aklib_story_暴風眺望_9-1_暗雲の中へ

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暴風眺望_9-1_暗雲の中へ

バグパイプたち第二テンペスト特攻隊が、軍用源石製品の窃盗事件を調査するため、ヒロック郡郊外へとやってきた。彼女たちは、情報にあった倉庫に向かい、突撃作戦を開始するのだった。


冬ごもりの山が、のっぽの煙突背負って♪

キャタピラーが我が家をがたごと引いていく♪

錆び付いたネジの隣のドブに、どんぐり見つけ……♪

[ホルン] ――倉庫内に入った。偵察チーム、状況を報告して。

[トライアングル] 南東にバイタルサインあり。隊長の位置から七列目の棚付近、活動範囲は1メートルです。

[ホルン] 数は?

[トライアングル] 一つです。

[ホルン] 源石反応はどう?

[トライアングル] 現状、ありません。

[ホルン] よし――各自、配置について。

[ホルン] ちょっと、バグパイプ?

[バグパイプ] はい、隊長!

[ホルン] 何か気になることでもあるの?

[バグパイプ] えっと、誰かの歌が聞こえた気がして……

[ホルン] 歌はターゲットが気を緩めている証拠よ。集中して。

[ホルン] 作戦通り、私の合図で突入してちょうだい――さあ、行くわよ。

[ホルン] 5、4、3……

[ホルン] 用意――!

[バグパイプ] 遮蔽物を破壊! 突入!

[慌てる青年] わっ――!?

[慌てる青年] ごほ、げほごほっ……な、なんだ!? 急に煙が……!

[ホルン] 動くな! その場で両手を挙げなさい!

[慌てる青年] お、お前たち……ヴィクトリア……ヴィクトリアの兵士か?

[バグパイプ] それはそうだけど、おめーさんもヴィクトリア人でしょう?

[慌てる青年] う、ううっ……

[ホルン] ターゲットは逃走する気よ! チェロ、止めて!

[バグパイプ] 待って隊長! あの人、出口には向かってない――引き返してる!

[ホルン] !!

[ホルン] トライアングル! ターゲットは後ろの棚へ向かってる! 源石反応を感知したら即、狙撃して!

[ホルン] ほかのメンバーは、この盾の後ろへ!

[ホルン] 早く!!

[ホルン] ……ッ!? バグパイプ、何を!?

[バグパイプ] ――

[バグパイプ] 目標物は押さえた! 総員退避して!

[ホルン] あなたっ――

[バグパイプ] ――!

[トライアングル] 隊長、源石反応がありません。バグパイプが押さえている箱は爆弾ではないようです。

[バグパイプ] ほんとに? ふぅ~……なら、一安心だね。

[ホルン] ……ターゲットの男性は?

[バグパイプ] それがその、ちょっぴり強めにぶつかったから、しばらく伸びてると思う。

[ホルン] じゃあ、この箱は……

[バグパイプ] うちが見てみるよ。どれどれ……ジャガイモと、ニンジン、それにカリフラワーだ! はぁ、もったいないことしたなあ~。美味しそうな野菜がぺちゃんこだべ。

[ホルン] ……

[ホルン] 警戒を怠らずに、確認を続けて。

[バグパイプ] これも、こっちも。この列も……みーんなおんなじだ! 隊長、この倉庫には野菜と果物しかないみたいだよ。

[ホルン] トライアングル、周囲から接近してくる人物がいないか、目を配っておいて。

[ホルン] オーボエ、あなたはバグパイプと一緒に倉庫を調べてちょうだい。何か見つけたら、すぐに合図するのよ。

[ホルン] チェロは地面に倒れているターゲットを捕縛して。

[慌てる青年] う、ぐっ……

[ホルン] さてと……それじゃ、質問に答えてもらいましょうか。

[慌てる青年] し、知らない! 何も知らないって……! 俺は、毎日ここでジャガイモの仕分けをしてるだけだし……

[ホルン] そう。あなた、ヒロック郡に住んでるの?

[慌てる青年] あ、ああ……

[ホルン] なら、「亡霊部隊」について聞いたことはある?

[慌てる青年] ぼう……何だって? ……は、ははっ、し、知らないよ……でも、その部隊ってのは、あんたらみたいな兵士のことを言うんだろ?

[慌てる青年] ラウリーもジュリアもクリスも皆、連れてかれちまった。まさか、今度は……今度は俺の番なのか?

[ホルン] 落ち着いて、話を聞いてちょうだい。

[ホルン] いい? 昨日の夜遅く、源石製品がこの倉庫へと運び込まれるのを見た人がいるの。だけど今、ここに現物はないわよね。その理由を説明してもらえないかしら。

[慌てる青年] 説明……? 本気でそんなもんがほしいって言ってんのか? 俺の首じゃなくて? お、俺はな……俺は!――ペッ。

[バグパイプ] ちょっと! つばなんて吐かないでよ。不衛生だべ!

[ホルン] はぁ……何か手がかりはあった? バグパイプ。

[バグパイプ] 全然だよ、隊長。見渡す限りジャガイモだらけ! 目撃情報が確かなら、向こうさんは相当動きが早いみたいだね。

[ホルン] そう、了解。

[ホルン] 彼を連れて行って。話すつもりがないだけで、きっと何かを知っているはずだから。

[慌てる青年] ッ……ちくしょうが! やっぱりな。お前たちは、どいつもこいつも皆同じだ! あの手この手でケチをつけて、俺たちを苦しめる機会を狙ってるんだ。このヴィクトリアのケダモノめ!

[バグパイプ] ん? だからおめーさんだってヴィクトリア人でしょ。そうやって呼んで侮辱になるとでも思ってるのかな?

