aklib_story_学者の心

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学者の心

医療オペレーターの制止を振り切り、エイヤフィヤトラはロドスの進行ルート付近の火山へとフィールドワークに向かう。


[エイヤフィヤトラ] ……もう始めても大丈夫でしょうか? 録音ボタンが光ったような気がしましたが……動作は……うん、本体がだんだん温かくなってきましたし、きちんと動いているはず?

[エイヤフィヤトラ] コホンコホンッ、ええと……本日は外勤三日目、私たちは当初予定していた目的地付近に到着しています。

[エイヤフィヤトラ] 現在時刻は午前10時30……えっと、これは1でいいのかな? ごめんなさい、よく見えなくて……

[エイヤフィヤトラ] ……あ、2になった! 現在時刻は、10時32分です。ロドスが合流ポイントに到着する予定時間まで……あと12時間28分もあります。

[エイヤフィヤトラ] 調査は今のところ順調です。計測器はここまでに来る間に準備を整えましたし、サンプリング装置も、まさに今、みなさんが取り付けてくださっています。

[エイヤフィヤトラ] ……え、何? 誰かが私を呼んでいるような。ええと、声はどこから……あれ? ……あ、いました!

[エイヤフィヤトラ] ああ! 危うく録音装置を落とすところでした。……ふぅ、落ち着こう。

[エイヤフィヤトラ] 私に手を振ってるのでしょうか? あの合図は……取り付け完了? データ収集開始……同時分析開始? わ……分かりました!

[外勤オペレーター] エイヤフィヤトラさん!

[エイヤフィヤトラ] あっ、バ……バティさん? 補聴器は……大丈夫そう、よし。

[バティ] ああ、焦らないで! ゆっくりでいいですから……足元に気を付けてください。

[エイヤフィヤトラ] だ、大丈夫ですよ、バティさん……支えてくれなくても平気です。ここは見晴らしがいいので、ぶつかったりするようなものもありませんし。

[バティ] そうですか? でも風が強いですし、そこら中でこぼこした石だらけですから。やっぱり、エイヤフィヤトラさんは飛行ユニットに残ってた方がいいんじゃないですか?

[バティ] それに今回出発前に、来月分のサラリーにかけてケルシー先生たちに誓いを立てたんです。あなたの安全を絶対に確保するって。

[エイヤフィヤトラ] え……?

[エイヤフィヤトラ] ……サラダ? ケルシー先生と……一緒に?

[バティ] あれ? いや、サラリーですよ、サラリー! 給料です!

[バティ] (小声)ケルシー先生と一緒にサラダを食べるなんて、どんな理由があったらそんなシチュエーションになるんですか。

[エイヤフィヤトラ] あっ、そ、そうですか……

[エイヤフィヤトラ] うーん、やっぱり補聴器が……さっきの強い風のせいでしょうか? 少し調子が悪くなったみたいです。

[エイヤフィヤトラ] すみませんでした。バティさんのお仕事についてのお話だったんですよね?

[エイヤフィヤトラ] バティさんが来てくださって本当に助かっています。私一人では装置の設置だけでも半日かかってしまいますから。

[バティ] えっ、一人で? こんな重いの、エイヤフィヤトラさん一人でなんて無茶にも程があるでしょう?

[エイヤフィヤトラ] 一人でやったことなら何回もありますよ? 学校にいた頃、一人で全部こなさねばならないような研究もありましたし。

[バティ] え、他の学生さんたちは?

[エイヤフィヤトラ] えっと、それは……研究の進捗はみんなそれぞれ違いますから……それに、私の研究課題は、ある程度の経験と知識が必要なものが多かったので。

[バティ] ああ、そうでした、エイヤフィヤトラさんはあの頃からもう立派な学者さんですもんね。他の学生たちじゃついていくのは無理ですよね。話してるうちに忘れてましたよ。

[バティ] でも、そんな感じだと、学校生活はさぞ大変だったのでは? 他の人の何倍もの作業量でしょう?

