誰か小説にして

氷の世界ニヴルヘイム。その星の中心には邪神が凍らされていて、生まれた知的生命体はそれを見張らなくてはいけないという呪いがかけられている。

生き物のほとんどが絶滅し作物は育たず海が凍るそこの毛深い人々は、お互いを温めるため一つの国に集まり氷帝の下で暮らしていた。

だがついに食料が尽きる。もう燃やす薪もない。しかしヴォルヴァと呼ばれる巫女達はついに時空移動の魔術を見つけたのだ。

凍りついていた心と体で水晶を覗き探すもの温かく永久のエネルギー。

皇帝ジュピス・ケラノウスが乗る母船に秘めた小太陽だった。

 

小規模のゲートが皇帝の統治する飛行帝国の近くに作られ、そこから偵察が始まった。

大体の国や言語の情報を集めた彼らは小太陽の模造品を作らせてもらうよう交渉を始めた。ニヴルヘイムを凍らせる宝石の一部を見せると、魔力で作った巨大な水の玉の中に放り込んだ。一瞬で玉が凍るのを見るとジュピスはニヴルヘイムの存在と国を認めたのだ。

しかし、もともと地上に住む劣等人類が時渡りの技術を持つことが許せず太陽から来た彼らは交渉に来た氷帝達を襲った。

氷帝は生き延びたものの、"神域人滅騎士団(ゴッドクルセイダース)"に襲われて他の者は全滅。

飛行帝国が小太陽を独占したいと考えているのはすぐに理解した。

自らの国の危機をこの世界の民衆に訴えて飛行帝国から小太陽の模造品を作らせてもらうように言うことも考えられたが、もし飛んで逃げられたらどうしようも無い。

ひとまず、邪神の見張りを数十人に任せると、国民のほとんどをこの世界へ移住させて薪を集め獣を狩りそこで暮らしていた。当然場所は国土のため、国民になった上で税を払わなければならない。氷帝は受け入れるつもりでいた。

しかし、氷の宝石の力が他国に渡ることを恐れた皇帝ジュピスは彼らを「自分の国を襲った野蛮な盗賊」と言い賄賂を渡して他国黙らせると襲撃する。

ベルセルクという戦士達とスークックという羊騎兵とヴォルヴァの巫女達はゴッドクルセイダーズを撤退させたが壊滅し、氷帝はジュピスに殺された。

巫女が死んだことでゲートは閉じられ数十人はいまだ氷の世界に。口封じのため女子供でさえニヴルヘイムの民は殺された。

そして何より氷帝。最初の氷帝は部族の長であり、その部族が巨大化したことで氷帝を名乗ったと言われる。氷帝に選ばれた者は名前を捨て、受け継がれる兜を被り、個人というものを限りなく消す。最後の氷帝であり異世界を目指した彼のその死に際は無念に満たされていたのだろうか。それとも、殆どの人々が笑って暮らせる世界があったことに喜んだのか。氷帝の役目から解放され、溜息をついたのだろうか。