aklib_story_怒号光明_JT8-3_烈炎の中で邁進_戦闘後

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怒号光明_JT8-3_烈炎の中で「邁進」_戦闘後

「不死の黒蛇」は、タルラの命を盾にして二人を脅した。タルラが死ねば、戦争は自ずと勃発することを知っていたのだ。

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[「不死の黒蛇」] 見事だ。

[「不死の黒蛇」] 実に見事だ……

[「不死の黒蛇」] 何をした？ 斬龍の剣では私を斬れず、魔王の剣でも私を刺し貫けない。ならばどうして……私のアーツが……私の支配力が、衰えつつある？

炎が徐々に消えていく。その温度は人を殺すにまだ十分だったが、数分前のような荒々しさはなくなっていた。

チェンの血に染まった手の震えは止まらない。彼女は、ほとんどまばたきをしなかった。

[タルラ？] ……

[タルラ？] 喜びを感じるか？

[タルラ？] その味は甘いか？

[タルラ？] 勝利を間近にして、どうしてそんなにも神妙な表情をする？

[タルラ？] 勝利はお前たちの目前……そうだろう？

[チェン] ……うぐっ。

[チェン] アーツが解けた……声が出せる。

[チェン] アーミヤ、気を抜くな。私たちの体力も――

[タルラ？] この体から私を追い出したいか？

[タルラ？] ならば、どうぞお好きなように。

[チェン] その態度、何の皮肉だ？

[タルラ？] 魔王……魔王よ、なぜ何も言わない？

[タルラ？] 私を彼女の体から追い出すことなど、お前たちなら、お前なら――

[タルラ？] できるだろう？

[アーミヤ] ……

[タルラ？] 彼女を裁くのと私を裁くのでは何が違う？ 全てが私の犯した罪ではないのか？

[タルラ？] 魔王よ、答えろ。

[アーミヤ] その通りです、コシチェイ。

[アーミヤ] もし彼女が全く望んでいなかったのであれば、あなたにこのようなことはできませんでした。

[チェン] ……

[アーミヤ] あなたの考えは……それが捻じ曲げられていようが、それは確かにタルラ本人によるものです。

[チェン] 貴様！

[アーミヤ] タルラさんの肉体を傷つける気ですか！？

[チェン] 何をする気だ！？ 剣を下ろせ！

[タルラ？] 人が自ら首を刎ねるのを見たことがあるか、「妹」よ？

[タルラ？] ドラコの肉体であろうと、この剣の鋭さには敵わないだろう。

[タルラ？] コータスの言う通り、彼女がやりたくないことならば、私にはできない。

[タルラ？] ならば、タルラはこれ以上生きていられるかな？

[チェン] よせ！

[タルラ？] 彼女の心の奥底の絶望、逃れられない恥辱、これらが十分に濃くなれば彼女は――

[タルラ？] ――

[タルラ？] 死にたくなるかな？

[アーミヤ] コシチェイ！ タルラさんに対してあなたがしてきたことは全て、許されるものではありません！

[アーミヤ] あなたが彼女の影だろうと、彼女の覚醒の妨げだろうと、それとも彼女のもう一つの顔だろうと……タルラさん本人が犯した罪がどれだけあろうと、あなたが正しいなんてことはありえません。

[タルラ？] 私はただ彼女を「教育」しているだけだ。

[タルラ？] 私が失敗に至ったのは、未だ潰えぬ信念がもたらしたる結果だ。お前たちがいずれ信念を失った者と相まみえたならば、苦痛という言葉がどれだけのものを内包しているか、知ることもできるだろう。

