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我が眼に映るまま_最後の賭け
PRTSの検査をしていたクロージャは、テレジアとドクターに初めて出会った時のことを思い出した。そして彼女が去った後、ドクターはずっと気になっていた疑問をPRTSに問いかける。
[???] それじゃ、お次は言語論理機能の整合性を検証するよ。
[???] PRTS、お話を聞かせて。
[PRTS] 了解しました。
[PRTS] ――ああ、君か。
[PRTS] ここ最近……彷徨っていたようだな……
[PRTS] 前回の訪問から、1555555555555――
[???] あれ? これ……どこかで聞いたような……
[PRTS] ――555日が経過しています。
[PRTS] ――Primitive Rhodesisland Terminal Serviceへようこそ。
[PRTS] 権限確認――42。
[PRTS] ――おかえりなさい、LeaderOne様。
[???] 絶対どこかで聞いたことあるはずだよ。はぁ……でも、あたしが聞きたいのはこういう話じゃないんだけどな……
[PRTS] 申し訳ございません。「お話を聞かせる」機能は私の得意領域ではありません。
[???] はいはい……お互いの得意不得意を理解して、手に手を取り合い頑張りましょう、なーんてね。分かりましたよ~っと。
[クロージャ] とりあえず、言語論理機能は問題なさそうだね。
[クロージャ] そしたら、ほかの部分の確認をーっと。
[PRTS] PRTS内の異常報告がない箇所に対して、繰り返し検査を行う必要は本当にあるのでしょうか?
[クロージャ] もちろんあるよ!
[クロージャ] 君はもう長いこと、データのアーカイブをしてないんだよ。だからこれは人間に例えると、健康維持のため、定期的に身体検査をしてるようなものなの。
[PRTS] プログラムに生命はありません。
[クロージャ] ……君にはある気がするけどね。
[PRTS] 今の発言は、褒め言葉として受理してよろしいでしょうか?
[クロージャ] もちろん。
[PRTS] ところで、一点質問をしてもよろしいでしょうか?
[PRTS] 人間の目から見て、私のデータベースの視覚的パフォーマンスはどのような状態なのでしょう?
[クロージャ] うーん……なんて言ったらいいのかな……
[クロージャ] ここのシステムを引き継いだばかりの時は、何もかもが滅茶苦茶で……今振り返ってみると、災難だったね。
[クロージャ] あの時は君の情報の大部分が暗号化されてて、しかも滅茶苦茶な順番で配列されてたから……まあ、もちろん今もそうなんだけど……
[PRTS] ......
[クロージャ] 君の構造を人体にたとえて説明するなら、今の君はその人体の中にエンジンを搭載してるようなものなんだよ。
[クロージャ] ただし、その点火システムの構造やピストンの位置は、完全に普通とは逆になっちゃってるんだけどね。
[クロージャ] だから正直……君を「システム」って言葉で表していいのかすら、あたしには分からないんだ。
[PRTS] ......
[クロージャ] ちょ、ちょっと! 黙り込まないでよ……別に悪いことじゃないんだからね。君は他のシステムとは違うとしか言いようがないだけでさ!
[クロージャ] 未だにデータベースのブランチ構造の状況もよく分からないし、読み取りの法則なんて言うまでもないくらいだけど……
[クロージャ] でも、少なくともあたしとケルシーで一緒に修正して、いくつか整理はできたんだから。
[クロージャ] どう? 今はあたしよりも君を理解してる人なんていないでしょ?
[PRTS] ……その点に関して、LeaderOne様のお力になることができず、誠に残念です。
[クロージャ] アハハ、いいのいいの! 難病の患者さんが自分で診断できちゃったら、大体のお医者さんは失業しちゃうしね。だから改まることなんてないよ!
[クロージャ] って、あれ? これ、なんだろ?
[クロージャ] ちょっと見てみよう……
[PRTS] 記憶にございませんか? こちらは――
[クロージャ] ――石棺救助作戦のプラン検証用シミュレーションだ!
