aklib_story_暴風眺望_9-12_押し寄せる影_戦闘前

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暴風眺望_9-12_押し寄せる影_戦闘前

汚染爆弾の被害を受けた街で、おびただしい数の死傷者が出た。ロドスのオペレーターたちは撤退前に住民の救助を行うことを決め、ジェーンはその救助隊に加わる。バグパイプは、トランスポーターの死を受けて、市街地を抜けホルンの元へと戻ることに決めた。


[Outcast] 全員、無事か?

[オリバー] げほ、ごほっ……はい。Outcastさんのおかげで、皆咄嗟に隠れられましたから。……ジェニー、お前は? 怪我してないか?

[ジェニー] うん、あたしは大丈夫。Outcastが守ってくれたから……

[ジェニー] でも、一体……外で、何が起きたの?

[ジェニー] 叫び声が、たくさん聞こえてくる……それに、子供たちが……

[Outcast] ジェーン、まだ外に出るんじゃない! 全員、引き続き物陰に隠れていろ! できるだけ扉と窓から離れるんだ!

[Outcast] この規模の爆撃ともなれば、一度では済まない――

[フレッド] う、わああっ! あ、足が……ッぐ……本棚の、下敷きに……っ!

[Outcast] ウィル! フレッドを助けてやってくれ!

[フレッド] はぁ~っ……ありがとう、兄弟。いてて……

[Outcast] 出血は?

[フレッド] 大丈夫、少しだけですから。

[Outcast] 医療キットはまだあるか? すぐに初期遮断薬を服用するんだ!

[フレッド] えっと……Outcastさん? すねをちょっと木で引っ掻いただけですよ。骨も無事みたいで普通に動かせますし。

[Outcast] いいや、引っ掻いたのが、問題なんだ。

[Outcast] 君は今、最悪の感染リスクに直面しているんだ――窓を突き破ったあの黒い結晶が見えるか?

[フレッド] えっ? ――あ!! う、嘘だろ……! そんな……

[シュレッダー] ……活性源石!?

[Outcast] ああ……その通りだ。

[ジェニー] ま、まさか、街中に見える黒いものは……全部、源石なの!?

[Outcast] 恐らく。

[ジェニー] そんな……し、信じられない……

[オリバー] そ、それじゃ今、街全体が物凄い危険に曝されてるってことか!?

[オリバー] クソッ……! Outcastさん! できるだけ早く、近くの人たちを救助しなけりゃいけません! 時間がないんだ、助けられるだけ助けましょう!

[Outcast] よし。反対意見はあるか?

[シュレッダー] ……いいえ。一番文句を言いそうなのは、オリバーだったんですけどね。

[オリバー] 皮肉言ってる場合か! いいから救急キットまとめろ! そんで、怪我人のフレッドはこの場で待機! 連絡係を頼む。それからウィル、お前はすぐに両親の様子を見に帰れ――

[ウィル] いや、でも、俺も一緒に……

[オリバー] バカ言うな、仕事より家族を優先しろ! いいか、家族全員助けられるだけの薬を持って行ってやるんだ! そのついでに、お前のご近所さんたちも確認してやりゃいいだろうが!

[ウィル] っ、オリバーさん……ありがとうございます……!

[オリバー] シュレッダー。俺たちはその分まで、余計に駆けずり回んなきゃいけねぇわけだが、いいよな。

[Outcast] おっと。私がいるのを忘れないでくれよ、オリバー。今の私は、君からすれば臨時の部下のようなものだからね。

[オリバー] ちょっと、Outcastさん……冗談やめてくださいよ。

[Outcast] はははっ。では、ジョークはこれくらいにしようか。第十地区付近は私に任せろ。

[オリバー] ですが、あそこは爆撃の中心地ですし、危険すぎるんじゃ……

[Outcast] 承知の上さ。ほら、私にも通信機を貸してくれ。お互いの進捗状況を共有できるようにね。

[ジェニー] あ、あの……あたしも一緒に……!

[オリバー] 悪いがなジェニー、この救助任務は遊びじゃないんだ。お前は俺たちみたいに専門的な訓練を受けちゃいないし、こんなリスクを冒さなくてもいいんだよ。

[オリバー] ……それにしても、群衆の中に活性源石を放り込むなんて、こんな惨いことしやがったのはどこのどいつだ? これも全部あの*ヴィクトリアスラング*の仮面野郎どもがやったことなのか!?

[Outcast] この短時間でこれだけの広範囲に向けて、狂気じみた無差別爆撃を行うことができると考えると……犯人たちは、少なくとも十門以上の榴弾砲――それも最新のものを投入しているはずだ。

[ジェニー] そんなにたくさんの大砲を……?