[タルラ？] 哀れにも彼女の犠牲となったウルサスの戦士たちが、彼女の足元に敷かれる頑丈な道でしかなかったように。

[タルラ？] 悲しき感染者たち……世間からは見限られたその価値を、今こそ遺憾なく発揮できたはずの感染者たちは……全て無駄になってしまった。

[タルラ？] 私でさえ彼女の足元に敷かれる道に過ぎないのだ。「妹」よ、もし私がお前を殺せたら、あとは平坦な道が続くだけだ。

[タルラ？] お前は、私たちを黒蛇と見なしても構わないし、私をタルラと思っても構わん。

[タルラ？] チェン・フェイゼよ。父と娘の付き合い方は千差万別だ。タルラと私もその中の一種にすぎないのだよ。

[タルラ？] 私はウェイとも似た者同士なのかもしれない。

[チェン] 自分の「娘」を犠牲にしておいて、よくもぬけぬけとそんなことが言えたな！？ 奴とお前は少しも似ていない！

[アーミヤ] ダ、ダメです……そんなことを――

[タルラ？] もう遅い、魔王。私の秘密をお前たちに握らせやしない。

[アーミヤ] コシチェイ、あなたがチェンさんを殺そうとしている理由は、タルラさんを完全に消すためですね。

[アーミヤ] ですが、もうそれは失敗に終わりました。そして、私たちが呼び起こした彼女の記憶は、すでに彼女の脳内を駆け巡っています。彼女はこれ以上我慢ならないはずです。

[アーミヤ] タルラさん！ 思い出してください……あなたが誰だったかを！

[アーミヤ] どんな場合だろうと、あなたなら……あなたこそ彼らのために最初に犠牲になろうとする人です、違いますか！？

[アーミヤ] フロストノヴァさんやファウストさんを……あなたを信じた全ての戦士を思い出してください！ あなた自身を思い出してください！

[アーミヤ] あなたは本当に私たちに命を奪われることを望むんですか？ 操られたまま死ぬなんて、あなたは望まないはずです！

[アーミヤ] もしあなたが後悔しているなら、もし罪悪感に苛まれているなら、呪われた身でなく、太古の邪念による被害者としてでもなく、あなた自身として背負ってください！

[アーミヤ] 本当に死ぬつもりでも、タルラとして死んでください！ 雪原を変える、感染者の運命を変える志を持ったタルラとして死ぬんです！

[アーミヤ] タルラさん、私はわかっています！

[アーミヤ] あなたが感染者のために戦ったのは、自分の将来や成功のためではないということを……あなたがそうする理由は、そうするのが正しいと信じていたからです！

[アーミヤ] だから私たちは、一度や二度の失敗では挫けず、相手がどんな人であろうと向き合い、大地がどんなものであろうと、倒れるまで歩み続けるんじゃないんですか？

[アーミヤ] あなたはそういう意志を持った人じゃないんですか？ ……あなたの知り合いは、みんなそういう人たちじゃなかったんですか！

[チェン] タルラ、お前は望んでその蛇の操り人形になるのか？

[チェン] お前はこんな結末に満足するようなやつなのか？ 私のよく知るタルラは、その程度のやつだったのか？

[チェン] そんなお前が……感染者のリーダーに相応しいのか！？

……私は相応しくない。

[チェン] なっ！

[アーミヤ] まさか……タルラさん……！

白髪のドラコが自らの「父親」に反抗するのは決してこれが初めてではない。

私が感染者のリーダー……？

そう思ったことなど今まで一度もない。

彼の教えの全てが陰謀であり、それはあまりにも露骨だった。

しかし、たとえ彼女がその全貌を知っていようと、彼女が自分を止めることはできなかった。

耐え難いそれらの出来事を憎む前に、彼女はまず……

自分を憎んだ。

私はお前の罠にまんまとハマり、失敗した。しかし、最も憎むべきなのは、全てを実行した自分自身だ。

だが、たとえそうだとしても――！

お前が私の同胞を愚弄するな。

お前に……死ぬまで屈しなかった私の同胞を愚弄する資格はない！

お前の「愛」は、所詮ただの犠牲にすぎない。それこそが私とお前の違いだ。

ミスター・ボジョカスティ、エレーナ、イーノ、サーシャ、口数の少ないリュドミラ、優しいアレックス、アリーナ……

私に皆をあざ笑う資格などない。

もがきながら生きる感染者の同胞たちを、私はあざ笑うことなどできない。

[タルラ] もういい。終わりにしよう。コシチェイはここまでだ。私とお前は違う……私はもう一匹の黒蛇などではない。

[タルラ] コシチェイ……私はお前に似ているかもしれない……だが、決して新たな黒蛇にはなり得ない。

[タルラ] お前の呪いは、今日ここで断ち切る。

[タルラ] 私の憎しみは、あまりにも多くの人を殺してきた。だが、二度とこの憎しみを利用して私を扇動しようなどと思うな。

[タルラ] フッ、コシチェイ。お前が背負ってきた何世代にもわたる無数の恨みと物語は……私の代で終わりだ。

[タルラ] コシチェイ、お前は種であり、蔓であり、空高くそびえ立つ大樹だ……だが、構わない。

[タルラ] 私は炎なのだから。

[タルラ] 「私がこの全てを教えてやった」？ 違う、違うぞ、コシチェイ。この大地、あの雪原、日の光を追い求めたあの人々……彼らが私に教えてくれたものを、お前は永遠に理解できない。