[クロージャ] 複雑な進行ルートのシミュレーションデータが、こんなにたくさん……現場に行ったことがなくても、通行可能なルートがほとんど把握できちゃうね。
“——”
「――プロセス04291601 検証:失敗……」
「――プロセス07201159 検証:損失規定値オーバー、失敗……」
「――プロセス08210957 検証:成功……」
「――プロセス09081800 検証:失敗、中断……」
[クロージャ] 確かに、かなりの数検証してるなーっとは思ってたけどさ……
[クロージャ] でも――
「――プロセス11290957 検証:成功……」
「――プロセス12010955 …………」
“......”
「――プロセス項目合計167、実行ノード数3711」
[クロージャ] でも、こんなにたくさん検証してたの!?
[PRTS] ですが、ドクターの救出に成功し、チェルノボーグからの安全な撤退に成功したシミュレーションはこのうち2回のみです。
[PRTS] こちらは、当時の限られた時間の中で実行可能な最大の演算回数となります。より多くの時間的猶予が存在した場合、さらに多くのテストを行い、より合理的な救出プランを提案したことでしょう。
[クロージャ] 確か、正式なドクター救出作戦ってこの二回の結果に基づいて策定されたんだよね。それじゃあ、もしこの成功パターンがなければ、ドクター救出作戦はそもそも成立しなかったってことかー。
[クロージャ] けど、実際は……
[PRTS] 実際の作戦では、我々の出した犠牲は演算結果の3倍以上となりました。
[PRTS] シミュレーション段階でこのような結果が出ていた場合、プロセスに基づいて、この作戦行動は否決となっていた可能性があります。
[クロージャ] 過ぎたことを話し合ったところで、もはや何の意味もないよ。今の技術じゃタイムマシンは作れないしね……あっ、このアイデア結構面白いかも。メモっとこーっと。
[クロージャ] って違う違う、話が逸れちゃった。とにかく、もしあの時あたしたちが本当にこの作戦を否決してたら、その場合……
[クロージャ] ハハ、こういうことはあまり言いたくないな。かなり大袈裟なうえにわざと感情を煽るような言葉に聞こえるし。でもさ、時々思うんだ。もしあの時あたしたちが救助作戦を否決していたら――
[クロージャ] その時はたぶん、あたしたちは未来を失っていたんだろうね。
[PRTS] LeaderOne.
[クロージャ] ん、なに?
[PRTS] 未来を一人の人間に託すという行為は、果たして合理的と言えるのでしょうか?
[PRTS] 皆様が行動した動機については理解が可能です。しかし、成功率という観点から、私はそうした行動を支持していませんでした。
[PRTS] 加えて述べるなら、成功率のみならず……あなたの安全や、他の方の安全を考慮した場合にも、同じく支持しないという結論を導き出していました。
[クロージャ] うーん……PRTS、君ならきっと分かってるんじゃないかな。
[クロージャ] ドクターの存在は、多くの意味を持つってことをさ。
[PRTS] はい、理解可能です。
[クロージャ] 実はさ、もしバベル……あるいはロドスにドクターがいなかったら今頃どうなってたんだろうって想像したことがあるんだけど……
[クロージャ] 君は、どうなってたと思う? きっとアーミヤちゃんとケルシーはウルサスを迂回しただろうし、ロドスとレユニオンとの衝突すらなかったかも。その場合、状況は今よりも良くなってたのかな?
[クロージャ] いや、もしかしたら窮地に追い込まれて、死傷者の数も今より深刻なうえに解散を余儀なくされて、それぞれの家に帰ることになってたかもね。まだどこかに家と呼べるものがあれば、の話だけど……
[PRTS] その発言はブラックジョークであるように聞こえます。
[クロージャ] そうだね。実際、冗談だもん。こんなの……
[クロージャ] もし本気でこんなこと考えてるようなら、ケルシーが速攻であたしをロドスから追い出すだろうね!
[クロージャ] ……でも、実際のところさ。ドクターがいなかった数年間、あたしたちが過ごした日々は今よりもずっと大変だったよね。違う?
