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リンゴパーティー準備中!
リスカムは「不真面目」なオペレーターたちを率いて巡回任務に出ることになった。いつも通り周到に準備をしたリスカムだが、隊員たちもまた「準備を整えて」きていた。
[フランカ] リンゴ……パーティー?
[テンニンカ] そう! ウタゲとカシャとあたしの調べによると、この近くに野生のリンゴの林があって、ちょうど食べ頃なの。三日三晩食べ続けてもなくならないくらい、たーっくさん実がなってるんだよ!
[カシャ] しかも野生だから、全部タダだよ。
[フランカ] リンゴすごく美味しそうじゃない、採りに行くならあたしの分もお願いね。
[テンニンカ] あっ! ちょ……ちょっと待って?
[フランカ] どうかした?
[カシャ] 実は次の任務で「偶然」にも、そのリンゴの林を通ることは百パー確実なんだけど、でもこの任務の隊長がさ……
[ウタゲ] よりにもよって「あの人」なんだよね。
[フランカ] そうだったわねぇ。「あの子」だと、確かにそういう融通は利かなそうよね。
[テンニンカ] だから、あたしたちとしてはフランカさんに助けを求めるしかないんだよね。どうやったら「あの人」と仲良くなれるの?
[フランカ] リンゴを分けてあげればいいんじゃないかしら。ただ、あの子は小隊メンバーの自由行動を放っておく性格じゃないよね。
[フランカ] いくらロドスの今の進行ルートが安全地帯の中だっていっても、潜在的なリスクが少なくないのも確かだもの。
[カシャ] じゃあ、あたしたちの今回の計画は……
[フランカ] 難しいとは思うけど、でも……悪くはないわよ! この機会にあの子と良い関係を築ければ、一石二鳥じゃない。
[フランカ] あたしから、あなたたちにアドバイスをすると、うーん、そうね……
[フランカ] まず一つ目、あの子は他の人が自分にいちゃもんつけてきたり、意味もなく絡んでくるのが実はとても好きなの。
[ウタゲ] ん? なにそれ、あんま信じられないんだけど……
[フランカ] 嘘じゃないわよ。二つ目は……あの子が作った任務マニュアルは絶対に読んじゃだめ。
[カシャ] それもなんか……
[フランカ] 三つ目が――
[フランカ] 三つ目……三つ目はなにかあったかしら……あっ、そうだ。
[フランカ] 彼女が「バチバチ」電気を放ってなければ、思う存分いじり倒しても平気。むしろいじり倒すべきね!
[カシャ] いや、ちょっと待ってよ。それ、あたしたちにとってはハードルが……
[フランカ] なあに、せっかくアドバイスをしたってのに、こんな優しいあたしを信じられないの?
[ウタゲ] アハハ……だってそれ、信じ切るのが難しいアドバイスじゃん……
[フランカ] 大丈夫よ。もし本当に怖いなら、あの子が怒ったら全部あたしのせいにしちゃえばいいんだから。
[フランカ] ちょっとしたケガだけなのに、勝手にあたしの代わりに色んな外勤任務に出てくれたんだもの。だから、あなたたちがあの子に「思い知らせて」……いいえ、仲良くしてきてね。
[テンニンカ] なるほど、よくわかったよ!
[ウタゲ] 何でわかったの? っていうか、全然わかんないんだけど――
[リスカム] 今から任務を説明します。
[バニラ] はい!
[テンニンカ] (カシャ、ウタゲ、準備できた? 例の作戦を始めるよ?)
[カシャ] (了解!)
[リスカム] 今日の巡回任務がスムーズに遂行できるよう、事前に隊員の皆さんの能力や得意分野、性格、および戦闘スタイルを調べて割り振りをしてあります。
[テンニンカ] わぁ――見て見て、カシャ! あれってリンゴの木じゃない?
