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ミクロネーション 国 国家 国家項目 世界の国シリーズ 言ったもん勝ち マイ国家
ミクロネーションとは、主権国家であることを主張するが、国際法上は認められていない「国」のことである。
目次
【概要】
民族や宗教などを理由とした一部地域の独立運動や実際に事実上独立した地域とは違い、大抵は個人や家族などの小さな集団で運営される。また、多くの場合これらの地域は実際には既に存在する主権国家の実効支配を受けている。
要は「ここは俺の国だ!」というお遊びを大真面目にやっている人たちの国……ともいえる。
領有権を主張している地域は、自分の自宅や別荘の敷地とかならまだ可愛い方で、無関係の他国が持つ無人島や、国際法上領有権が認められない人工島、南極や地球以外の星、果ては想像上の土地まで、もはやなんでもありな状況である。
ミクロネーションの中には、独自の切手やコインなどを発行し、それをインターネット上で販売することで収入を得ている国も存在する。そういった活動によってネット上で注目を集め、観光客が訪ねたりすることでも収入を得ていたりする。
【主なミクロネーション】
現存するミクロネーション
・シーランド公国
おそらく最も有名なミクロネーション。第二次世界大戦中にイギリスが作った海上トーチカを占拠した元英国陸軍軍人のロイ・ベーツによって1967年に建国された。
その後は「首相」として雇ったドイツ人にクーデターを起こされたり、イギリスの領海に囲まれたり、火事で2回国土が壊滅状態になったりしながらも、現在もロイの息子マイケルが跡を継いで運営されている。
公式サイトでは、切手やコインなどの他爵位も販売されており、日本の芸能人の中にも爵位を購入し「貴族」になった人がいる。
・セボルガ公国
イタリア北部の小さな村。中世には独立した公国であり、その後他国への編入を経てイタリアの一部となったが、セボルガ側は「編入過程が明確でなく、法的には未だ独立した領域である」と主張。1963年に独立宣言を行った。
……のだが、その後も実際にはセボルガはイタリアの実効支配を受けており、住民はイタリア政府に税金を納め、国政選挙の際には投票を行っている。
実際のところは「独立」をダシにした村おこしの面が強く、事実「独立」によってセボルガには多くの観光客が訪れているという。
・ワイ公国
オーストラリア、シドニー郊外のモスマン市内にある国。何故かアニヲタWikiに個別記事がある唯一のミクロネーションである(多分名前のせい)。
2004年に芸術家のポール・デルプラットが、自宅の前に道路が作られなかったことを理由として独立を宣言した。領土は彼の自宅の敷地である。
・タロッサ王国
1979年にアメリカのミルウォーキーに住む当時14歳のロバート・マディソンによって建国された。ミルウォーキーの一部や南極の一部地域などを領土とすると主張している。初めてウェブ上で注目されたミクロネーションの一つであり、「ミクロネーション」という言葉の発祥ともされる。独自の歴史や言語が生み出されている。
一時は「タロッサ共和国」が分裂して生まれたが、その後王国に復帰した。
・モロッシア共和国
1977年にアメリカのケビン・ボーによって「グランド・ヴルドシュテイン共和国」として建国され、1999年にモロッシアとして改めて建国された国。ネバダ州、ペンシルベニア州、カリフォルニア州にあるボーの私有地を領土としている他、何故か金星にも領土を持つらしい。
既に消滅しているはずの東ドイツとの戦争状態にあると主張している。
・クーゲルムーゲル共和国
オーストリアの首都ウィーンの公園内にある球体状の建物。もはや土地ですらない。
芸術家のエドヴィン・リップブルガーが1976年に建国。オーストリアへの納税を拒否したため実刑判決を受けたが、恩赦された。
・ラドニア
スウェーデンの自然保護区内に彫刻を勝手に作った芸術家ラルス・ヴィルクスによって1996年に建国。国旗は緑一色に見えるが、実際は背景と同じ色のノルディッククロス(北欧諸国の国旗に描かれている十字)が描かれている。
建国経緯といい、女王と大統領が両方いたり、公用語が2つの単語しかなかったりとツッコミどころの多い国である。
・アエリカ帝国