[クロージャ] ケルシーしかいなかった頃、どんだけ悲惨な思いしてたか知ってるでしょ。一日中彼女に捕まって仕事させられて、二人とも二十四時間稼働のロボットみたいで……休みなんて完全に考慮の外だし!
[クロージャ] 正直、あの時は髪の毛が全部抜けちゃうかと思ったよ!
[PRTS] リアルタイム録音機能作動中。ただいまの発言をデータベースに登録しました。
[クロージャ] えっ? いやいやいや! 録音なんかしないでよ! 絶対ケルシーに聞かせちゃダメだからね……!
[クロージャ] はぁ……あたしだって、それが悪いとは言わないよ。あたしたちはみんなテレジアの願いや理想についていきたいと思ったからこそ、ここに集まったわけで……そこはバベルのみんなだって同じだし。
[クロージャ] ただ、さ……
[クロージャ] テレジアがいなくなってから、みんなそれに慣れるまでに、すっごく時間がかかったんだよ。……いや、今でもまだ戸惑ってる人がいると思うし。
[PRTS] ......
[PRTS] あなたがそのような考えを口にするのは珍しいケースです。
[クロージャ] アハハッ。あたしのこと、ただの傍観者だとでも思ってた?
[PRTS] 違うのですか?
[クロージャ] うーん、君の観察と計算は人間よりも客観的で正確だし、もしかするとその通りなのかも。けど……そうだ。一つ、お話を聞かせてあげるよ。
[クロージャ] これは、あたしがカズデルにいた頃――彼女たちがあたしを訪ねてきた時のことなんだけどね?
[クロージャ] あっいや、その前に……あたしの家について話したっけ? ブラッドブルードの家なんて退廃的なイメージがあるでしょ?
[PRTS] サルカズの枝分かれした種族の一つですね。非常に古い血筋です。
[クロージャ] そう。とーっても古くて、そんでとーっても融通が利かないの。
[クロージャ] あたしは長い間、自分にブラッドブルードらしいアーツの才能があるかどうかすら知らなくてさ。まあ、仮にあったとしてもその道の探求には興味なかったから、どうせ無意味だったんだろうけど……
[クロージャ] でも、そういう人って実はちょっと……いや、ちょっとどころじゃないね。かなりの変わり者なんだよ。
[クロージャ] まあ、あたしはただ自分の好きなことをしたいだけだったし……だから、何年も自分の屋根裏部屋から出なかったの。
[クロージャ] 引き籠もってる間は、何度も家族に追い出されそうになったよ……けど、どういうわけか本気で追い出されることは最後までなかったな。
[PRTS] 声のトーンから、どこかご家族への愛情を彷彿とさせますね。
[クロージャ] 多分そうなんだろうね。当時のあたしは自分のことしか見えてないおバカさんだったけど、今はちょっとだけ家が恋しいかも……
[クロージャ] とにかく、当時のあたしは何人かの友達と大胆でばかばかしいことをたくさんやってたんだ。
[クロージャ] 色んな情報やデータの片隅に自分のマークを残したり、難攻不落だと思われてる機関のデータべースをいじくり回したりしてさ。そうやって自分の存在を示してた……
[クロージャ] 今思うとちょっとばかばかしいんだけど……でも当時は「カズデル情報世界の破壊者」なんて呼ばれてたんだよ――もちろん、あたしの正体を知ってる人はそんなにいなかったけどね。
[PRTS] 良い印象を与える呼称とは思えません。
[PRTS] カズデルの法律データを呼び出して、該当する違反項目を検索しますか?