[タルラ] 彼らこそが、私の炎の主たる者たちだった。たとえお前のせいで彼らを失ったとしても……お前ではもう私の感情を支配することはできない。

[タルラ] 私の火は、私もろともお前を焼き尽くす。

全ての同胞の――奴隷のようにこき使われた、全ての同胞の炎が、お前自身とその枝葉や幹を、徹底的に焼き尽くす！

[タルラ？] まさか……まさか！ 私に抵抗するだと？ お前は――

[タルラ？] ……私の牙から逃れられると思っているのか？

[チェン] 己の陰謀が露呈したことにではなく、タルラを支配できなくなったことに腹を立てているのか？

[タルラ？] 支配だと？ 彼女は私であり……私が彼女自身だ！

[チェン] 支配できなくて当然だ……ドラコの娘と、湿っぽくて気色の悪い蛇とが釣り合うわけがない！

[アーミヤ] チェ、チェンさん？ その発言は、フィディアのオペレーターたちの前ではしないでくださいね！

[チェン] ああ、済まない……そういえば、私にもかつてフィディアの上司がいたな。だが、彼女は思考と言葉が一致していた。そいつとはまるで違う。

[チェン] コシチェイ……お前が失敗した原因はただ一つ。それはお前が相応しくないからだ。

[チェン] お前は私の姉の体を奪うに相応しくない。戦争を引き起こすに相応しくない。そもそも、お前の経歴すらお前には相応しくない。

[チェン] だから、今すぐ、タルラの体から……出て行け！

[タルラ？] ふん、やはり去る前にこの首を……そうなれば、お前たちだけでこのチェルノボーグを止められるとでも思っているのか？

[アーミヤ] ――ダメです！

[タルラ？] 私がここで命を断てば、全ては流れに沿って進むだけだ。お前たちでは決してウルサスは止められない――

[アーミヤ] ……あなたは彼女を娘同然に――

[タルラ？] 黙れ！ まだ私の感情を探ろうというのか？ 混ざりものの魔王よ……それが事実であろうと、それを口に出す資格はお前にはない！

[タルラ？] ……ふぅ。

[タルラ？] ふむ、だがお前の言うことも正しい。

[タルラ？] いいだろう。

[タルラ？] 所詮、次のチェルノボーグと次の操り人形……そして次のタルラが現れるのだからな。

[タルラ？] 認めよう。今回は、自らの偉大な勝利を心ゆくまで祝うがいい。

[タルラ？] もういい……なるようになればいい。だが覚えておけ、タルラ。

[タルラ？] 「私はどこにでもいる。たとえこの大地の果てであろうと。」

白髪のドラコはがくりとひざをついた。

[アーミヤ] ……終わったんでしょうか？

[タルラ？] ……

[チェン] 待て！

[チェン] まだ、あの蛇の罠ではないと言い切れない。本当にタルラの頭からあいつが消え去ったかもわからない。それと本当にタルラ自身が自分の行いを悔いているかどうかも……

[チェン] それに――いや、まだ終わってはいない……私たちは、この都市を止めなければならないんだ！

[？？？] こいつを止めたいならあれをあたしに渡しなさい、ウサギちゃん！

[アーミヤ] えっ……？ Ｗ？ 一体どこから……

[W] いいから鍵を！ 早くしないと間に合わなくなるわ！ この鉄塊を止めないと、みんな仲良くお仕舞いよ！

[アーミヤ] わ、私は敵を信用できません。ロドスの仲間を殺した敵は……

[W] どうしたら信じてくれるのかしら？ ……じゃあこうしましょう、あたしの心を読んで。ほかの奴にそんなことされたら吹っ飛ばしてやるけど、今ならあんたに少し見られるくらいどうってことない。