1987年にカナダのモントリオールに住む当時5歳のエリック・リスらにより建国。カナダ国旗のカエデの葉がニコちゃんマークになった国旗を使っている。モントリオール市を含む地球のいくつかの場所の他、火星や冥王星、架空の惑星にも領土を持つと主張している。
・リベルランド自由共和国
クロアチアとセルビアの間にある「ゴルニャ・シガ」という無主地(どこの国の領土にもなっていない土地)にある国。チェコ人の政治家ヴィート・イェドリチカによって2015年に建国された。
というのも、ここにはドナウ川が流れているが、昔と今とで流路が変わっている。クロアチアはより領土が広くなる昔の流路を国境と主張している一方、セルビアは今の流路を国境と主張している。その結果、ドナウ川西岸にあるゴルニャ・シガはクロアチアとセルビアの双方から領土とみなされておらず、無主地となっていた。そこに目をつけたのがイェドリチカである。
「自由」の名の通り自由主義を掲げる人や政党からの支持を受けている。また、2017年にはなんとソマリランドと国交を樹立した。ちなみにソマリランドと国交がある国はここと台湾だけである。
・影と闇の領域と王国
中二病全開な国名。それもそのはず、魔法民族のための国として建国されたためである。2001年にエレバス・デーロンによって建国された。地球の陸地の5分の1に当たる面積を持つ27の王国によって構成されるらしい。
・ストマリア帝国
イギリスのアンドリュー・ストットが2019年に建国。イギリスの2つの私有地とアメリカの1つの私有地から構成されている。他のミクロネーションの多くを軽蔑しているとか。
・スロージャマスタン共和国
正式名称は「スロージャマスタン人民共和国主権国家連合領土」。2021年にできた新しい国。アメリカのランディ・ウィリアムズがカリフォルニアにある砂漠の土地を購入して建国した。「共和国」と自称しているがなぜか国家元首はスルタン(イスラム世界における王の称号の一つ)である。
消滅したミクロネーション
・ローズ島共和国
イタリアの技術者ジョルジオ・ローザが1964年にアドリア海上に建設した石油プラットフォーム状の人工島に建てられた国。建国直後にイタリア政府が警察を派遣、その後裁判を経て1969年にイタリア海軍により爆破されて消滅した。シーランドになれなかった国……かもしれない。
・ハット・リバー公国
1970年に西オーストラリアの小麦農家レオナード・ケースリーが州政府の政策に反発して独立宣言。小麦や切手、コインの販売、観光業などで収入を得ていたが、2020年に新型コロナウィルスの影響で観光業からの収入が断たれ、滞納していたオーストラリアへの税金の支払いの目途が立たなくなったことにより解散。土地は売り払われて納税に充てられることになった。
・ジェルトゥガ(漠河)共和国
1883年から1886年の間、現在の中国黒竜江省大興安嶺地区漠河市に存在した短命の共和国。この地域はジェルトゥガ河(現在の金溝林場付近)に位置し、ロシアの冒険家セルゲイ・セレドキンが主導して設立された。ジェルトゥガ共和国は「アムールのカリフォルニア」とも呼ばれ、アメリカのゴールドラッシュに匹敵する金鉱採掘ブームが起こった。
この共和国は「アムールのカリフォルニア」とも呼ばれ、ロシア人と中国人を中心とした金鉱業者の自治共同体として形成された。19世紀末、清帝国の満洲地域において、アムール川の支流であるジェルトゥガ河(現在の漠河市付近)沿いに自然発生的に成立した。
ジェルトゥガ共和国は現代の中国黒竜江省漠河市と塔河県の地域に位置し、イグナシノ村の南約17ヴェルストに存在していた。
1883年に金鉱の豊富な埋蔵量の噂が広まり、多国籍の冒険者や金鉱採掘者が集まった。
短期間でモーホ金坑から金塊が採掘され、その多くは中国の買い手に渡った。金坑が発展するとそれを相手にする商人も集まり、
人口は急増し、1883年には120人だった住民が翌年には7000人、さらに半年後には15000人に達した。
女性の入国は原則禁止されていたが、1885年以降、一部の鉱夫の家族が居住を許可された。
当初は無法地帯であったが、1884年に起きた殺人事件がきっかけとなり、風紀と秩序を維持するジェルトゥガ金鉱長老の制度が決定された。
国旗は黄黒の二色旗で、黄色は黄金、黒色は土地を象徴するとされる。この色はロシア皇室の黒黄白の旗に由来する可能性がある。