[Outcast] ああ。そして分かったことがある。この二日間、遠くから戦闘を観察していたんだが、あの黒い仮面の集団には、強力な術師が所属していて、部隊員に一定の隠密能力を与えているようだ。

[Outcast] ――とはいえ、それは駐屯軍に気付かれることなく、殺傷能力の高い武器を山ほど抱えて街に出入りできるほどの能力ではない。

[Outcast] なにより、連中は、苦労して奪い取った街に大砲を向け、その住民たちを仲間共々粉砕するほど愚かではないだろう。

[ジェニー] そ、それって……

[Outcast] ジェーン。君なら、もう答えがわかっているはずだ。

[ジェニー] そんな、だってそれじゃ……!

[ジェニー] 街を砲撃したのはあたしの同僚たちだって言うんですか!? あたしたちが、あんなにたくさんの人を殺して、鉱石病をばらまこうと企んでるって言いたいんですか!?

[Outcast] ……「君たちが」ではなく、「駐屯軍が」だよ。

[Outcast] ターラー人たちが皆、敵を支持している以上、駐屯軍は、この戦いに勝ち目がないと悟ったんだろう。スパイを見破るすべを持たない彼らは、いっそ民間人ごと敵を一網打尽にしようと決めたんだ。

[Outcast] ――より有害な不完全燃焼の汚染爆弾を使用したのは、禍根を絶つためだろう。鉱石病患者はすべて、一元管理されることとなる。駐屯軍は堂々とターラー人を粛清する口実を得る、というわけだ。

[ジェニー] それって……人の命を、勝つための手段としか思ってないってことですか? で、でも、ヴィクトリア軍は本来、この国の人を守るためにあるはずですよね!?

[Outcast] 君の憤りはもっともだ。その衝動は、多くの兵士に欠けているもの――慈悲の心を持っていることの証左でもある。

[Outcast] 過去数百年にわたって、ヴィクトリア軍はこの大地に息づいていた無数の国や人々を踏み潰してきたが、それは決して慈悲に基づく行軍ではなかった。

[ジェニー] ……

[ジェニー] だから、ターラーの人たちからすれば、あの暴徒たちが正しいんですね……

[Outcast] 実際にはどちらも、罪のない人々の命を利用して、自分たちの利益を追求しようとしているだけの連中だ。被ったマスクが異なるだけで、下は同じ醜い顔だ。本質的には何も変わらない。

[ジェニー] じゃあ――正しいことをしているのは、ロドスだけってことでしょうか?

[Outcast] ――君は、ロドスのことをどれだけ理解している?

[ジェニー] あたしは、オリバーおじさんたちを信頼してますから。それに、あなたと出会ったその日から、あなたのこともずっと頼りにしてますし……

[Outcast] では聞くが、君は、私のことをどれだけ知っている?

[ジェニー] ……

[オリバー] Outcastさん、そこまで厳しい言い方しなくても。ジェニーには、受け入れるのに少し時間が必要なだけですよ……

[ジェニー] ……ありがとう、オリバーおじさん。でも、大丈夫。Outcastの言いたいことは、わかるから。

[ジェニー] ……あのね、Outcast。あたしは、行き場のないあたしを受け入れてくれたみんなに、心の底から感謝してるんです。

[ジェニー] でもその一方で、あたしは確かに、まだ迷っています……自分の居場所はここだって決めようとするたび、必ず誰かに、お前はこっち側の人間じゃない、って言われてしまうので。

[ジェニー] だけど、少なくとも今この瞬間、自分がやるべきことは何なのか――それだけは、ちゃんと理解しているつもりです。

[ジェニー] お願いします。みんなと一緒に行動させてください。あたしは、怪我をした人たちをできるだけ多く助けたいんです。

[Outcast] その中に、先ほど君に向かって石を投げ、追い出した連中がいたとしても、か?

[ジェニー] さっきあなたが仰ったように、あたしには、悪事が繰り返されるのをただ眺めているだけなんてできません。――あたしがどんな立場を選んだとしても、それは変わりませんから。

[Outcast] ――オリバー、今のを聞いたか? ヒロック郡事務所の責任者は君だろう。ジェーン・ウィローの臨時加入を承認してくれるかい?

[オリバー] は、はい! もちろんです!

[オリバー] じゃあ、ジェニー。ちょうど救急キットの準備もできたところだ。誰と行動してもいいが、どうする?