[リスカム] テンニンカさんは隊員の士気を高め、ある程度の治療もできます。二人組で調査を行う際は現場の状況に基づいて信頼に足る指揮を執ることができます。
[カシャ] ゴホン、ゴホンッ。
[カシャ] リンゴ? カメラで見てみよーっと――
[カシャ] わあ、本当だ! こんなにラッキーなことがあるなんて、すごくツイてるね~。
[リスカム] カシャさんは、後方支援と戦場の記録で大変頼りになります。巡回任務においては非常に重要なポジションです。
[ウタゲ] かなりでっかいみたいだね。もし何百年も生きた野生のリンゴの木なら、三日三晩美味しいリンゴ料理が食べられるくらいたくさんのリンゴが採れるんじゃない?
[ウタゲ] こんな機会、めったにないな~。
[リスカム] ウタゲさんは、移動速度が速いので、前線での調査に向いていると判断しています。
[リスカム] バニラの戦闘力は信頼に足ります……
[バニラ] 先輩、ありがとうございます!
[バニラ] 実はわ、私もリンゴの料理が大好きなんです……
[リスカム] ……皆さん、話・を・聞・い・て・く・だ・さ・い!
[全員] ご、ごめんなさい!!
[テンニンカ] まったく、みんなったら、隊長が話してるんだから、おしゃべりなんかしちゃダメだよ!
[カシャ] テンニンカ!?
[ウタゲ] テンニンカさぁ、口ではそう言ってるけど、遠くに積まれた干し草とポカポカの太陽、それとあのリンゴ林のことが気になってしょうがありませんって顔に書いてあるよ。
[カシャ] そうだよね、テンニンカが一番、心ここにあらずだよ。
[テンニンカ] ふ、二人とも? ……勝手に人の心を読むなんて、いけないことなんだからね!
[リスカム] はあ。皆さんの自主性を信じて、あまりうるさく言うのはやめようと思っていましたが……あなた方の散漫な態度はわたしの想像を遙かに超えています。
[バニラ] そうですよ。もしここがBSWで、勤務時間中に上司にこんな態度を取ったら、人事評価が下がるどころじゃ済みませんよ?
[カシャ] うぇぇ、「人事評価」って言葉を聞いただけでテンションがダダ下がりだよ……
[ウタゲ] バニラはあんまりいい子ちゃんやってると、サボって楽できる機会をいっぱい逃しちゃうよ~。問題にならない範囲で、適当にやるってことを学んだ方がいいって。
[ウタゲ] ってわけで、バニラもあたしたちの「リンゴ林巡回」チームに参加しなよ。
[バニラ] えっ、でも、BSWマニュアルではそういう行為は許されてないですし……
[ウタゲ] そう? 今日の任務は巡回調査だよ。発見した林の探索と美味しいリンゴの収穫も仕事の一環でしょ。
[テンニンカ] ウタゲの言う通りだよ。食べ頃の美味しいリンゴがたっくさん目の前にあるんだよ! しかもタダ!
[リスカム] 皆さん、巡回および実地調査任務はそういうことをするためのものではありません!
[カシャ&テンニンカ] うっ……
[ウタゲ] あのさ、リスカム隊長。隊長とバニラ以外、あたしたちはみんな正規の警備会社の訓練なんて受けたことないんだって。
[ウタゲ] 戦うのも「自分の好きなやり方」でしかできないし。
[テンニンカ] そ、そうだよ!
[テンニンカ] あたしはただ、簡単な任務をこなして……
[テンニンカ] ロドスが故郷の近くを通った時に、パパとママと子分たちに自慢したいだけなんだよね。あたしにとっては、それが一番重要なの。
[リスカム] 昨日皆さんには今回の任務マニュアルをお渡しして、確認しておくようにと伝えていたと思います。ですので、この打ち合わせはすぐに終わらせることができます。皆さんの中に――
[リスカム] 皆さんの中に、マニュアルに書いてある行動時間と、行動の指示を答えられる人がいれば、ですが。
[テンニンカ] あんな長いの、覚えてられないよ!
[リスカム] もちろん、実際には……
[カシャ] もちろん巡回任務において、警戒が必要な状況と、それに伴う注意深い観察が必要な場所があるというのはわかっているよ?