[W] それにウサギちゃん……あたしだってあんたを信じちゃいないわ。だけどあたしは、テレジアの継承者がこんな大事な時にバカな選択はしないって信じてんのよ！

[アーミヤ] ！

[W] もし鍵を渡してくれるんなら、都市が止まった後であたしを殺してくれてもいいわ。まぁタダでやられる気はないけど、あんたにならその機会を与えてあげてもいい。

[W] 早く決断しなさい、あたしがこんな譲歩してあげることなんてないんだから！

[チェン] 殺人狂を信じることなどできない。

[W] なら、あんたは自分自身を信じるべきじゃないわね。

[チェン] そうだな。

[アーミヤ] Ｗ……もう少しだけ、あなたを信用するに足る言葉をください。

[W] えっ？ そんなこと言われても……ええと……

[W] あっ。

[W] アーミヤ、この大地が……静かに眠れるように。

[アーミヤ] ……

ふぅ、毎日あれこれ対応してると、本当に疲れるわ……アーミヤ、私にとって、夢とは手の届かないものなの。

それでも私は夢を追いかける。その夢のおかげで、ここでどんなにエネルギーを注ぎ込んでも、それは意味のあるものだと思えるからよ。

夜、眠りに着く時に、お父さんとお母さんがそばにいてくれたら、とても嬉しいでしょう、アーミヤ？

……ええ、そうね。うーん……わかるわ、色々小言を言われて喧嘩になっちゃうかもしれないわね。

家具をひっくり返したことや、ご飯の好き嫌いのことを言われちゃうわね。でもケルシーに当たり散らしちゃダメ、彼女もわざとやっているわけじゃないんだから。わかった？ いい子ね。

そう、いずれにしろ、お父さんとお母さんがいれば、私たちは安心できるものなのよ。

お父さんとお母さんは、暗闇の中の明かりみたいなもの。隅っこに隠れている黒い怪物も、窓の外で舌舐めずりをする野獣も、みんなお父さんとお母さんが追い払っちゃうのよ。

あらあら、もっと寂しくさせちゃったかしら？ はぁ、私ったら……

よしよし、大丈夫よアーミヤ、大丈夫……私がここにいるから。

大丈夫よ、アーミヤ。お父さんも、お母さんも、きっとあなたのことを想ってるわ。普段どんなに悩み事があっても、我が子を見ている間は、何よりもその子のことを愛おしく思うものよ。