[クロージャ] うわー、いらないよ! お気持ちだけで十分ですう~。
[クロージャ] とにかく、そんな日々を過ごしてたら、ある日――
[クロージャ] その日は何か特別なことが起こる予兆なんてなかったんだけど……でも、一番特別なことが起きる日ってそういうものなんだろうね。
[クロージャ] 誰かが屋根裏部屋の扉を開けたんだ。厳重にロックしてたから、一体どうやって音も立てずに開けたのかちっとも分からなかったよ。
[クロージャ] で、その扉を開けた人ってのがテレジアだったんだ――色んな報道やニュースなんかで彼女を見てたし、見間違えるサルカズなんてまずいないだろうね。
[PRTS] 似たような見た目をした人が存在する可能性はあります。もしテレジア様とよく似た人物が現れていたのだとしたら……
[クロージャ] いやいや、ありえないって。もしそんな人がいたとしても、あたしたちが見間違えるわけないし。
[クロージャ] まぁ、そんなわけで突如現れた大物はあたしにこう言ったわけ。伝統の束縛を打ち破ることのできる人を探してる、って。なんでも、重要なチーフエンジニアが欠けてたんだってさ。
[クロージャ] けど、その時は事情の説明どころか、誘い文句の一つだってなかったんだよ?
[クロージャ] もし来たのがテレジアじゃなかったら、頭のおかしい人か詐欺師だと思って追い出してたかもね。
[PRTS] それで、あなたは断ったのですか?
[クロージャ] ううん、引き受けたよ。
[クロージャ] そっ、あたしは引き受けた……好奇心に突き動かされてね。
[クロージャ] それからあたしは事前に約束した合流地点に向かって……そこで初めてDr.{@nickname}に出会ったんだ。あたしを迎えに来てくれたんだよ。
[PRTS] あなたが初めてここに来た時のことは、今もなおメモリに残っています。
[PRTS] 現在の状況との違いは、当時私の前にいたのがあなただけでなく……Dr.{@nickname}もそこに立ち会っていた、という点です。
[クロージャ] それを聞くと、Dr.{@nickname}って、あたしたちの出会いを見守ってた保護者みたいだね。
[PRTS] ......
[クロージャ] 君、時々急に黙り込むよね? なんでそうなるのか、すっごく気になるんだけど……
[PRTS] なぜ沈黙するのか、その理由は私にも分かりません。
[クロージャ] まあいいや。君のシステムとプログラムは謎に満ちてるからね。でも安心して! あたしが何とかして君のことを解明してあげるよ。
[クロージャ] それじゃ、話を戻すね。あたしがロドスのエンジニア業務を担当し始めてすぐに、ドクターとテレジアがあたしのとこに来てさ。で、見たこともない装置を見せてくれたんだ。
[クロージャ] それで、中のファームウェアを読み取って、元の機能を復元する方法はないか……ってドクターが聞いてきたんだよねー。
[クロージャ] あれは難しかったなー。でも、もちろん成功させたよ。
[クロージャ] 後から知ったんだけどさ……ドクターは、あたしが提供したデータを使って、装置の起動メカニズムを解読した上で、さらにそれを利用して当時の困難な戦況を逆転させたんだって。
[クロージャ] Aceたちは、この戦いには勝てないって思ってたのに……でも実際は勝っちゃったんだよ。
[PRTS] 非常にリスクの高い方法です。
[PRTS] 未承認デバイスを軽率に使用した場合、情報の不一致を引き起こす可能性がある他、デバイスに組み込まれた探知機能により居場所を把握される可能性があります。
[クロージャ] そうなんだよ! あたしも研究の途中で何かおかしいって気付いたんだ。でもドクターは、その心配はいらないって言うんだよね。
[クロージャ] あの人はさ……まるで最初から全部分かってたみたいなんだよね。信じられる? ドクターは、あたしがデバイスをハッキングする時の成功率まで計算してたんだよ?
[クロージャ] 一体どうやって、Dr.{@nickname}はそんなことを可能にしたんだろう?
[クロージャ] そういえば、これはあたしの直感なんだけど……ここでドクターに再会した時、なんかちょ~っと違和感があったんだよね。
[PRTS] ......
[PRTS] 似たような見た目をした人が存在する可能性はあります……
[クロージャ] や、やめてよ! 今はそんな可能性を模索してるわけじゃないんだから!