行政機関として「事務所」が設置され、公議会の決定を実施し、税金を徴収していた。主要な街道である「百万街」には政庁があり、釣鐘、鉄砲、茅葺き屋根の教会、倉庫、火薬庫が配置されていた。
立法機関は「公議会」で、全鉱夫が立法権と決議権を行使した。制定された法律は20条あり、主に罰則に重点を置いていた。
司法機関は「裁判所」で、刑罰には杖刑と絞首刑があった。杖刑には棍棒、鞭、荊棘条(とげ付き鞭)を使用した。長老や区長が犯罪を犯した場合、免職後に裁判所で処罰された。
共和国には150人の武装部隊が存在し、鉱区内には道路が整備され、20kmごとに哨所が設置された。補給は当初、ロシア側の集落から行われ、後に商業活動が活発化した。
1884年には4000人以上の労働者が雇用され、700以上の家屋と500以上の窯が建設された。中心街「百万街」には150以上の店舗や娯楽施設が並び、ヨーロッパ水準の高級ホテルや動物園、劇場なども設置されていた。
企業は国庫に税金を納め、その資金は公共施設の維持や公務員の給与に充てられていた。鉱夫たちは平等に出資し、利益を分配していた。
人口は職業ごとに分類され、鉱夫、酒類販売業者、商人などが含まれていた。鉱夫は最大で2万人に達したとされ、ロシア人、中国人、朝鮮人、ヨーロッパ諸国の人々が混在していた。言語はロシア語、中国語、キャフタ語が使用され、言語が通じない場合は手振りや記号でコミュニケーションを取っていた。
共和国の中心地にはホテル「マルセイユ」「ベセダ」「カリフォルニア」などがあり、カジノや劇場、動物園も設置されていた。冬季には食料不足が深刻化し、物価が高騰した。
建築は欧風の木造建築が多く、教会や病院も設置されていた。病院には病室、診察室、薬局、厨房が備えられ、鉱区では壊血病や斑疹チフスが流行した。
はじめ清国はこの辺境地帯に無関心でロシアとの国境監視すら形式的なものだったが、モーホ金坑の評判とロシアによる金の密採取を知るとアムール総督と交渉。
交渉が成果をもたらさないと清政府は交渉と武力による排除を計画し、1886年に軍を派遣して共和国を制圧した。700以上の建物と500以上の地下室が焼き払われ、捕らえられたロシア人はロシア側に引き渡された。
ジェルトゥガ共和国は一部の学者から「最も奇妙な共産主義の実験」として評価され、民主共和制の試みとしても注目された。
ジェルトゥガ共和国は、19世紀後半から20世紀初頭にかけての金鉱ラッシュの中で形成された多くの自治共同体の中で最も有名なものの一つである。
他にもギルイ川地域の「自由鉱夫の集落」やオリョークミンスク 地区の「オリョークミンスク ・カリフォルニア」など、ロシアや中国北部の各地に類似の共同体が存在した。
これらの共同体は当時の新聞や文学作品で注目され、特にレフ・アレクサンドロヴィッチ・ティホミーロフの著作(1905年)などで取り上げられた。
・ドラキュラ公国(Furstentum Dracula)
ドラキュラ公国(Furstentum Dracula)
2002年、ドイツ東部のシェンケンドルフ村で、15世紀のルーマニアに実在したワラキア公ヴラド3世(ドラキュラ公)の末裔を名乗るオトマル・ロドルフェ・ブラド・ドラキュラ・プリンツ・クレツレスコが独立を宣言した。彼は自らを元首である「国王」とし、村の独立を主張した。
オトマル氏は、ベルリン南方約60kmに位置するシェンケンドルフ村に16ヘクタールの土地と邸宅を所有し、レストランや観光事業を展開していた。ブラド公の紋章が入った自作のパスポートを発行し、「官僚主義から解放され、税金の安い国を目指す」として独立を宣言した。
この「独立騒動」の発端は、オトマル氏と村長らが結託して行ったものである。村長は「王国大統領」を名乗り、副村長は「王国内相」を名乗るなど、村全体で独立運動を展開した。村長と副村長がそれぞれ異なる役職を名乗るというユニークな構造が話題を呼んだ。
この背景には、ブランデンブルク州が進めていた町村合併政策への反発があった。この政策により、シェンケンドルフ村は周囲の7つの村と統合される予定だった。村の重役たちは、ドラキュラの子孫という話を利用して「独立維持」をアピールし、政策への抗議を行った。
州政府はこの独立宣言を違憲とし、「相手がドラキュラならこちらはニンニクを投げつけてやる」と冗談交じりにコメントし、動じる様子を見せなかった。この一連の出来事は、ユーモラスなエピソードとして報じられた。