時には、それこそが私たちの生きていく理由になるのよ。なぜなら……私たちが死んだ後も命が続くのは、生きている人がいるから。それが私たちが前へと進み続ける理由なの。

私は、子供たちに両親を失ってほしくない。同じように、両親にも子供を失ってほしくないの。

この大地では、命はあまりにも身勝手に奪われてしまう。私たちの愛する人を奪うものが――私たちを支えてくれる人を奪うものが、必ず存在するの……

それが、親子の間で起こることすらあるのよ。少しの言葉、少しの考えの違いだけで……彼らの間に憎しみが生まれてしまう。

でも、傷から流れる血では田畑を潤すことはできないわ。年々蓄積した痛みでは、甘い果実は実らないのよ。

アーミヤ、私たちは確かに弱い。たとえ、私たちの流した涙が砂地に流れ込んでも、種はそこから芽を出さない。

だけど、私には夢が――とても壮大な夢があるの。

私は、この大地の人々に、もう二度と別れや喪失による涙を流してほしくない。私たちの夜空を、悲痛と空虚で満たしたくない。

そう思ってるの。いつの日か……この大地の一人一人を、落ち着いて静かに眠りに就かせてあげたいって。

そう、全ての人を。もちろん私たちもその一部よ。

今、ロドスはまだその航路の途上を、音を立てながら進んでいる最中よ。でもね、アーミヤ……たとえ私たちが終点にたどり着けなくても――

たとえその未来が来なくても……たとえこの大地が暗闇に陥ったとしても……私たちがここで生きているのは、一つの答えのためだけじゃないのよ。

少し難しかったかしら？ もう寝ましょう。おやすみ、アーミヤ……

[W] ウサギちゃん、いや……アーミヤ！

[W] あたしに、もう一度……テレジアのために、まだ死んでいない人たちのために、何か意義のあることをやらせてちょうだい！

[W] 今回だけ、あたしを助けると思って！

アーミヤの手に在った黒い長剣が、ゆっくりと灰になり、風とともに散っていく。

[アーミヤ] わかりました。Ｗさん、今回はあなたを信じます。

[アーミヤ] ……この大地が静かに眠れるように。

[アーミヤ] お任せします、Ｗさん。

コータスの少女は、パトリオットから受け継いだ箱を、サルカズに手渡した。

[W] ……ありがとう。

[W] ジジイ……あんたの最期の願いはわかってるわ。あたしにこの街を止めさせて……

[W] ……パスワード？ どこに入力するの？

[W] 待って……何これ？ この鍵は……

[コマンドパネル] （ウルサス語）警告 十分な権限がありません この鍵は 起動時のみ使用可能です

[W] 権限がないってどういうこと？

[アーミヤ] ……どういうことですか？

[W] 聞いて、これは確かに鍵だけど……でも……使い物にならない。この鍵では権限が足りないって。市長の鍵にも権限がないっていうんじゃ誰が止められるっていうのよ！？

[アーミヤ] つまり、最初から……みんな、騙されてた……？

[アーミヤ] でも、中枢区画には必ず緊急ブレーキ用の鍵があるはずです！ 鍵が燃やされて……いない限り……

[W] ……違う。こんなはずじゃ！ ミーシャ……！？

[アーミヤ] 一体……どうすれば……

[タルラ] 心配には及ばない。

[タルラ] 鍵ならここにある。

[アーミヤ] えっ！？

[W] この龍女……

[W] ハッ、大人しく渡す気はないってことかしら？

[W] もし、あんたが邪悪な計画に最後までこだわるつもりなら――

[タルラ] 受け取れ。

[W] えっ、ありがと。

[W] 本当のあんたって……意外と素直なのね。ちょっと気に入ったわ。

[タルラ] 口の回るサルカズだ……

[タルラ] それをコントロールパネルに押し当てろ。その後はわかるだろう。

[W] パスワードは知ってるわ。

[W] アーミヤ、しっかり立ってなさい。どうなるかわかったもんじゃないんだから！

[W] えぇと、「（ウルサス語）全人民の腹を満たさんがため」だっけ？

[タルラ] そうだ……それがパスワードだ。

[チェン] その鍵、どこで手に入れたんだ？

[タルラ] フッ……もともと制動室の壁に掛かっていたんだ。パスワードさえあれば、誰にでも使えるものだ。だが、誰もそれを予め奪取してはいなかった。

[タルラ] ……その先に、こんなバカげた展開と、残酷な目論見が待っているなどとは考えなかっただろうからな。

[タルラ] 遊撃隊を追い払うため、そして近衛局を騙すため……その役に立たない鍵は、彼らを欺くための私の嘘にすぎなかったんだ。

[タルラ] 私は移動都市に対する彼らの無知を利用した。スカルシュレッダーとパトリオットの信頼を利用した。それが……彼らが私に寄せた、最後の信頼だったというのに。

[タルラ] （ウルサス語）全人民の腹を満たさんがため。

5:42p.m.

鉄塊は轟音を響かせながら、壊滅へと向かうその歩みのスピードを否応なく緩めた。

ついに、チェルノボーグ中枢区画は、龍門の艦砲射程外ギリギリの位置で停止したのだった。

[W] 思ったほど危険じゃなかったわね。まあでも、無事に止めることができてよかったわ。

[W] ヒュウ――

[W] ……龍女、あんた鍵を破壊してなかったのね。

[タルラ] ……

[W] あれ、口がきけなくなったのかしら？

[チェン] ――そうしたくなかったからだろう。

[チェン] おそらくコシチェイは、あらゆる策を講じてタルラを誘導し、その鍵を破壊させようとしたはず……だが、結局できなかった。

[チェン] なぜなら……どうやっても拭い去れない、アーツなどでは揺るがすことのできない良心がそこにあったからだ。

[チェン] タルラが過ちから全てを滅ぼそうとしたとしても、別の道の可能性を断絶することはできなかったのだろう。

[チェン] もがきながらでも感染者が生きていける道の可能性を……

[チェン] ……タルラ、立て。

[タルラ] ……

[チェン] そんな姿はやめろ。お前はもう、失望させるに十分な行いをした。立つんだ、タルラ！

[チェン] 立て、タルラ！

[チェン] お前は何と向き合っている？ 答えは自分で言っていたはずだ。本心だろうと見せかけだろうと、自分の言葉であろうと他人の口を借りた言葉であろうと、お前はわかっているはずだ。

