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吾れ先導者たらん_GA-5_葬儀_戦闘前
我々を導くのは儀式そのものではなく、そのすべてを経験した自分自身である。「自分の道を自分で見つけ、自分の両足に頼って一歩ずつ歩んでいくしかない。」
[彫の深い墓掘り人] うーん、どのくらい掘れたかな?
[元気のない墓掘り人] もう少し掘っておくか?
[元気のない墓掘り人] いつかはここもただの荒れ地にされちまうだろうけどな。墓が車輪を付けて天災から逃れるなんて無理だしな。
[元気のない墓掘り人] 人っていうのは生きた痕跡を残したがるもんだ……できるわけもないのによ。だったら灰にして荒野にばらまいちまった方がいいと思うけどな。
[彫の深い墓掘り人] それじゃ俺たちの仕事がなくなっちまうだろ。
[元気のない墓掘り人] それもそうだな。
[彫の深い墓掘り人] でもよ、墓っていうのは死人のためのもんでもないと思うぜ。こういう儀式とか、墓石なんかは……生きてる側が必要としてんだよ。
[彫の深い墓掘り人] 人はこういうものに別れを告げて、新たな道を歩む――
[元気のない墓掘り人] ハッ、その果てにゃ自分の墓が待ってるんだけどな。
[アンドアイン] 儀式の準備も整った頃だね。
[セシリア] ……うん。
[セシリア] あの……わたし……なんだか……
[セシリア] よくわからないの……
[セシリア] ママ……
[セシリア] 修道士さん、わたし、昨日はとってもうれしかった……
[セシリア] ロゼラお姉ちゃんがたくさん面白いお話をしてくれて……一緒にお葬式の準備をして、それで……わたしにもママのためにしてあげられることがあるって思ったの。
[セシリア] でも……それが終わったら……それからどうすればいいの?
[セシリア] わたしは……ママのために頑張ったよ……
[セシリア] でもママは、わたしの頑張りを見てくれてるの?
[セシリア] わたしがしたことは……本当に役に立つの?
[セシリア] 修道士さん、修道士さんはもう何回もやってるんだよね……
[セシリア] こんな時……お葬式では、わたし……どうすれば……いいの?
[セシリア] ……それから、お葬式が終わった後は、どうすればいいの……
[アンドアイン] うん。そうだね、お葬式では……
[アンドアイン] 君はまだ小さいけれど、誤魔化さずに教えるよ。
[アンドアイン] 私たちが他人のためにしていることは、実はその多くが私たち自身のためなんだ。
[アンドアイン] だけどセシリア、これは自己満足などではないよ。人が生きながらにして行うすべては、結局のところ、「自我」を形成する作業の一環だからね。
[アンドアイン] 去り行く人を弔う葬儀やお別れは、自分を一休みさせるためのものでもある。
[アンドアイン] つまるところ、歩いてきた道に目印を付けるためなんだよ。
[アンドアイン] 多くの大人たちは……そうやって安らぎを得ようとする。でも安らぎや他の何かを得られるかどうかは、実は葬儀によって決まるものではないんだ。
[アンドアイン] すべては、それらを経験した後の私たち自身にかかっている。
[アンドアイン] ひとしきりの回顧と休息を終えた後、私たちはまた前に進むしかないんだから。
[セシリア] どこへ進むの……?
[アンドアイン] それを自分自身に問いかけるのさ、セシリア。
[アンドアイン] その答えを導き出せるのは自分だけだよ。君も私も、誰もが一生涯かけてそれを模索するんだ。
[セシリア] ……自分に。
[アンドアイン] 自分の道を自分で見つけ、自分の両足に頼って一歩ずつ歩んでいくしかない。
[セシリア] じゃあ、修道士さんは? 修道士さんはこんなに物知りだし……修道士さんの道は……どんななの?
[アンドアイン] ……私には答えられない。それを見つけたと断言することすらできないんだ。
[アンドアイン] 模索の過程はそれほどまでに苦しく、絶望を味わうんだ。道は本当に存在しているのかと疑わしくなるほどにね……
[アンドアイン] でも私は諦めていないよ。だから私や仲間たちはこう名乗っているんだ……
[アンドアイン] ……「求道者」と。
[エゼル] えーっと、燭台はどこだ……
[エゼル] (……誰かいる? 病院で遭遇したリーベリだ……名前は確か……パティア? それとあのオレンって名前のレガトゥスまで……)
[オレン] 意味わかんねぇよ、あの男は何がしてぇんだ。
[パティア] オレン、言葉に気を付けなさい。
[オレン] 今が絶好のチャンスだろ。葬式なんかで時間の無駄遣いをするくらいなら、もっと他にやることがあんじゃねぇか。
[パティア] あんた、あの子の母親と知り合いだったらしいけど、随分と冷たいのね。
[オレン] セシリアの情報をアンドアインに持ってきたときから、もう覚悟は決まってんだよ。
[オレン] セシリアはこの都市を楽園の地位から引きずり下ろすに足る逸材なんだ。
[オレン] あの子がいりゃ、金と赤の幕に隠れてるあの聖人サマも……その取り巻きどもも――さらに多くの奴らにまで揺さぶりをかけることができるだろうな。
[エゼル] (何の話をしてるんだ……?)