シェンケンドルフ村はベルリン南東部の都市境界付近にあり、歴史的には1375年に初めて記録された。村は14世紀から17世紀にかけて、騎士領や農地として発展し、18世紀にはリッターグート(騎士領)や農業施設が整備された。19世紀にはブラウンコール(褐炭)の採掘が行われ、一時的な経済的繁栄を迎えたが、20世紀初頭には閉鎖された。
2003年、シェンケンドルフは、ドイツのブランデンブルク州ダーメ=シュプレーヴァルト郡に位置するミッテンヴァルデ市に編入された。
オトマル氏はブラド公と血縁関係はなく、1987年、ルーマニアのドラキュラ家の末裔であるカタリーナ・オリンピア・カラジャによって養子に迎えられた。彼女はヴラド・ツェペシュの血縁を継ぐ最後の人物の一人であり、家名の存続を目的としてオトマル氏を養子にした。オトマル氏は「ルーマニア人らしい外見」を理由に選ばれたと語っている。
1995年、オトマル氏はシェンケンドルフ城を購入し、騎士祭やクラシックコンサートなどのイベントを開催した。また、ドイツ赤十字社と協力して「献血パーティー」を企画し、地元の医療機関の血液供給を支援した。
さらに、オトマル氏は2000年に発売された中世音楽バンド「Corvus Corax」のアルバム『Mille Anni Passi Sunt』にゲストボーカルとして参加するなど、ドラキュラにちなんだ企画を打ち出して観光客を誘致した。
城内には小さな博物館も設置されたが、2006年に財政的な理由で城を手放し、2009年には競売にかけられた。
オトマル氏は2003年に自由民主党(FDP)に入党し、地方選挙でダーメ=シュプレーヴァルト郡議会の議席を獲得した。
オトマル氏は2007年11月17日、脳腫瘍のためドイツ東部の町で死去した。享年67歳であった。彼の死後、息子のオトマル・ジュニア(通称オッティ)がドラキュラ家の後継者となった。
2017年、シェンケンドルフは「シェンケンドルフ=クルメンゼー」として再編された。村は現在、歴史的な建築物や自然環境を特徴とする地域として知られている。
【Axis Powers ヘタリアにおけるミクロネーション】
日丸屋秀和による国擬人化コメディ「Axis Powers ヘタリア」にも多くのミクロネーションが登場している。
2024年2月時点で以下の11か国が登場している。
- シーランド
- セボルガ
- ワイ
- モロッシア
- クーゲルムーゲル
- ラドニア
- ハット・リバー
- アエリカ
- スロージャマスタン
- 影と闇の領域と王国
- ストマリア
また、かつて福島県二本松市岳温泉にあったミニ独立国(地域振興政策の一つ)であるニコニコ共和国も登場している。
シーランド(ショタ)はシーランドの公式キャラクターになっており、ワイ(ロリ)も元首のポール公に認知されている。
【似たような存在】
・アメリカ合衆国
ジョシュア・エイブラハム・ノートン一世(1818年2月4日~1880年1月8日)によって樹立され、統治されていた大帝国。
ノートン陛下はサンフランシスコを中心に頻繁に視察に訪れ、その怜悧な知恵と人柄によって広く愛されたという。
……ウソです。アメリカは共和制で、前述のノートンさんはあちこちで皇帝を自称しまくってた変なおじさんです。
詳しくは項目参照。
追記・編集はミクロネーションを建国するかミクロネーションの国民になってからお願いします。
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- 乙。世界の〇〇な国を集めたシリーズの記事は好きだから増えて -- 名無しさん (2024-02-23 22:56:07)
- シーランドしか知らんかったけど、案外たくさんあるんだなこういうの。 -- 名無しさん (2024-02-24 18:46:26)
- 州政府から町村合併を迫られたドイツの村長がそこに住むブラド公の末裔を担ぎ上げてドラキュラ王国樹立を宣言して州政府から「うるせえニンニクぶつけんぞ」って言われてたニュースを思い出したが、検索しても見つからないしちゃんとしたミクロネーションじゃなかったのかな -- 名無しさん (2024-02-24 20:32:49)
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