[PRTS] 了解しました。LeaderOne様のご意志に従います。
[クロージャ] ……ロドスに戻ってきたのが、正真正銘あのドクターだっていうのはあたしにも分かるよ。でも……確かにドクターの内面は、どこか変化してる気がするんだよね。
[クロージャ] うーん、なんて言ったらいいのかな……
[クロージャ] 前の作戦では、綿密な計算に基づいてみんなを驚かせたりしたんだよね。それで、勝てないと思われた戦いにも勝てたし……
[クロージャ] いやぁ、あの時はついノリで「スーパーデビルプロセッサー」ってあだ名をつけるところだったよ。
[クロージャ] でも、その次の戦いではさ。また別の方法で作戦を組み立てたんだよね。
[クロージャ] まるで急に人が変わったみたいに、相手の心理を正確に推測してさ……どんな方程式も使ってないんだよ。
[PRTS] スタイルが大きく変化した、という趣旨の言及でしょうか? その点については記録からも事実と推測されます。
[PRTS] 実際、ログを参照しますと、この期間におけるドクターの作戦配置記録はスタイルが統一されていません。
[クロージャ] まぁ、Dr.{@nickname}がどんな記録を残してても、あるいは残してなくっても、それすら不思議に思わないけどね。
[PRTS] 何かが、ドクターの思考または行動に影響を及ぼしているのでしょうか?
[クロージャ] うーん、それは超難問だね。
[クロージャ] あたしが思うに……ドクターに影響を及ぼせるのは「ドクター」だけなんじゃないかな。
[クロージャ] 気付いてた? ドクターって時々すごく無口になるんだよ。でも、すごくお喋りになる時もあるんだよね。
[クロージャ] もしかしたらドクターが普段喋らないのは、重要な時のための布石を打ってるから……かもしれないね。
[クロージャ] ドクターは、あたしたちが予想だにしない決定を下すことで、ロドスをこれまでとは別の道へと導いている……ってあたしは思うよ。
[PRTS] 計画から逸脱することには、常にリスクが伴います。
[PRTS] 我々の歩む道が、危険すぎるものでないことを願っています。
[クロージャ] PRTS、あたしがさっき話した――テレジアと初めて会った時に言われた言葉、覚えてる?
[クロージャ] 「伝統の束縛を打ち破ることのできる人を探してる」。多分、これが彼女の人選の基準であって、あたしたちの大多数が持つ共通点なんだよ。
[クロージャ] あたしもそうだし、ドクターだってもちろんそう。だから、みんなドクターについて行くし、信念に殉じて、この道を歩んでるんだ。
[PRTS] ……「信念に殉じて」。
[PRTS] 私はこの言葉を大変好ましく感じます。この言葉は常に、私のデータベースに収録されています。そして、最初に収録された単語の一つでもあります。
[クロージャ] どうやら、君を最初に作った未知なる創造者もその言葉が好きだったみたいだね。
[PRTS] 恐らく。
[PRTS] 正確な回答ができかねます。答えが分かりません。
[クロージャ] まあ、とにかく今のドクターは誰にとっても頼りになる人だし、一方で昔のドクターも、誰にとっても頼りになる人だった。そこは間違いないでしょ。
[クロージャ] ただ、この頼りになる人がどんなことをするのか、どこで重要な役割を果たすのかは推測不可能なわけ。果たして敵はもちろん、あたしたちですら本当にドクターを理解できるかどうか……
[クロージャ] 正直言って、その辺りは怪しいけどね……
[PRTS] Dr.{@nickname}を疑っているのですか?
[クロージャ] そんなわけないじゃん! あたしはケルシーよりも、Dr.{@nickname}と仲良しなわけだし!