[カシャ] でもテンニンカが言ったとおり、リスカム隊長が書いた任務プロセスは本当に……細かすぎるから!
[テンニンカ] そうだよ。巡回中の位置や行動を秒単位で指定されても、そんなの無理だよ。
[テンニンカ] あたしたちは人間だよ? 源石を動力にするような機械とは違うんだからね!
[ウタゲ] ロドスのロボットたちでさえ、みんなそれぞれ個性があるっていうのにね。
[リスカム] これは皆さんのためを思ってのことで――
[リスカム] たとえ最も難易度の低い基礎的な巡回任務だとしても、変異した攻撃型オリジムシや突然の天候変化、盗賊の類に遭遇する可能性は常にあります。いつだって用心は必要なんです。
[リスカム] もちろん、予備のプランも用意はしてありますが……
[リスカム] 皆さんの任務経験がまだ浅いことを踏まえると、おすすめできません――
[カシャ] つまり……リスカム隊長は、あたしたちが「うまくいく」ようにこれを作ったと?
[リスカム] ……
[バニラ] わ、私はわかりました! リスカム先輩からすれば、こうした具体的な教材を用いて実際に行動した結果で得られる知識こそ、最も理解しやすく、だからこそ吸収しやすいと判断されたんですね!
[ウタゲ] こういう真面目な人っているんだろうなとは思ってたけど……リスカム隊長ってさ……
[ウタゲ] 俗に言う「優等生」だよね?
[リスカム] わたしは……
[リスカム] 「優等生」だなんて……
......
......
[???] あなたのそういう考え方が、まさに「THE 優等生」よね。
[リスカム] ……
[リスカム] ……チッ。
[フランカ] リスカムさんって、どうしてこんなに規律に拘って作戦を考案するのかしら? なんかもう、全部が自分の思い通りにならないと気がすまないって感じよね。
[フランカ] あのバチバチって電気を放つ能力なんて、ものすごくカッコよかったから、もっと面白い人だと思ってたわ。
[リスカム] どういうことでしょうか。
[フランカ] ただの感想よ。
[フランカ] あたしたちがコンビになって三日経ったわ。あなたがどう思ったかは知らないけど、あたしは結構楽しかったよ。だってあなたにはあたしの興味をそそる長所がいっぱいあるんだもの。
[フランカ] でも、今日、コンビを組んで初めて戦場に来てみてわかった。あなたとあたしはソリが全く合わないのよね。
[リスカム] 奇遇ですね、私も同じことを考えていました。
[リスカム] フランカさん、我々の上司ジャネット・ロングフェロー博士は、冷静で真面目な態度とは何か、そしてBSWメンバーとして遵守すべき基本的な安全意識とは何かをあなたに教えているはずです。
[フランカ] ああ、そんなのどうでもいいから。
[フランカ] あなたたち保守的でお堅い一派の皆さんは、一度だってあたしの立場になって何か考えたことないでしょ?
[フランカ] あたしはちゃんとBSWの能力評価でほぼオールAの成績を貰ってるの。あなたとは別の意味で「優等生」なのよ?
[フランカ] 上が何を心配してあたしの能力を制限したがるのかなんてどうでもいいけど、まさかあなたみたいな人とあたしを「コンビ」にするために人事異動までさせるなんて……
[リスカム] そういう無意味な愚痴は事前に報告書に記載しておいてください。
[リスカム] 自分のパートナーの能力を把握しておくことは基本ですから、もちろん確認したし、あなたの実力と客観的な評価に対して、わたしは一切の疑問を抱いていません。
[フランカ] フンッ。
[リスカム] ですから、同じ能力評価において、わたしの総合値はあなたと1%の差しかないということを理解していただきたいのです。
[フランカ] その1%の差はきっと、あなたのその融通が利かないところが原因でしょうね。
[フランカ] だいたい一体誰が、戦場のしかも最前線で、状況を秒単位で把握して正確に行動できるのよ?
[リスカム] わたしが余計なことを、勝手にやっていると理解しておけばいいのではないでしょうか?