[エイヤフィヤトラ] それほどでも……それにいいところもあるんですよ。一人なら、自分のペースでできますし。ゆっくりでも、進めていけばちゃんとやり遂げられますから。

[エイヤフィヤトラ] とはいえ、ロドスに来てからの方が、どこで何をするにしても、以前よりずっとやりやすいんですけどね。

[エイヤフィヤトラ] 新しい補聴器は前に使ってたのよりもずっと使いやすいですし、ケルシー先生と先輩は私の研究を支持してくれてます。クロージャさんもわざわざ宿舎まで改造してくれました……

[エイヤフィヤトラ] バティさんだけじゃなくて、オペレーターのみなさんがいつも優しく私の面倒を見てくれるんです。うん……本当にみなさんに感謝してますよ。

[バティ] もう、やめてくださいよ。ここに来るまでにエイヤフィヤトラさんに何度感謝されたことか。こっちが申し訳なくなっちゃいますよ。

[ガイド] おーい! 今、先を見てきたんだが道が狭い。まったく通れないってことはないだろうが、そんなでっけーモン持ってたら、さすがにきついだろうな。

[エイヤフィヤトラ] ええと……つまり、最後のサンプリングポイントには、行けないってことですか?

[ガイド] 機械は無理だが、人だけなら行ける。聞こえてるか? い――け――る!

[バティ] おい、いくら何でもそこまでの大声を出す必要はないだろ?

[ガイド] だってこの子、なんかぼうっとしてるし、耳も遠いみたいだから、伝わってるかどうか不安なんだよ。

[エイヤフィヤトラ] ああ、すみません……今のは聞こえています。

[エイヤフィヤトラ] じゃあ、バティさん、行きましょう?

[ガイド] おい、ちょっと待て。あんたも行くってのか? 確かに人は行けるとは言ったが、あんたは止めた方がいいんじゃねえか。

[エイヤフィヤトラ] え? どうして?

[ガイド] この近辺は地震が多いし、道もでこぼこで穴だらけだ。よろけたら足を突っ込んで怪我をするぞ。あんたらは金払いがいいんで、こっちも頑張ってみたが……さすがに限界だろ。この先は厳しいぞ。

[ガイド] あんた、ここまでの平地すらちゃんと歩けてなかったな? どうなるか目に見えてるだろ。気を使わないといけないお荷物が増えて迷惑なだけだ。

[バティ] おい! エイヤフィヤトラさんをそんなふうに言うな! 確かにまだ若いが、超一流の火山学者で本物の科学者なんだぞ! 今回の任務はすべてこの方が指揮してるんだ!

[ガイド] 学者様だろうが何だろうが歩くってことに関係はないな。ここから先の道は、二本の足だけが頼りなんだよ。大体、怪我でもしてみろよ、そっちのが問題だろうが。俺は責任取らないからな。

[バティ] えーっと……エイヤフィヤトラさん? 彼の言ってることにも一理あります。もしこの先の道が本当に険しいというのなら……

[エイヤフィヤトラ] ……お二人の仰りたいことはよく分かります。

[エイヤフィヤトラ] バティさん、ガイドさん……大変なご迷惑をおかけしていることも承知しています。

[エイヤフィヤトラ] でも、私は行かないといけないんです。

[バティ] 装置のことなら、俺が責任をもってちゃんと取り付けますから――

[エイヤフィヤトラ] いいえ、違うんです。この先が、付近の源石反応異常地帯の中心なんです。観測にはより精度の高い手段が必須となります。私のアーツが絶対に必要なんです。

[バティ] なら、付近のサンプリングポイントのデータを多めに集めるのはどうですか? ポイントを増やしてもいい。手段ならたくさんあります。

[エイヤフィヤトラ] ダメですよ、バティさん。確実な成果を求めるなら、どんな些細なことでも妥協できません。ここで手を抜いてしまえば、今回の任務のすべてが、水の泡になってしまう可能性もあります。

[バティ] そこまで仰るなら、俺は従うしかありませんね。分かりました、行きましょう。

[バティ] ただ、これだけは約束してください。もしエイヤフィヤトラさんがつらいと感じた時はすぐに仰ってください。それと、俺が無理だと判断したら、直ちに帰還します。いいですね?

[エイヤフィヤトラ] はい……私は大丈夫ですよ。心配しないでください。

[バティ] はぁ。今でも無理しているようにしか見えないんですけどね。

[ガイド] チッ、こっちが何を言っても話なんざ聞きやしねえ!