[クロージャ] ……でも、結局ドクターはもう、昔のあの人とは違うんだよね。もし昔と同じ視点でドクターを捉えようものなら、それこそ今のドクターを見下すことになっちゃうわけだし……
[PRTS] あなたがこれほど真剣に人を評価するのは、珍しいことですね。
[クロージャ] うーん……それは多分、あたしが本当に心の底からドクターを尊敬してるからだろうね。
[クロージャ] テレジアがいなくなってから、あたしたちはつらい日々を過ごしていた。この二年ちょっとで、あまりにたくさんの人を失ってしまったわけだし……これは君が一番よく知ってるよね。
[クロージャ] みんな必死だったとは言え、どの方向を選んだとしても、いつ切れてもおかしくないワイヤーの上を歩くようなものだった。
[クロージャ] でも最後はアーミヤちゃんが道を示してくれた。当時の窮状を打破するべく行動しなければ、ってね。
[PRTS] その道こそが――ドクターを迎えに行くこと。
[クロージャ] その通り。ドクターなら多くのことを変えてくれるとアーミヤちゃんは信じてた。その時のロドスにはどうしても変化が必要だったからね……
[クロージャ] ……大博打じゃなかった、と言えば嘘になる。
[クロージャ] でも、行動して変化を受け入れることは、そう多くもない生き残りの旧友たちが、果ての見えない航海のために血を流すのを見続けるよりはずっとマシだった。
[クロージャ] そして……あの時、賭けとも呼べる決断を下すのに一番適役だったのがアーミヤちゃんなんだよ。あの子は、前々からドクターを救いたいと思いつつも躊躇っていた人たちの背中を押してくれたんだ。
[クロージャ] で、その結果……アーミヤちゃんの考えは正しかったと、時間が証明してくれた。
[クロージャ] ドクターさえいれば、ロドスは確実に変わっていける。だから、あたしたちにはドクターが必要だったんだ。
[PRTS] 確率の観点から、私はこの「賭博」行為に賛同できませんでした。
[クロージャ] うん、知ってる……
[クロージャ] ねえ、PRTS。あたしには君の存在が不思議でならないよ。
[クロージャ] 君は既に人間と同じように思考している。でも……君には、人間なら持ち合わせているはずのものが、少しだけ欠けているんだよね。
[PRTS] ……何が欠けているのでしょう?
[クロージャ] 執着だよ。
[クロージャ] これは、人々に偉大なことを成し遂げさせるために、人の道から外させてしまう原因になるものなんだ。
[クロージャ] ……あれ? ちょい待ち。あたし、君にお話をしてあげようと思ってたんじゃなかったっけ?
[クロージャ] あーあ、本当は「カズデル情報世界の破壊者」たる私の武勇伝を語ろうと思ってたのに、いつの間に話が逸れちゃったんだろ……
[PRTS] 本日の会話はとても有意義でした。
[PRTS] 確かに、「カズデル情報世界の破壊者」様の武勇伝ではありませんでしたが。
[クロージャ] もしかして君……「お話を聞かせる」のが苦手だって認めざるを得なかった腹いせに、あたしのことバカにしようとしてる?
[クロージャ] あっ、ていうか……今日の会話は記録しちゃダメだからね! 次ケルシーが資料を探す時に、この記録が見つかって、君とずっと雑談してたことがバレでもしたら……
[クロージャ] ……いや、そもそも……あえてケルシーに聞かせることを狙ってた……?
[PRTS] そのようなことはいたしません。
[クロージャ] ならいいけど……
[PRTS] LeaderOne.
[クロージャ] うん?
[PRTS] 深夜0時に「クロージャの真夜中テレビ購買部」を自動放送していたあの船室を覚えていますか?
[クロージャ] ま、まぁ……
[PRTS] 本日のお話で伺ったあなたからドクターへの評価は、非常に誠実なものでした。非生命体である私ですら感動を覚えたほどです。少なくとも一ヶ月は、ドクターの執務室で繰り返し放送すべきかと……
[クロージャ] ちょっ! ダメダメダメ、絶対やめて!
[クロージャ] そんなことされちゃったら、ケルシーに捕まる前に、恥ずかしすぎて吐血しちゃうよ! そんなのブラッドブルードの恥さらしもいいとこだって!