[チェン] お前の敵は、この腐りきった大地だろう！ その意味がわからないのか、タルラ？

[チェン] お前は私以上にその意味を痛感しているはずだ……！

[チェン] 感染者のため……いいや、感染者と一般人との間にある、高い壁を打ち砕くため、醜い謀殺や奴隷のような非道な扱いをなくすため。

[チェン] 感染者と共に何年も戦ってきたお前なら……当然私よりもわかっているはずだ！

[チェン] そして、この大地に立ち向かっても、お前に勝算などこれっぽっちもないことも、お前はわかっている。

[チェン] ……お前を阻む者たちは、あらゆる手を講じてお前を押し倒し、罪を被せ、溺れさせ、蔑み、騙すだろう！

[チェン] お前が立ち上がろうとするたび、お前を最も腐敗した場所へと引きずり込み、最も穢れた方法でお前をあしらう！

[チェン] 一つでも過ちを犯せばお前は打ち倒される。それでもお前は、前進を選び、尽きない敵に抵抗することを選び、命を投げ出すことを選ぶ。

[チェン] その先にある結末はただ一つ……お前は打ち倒され、滅ぼされる。一歩道を誤っただけで、その結末はすぐにでも訪れる！

[チェン] 一歩道を誤れば、その一歩がお前を傷つける理由になる……お前を傷つける正当な理由になるんだ。

[チェン] ひとたび道を誤れば、奴らは邪悪な獣が血の臭いを嗅ぎつけたように襲いかかり、お前の肉を裂き、お前の舌と目玉を抜き、大声でお前の尊厳を貶めるだろう！

[チェン] だが、一度も道を誤らない者などいやしない。だからお前は必ず倒れる。お前は地面に這いつくばる。

[チェン] ……だがお前は、私よりもよくわかっているだろう。タルラ、お前は倒れてはならないんだ！

[チェン] たとえ奴らが、お前を狙っているとしても。たとえ奴らが、お前のあらゆる弱点を突き、お前を引き裂こうとしても……

[チェン] たとえ奴らが、お前を晒しものにし、嘲笑い、軽蔑したとしても。お前をゴミだと侮辱し、欲張りで幼稚な愚か者と罵ったとしても……

[チェン] お前は倒れてはならない。

[チェン] ……私たちは、それぞれ別の街でお互い知らない姿へと成長した。過去の日々はもう戻ってこない。

[チェン] 私たちにはもう、それぞれのやるべきことがある。

[チェン] だが今は、互いにそれを成し遂げられていない。

[チェン] 道はとても長いんだ。

[チェン] だがその道がどれほど長くとも、やり遂げなくてはならない。

[チェン] お前は私よりもわかっているはずだ。

[チェン] タルラ……お前の道も、同じように長いんだ。

[W] わぁお！ 素晴らしいじゃないの。

[アーミヤ] （Ｗを睨みつける）

[W] えっ？ また余計なこと言っちゃった？

若き警官は、それ以上何も言わなかった。

なぜなら目の前の戦士が立ち上がったからだ。彼女は、ゆっくりと立ち上がった。

[タルラ] ……

[タルラ] お前はいつからそんなトゲのある物言いをするようになった？

[タルラ] アリーナに見せてやりたいな。

[チェン] ようやく口を開いたな。

[チェン] ――お前を逮捕する。

[タルラ] 誰が私を裁く？

[チェン] 裁けるものはまだいない。ウルサスにも龍門にもお前を裁く資格はないのだから。

[タルラ] 身内に庇ってもらいながら、辱めの中で細々と生き長らえるほど、私は落ちぶれてはいない。

[チェン] 違う、タルラ。庇っているわけじゃない。この大地にはまだ、お前を十分公正に裁ける場所がない。

[チェン] 感染者を裁ける場所は、まだ存在しないんだ。

[タルラ] そんな場所を創ることが、お前の理想か？

[タルラ] 誰だろうと、どこから来ようと、病に罹っていようとそうでなかろうと、あらゆる人を公正に裁く場所を。

[チェン] 理想じゃない、それが私の仕事だ。

[タルラ] ……

[タルラ] 久しぶり。

[チェン] 久しぶり、姉さん。

[チェン] ようやく助け出せた。

[タルラ] だがおとなしく逮捕される気はないぞ。たとえ……こんな状況に追いやられてもだ。

[タルラ] まだ死ぬことはできない。

[チェン] まだ……償えるさ。

[タルラ] 私は何も償えない。ある冬、私は無数の人々の全てを滅ぼした……そんな罪を償える者なんて誰もいない。

[タルラ] ただ私は……まだ死ねない。

[タルラ] そう、私は死ねない。死んだら終わりだ。死ねば奴らの思い通りになる。そうなれば、私だけがまだ名前を覚えているあの者たちが、本当に死んでしまうことになる。

[チェン] 生きていくんだな？

[タルラ] ……

[タルラ] 私には、生きる資格はないかもしれない。だがここで死ぬのは――こんな簡単に死んでケリをつけるのは、全く相応しくない。

[タルラ] ――この大地はやり直しが効かない。起きたことはもう起き、まだ起きていないこともいずれ起こる。降り落ちた雨が、土に染み入って戻らぬように、死んだ者が還ってくることはない。