[ガイド] もう一度言っとくが、万が一何かあった場合でも、俺は自分だけを守るからな。あんたらについては責任持たねえぞ。

[バティ] あのな……

[エイヤフィヤトラ] もちろん、それで構いません。ガイドさん、案内をお願いします。

[エイヤフィヤトラ] 引き続き録音します……現在時刻はお昼の12時25分、私たちは最後のサンプリングポイントへ向かっています。

[エイヤフィヤトラ] 採集済みのサンプリングポイントデータは引き続き分析中ですが……ええと、そうですね、私の予測と比較的近いです。

[エイヤフィヤトラ] 古い火山が残した火成岩ではありますが、深層の源石の活性化具合は依然として強烈です。周囲の状況からも、引き続き活発になっていくのが……明らかです。

[エイヤフィヤトラ] ……鍵は異常地帯の中心部にあります。そのデータが得られれば、より正確に今後の変化パターンの予測ができます。ロドスの後続任務に影響しない方向での変化ならいいんで――きゃっ!

[エイヤフィヤトラ] すみません、バティさん……か、肩が少しぶつかってしまいました……よく見えてませんでした。

[バティ] 大丈夫ですか? もう一時間は歩いてますが。

[エイヤフィヤトラ] あっ、はい……大丈夫です。

[バティ] 風が強いですね、さっきよりもずっと強い。我々と同じように、岩の隙間を通り抜けているんですね。

[エイヤフィヤトラ] はい……寒いです……足もだるいし……目も……

[エイヤフィヤトラ] うぅ……

[エイヤフィヤトラ] ……わ、私は大丈夫です。進みましょう。

[バティ] はぁ、帰還しましょうと言いたいところなんですが……やっぱりあなたは何があっても止まる気はないみたいですね。

[バティ] こうしましょう? エイヤフィヤトラさんは俺の後ろを歩いてください。俺は体が大きいから、風よけになります。石があれば俺が先によけるから、同じように動いてください。

[エイヤフィヤトラ] わかりました。バティさん、お気遣いありがとうございます。

[ガイド] チッ、この道は険しいって、最初から言ってただろ。

[ガイド] ところでよ、この先には一体どんなお宝があるんだ? どうしても行かなきゃいけないって程の価値があるってことだろ?

[バティ] 我々の目的は依頼した時に説明しなかったか? 俺たちはロドス、製薬会社だ。ここに来たのは調査研究のため――

[ガイド] へへ、だからよ、そういう表向きの理由はいいって。

[ガイド] 調査だの研究だの、結局は金だろうが。

[ガイド] ふん、あんたら製薬会社なんてのはよぉ、生きたくて必死なお金持ちのポケットからとんでもない額をふんだくってるんだろ。

[バティ] あのな……はぁ、何を言ってもあんたじゃわからんだろうな。

[バティ] 確かに企業だからな、稼ぐのは必要なことだが……金じゃはかれないものもあるんだよ。

[ガイド] ああ? 金のためじゃねぇのかよ? まあこんな辺鄙な場所での石掘りが金になるわけもないしな……

[ガイド] おい、まさかとは思うが、もっと質の悪い話じゃないだろうな? 俺聞いたことあるぞ。お貴族様の手下には、わけのわからない術だの、実験だの、研究だのでやりたい放題っていう輩がいるって……

[ガイド] だとしたら、ヤバい……本当にヤバいぜ?

[バティ] おい、いい加減にしろ。なんだその物騒な言い方は。俺たちをそういう奴らと一緒にするなって言っただ――

[エイヤフィヤトラ] 危ない!

[ガイド] ハァ……ハァ……なんだあのクソデカい石は!

[ガイド] お、俺の頭……俺の頭は無事だよな?

[ガイド] おい、今のでかい石、俺に向かって飛んできてなかったか? てっきり頭を潰されるかと思ったぜ。

[ガイド] ちょっ、なんだこの赤いのは……泡立ってやがるしよ。こりゃ……マグマか? なんだってここまで。火山から来たのか?

[ガイド] 火山が噴火したのかよ!? 俺は、い、イヤだ! こんな死に方はイヤだ! 頼む、助けてくれ!

[バティ] 黙れ!

[バティ] 喚くな、うるさい。まったくベラベラとよく回る口だ。

[バティ] ……エイヤフィヤトラさん? どこですか? 大丈夫ですか?

[エイヤフィヤトラ] バティさん、私はここです。大丈夫、なんともありません。それよりさっきの落石でお二人に怪我はありませんでしたか?

[バティ] 俺たちも無傷です。石が降ってきた時にはもう終わりだと思いましたけどね。って、ひょっとしてあの石を撃ち落としたのってエイヤフィヤトラさんのアーツですか?