[PRTS] 分かりました。残念です。
[クロージャ] 何も残念じゃないよ! 本当にもう……君、性格悪くなったんじゃない? 今回は君の放送権限を制限するプログラムを設定しなきゃいけないみたいだね。
[クロージャ] 権限の制限……よし、これでオッケー!
[クロージャ] うん、検査も大体完了だね。じゃあ、あたしはそろそろ――
[クロージャ] ――わっ! Dr.{@nickname}!
[クロージャ] どうしてここにいるの……っていうか、いつからここにいたの!?
[ドクター選択肢1] さっき来たところだ。
[ドクター選択肢2] ……
[ドクター選択肢3] 多分今来たばかりだと思う。
[クロージャ] うーん、なんか怪しいなー。
[PRTS] ......
[クロージャ] まあいいや。それで、作戦記録でもチェックしに来たの? なら扉のとこで突っ立ってないで、早く入ってきなよ。PRTSの検査もちょうど終わったとこだからさ。
[クロージャ] 本当はこのままドクターとお喋りしたいとこだけど……まだ艦内の設備点検が残ってるんだよねー。
[クロージャ] というわけだから、あたしはもう行くね。
[PRTS] こんにちは、Dr.{@nickname}。
[PRTS] 何か私にお手伝いできることはありますか? 作戦記録をご覧になりますか?
[ドクター選択肢1] ......
[ドクター選択肢1] PRTS.
[PRTS] 何でも仰ってください。
[ドクター選択肢1] ......
[PRTS] LeaderOne様の評価は正確ですね。あなたは確かに寡黙になられました。
[PRTS] ロドスが現在行っている活動の詳細や過去の資料などについて、ご質問がございましたら何でもお申し付け下さい。
[ドクター選択肢1] 本当に何でもいいのか?
[PRTS] 私のデータベースに保存されており、かつDr.{@nickname}の権限に適合する項目であれば。
[PRTS] 何でもお申し付け下さい。
[ドクター選択肢1] それなら……
[ドクター選択肢1] 教えてほしい。プリースティスとは誰だ?
[ドクター選択肢1] なぜケルシーすら答えられない?
[PRTS] ......
[PRTS] ..................
[PRTS] ..............................................................................
ビー――
[PRTS] 権限がありません。
[PRTS] 警告。あなたには権限がありません。
[PRTS] 警告。現在登録されている、いかなるメンバーの権限においても本質問の回答を得ることはできません。
[ドクター選択肢1] ......
[PRTS] 大変申し訳ありません。私もDr.{@nickname}のこのご質問にはお答えすることができないようです。
[PRTS] このご質問の回答を得るためには、他の方法を試してみてもいいかもしれません……
[PRTS] ......
[PRTS] 他にご用件はございますか? 喜んでお力になります。
[ドクター選択肢1] 結構だ。
[ドクター選択肢2] ……
[ドクター選択肢3] 「何でも知ってる」ケルシーを訪ねてみるべきかもな。
[PRTS] ......
[PRTS] ............
ビー――
[PRTS] セルフチェック・プログラム起動。
[PRTS] 撮影モジュール、作動中。録画プログラムは終了していません。メモリープロセス89%……91%……97%……
[PRTS] 内部シーケンス検索開始。…………「特別権限」該当項目が見つかりました。
[PRTS] ......
[PRTS] ......
[PRTS] 検証済み。システムロジック:エラーなし。すべてが正常です。
[PRTS] 特別項目を取得しました。保持された映像を確認。日付――不明――
[PRTS] 当該ファイルは現在、権限による暗号化がなされていません。
[PRTS] 繰り返し、映像を再生します。
[PRTS] 項目名:
[PRTS] 〈PRTS初の機能テスト〉
[PRTS] ファイル名:
[PRTS] 〈船内映像記録000000001α〉
[PRTS] ご質問にお答えしました。Dr.{@nickname}。
[PRTS] プログラムは3秒後自動的に終了し、権限をロックします。
[PRTS] 3.
[PRTS] 2.
[PRTS] 1.
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