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更新日:2026/03/02 Mon 22:47:39NEW!
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q.e.d. 証明終了 q.e.d. q.e.d.エピソード項目 母 娘 祖母 孫娘 岩手県 遠野市 高飛び込み 母也堂 柳田邦男 遠野物語
#center(){&color(darkgoldenrod){&sizex(6){ところで…『母也堂』という話をご存知ですか?}
それがなに?
#center(){&color(darkgoldenrod){&sizex(6){なんと言うか…いつの時代も娘を思う母の気持ちは強く…}
#center(){&color(darkgoldenrod){&sizex(6){そして油断ならぬものだと思ってね}
「母也堂」とは、Q.E.D. 証明終了のエピソードの一つ。単行本第34巻に収録。同時収録作は「災厄の男の結婚」。
以下、ネタバレにご注意ください。
【ストーリー】
高飛び込みの大会に出場する中学時代の同級生・白河涼を応援するために級友たちと岩手県遠野市へとやって来た可奈(と応援の頭数に連れて来られた燈馬)。
涼は両親の離婚後母方に引き取られ、現在は資産家の祖母・白河波里と共に遠野市に住んでいた。
波里は不動産会社の会長を務めており、ちょうどその日も支社長の粟金望が融資を頼みに来ていた所だった。
だがそこへやって来た警察により、一同は涼の父・深津慎司が不審な死を遂げていた事を知る。
彼は元妻で涼の母・白河志乃から借りた車で遠野まで来ていたそうなのだが、何者かに射殺されたらしいのだ。
また遠野の地には、娘を想うあまり過ちを犯してしまった母にまつわる伝説『母也堂』が語られている。
その話を語った粟金もまた、後日謎の死を迎えてしまう。
彼らの死は偶然なのか、それとも…。
【事件関係者】
じゃあ私
母さんがいなくてもお金のある所にいれば幸せな奴なの?
あんなひどいこと言わないでほしかった
- 白河涼(しらかわ りょう)
可奈の中学時代の同級生。
中学までは東京育ちだが現在は遠野の高校に通う。
今どきの高校生らしく田舎の遠野よりも東京の方が今でも好き。
水泳の高飛び込みの県大会を控えており、全国大会に出場できれば堂々と東京で遊べる大義名分が出来ると張り切っていた。
過去の事もあってか慎司の死を警察に知らされても全く感情が動かなかったが、その一方で「自分がいない方が涼は幸せだ」という志乃の一言に傷つき可奈の前でのみ涙を流す。
しかし精神はかなり強く翌日の県大会では無事に優勝を果たした。
粟金の事は胡散臭く思っていたようだが、それでも彼が飛び込みで溺れた時には可奈と共に即座に救助に向かう。
だがその彼が救助の甲斐なく死亡してしまった事が堪えたのか、事情聴取後は1人だけ先に帰ってしまった。
なるほど
3年前経済危機を予測できなかった人間が
3年後の景気回復を保証するわけね
- 白河波里(しらかわ はり)
涼の祖母。
東京にも土地を持つ白河不動産の会長を務める資産家で、遠野でも有力者としてその名が知られる。
涼とは逆に遠野の自然が好きで物があふれる東京は嫌い。
粟金からの融資の依頼をけんもほろろに断っていたが、一方で大会で優勝した涼に東京への餞別に大金(具体的には不明だが涼が驚くほどの金額)を渡すなど、
成果を出した者には相応の報酬を与える事を惜しまない性格。
慎司来訪時は母屋を挟んで玄関とは反対にある離れにいたために彼が来た事に気づいていなかったらしく、むしろ自分に会わせずに追い返してくれた幸子を称賛した。
実は一昨日慎司さん来られまして
そのとき涼さんは部活に
奥様は離れにいらっしゃったのですが取り次ぐ必要もないと思いまして
- 大貫幸子(おおぬき さちこ)
白河家の家政婦。恰幅の良いおばさん。
慎司についての悪評は前々から聞かされていたらしく、慎司が波里に会いに来た時は留守だと嘘をついて追い返した。
また波里の耳を汚す事はないと考え、県警が来るまで慎司の来訪を話していなかった。
…お金を得るには対価が必要ということですな
やりましょう!会社のためだ!!
