物語 - とある道具屋の店番

ページ名:物語 とある道具屋の店番
 「店長、俺もいつかこの店に来る冒険者みたいに、華麗な冒険をしておたからを取ってこようと思ってんすよ」

若い店員は店の外を眺めながら言った。

店長と呼ばれた老人は、昼の商品点検をしながら叱りつけた。

「ばぁかたれ。商品の品質すらわからんような奴がノコノコ出かけて行ったって、おっ死ぬだけだわい」

「そりゃひでえよ……おっ、新顔だ」

やってきたのは立派なフルプレートの鎧に身を包んだ大柄な男だった。

兜を外したその顔はダンディで気品に溢れている。どこかの騎士なのかもしれない。

「冒険者に良質な装備を見繕ってくれる店ってのは、ここかい?」

優しそうな声で男は言った。

若い店員は思わずかしこまって、

「は、はい。そうです。とくに、この、しなやかなロープなんかすごい良いらしいです」

と答えた。

「はは、じゃあ、そういう装備を一式、もらえるかな。迷宮の調査を領主様から頼まれているんだ」

それを聞いて商品を纏ると、男はすぐにそれを受け取って、代金を払って去って行った。

「店長、あれきっとオークキング殺しの英雄ですよ。

ああいう強え人が迷宮に潜ったら、きっとあっと言う間に攻略されちゃうんだろなあ」

店長は冷ややかな目をして呟いた。

「さあ、どうだかな。無駄口叩いてないで、仕事に戻れ」

「店長は厳しいな……おっ、また新顔だ」

次の客は汚れたレザーアーマーを着た男だった。

その上からマントを羽織り、顔は粗暴だった。

「冒険者に良質な装備を見繕ってくれる店ってのは、ここかい?」

からかうような声で男は言った。

若い店員はすこしむっとして、

「見てみればわかるんじゃないですか、このロープとか」

と商品を取り出した。

男はロープを手に取ると、試すように眺めたり引っ張ったりした。

その男はそういった事を、店員が渡した全ての商品に対して行って、結局ロープと少しの商品を買った。

「また来てやるよ」

男が去った後で、若い店員は呟いた。

「ちぇっ、うちの商品を信用してねえのか。あんな奴が迷宮に潜ったって、きっと長生きしないぜ」

すると店長は、

「いや、あの騎士は恐らく帰ってこないだろうな。迷宮の宝は、あの男が手に入れるだろう」

と言ったので、若い店員は驚いた。

「わからないのか。それだからお前は半人前なんだ。

迷宮で大事なのは、腕っぷしなんかよりも、判断力と頼れる道具だわい。

初めて来た店の品が信頼できる物なのか、確かめもしないで買うようじゃ、迷宮に挑むのはまだ早いわ」

若い店員は、憮然とした顔をした。

しばらくして、迷宮が攻略されたという噂が流れた。

またあのレザーアーマーを着た男がこの店にやってきた。

だが、今度は新品の高級な鎧になっていた。

「よう、良質な装備を見繕ってくれる店に、また来てやったぜ。」

若い店員は苦笑いして、新しい常連に商品を渡した。