[リスカム] ですが、わたしのデータはあらゆる計算やシミュレーションを行った結果、導き出された結論です。想定される突発的事項もすべて考慮しています。
[リスカム] あなたは、慎重であることを「悪い事」だと判断するのですか?
[フランカ] 悪いとまでは言ってないわよ。
[フランカ] 慎重すぎることが面倒だって言ってるの。わかる?
[リスカム] あなたね――
[フランカ] リスカムさん、知ってると思うけど、あたしたちのプロファイルはお互いに開示されているわ。
[フランカ] あなたの指揮にミスがあったせいで、小隊メンバーがケガを負ったことはあたしも聞いている。
[フランカ] もしかしたらそのケガの原因は、小隊メンバーがあなたのその「慎重さ」を信じ過ぎたせいなんじゃないの?
[リスカム] ……制止を振り切って、スタンドプレーに走った結果、敵陣深くに入り込み過ぎてチームメイトを危険にさらしたというあなたの起こした行動を、わたしも確認しています。
[リスカム] それを忘れて言っているわけではありませんよね?
[フランカ] ハッ。
[フランカ] 過去の噂やデータだけを元に、今の相手をわかったつもりになるなんて、馬鹿馬鹿しいわよ。
[リスカム] だからこそ、一緒に行動している小隊メンバーが、あなたに抱いている不安を理解してほしいんです。
[リスカム] 独断専行ですべての危険を一人で抱え込むという行いが、いかに身勝手で周囲を無視したものか、あなたはすでに少なからず痛い目を見ているでしょう。
[フランカ] あら? あたしの心配をしてくれてるの?
[リスカム] わたしは……
[リスカム] ……そうですね。わたしはあなたを心配していますし、そうすべきだと思います。
[リスカム] わたしたちは今、コンビですから。
[フランカ] コンビ、ね……
[フランカ] BSWで最も長く続いたコンビって、たしか四年だったかしら?
[フランカ] 頻繁な異動の理由は、みんなにより多くの環境や状況を経験させるため、だったわよね?
[フランカ] ジャネットに言われたわ。あたしとあなたのスタイルはどちらもクセが強過ぎる。適切なパートナーを見つけるのは難しいってね。
[フランカ] だから今回は、あたしたちがうまく任務をこなせるかどうかを確認するために、十分な時間を与えてくれるらしいわよ。
[リスカム] 今の時点で言い争いに時間を費やしていることを考えると、この試用期間そのものが無駄である気もします。
[リスカム] はぁ……初任務の評価も大幅に下げられるかもしれません。
[リスカム] わたしの人事評価――
[フランカ] フフッ……でも、それ、悪くないんじゃない?
[フランカ] 必要のない範囲まで予習をするような「優等生」らしさは少し極端だと思うけど、危険を予防しておくことは悪い事じゃないわ。
[フランカ] リスカムさんが、もしあたしの「トリッキーな」な行動も予想して対応できるなら、あたしにとってはいいパートナーかもね。
[リスカム] ……わたしがそこまで努力する価値があなたにあるのか、お手並を拝見しましょうか。
[リスカム] そしてフランカさん、わたしが事前に計算し計画を立てても、小隊メンバーの負傷を百パーセント回避できなかったのも事実です。
[リスカム] わたしはまだまだ実力不足です。それを認めます。
[リスカム] 責任感を適切に制御するのも、冷静さを保つための一つの手段になります。
[フランカ] 安心して。もしあたしたちが本当に相性が良いなら、実戦であなたの計画に生じた穴をいくらかは補ってあげられると思うわ。
[リスカム] あなたは大口を叩いてばかりですね。
[リスカム] いいでしょう。責任感から生じる精神的圧力にどう対処すれば冷静でいられるか、参考にさせてもらいます。
[フランカ] フフッ、まばたきしないようにね――
[フランカ] ゴホッ、ゴホゴホッ! リスカム、大丈夫?
[リスカム] わ、わたしは大丈夫ですが……
[フランカ] びっくりしたわ……まさかあんな奥の手を隠してたなんて。
[フランカ] 今のは何? 肉を切らせて骨を断つっていうやつかしら?