- 粟金望(あわかね のぞむ)
白河不動産の東京支社長。
経済危機により再開発の資金が不足してしまったため会長である波里に融資を頼みに来ていた。
表面的には平身低頭だが、裏では波里を『ババァ』、志乃と涼を『マヌケ共』と呼ぶなど非常に口が悪い。
県大会を終えて帰宅中の涼と一同の前に現れ、何故か『母也堂』の民話の存在を教える。
その後の白河家の祝賀会でもご相伴に預かるが、涼が自分と違って波里から大金を貰えた事に嫌味をぶつける。
しかしその後の成り行きで波里から「一番高い飛び込み台から飛び降りれたら1億円融資する」と条件を出され、会社のためならばと快諾する。
飛び込み当日はビビッて全く動けてなかったが、30分以上経ってからようやく飛び降りる(というか落ちる)ことに成功する。
しかしその直後、飛び込んだプールで心臓マヒを起こし不幸にも死亡してしまう。
周囲が既に諦めムードで止める中、自分の意志で飛び降りたため事件性はないと思われるが…
余談だが、(誰の言葉かは不明だが)止めようとする周囲の台詞の中の一つ「10円あげるから降りてきなよ」は地味に酷くないだろうか。
親権をタテに涼を取り戻す!
あいつのためならババァも金を出すさ!
- 深津慎司(ふかつ しんじ)
涼の父で波里の元娘婿。
借金するは浮気するはの最低な父親。3千万円もの借金で首が回らない状態だったらしい。
涼を引き取れば養育費名目で波里に金をせびる事ができると考えたらしく、元妻の志乃の元に現れ無理やり車を借りて東京から遠野まで来ていた。
涼を巻き込みたくなくて止めようとする志乃を殴ってまでキーを持って行くなどDVの疑惑もありそうである。
しかし燈馬たちがやって来る2日前、遠野の国道沿いで車中で死体となって発見される。
当初は電柱にぶつかっての交通事故死と思われたがその後の県警の調べで、拳銃で腹を撃たれた事による失血死が直接の死因だと判明する。
車のドアは全てロックがかかった状態で凶器の拳銃は助手席に置かれていた。
自殺ならば即死できるよう頭を撃つはずなので自分で撃った可能性は低いと考えられる。
また同じく2日前には白河家に来たようだがその時波里は離れに、涼は部活に行っていたため幸子により追い返されていた。
あの子をそっとしといて!
私達が関わらない方があの子は幸せなのよ!!
- 白河志乃(しらかわ しの)
涼の母で波里の娘。
かつて東京に住んでいた際に慎司と出会い駆け落ち同然で波里の元を去っていた。
慎司と離婚してからは涼と2人で暮らしていたようだが、自分の収入では娘を高校に通わせられないため波里の元に涼を預けた。
しかし家出した過去の引け目もあり自分も実家に戻るという選択肢はないらしく、現在は東京で働きながら一人暮らしをしている。
慎司死亡の報告に来た県警に同行して実家を訪れるが、その後は仕事があると言って泊まる事無くそのまま帰京した。
頑固な娘だと呆れる波里に対しても「涼は私が守る」と言い切って行った。
翌日の県大会も会場まで来ていたが、この時は陰で密かに応援するだけに留まっている。
さらにその後、粟金の飛び込みの日にも県営プールに来ていた所を警備員に目撃されるが、声をかけられると何故か逃げ出してしまった。
慎司死亡時に助手席に座っていた可能性が高い事から県警からは最有力容疑者とみなされている。
- 鬼の面の人物
粟金死亡後の事情聴取から帰る一同の前に現れた、鬼の面を被り赤いちゃんちゃんこを纏った謎の人物。
持っていた鎌を波里に向けた後、自分の喉を掻っ切るかのような仕草をするという、威嚇とも犯行予告とも取れる行動を取りそのまま逃走する。
涼を取り戻すために志乃が波里を威嚇した、というように見えなくもないが…?
応援団は人数多いほど効果があるの!
「枯れ木で山は大賑わい」って言うでしょ!