[ジェニー] ……それなら、あたしも中心部に向かいます。

[オリバー] ははっ、Outcastさんと一緒に、ってことだな? いや~、度胸あんなぁ……この人にあんな詰め方されたら、普通はビビっちまうだろうに……

[Outcast] うん? なんだって?

[オリバー] な、何でもありませんっ!

[Outcast] では、準備も整ったところで、各自出発しようか。

[Outcast] 皆、忘れるなよ。自分の身を守ることが最優先だ――大規模な汚染源や敵になりかねない対象は、できるだけ回避するように。

[Outcast] 今、私は「敵」と言ったが――現状から判断して、どちらの兵士もそうなりうるものと思われる。十分に気を付けてくれ。

[バグパイプ] コックさん、コックさん――!

[バグパイプ] ……どうしよう、そこら中怪我人だらけだよ。

[バグパイプ] げほっ、ごほごほっ……うぅ……もう……!

[バグパイプ] ううん、諦めちゃダメ! 絶対コックさんを見つけ出すんだ! あの人、きっとこの近くにいるはずだから、何とかして街から送り出さないと……!

[バグパイプ] うちは……って、んわっ!? 誰だべ!? 足首掴んでるのは!?

[ダブリン兵士] ……ッごほ、っ……

[バグパイプ] この人……敵の兵士!?

[バグパイプ] ……っ!

[バグパイプ] でも……動けないみたいだね。そんな人をこれ以上痛めつけるようなこと、するべきじゃない。

[ダブリン兵士] ……殺せ……

[バグパイプ] 今は喋らないで。おめーさんの足、石の下敷きになってるよ。まずはどかしてあげるから、そのあと話そう。

[バグパイプ] はぁッ――!

[バグパイプ] これでよし、と。……わ、ひどい……これじゃ歩けないかな……それにこの、黒い結晶……かなりマズい状態だね。

[ダブリン兵士] 聞こえた、だろう……私を……殺せ!

[ダブリン兵士] 私は、決して……感染者など、に……あんな、不潔で……汚らわしい存在には……なりたく、ないんだ!

[バグパイプ] どうしてそんなこと言うの? 何とか頑張って生き延びるのは選択肢にないってこと?

[ダブリン兵士] 貴様は……理解、していない……

[ダブリン兵士] これは、死よりも……恐ろしい、ことだ……

[バグパイプ] そう思うなら、それでいいよ。悪いけど、うちは人を探してるところだから、これ以上おめーさんに構ってあげられないんだ。じゃあもう行くね。

[バグパイプ] コックさん! コックさ――

[ダブリン兵士] ……待、て……

[バグパイプ] どうしたの、また引っ張って――って、このエプロン! コックさんの!

[バグパイプ] ……っ!

[バグパイプ] (この岩が、コックさんを下敷きに……これじゃ、見つからないのも当然だ……)

[バグパイプ] (だけど、持ってた情報は無事みたい。)

[バグパイプ] (最期の瞬間、コックさんはこの大事な証拠を全力で守ってくれたんだ。)

[バグパイプ] ……はぁ……

[バグパイプ] ……マクマーティンさん――うちにはそれが本名かどうかもわからないけど、おめーさんがしてくれたことは、絶対忘れないよ。

[バグパイプ] ――戦友よ、どうか安らかに。

[バグパイプ] その勇気を、無駄にはしないから。

[バグパイプ] ……

[バグパイプ] それから、そこのおにーさんも、ありがとう。

[バグパイプ] 最期の頼みを聞いてあげたいところだけど……うちが手を下さなくても、おめーさんの命はもうすぐ尽きちゃうだろうから……

[バグパイプ] 何か言っておきたいことがあれば、うちが聞くよ。

[ダブリン兵士] ……リーダー……

[バグパイプ] こんな時にまだ、リーダーさんのことばっかり考えてるの……?

[ダブリン兵士] ハ、ハハ……ハハハ、フ、ハハハハッ!

[ダブリン兵士] 我々は……間もなく……新生をもたらす、炎を……迎える、のだ!

[バグパイプ] おめーさん、一体何を見て――

その時――これまでより多くの敵兵が、廃墟を踏み越え押し寄せてきた。

[バグパイプ] あれは……敵側の援軍!?

[バグパイプ] じゃあ、あの激しい砲撃も全然効いてないってこと?

[バグパイプ] なら、隊長が……隊長たちが危ない!

[バグパイプ] みんなと合流しないと――!

[バグパイプ] うちの任務が失敗した以上、うちの隊に残された唯一のチャンスは――通信基地局を占拠することだけなんだから!

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