[パティア] サンクタが自分の聖都を滅ぼしたいとかおかしいんじゃないの。しかも混血の女の子を利用するなんて、ほんと薄汚いわ。
[オレン] 俺を狂人みたいに言うんじゃねぇよ。俺はただ可能性の話をしただけだ。実際にやるなんて一言も言ってねぇだろ。
[オレン] むしろ、その段階までやらない方が、交渉材料としての価値を最大限に活かせるってもんだ。
[オレン] とにかく、俺の今の狙いはセシリアが教皇庁の手に渡らないようにすることだけだ……この点において、アンドアインはひとまず俺と同じ道の上にいるってわけだな。
[パティア] オレン、一つ忠告しておくわ。
[パティア] あなたがセシリアを使って何をするにしても、先導者様との約束を忘れないことね。
[オレン] ……忠告ありがとよ。俺ももうちょっとだけお前らに付き合ってやるよ。
[オレン] そんじゃここらで失礼させてもらうぜ。時間をつぶすなら、葬儀よりもいい場所があるからな。
[エゼル] ……
[エゼル] (……この人たちも一枚岩じゃないのか。)
[エゼル] (それにしても、まさかレガトゥスまで関わっていたなんて……一番危惧してたことだ……)
[エゼル] (葬儀を終えたら、セシリアを連れてここから離れよう。)
[エゼル] セシリア、おーい!
[アンドアイン] エゼル君、まもなく葬儀が始まるよ。
[エゼル] アンドアインさん、僕はあなたたちの遠大な理想に反対する気はありませんし、あなたと信仰について議論しようとも思いません。
[エゼル] ですがセシリアだけは……葬儀を終えたら、僕はセシリアと共に去ろうと思います。
[アンドアイン] どこへ行くつもりかな?
[エゼル] ……
[エゼル] あなたの心配には及びません。
[アンドアイン] ……蝋燭に火をともす時だ、エゼル君。セシリアのお供をしてあげるといい。
ラテラーノの初春の早朝、空気は未だ肌寒さを帯びている。
笑いあり、音楽あり、スイーツありのラテラーノの葬儀では、ときおり儀式の品位を損なわない程度の爆発事故が起こることもある。
去り行く人は崇高な聖霊と一つになり、天へと帰る。誰もがそれに酒杯を掲げ、その者を祝福するのだ。
しかし「葬儀」には、もう一つサンクタ以外の種族が知る由もない一面が存在している。
あるひとときを迎えると、すべてのサンクタはあまりの悲痛さに喉を詰まらせ、身動きも、呼吸も、視線を動かすこともできなくなるのが常なのだ。
まるで防波堤を破壊した波が、もろくなった一つ一つの魂をさらっていくかのように。
しかし今日のステファン区安魂教会には、前者の喜びも、後者の悲しみの伝播もない。
一人のやせ細った少女だけが、彼女にとっては重すぎるシャベルを必死に動かしていた。
母親の墓に最後の土をかぶせるために。
[アンドアイン] セシリア、さぁ、お別れの時だよ。
[セシリア] ……
[セシリア] ……ママ……わたしどうすればいいのかな?
[セシリア] わたしね……こうやってママのためにいろいろやってる時は、何も怖くないし、何でもできると思ってた。
[セシリア] ママがそばにいない時、わたしはちょっとだけすごくなったみたいな気がするんだ……それはわたしが大きくなったからかな?
[セシリア] でもエゼルお兄ちゃんが言ってた……これからは、もうママに会えなくなっちゃうんだ。わたしが大きくなっても、すごくなっても、立派になっても、ママにはもう見えない……そうでしょ?
[セシリア] わたしがいい子でいても、ママはもう褒めてくれない……わたしが悪い子になっても、ママはもう怒ってくれない……
[セシリア] じゃあわたしは、なんのために大きくなるの?
[セシリア] 修道士さんが言ってたの……ママのために葬儀を準備するのも、ママとお別れをするのも、それは自分のためなんだって……
[セシリア] 自分のためって、一体どういう意味なの?
[セシリア] わたし怖いよ……ママ……
[セシリア] 一昨日ね、知らない修道士のお姉さんが、泣いても笑っても、それが自分なりのお別れなら、きっと受け入れられるって言ってた。
[セシリア] でもわたしわからないよ……ママ、わたしは泣いた方がいいの、それとも笑った方がいいの?
[セシリア] 修道士さんはね、自分に問うしかないって言ってた……でも、自分に聞いてみたって、わたしよくわからないよ……
[アンドアイン] ……セシリア、焦る必要はないよ。
[アンドアイン] 君にはたっぷり時間があるんだから。
[???] でも残念ね、あなたにはもうないわ。
[モスティマ] やあ、久しぶりだね。
[フィアメッタ] アンドアイン、やっと見つけたわ。
[アンドアイン] ……モスティマ、フィアメッタ、戦友たちよ、久しぶりだね。
[アンドアイン] 故人を悼むのなら、来るのが少し遅かったようだ。
[フィアメッタ] 大丈夫よ。
[フィアメッタ] 次の奴を悼めばいいんだから。
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