[タルラ] だが私は生きる。彼らのために殉死する資格が得られるまで……

[チェン] ……

[チェン] 子供の頃の遊びを覚えているか？ ……顔３点、胸５点、腰２点。

[チェン] ウェイがどうして私たちにあんな遊びを教えたのかはわからない。だが実際、そこそこ役に立った。

[タルラ] そのせいで私は学校で他の子たちに殴られたんだがな。

[チェン] お前がベアトリクスを庇ったからだろう。ひどいやられっぷりだったな。

[タルラ] とはいえ、お前に殴られたことはなかったな。

[チェン] 今の私なら、ほんの数発でお前に勝てる。

[タルラ] やってみればいい。お前は確かに強くなったようだが……

[チェン] その前に剣を置け。お前がそんな物を持っているのは、何だかおかしい。

[タルラ] なら、素手でやるか。そういえば、侠客になるとかってお前の夢、赤霄は叶えてくれたか？

[タルラ] 「美食・美酒・美景、美人・美徳・美談」、あのわけのわからないおかしな小説のどこに感化されたんだ？

[チェン] おい！ その話はやめろ……！

[タルラ] まさか、まだ読んでるのか？

[チェン] ……その減らず口を叩けなくしてやる。

[タルラ] ふんっ。

[タルラ] だが、ありがとう、フェイゼ。

[チェン] 礼は私ではなく、彼女に言え。

[チェン] お前が感謝すべきなのはあの勇敢な子ウサギと、彼女と共に戦った感染者たちだ。

[チェン] お前の作り出した炎獄を一歩一歩突き進み、ここまでたどり着いたのは彼女だ。本当の意味でお前を救ったのはあのアーミヤさ。

[タルラ] わかった。だが彼女に感謝の気持ちを伝える前に……私たちのケリをつけるとしよう。

[タルラ] もう私たちの間にはちっぽけなものしか残っていないがな。

[チェン] いいや、タルラ。未来はこれからだ。

[アーミヤ] あ、あの二人――

[W] 大丈夫よ、ウサギちゃん。誰にだってぶっ壊しておきたい過去やわだかまりってものがあるの。

[アーミヤ] そう……なんですか？ ……Ｗさん、あの……どうして中枢区画の動きを止めるパスワードを知っていたんですか？

[W] んー、誰にだって秘密のルートはあるものでしょ？ その質問には答えたくないって言ったら、あなたはあたしを殺すかしら？

[W] でもまぁ、さっき信じてくれたお礼に教えてあげてもいいわよ……怒らないって約束してくれればね。

[アーミヤ] ミーシャさんのことを言ってるんですね。

[W] いいえ、アレックスよ。ああ、スカルシュレッダーのことね。

[W] アレックスの父親が、死ぬ直前に彼に教えたそうよ。あいつもバカではなかったわ。レユニオンが何をしようとしていたのかも、大体把握していたはず。

[W] でも、あいつにそれを止める力はなかった。ウルサスが同僚を殺すことも、自分の子供たちが死ぬことも……フッ。

[W] ただ……あの時はね、誰も知らなかったのよ。少なくともあたしはついさっき知った……あのペテン野郎のコシチェイが、あたしたち全員を騙していたってことをね。

[W] あたしも、パトリオット爺さんも、フロストノヴァ、ファウスト、メフィスト、スカルシュレッダー、クラウンスレイヤー、みぃんなあいつに騙されていたのよ。