[リスカム] そこまで恐ろしいことはしていません……
[リスカム] これはただ、あなたの散らかした場の後始末をするための、最終手段です。
[フランカ] どう見ても今、あたしがあなたのために後始末をしてると思うんだけど?
[フランカ] 自信満々に秒単位で戦場をコントロールしようとしてた優等生が、焦ると満足に扱えもしない電気をバチバチさせたからこんなことになってるんじゃないの?
[リスカム] こんな時にからかわないでください。
[リスカム] わたしを連れて帰るか、それとも……いっそここに置いて行ってもいいですよ、少し休めばなんとかなります。
[リスカム] ……
[リスカム] ……どうしたんですか?
[リスカム] フランカ、わたしを連れて帰るのか、帰らないのか、どうするんですか?
[リスカム] ここは戦場ですよ!
[フランカ] ねぇ……あなた今、本当に少しも身動きできないわけ?
[リスカム] で、できますよ、別に全身が痺れているわけじゃないんですから。
[フランカ] へぇ、なるほどね。それなら、あたしが好きにしてもいいってことよねぇ。
[リスカム] な、なんでそうなるんですか! ちょ、ちょっと待って? 何をする気なの? ……髪に触らないで!
[リスカム] だめだ、ロングフェロー博士に訴えてこの酷い人事異動は即刻取り消してもらわないと――
[フランカ] 試してみたら?
[フランカ] 先に言っておくけど、ジャネットはあたしのことがとーってもお気に入りよ?
[リスカム] (はぁ、こんなことをどうしてここまでハッキリ覚えてるんだろう……)
[バニラ] リ、リスカム先輩……怒っちゃいました?
[バニラ] ごめんなさい、私も皆さんに話をしてきますね。
[リスカム] 緊張する必要はありません。わたしも今回の任務が何の変哲もない巡回と、周囲の調査だというのは、わかっています。
[テンニンカ] あ、あたしたちも困らせたくてあんなことしたんじゃないよ。リスカム隊長ごめんなさい……
[カシャ] 慎重さや安全性を重視するBSWみたいな厳しいやり方は、すごいとは思うよ。でもさ、あたしたちにはできないよ……
[テンニンカ] 任務マニュアルだって本当にちゃんと読んだんだよ! あたしたちのために書いてくれたんだし、わざわざあたしの弱点まで指摘してくれてるから! でもさすがに全部覚えるのはちょっと……
[リスカム] ええ、このような状況になる可能性も織り込み済みです。
[バニラ] え?
[リスカム] つまり、わたしもそこまで物分かりが悪いわけではありませんし、今回の任務で隊長を務めているからといって、あなたたちにBSWのように厳しく接するつもりもありません。
[リスカム] これを改めてお渡しします。本当の行動前の確認書です。一分あれば覚えられます。
[リスカム] この付近に良質なリンゴの木が生えていると報告がありました。しかも、今がちょうど食べ頃を迎える実がなっているようですので、二十分ほど、リンゴを摘み取るための時間を設けました。
[リスカム] 簡単な収穫用の道具、および収穫したリンゴを詰める収納袋も一緒にバッグの中に準備してあります。
[カシャ] やったー!
[リスカム] ただ、あくまでも休憩中の話です。それとは別に、巡回任務はしっかりとやっていただきます。問題はありませんね?
[カシャ] へへっ、完璧だよ! リンゴでいろいろ作ったら、リスカム隊長に一番たくさんあげるよ!
[リスカム] 別に甘い物が好きだなんて言ったことはありませんが……コホン、とにかく、これからの一分間はちゃんと話を聞いてください。
[全員] 了解!
[バニラ] (まさかリスカム先輩が、皆さんの考えていることまで考慮していたなんて……)
[バニラ] (今日はリスカム先輩に合わせて真面目なBSWメンバーを演じるべきだと思ったんだけど、私の考え過ぎだったみたい。)
[バニラ] (フランカ先輩からは「リスカムが隊長の時にやんちゃなメンバーに出くわしたら、きっと問題が起きやすいから、あなたは味方でいてあげて」とまで言われてたんだよね……)
[カシャ] (小声)ねぇバニラ……リスカム隊長って本当はやんちゃな性格が好きだったんじゃないの?