[トライアングル] ――隊長、誰か近付いてきます。

[ホルン] ――数は?

[ホルン] (小声)……散開に備えて。

[バグパイプ] (小声)……はい、隊長。

[トライアングル] 報告。隊長、彼らは味方のようです。

[???] ここか。

[ヴィクトリア兵] ……

[バグパイプ] (小声)隊長、味方って言うけど、うちら包囲されてるよ。

[ホルン] (小声)人数だけ見れば、そうなるわね。

[バグパイプ] (小声)でも、聞こえてくる音からすると、外にはあんまり人を残してないみたい。うちの前の、この辺の壁を壊したら突破できるかも!

[ホルン] (小声)ちょっと、落ち着きなさい。

[???] ……どうやら、激しい戦闘が行われたばかりのようだな。

[ホルン] ――私はリタ・スカマンドロス。第七前線歩兵大隊、第二テンペスト特攻隊の隊長です。

[???] やあ、ご機嫌よう。スカマ……スカマンドロス中尉、だな。

[ホルン] ええ。覚えやすくはありませんし、どうぞ「ホルン」と呼んでください、大尉。

[???] 了解した。では、ミス・ホルン。私はケリー、ルイス・ケリーだ。本名で悪いが、ここではコードネームが流行らなくてね。

[ホルン] お気になさらず。ケリー大尉、あなた方もこの倉庫の調査にいらしたんですよね。

[ケリー大尉] ああ。我々の方でも、情報を掴んでいたものでな。

[ホルン] ならば、事の大きさはご理解いただけているでしょう。二ヶ月前、軍の輸送ルートから大量の源石製補給物資が盗まれ、この一帯で消息を絶ちました。

[ケリー大尉] ……ああ、ええと……

[ホルン] 申し上げるまでもないと思いますが大尉、こうした兵器に加えて、周辺の各郡で盗難された物品までもが、違法組織の手に渡っていたとすれば、その脅威はヒロック郡を脅かすのみには留まりません。

[ケリー大尉] ……ああ分かっている。説明に感謝する。

[ホルン] いえ。こちらからも、ご協力に感謝します。

[ケリー大尉] ――ヒル!

[副官ヒル] はい、上官。

[ケリー大尉] この若者……いや。この容疑者を、兵営に連行しろ。

[バグパイプ] えぇっ、なんでよ! うちらがやっと見つけた手がかりなのに!

[副官ヒル] 上官、彼女の矛が任務遂行を妨げているのですが。

[ケリー大尉] うむ、あー……そうだな……

[ホルン] ……

[ホルン] バグパイプ、矛を下ろしなさい。

[バグパイプ] だけど、うちらの任務は――

[ホルン] ――私たちは今、ヒロック郡の管轄地域にいるのよ。

ケリー大尉はポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭った。

[ケリー大尉] わかってもらえて嬉しいよ、中尉。……君と、そちらの若いヴイーヴルの女性、それからほかの諸君も……

[ケリー大尉] ええと、とにかく皆、ロンディニウムから駆けつけてきたんだし、過酷な道のりで疲労も溜まっているんじゃないか?

[ホルン] これはヴィクトリアの軍人として、我々が負うべき責務ですから。

[ケリー大尉] 確かに、その通りだな。……それで、もしこの後も君たちがヒロック郡で活動したいと言うのなら――

[ホルン] ――無論、我々には引き続き、源石製品窃盗事件を調査する義務があります。ロンディニウムからの命令に基づいた活動ですので、恐らくハミルトン大佐にもご理解いただけるかと。

[ケリー大尉] もちろん、もちろんだとも。我々と共に、兵営へ来てくれても構わない、という話だよ。

[バグパイプ] 隊長、本当に引き渡していいの? 絶対、わざとこうなるように仕向けられてたよ! きっとこの人たち、うちらが郊外に入った時から、ついてきてたんだよ!

[バグパイプ] それで、うちらがこうして捕まえたからって――

[ホルン] ――「帝国駐屯軍には、駐屯地の治安を脅かす事件に対処する責任がある」。

[ホルン] 彼らの行動は、規定に反するものじゃないわ。

[バグパイプ] う~……わかった。

[ホルン] ケリー大尉。捕縛した人物は、そちらに引き渡します。ですが規定により、我々も取り調べには参加できますので――その点はどうかお忘れなく。

[ケリー大尉] 規定か……は、ははっ……確かに、君の言う通りだな。

[慌てる青年] や、やめろ……放せ! いやだ、行きたくない!

[副官ヒル] ふん……

[慌てる青年] 助けて……なあ、助けてくれよ! 俺は何もやってない……何も知らないんだ……!

[慌てる青年] う、ああああっ……!

[ケリー大尉] おい、ヒル……

[副官ヒル] ターラーのクズどもときたら、騒々しい奴ばかりだな。

[ケリー大尉] ……はぁ……連行しろ。

[バグパイプ] ちょっと! どうしてそんなひどいことするの!?

[バグパイプ] (小声)隊長、あのフェリーンのおにーさん……うちらに助けを求めてたんじゃないかな。きっと、あの人たちに連れてかれるのが怖いんだよ。

[ホルン] ……

[ホルン] (小声)……トライアングル?

[トライアングル] はい、隊長。――倉庫外の樹上で引き続き待機中です。彼らには気付かれていません。

[ホルン] (小声)助かるわ。じゃあ、あなたは偵察チームを率いて、付近の輸送ルート沿いに調査を続けて。手がかりが見つかったら、すぐに報告してちょうだい。

[トライアングル] 了解。駐屯軍への報告は必要ですか?

[ホルン] ……

[ホルン] いいえ。いらないわ。

[ホルン] ただ……自分の安全には気を配るようにね。

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