[W] 本来ならミーシャが死ぬ必要なんてなかった。チェルノボーグを停めるために彼女をさらって、結果として死に追いやってしまった。チェルノボーグを停められないと知った時、本当に後悔したわ。

[W] あの時は、あたしの馬鹿さのせいで全ての人が破滅することになるなんて思ったわ。だけど、あの龍女にまだ良識が残ってて助かったわ。

[W] あたしは間違っていたの。でも許しを請うなんて真似はしないわ。あの時は自分が間違ってるなんて全く思ってなかったもの。みんなが常識通りに行動してたら、この大地はとっくに滅んでるわ。

[アーミヤ] ですが、ミーシャさんは命を落としました。その過ちを正すことなんて、私たちには永遠にできません。

[アーミヤ] Ｗさん……このようなことは二度と起こさせません。あなたが同じことをするのは、私が許しません。

[アーミヤ] 約束していただけないのであれば、私たちはあなたをロドスに幽閉します。

[アーミヤ] あなたは、大勢の人を救おうとしたのかもしれませんが……一人の命であってもその重さは同じです。

[W] ふぅん……

[W] あら？ どうやらタルラの体力も限界のようね。まぁあんなアーツを垂れ流してたんだから、身体はもうボロボロなのかもね。

[W] ほら、倒れちゃったわ。

[W] ……ねぇ、ウサギちゃん。

[アーミヤ] はい。

[W] 前にも話したことがあったかも知れないけど……う～ん……なんて言えばいいのかしらね？

[W] ウサギちゃんは……うん。あんた、ちょっと彼女に似てるみたい。

[アーミヤ] え？ ……彼女って誰のことですか？

[W] じゃあね、アーミヤ。

[W] 本当に――ふふっ。もう二度と、あんたに会わないことを願うわ。お互いこれっきりにしましょうね、ロドスのウサギちゃん。

[アーミヤ] あっ、Ｗさん！

[盾兵] 止まった……チェルノボーグが止まった！

[盾兵] よくやった！ よくやったぞ、ロドス！！

[ロドス前衛オペレーター？] 敵が撤退してる……？ 混乱してるみたいだ！

[迷彩狙撃兵] 追うか？

[ロドス前衛オペレーター？] 逃げまどっているようだな――

[ロドス前衛オペレーター？] ！

[ロドス前衛オペレーター？] 見捨てられたことに気付いたんだ！

[盾兵] 我らの勝利だ！

[ロスモンティス] やった……私たち、やったんだ！

[盾兵] ハハハハッ！ 感染者が心を一つにすれば、こんなものだ！ 全でお前たちのおかげだ！ ロドス！

[ロスモンティス] きゃっ……！

[盾兵] 俺たちはやったんだ！ 万歳！ 小猫、お前はすごいぞ！！

[盾兵] 万歳！ ロドスのフェリーン！！

[ロスモンティス] わぁっ……ははっ……あははっ……！

Ace、Scout、私、やったみたいだよ。

なんだか、わかった気がする。私には家族だけじゃない。

この大地には……いい人がたくさんいる。そして……温かい人たちもたくさんいる。

それはとても、とても温かい……

この温かさを忘れない……絶対に。忘れちゃいけないんだ。たとえどんなに苦しくても……頑張って覚えておくから。

[ドクター選択肢1] ようやく着いた！

[ケルシー] いいタイミングで着いたらしい。アーミヤは成し遂げたようだな。しかし……

[アーミヤ] あっ、ドクター！

[アーミヤ] また会えて……本当によかった……

[ケルシー] いかん！

[ドクター選択肢1] アーミヤ！？