言いません!*1
- 燈馬想
この漫画の主人公兼ホームズ役。
応援団の頭数稼ぎのためにクラスメイト達と共に遠野へとやって来た。
当然、涼とは初対面のため可奈や級友たちが再会に沸き立つ中で申し訳なさそうに自己紹介していた。
- 水原可奈
この漫画のヒロイン兼ワトソン役。
父を亡くし意気消沈しているかもしれない涼を気遣うが、彼女からは母に避けられていた事の方が悲しかったと心情を吐露される。
また祝賀会では「たかが水に飛び込んだくらいで…」と空気に水を差す粟金に「じゃああんたに出来んの!?」と食って掛かっていた。
- 岩手県警の面々
国道沿いの死体の身元が波里の元娘婿の慎司だと判明し、拳銃の管理上の問題もあり、慎司死亡の報告のため志乃を連れて白河家を訪れた。
自殺或いは波里、幸子、粟金のいずれかによる他殺の線は低いと考えており、
慎司と共に車に乗っていた可能性が高いであろう志乃を最有力容疑者と見ている。
また彼女が粟金死亡時にもプールにいた上に逃げ出した事もあり、事情を聞くために彼女を連れ再度白河家へと訪れた。
【キーワード】
- 拳銃
慎司の死体と共に車内の助手席にあった拳銃は、元は波里の父親が所有していた旧日本軍時代の物らしい。
ただ幸子は既に壊れた物だと思っていたようで、普段は家の外にある蔵(それも鍵をかけてない)に閉まっていた。
弾は一発だけしか発射されていないが、車体を貫通した形跡はないため車中から発射されたものと思われる。
- ロープが結ばれた石
県営プールで粟金が飛び込んだ時、プールの底にはロープが結び付けられた大きな石が沈んでいた。
ただし粟金の身体に外傷は見られないため、この石にぶつかった訳ではないようだ。
- 母也堂
遠野に伝わる実在の伝承の一つ。『母也明神』の名でも知られる。
ある村に巫女と娘とその夫がいた。娘夫婦は仲がよかったものの巫女は娘への愛情ゆえに娘婿を嫌っていた。
そんな折に長雨で村の貯水池の堰が破れた時、巫女は娘婿を葬る計略を立てる。
村人たちには神のお告げと称して『堰の側を通る白衣白馬の者を人柱として池に沈めよ』と言い、一方娘婿には白衣白馬の姿で隣村までお使いに行くよう指示した。
村人に捕まった娘婿は素直に人柱に応じたものの、夫を愛する娘は彼と共に白馬に乗り一緒に池に沈んでいった。
その直後流れてきた大岩でお告げどおりに堰は塞がれたが、娘を失った巫女は嘆き悲しんで自分もまた池に身を投げてしまったそうだ。
岩手県遠野市松崎町には巫女の屋敷跡地に建てられたという祠が今も鎮座している。
粟金は大会後、何故かこの話を涼へと伝えている。
これは殺人ではなく"選択"なんです
Q.E.D.
実は粟金さんは以前に
大金と対価を引き替えにする現場を見ていたんじゃないでしょうか?
例えばこんなことが…
本当か!?
3千万出してくれんのか!?
出してやる
そのかわり
自分で腹を撃ちな
生き残ったら3千万だ
- 深津慎司
白河家で幸子から門前払いを喰らった後、彼は"ある人物"と会い『自分で自分の腹を撃ち、生きたまま病院まで間に合えば3千万円を払う』という選択を突きつけられる。
拳銃が手元に残っていながら彼が真犯人に反撃した形跡がないのは、選択に乗って自分自身を撃ったからである。
燈馬ですら「犯罪を立証する方法はない」と言うほどのいわば完全犯罪である。(確証がない事件はこの漫画では珍しいことではないが)
ちなみに回想では確かに『3千万円出す』とは言われているが、生き残った時の治療費については触れられていないので当然自分で何とかしなければならない。
慎司はこの選択が実は不平等だったという事に果たして気がついていたのだろうか?