[エイヤフィヤトラ] はい、そうです。無事ならよかったです。

[バティ] え……俺ですら反応できなかったのに。あなたは目も耳……いや。どうやって?

[エイヤフィヤトラ] 確かに私には何も聞こえてなかったですし、ぼんやりとした影しか見えていませんでした。

[エイヤフィヤトラ] でも私……熱量の変化を感じ取ったんです。

[エイヤフィヤトラ] ガイドさんが、この辺の岩は硬いけれど割れやすいと説明していました。そうであれば、強い風の影響を受けて岩層にひびが入ると、断層と岩自体との摩擦によってかなりの熱量が発生します。

[バティ] ああ、そういうことだったんですね! エイヤフィヤトラさん、さすがですね。

[ガイド] おいおい、マジかよ……すごいというより恐ろしいな。

[ガイド] 一瞬、本当に一瞬で、あんなにデカい岩を熔かしちまったのかよ!

[ガイド] なんてこった、もし俺の頭に喰らってたら――

[バティ] ……

[ガイド] わ、わかってるよ、黙れってんだろ。黙るよ!

[エイヤフィヤトラ] ふぅ、ようやく着きましたね。

[エイヤフィヤトラ] さて、現在時刻は……あっ、予定よりも15分遅れています。急ぎましょう。

[エイヤフィヤトラ] 各装置の起動を開始……精度を15%向上させる必要があります……周波数制御、波動値安定……うん……9%……3%……

[エイヤフィヤトラ] よし、ノイズも理想値で落ち着いています。バティさんは手を放しても大丈夫ですよ?

[ガイド] こ……これも不思議な術なのか?

[エイヤフィヤトラ] アーツをそう定義するのであれば、そうですが……こういったものを不思議な術として扱うより、科学研究の手段として扱う方が私は好きです。

[ガイド] ……とんでもないな。すごい以外の感想が出て来ない。

[エイヤフィヤトラ] ガイドさんもお疲れでしょう。上に行って少し休みませんか? サンプルの採取にはまだかかりますけど、ここで待つ必要はありません。5時間後にまた来て装置ごと回収すればいいので。

[ガイド] 科学者って言ったか? ……科学者か。道もまっすぐ歩けないお子様に見えるが、こうして話してるのを聞くと確かにそれっぽいわ。

[ガイド] ……あのよ。さっきは、助けてくれたんだろ? 俺みたいな奴だって礼儀は心得てる。恩には礼で応えたいんだ。

[ガイド] こうしようぜ。約束のガイド料なんだが、前払いの分はともかく、残りはさっき助けてくれたのでチャラだ。

[エイヤフィヤトラ] え?

[バティ] おいおい、急にどうしたんだ? 俺たちロドスは利益だけを追求して他は蔑ろにする悪どい企業じゃないって言っただろ。正当な対価はきちんと支払う――

[エイヤフィヤトラ] あの、バティさん。ガイドさんがどうしてもと仰るのであれば、私たちはその気持ちをいただきましょう? 彼もきっと真摯な思いがあるのでしょうし、拒否するのはかえって失礼ですよ。

[バティ] え、そ、そうなんですか? まあ、エイヤフィヤトラさんがそう言うんなら、もちろん構いませんけど、いいんですか?

[バティ] (小声)なんか意外っていうか……

[エイヤフィヤトラ] え……何です? すみません、またよく聞こえなくて。

[バティ] ハハッ、何でもないです。エイヤフィヤトラさんに、こんなことにまで気を使っていただけるなんて、思ってなかったってことです。

[エイヤフィヤトラ] え? あの、今さらこんなことを言うのもなんですが、実は……

[エイヤフィヤトラ] 私、ガイドさんが何を言ってたかよく聞こえなかったんです。

[バティ] はいっ?

[エイヤフィヤトラ] つまりあの……補聴器の動作が不安定なもので、ちょうど調子が悪くなってて……ガイドさんは真面目な表情だったし、お礼っぽいことを仰ってるみたいだったので、つい……

[エイヤフィヤトラ] ま、まさか、余計なことをしちゃいましたか?

[バティ] そんなことないですよ。ハハハッ! エイヤフィヤトラさん、やっぱりあなたは本当にすごい学者さんだ!

