[Frost] 気にすることはない。ただのウォーミングアップだからな。――波の行く先を変えられるのは、あの利かん坊だけじゃないということさ。

[Frost] この次は、ライブを見に来てくれ。

[ケルシー] ああ、そうさせてもらおう。

[Frost] では、私はこれで。Ayaと皆を探しに行かなければ。

[Frost] 少し出かけただけなのに、どこかへ行ってしまうとはな。

[Frost] (不満を表明するソロを奏でる)

[Frost] ときに、ケルシー……

[Frost] Ayaなら、ここでこう言うはずだ。

[Frost] せっかくここまで来たんだから、無駄足踏んで帰るわけにはいかないよ。用意ができたら教えてね。目を覚ます準備はできてるから。……とな。

[ケルシー] ……感謝する。いずれ、我々が真の意味で協力関係を築くことのできる日もくるだろう。

[Frost] (別れを告げるソロを奏でる)

[グレイディーア] つまり、これがブレオガンの見つけた真実ということですのね。

[グレイディーア] 「巨獣」と「海神」、それらの繋がり。

[グレイディーア] はるか昔から、そうした巨大生物は海にはいなくなっていて、それらが皆こうした形で陸に住んでいるのだとしたら――

[ケルシー] それは少し違う。

[ケルシー] 確かに、炎国、サルゴン、サーミ……この国々は、巨獣によって引き起こされた問題に直面したことがある。

[ケルシー] しかし、忘れてはならない。

[ケルシー] 海で起こる異変には、ほかにはない特異性が存在している。その具体的な原理や推移のことは、私でさえ正確にはわからない。

[ケルシー] 私には結果をもとに、未来を予測することしかできないんだ。さらに言えば、それは決して明るい未来ではない。

[ケルシー] 加えて、私が思うに、ブレオガンはこのほかの真実についても推測を立てていたはずだ。君の言っていたように、もう一人のアビサルハンターが生きているのなら……

[グレイディーア] 海神は一匹ではありません。私たちが殺したのは、エーギル文明が隠蔽していたほんの一部に過ぎませんもの。

[グレイディーア] それに……

[ケルシー] 君たちが殺した「あれ」は、スカジの体に宿っている。

[ケルシー] となると、私が立てた中でも最悪の予想が的中したことになるな。君たちがエーギルへ帰らなかったことは、実に賢明な判断だ。

[グレイディーア] ですが、ロドスにはもう十分助けていただきました。あなた方にもご自分の任務があるのでしょうし、ここから先は私たち自身で解決いたしますわ。

[ケルシー] ……

[ケルシー] 君の言うように、ロドスには……ロドスの責務がある。ロドスの運行は優秀なオペレーターたちが支えてくれているんだ。

[ケルシー] だがこの数万年で、私にも自分自身の責務というものが芽生えた。

[ケルシー] 私はこれまでに幾度も、エーギルが直面する問題を解決しようと試みてきた。しかし、エーギルは大地を離れ、孤立しつつある。

[ケルシー] 海の問題はもはや、源石と同レベルのものとなった。

[ケルシー] これ以上先延ばしにするわけにはいかないんだ。

[ケルシー] 文明を存続させたいと願うのなら、この災禍を乗り越えなくては。

[ケルシー] たとえ、世界には依然として争いが絶えず、スタルティフィラが冠するその名にあるような、「狂った」わだかまりや戦乱が起き続けるのだとしてもな。

[ケルシー] テラは蔓延する病と無知蒙昧の人々、そして狂気と混沌の中で理性を追い求める聖人たちで満ちている。

[ケルシー] 今、君は進化の根源を知り、あらゆる推測を検証した。エーギルの都市は手の届く場所にあり、傲慢なイベリアでさえも殻にこもることを諦めたんだ。

[ケルシー] 始めるとしよう。総戦略設計士殿。

[ウルピアヌス] ……

[ロシナンテ] (不満そうに首を振る)

[ウルピアヌス] 落ち着け、ロシナンテ。

[ロシナンテ] (一層大きく首を振る)

[最後の騎士] ……ロシナンテ……

[ロシナンテ] (いななき)

[ウルピアヌス] ……我々はどこへ向かうことになるんだ?

[最後の騎士] 大波ガ、迫っテいる。

[最後の騎士] 我らハ、大波を乗り越エる。

[最後の騎士] 我らこそガ、大波とナる。

[ウルピアヌス] 大波、か。海に水が、天に月が、空に風がある限り、波が鎮まることはないものだ。

[ウルピアヌス] お前が狂気の中に垣間見た終着点は、あまりに壮大だな。

[最後の騎士] 行ケ! ――行く、ノだ!

[ロシナンテ] (嬉しげないななき)

[最後の騎士] (かすれた叫び声)

[最後の騎士] 海よ! なオもさザ波ヲ立てよウなど、こノ私が許サんぞ!

[最後の騎士] いザ、往かン!

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