幽霊船の噂

ページ名:幽霊船の噂

 

海には数多の脅威が潜んでいる。お前も船乗りなら、一度や二度は死の淵に立たされたことがあるだろう。

俺だってそうだ。海に長くいれば嫌でも度胸がつく。多少のことではビクつかない自信はある。

だが…あれは格別だった。纏っているオーラが異常だった。奴らは並の海賊じゃないってことを、船を見ただけで直感したんだ。

俺たちは肝を冷やしてその場を去ろうとしたが、奴らの前でそんなことが許されるわけもなかった。奴らは俺たちの船を捉えて離さず、親の仇かの如く迫ってきた。

まるで血を欲しているかのようだった。奴らに話は通じないってことが本能的に理解できた。あの船に乗っているのが本当に人間なのか、それすら怪しいと思った。

無我夢中で逃げた。シャチに狩られるイルカになったみたいだった。立ち向かおうなんて気には微塵もならなかったね。

やがて霧が晴れ、マレネオ国の港が見えてきたんだ。あの時ばかりは本当に嬉しかった。生きる喜びを噛み締めたよ。

いつの間にか件の船は消えていた。マレネオの酒場で現地の船乗りにもこの話をしたが、誰も信じようとはしなかった。

お前も心の底では疑っているのかもしれんが、いいか、これだけは肝に銘じておくことだ。

海は俺たちが思っているよりずっと広い。忘れるなよ。

 

シリウス号船長