[カシャ] あんなふざけた態度とってたら、絶対怒らせちゃうと思ってたよ。でもなんだか……怒って「バチバチ」って電気を発したりはしてないよね。
[テンニンカ] リスカム隊長はめちゃくちゃ冷たい人って聞いてたの。冷酷で、個人的な感情を一切差し挟まないプロだって……
[バニラ] リスカム先輩の実力は疑う余地がありません。
[バニラ] ただ……うーん……
[バニラ] 先輩に対して、ああやって面倒くさい態度をとっても別に怒ったりはしませんよ? まあ、喜んだりもしませんけど。
[バニラ] リスカム先輩はフランカ先輩みたいな常識外れの人ですら耐えられる「専門家」ですから。
[バニラ] 私の印象からすると、皆さんは話が通じないような方たちではないと思いますので、リスカム先輩もきっとそれはわかっているとは思います。
[バニラ] 皆さん……誰かに何か吹き込まれたりしていませんか?
[カシャ] あはは、それは……
[テンニンカ] ハ、ハハハ……あたしは騙されてなんかないよ!
[ウタゲ] ってことは、あたしたちの計画も、最初からあの人の計算に含まれていた可能性があるってこと?
[カシャ] 待って、もしかしたら、リスカム隊長はそれも込みで、あたしたちがドジを踏むのを待ってたのかも……
[テンニンカ] そ、それなら、二人はとっくにグルになってた可能性もゼロではない――
[リスカム] 内緒話をするなら、少なくとも当事者の耳に声が届かない程度の距離は取るべきだと思いますよ。
[リスカム] 皆さんの話、すべて聞こえてますからね。
[ウタゲ] ごめんなさい、リスカム隊長――
[リスカム] はぁ……
[リスカム] (まあいいか、聞いた感じだとまたフランカの気まぐれのせいみたいだし。)
[リスカム] (でも……やっぱりBSWの頃のみたいな厳しい態度を装うのは、難しくなってきたな。)
[リスカム] (あの頃の、任務に出る時の孤高な感じを保つのは、ロドスだと本当に難しい。)
[リスカム] (……はぁ、今日のこんな姿をフランカに見られてもしたら、絶対に強がってるってバカにされるよ。)
[リスカム] (もし今いるのがロドスじゃなくて、わたしもこれまでの融通の利かないわたしのままだったら、今頃は頭に血が上っていたはず。)
[リスカム] (自分の色々な変化について、わたしも急に自覚したんだ。)
[リスカム] (もともと良し悪しの区別なんてないものだけど。)
[リスカム] (……でも、まだ足りてない。)
[リスカム] (わたしたち「非感染者」にとっては、ロドスを訪れたのでもなければ、感染者の立場を本当に理解するなんて土台無理だし、すべての人が平等であればという願いを抱くこともない。)
[リスカム] (不必要な警戒を解いて、周りの小さな善意を感じとることを覚えてから……)
[リスカム] (自分にはまだ、より大きな使命と責任を担える可能性があるってわかるようになった。)
[リスカム] (この現状が理解できるようになったんだからきっと、もっといろんなことを学べるし、改善できるところが見つかるはず……)
[リスカム] (もっと大きな目標を持とう。昔の、ただ「BSWのような」警備会社を立ち上げたいというような、簡単なものじゃなくて。)
[リスカム] (自分のため、地元のみんなのため、そして感染者のため……わたしはもっといろんなものを積み重ねていかないと……)
[リスカム] (よし、わたしは絶対に……)
[カシャ] 隊長? リスカム隊長!
[カシャ] 袋、広げてもらえないかな?
[テンニンカ] リンゴが落ちるよ――
[リスカム] ……まったく。
[リスカム] 皆さん……
[リスカム] リンゴを摘むのは三十分後の予定ですよ!
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