[バティ] 表面的なものに囚われず、その中の真意を見抜くことができる。

[エイヤフィヤトラ] ううっ……そ、そうですか? ならいいんですが……

[エイヤフィヤトラ] 現在時刻は午後3時14分。データ収集、および分析は着実に進行しています。

[エイヤフィヤトラ] 先程、最後のサンプリングポイントへ向かう途中で少しトラブルが発生しましたが、具体的な作業への影響はありませんでした。

[エイヤフィヤトラ] ……道中、ガイドさんとバティさんと、とても興味深いお話をしました。

[エイヤフィヤトラ] 二人の仰っていた言葉の意味を、私が完全に理解できたかはわかりませんが、バティさんは私が、私が本当の学者だと言ってくださったみたいです……

[エイヤフィヤトラ] なんだか恥ずかしくなってしまって……それから、ここに来る前のことを、ちょっとだけ思い出しました。

[医療オペレーター] ダメですよ! エイヤフィヤトラさんの今の身体の状態では、外勤許可は絶対に出せません!

[エイヤフィヤトラ] で、でも……あの源石鉱脈の異常信号は、近隣の火山と関係している可能性が大いにあります! ちょうどロドスこれからの進行ルートの周辺でもありますし、放置できません。

[エイヤフィヤトラ] 火山学者としても、ロドスのオペレーターとしても、今回の実地調査に、私は行かないといけないんです。

[医療オペレーター] でも、あなたの身体では……

[エイヤフィヤトラ] 信じてください。自分の面倒は自分で見ます。

[セイロン] ……

[セイロン] ……行かせてあげましょう。

[医療オペレーター] え? セイロンさん? あなたも医療部の一員なんですよ! どうして治療に専念させないんですか?

[セイロン] ……医療に従事する者としては戯けた行いです。けれどエイヤフィヤトラさんの気が済むようにしてあげるのが最良だと思いますわ。

[セイロン] こう見えてわたくしも研究者の端くれですのよ。彼女の気持ちは理解できますわ。

[セイロン] もし――もし源石を少しでも多く理解できる機会があるのならば――わたくしだってきっと我が身なんて顧みずに突き進みますわ。

[医療オペレーター] はぁ……万が一、今回の任務でエイヤフィヤトラさんの病状がさらに悪化したらと思うと今から心配で……

[セイロン] ……だからこそ、ですわ。

[医療オペレーター] どういうことですか?

[セイロン] 真実はまだ遥か向こうで、朧げな姿しか見えない――けれど、与えられている時間はもう少ない。一分一秒が惜しい。だからこそ、どんなに小さなチャンスでも、なんとしても掴み取りたいの。

[エイヤフィヤトラ] ……はい。私の……両足がまだ体を支えられて、両目が火山の明るさを感じられるうちに、少しでも多くを見て、たくさんの光を見つけたいんです。

[セイロン] 光……ええ、そうですわね。エイヤフィヤトラさんはきっと見つけるでしょう。わたくし、それが事実だと知っているの。わたくしにはもう、光を手にしたその姿が見えているんですもの。

[セイロン] エイヤフィヤトラさんは、とっくに大地の真理の境界線上に立っていますの。彼女が少しだけ前へ進むことでできた道を、わたくしたちが追いかけることで研究が進みますのよ?

[セイロン] 未知の域に足を踏み出すのが恐ろしいこともあるでしょう。前には誰もいないんですもの。けれど、光を目指す思いがその恐怖を凌駕するのです。だからこそ、それを阻むことなどしてはいけません。

[医療オペレーター] そういうもの、なのですか……

[医療オペレーター] あなたたち学者という存在は、これだからもう……

[医療オペレーター] 分かりました。エイヤフィヤトラさんがそこまで言うのであれば、私ももう止めません。ケルシー先生に申請してくださいね!

[エイヤフィヤトラ] はい……ありがとうございます。セイロンさんも、心強いお言葉をありがとうございます。

[エイヤフィヤトラ] ……ここに来る前のあの時も、似たような話題になりましたね。

[エイヤフィヤトラ] 学者、科学者って何でしょう? そういうことを、あんまり考えたことはありませんでした。

[エイヤフィヤトラ] さっきのセイロンさんが仰った通りです。私はまだ自分に時間があるうちに、火山やこの大地の奥深くにある神秘に少しでも近付きたいだけです。

[エイヤフィヤトラ] 学者さんと言えば……子供の頃は、パパとママのことだったな……

[エイヤフィヤトラ] 今は、もう一人。

[エイヤフィヤトラ] 帰ってきたら、この問題の答えを教えてくれませんか――先輩?

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