- 粟金望
偶然にも慎司が選択を突きつけられた現場を目撃していた彼は、大金を得るために自分も対価を要求される可能性を考えていた。
そこで彼は涼に対して『母也堂』の話を伝え、慎司の死を『涼を守るための志乃の犯行』だと涼に暗示する事で間接的に真犯人に揺さ振りをかけてみたのだ。
しかし相手は全く動じず、逆に条件を出されてしまい渋々飲む羽目になった。
だがこの条件も実はとっても不平等。飛び込む前日の夜、プールの底には重石を付けた氷が沈められていたのだ。
氷は夜のうちに溶けて冷水となって下に溜まり、そこへいきなり飛び込んだ事で粟金は心臓マヒを起こしてしまったのだ。
冷水はプールに落ちた粟金が暴れる事で拡散するため証拠も残らない、というのが真犯人の計画だったのである。
ちなみに条件に乗ろうと乗るまいと先のない慎司と違い、
粟金の場合は乗ればほぼ確実に死ぬ代わりに、断れば責任を取って辞任こそさせられるだろうが死ぬ事はなかった。
突き詰めれば彼が死んだのは「引き際を見誤ったから」という所だろう。
- 白河波里
いずれ娘と孫の幸せを脅かすであろう敵を排除するために、慎司と粟金に死をも厭わないほどの選択を迫った真犯人。
慎司の来訪にひそかに気づいていた*2彼女は蔵から拳銃を持ち出してこっそり慎司と接触して選択を迫り、
更に自分の家の財産を狙っていた粟金に対しては乗れば確実に死ぬ罠を仕掛けたのだ。
燈馬は「殺人ではなく選択」という表現をしているが、勿論これはどちらも立派な殺人罪にあたる。
粟金は母也堂の巫女のように志乃が過ちを犯したと涼に思わせようとしていたようだが、
本当に娘のために過ちを犯してしまったのが波里だというのも皮肉な話である。
燈馬の推理に対しても証拠がなければただのおとぎ話だとしらを切るが、
慎司の殺害はともかく粟金の殺害についてはある証拠の存在を今なお見落としている事を燈馬に指摘される。
小細工なしで堂々と選択を迫った慎司殺害と罠を仕掛けたがために証拠が残った粟金殺害を比べるに、策士策に溺れるを地でいく結果になったと言える。
波里さんは自然の中にあるこの村が好きで東京を嫌っている
そのせいであなたはあるものに気付かなかった
かつて東京に住んでいたその人にとって
監視カメラは当たり前の存在だった
そこに氷を放り込む犯人が映っていたとしたら…
- 白河涼
鬼の面の人物の正体。
粟金救出時にプールの底に石を見つけた彼女は、自分の競技の場に石が投げ込まれていた事に腹を立て救出後に警備室へと直行した。
粟金救助の騒ぎにより警備員は出払ってしまったため警備室は無人だったのだが
腹の虫の治まらない彼女は勝手に監視カメラの録画映像を見始め、そして波里がプールに氷を放り込む瞬間を見てしまった。
長年監視カメラに縁のない生活をしていた波里には、『公共施設である県営プールには当然監視カメラがあるはずと』いう発想が抜けていたのだ。*3
その後涼は祖母を庇うため、変装して一同の前に姿を見せ、架空の外部犯の存在をアピールしたのである。
しかし祖母から疑いをそらすために工作したはずが、まさか母に疑いの目が行く羽目になるとは彼女も予想してなかったようである。
ちなみにこの映像を見る限り波里はトラクターとリアカーを使って自力で氷を沈めている。
結局フィジカル…!!トリックって…最後はフィジカル…!!
母さん!
なんで…言ってくれたら…
志乃…
あんたは私の自慢の娘だ 強くて立派でキレイで…
涼のこと頼んだよ
- 白河志乃
波里に対して「私が守る」と啖呵を切っていたものの、作中全体の描写を見る限り彼女は娘に対して強く負い目を感じるあまり堂々と話せない状態に陥っている。
プールに行ったのも涼が東京に来た時に2人で話す機会が作れないかと話をしに来たためらしいが、
話す機会を作りたいがために話をしに行くというのは外野から見てもかなりまどろっこしく感じる。
(因みにそれを聞いた涼は「話なんかない」と突っぱねたが、可奈に語った本音から見るにこれは自分を避けていた事への怒りによるものだろう)
逃げだした理由についても明言こそされていないが、涼にどう話しかけようか考えてるうちに警備員に声をかけられてしまい、
心の準備が出来ていなかったために逃げ出してしまった…といった所だろう。
だが今回の事件を通じて彼女は、自分にとって涼が大事な娘であるように、波里にとっても自分が今もまだ大事な娘であったと気付かされる事となった。
粟金は『母也堂』の話で志乃を過ちを犯した巫女になぞらえようとしていたが、
むしろ彼女は巫女の愛情を一身に受ける娘だったのである。
以上……証明終了です。
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*2 離れは玄関の反対側にあるが、風通しのために母屋の襖や障子は開け放たれていて離れからは玄関の様子が見えていた。
*3 2020年の感覚で言うと迂闊すぎるようにも思えるが、このエピソードが掲載された2009年当時の地方、それも一般住宅ではそこまで防犯カメラは普及してはいなかった。特に白河家の近くは一面田んぼで商店街も見られないため、波里も防犯カメラの存在を意識する機会がなかったのだと考えられる。

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